アニサキス症

(ニシン虫症;タラ虫症;アザラシ虫症)

執筆者:Chelsea Marie, PhD, University of Virginia;
William A. Petri, Jr, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 修正済み 2025年 1月
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アニサキス症は,線虫であるAnisakis simplexならびに他のアニサキス種であるPseudoterranova decipiensおよびContracecum osculatumの幼虫による感染症である。生または加熱調理不十分な海水魚またはイカの摂食により感染し,幼虫が消化管の粘膜に潜り込み,腹痛のほか,ときに嘔吐を引き起こす。診断(幼虫の観察または生検)および治療(幼虫の除去)には内視鏡が使用される。

アニサキス(Anisakis)は海洋哺乳類の消化管に生息する寄生虫である。排出された虫卵は孵化して自由遊泳性の幼虫となり,魚およびイカ(中間宿主)に摂取される。ヒトへの感染は,中間宿主に寄生された生物の生または加熱調理不十分な肉(例,刺身,セビーチェ,魚介類の酢漬け/マリネ)を摂食し,幼虫が胃および小腸に潜り込むことで成立する。アニサキス種の幼虫を死滅させる適切な方法を用いて冷凍した生の魚介類(例,米国で市販されている寿司)は,ヒトが摂取しても安全である。

アニサキス症は世界中で発生している。症例の報告率が最も多いのは,日本,スペイン,韓国,イタリア,および米国である(1)。

寄生虫感染症へのアプローチも参照のこと。)

参考文献

  1. 1.Shamsi S, Barton DP.A critical review of anisakidosis cases occurring globally. Parasitol Res.2023;122(8):1733-1745.doi:10.1007/s00436-023-07881-9

アニサキス症の症状と徴候

胃アニサキス症の一般的な症状としては,幼虫摂取から数時間以内に起こる腹痛,悪心,および嘔吐などがある。ときに咳嗽によって幼虫が口腔内に排出されることもある。

小腸への感染はよりまれであるが,感染の結果炎症性の腫瘤が形成されることがあり,1~2週間後にクローン病虫垂炎に似た亜急性の症状が発生することがある。

消化管内腔外に異所性感染が起こることがまれにある。

幼虫はヒト宿主内で長期間生存することができないため,アニサキス症は典型的には数週間で自然に軽快するが,まれに数カ月間持続する。

アニサキス症の診断

  • 上部消化管内視鏡検査

  • 内視鏡下または外科的生検による組織の病理組織学的検査

アニサキス症は,上部消化管内視鏡検査で幼虫を肉眼的に観察することで診断できる。内視鏡下または外科的生検による組織の病理組織学的検査によっても診断することができる。ときに,患者が咳嗽により幼虫を排出し,それを分析のためにもち込むことがある。

一部の国では血清学的検査が利用できる。

便検査は役に立たない。

アニサキス症の治療

  • 幼虫の内視鏡的摘出

  • 場合によりアルベンダゾール

幼虫の内視鏡的摘出で根治できる。

アニサキス症が疑われる症例には,アルベンダゾール400mg,経口,1日2回,6~21日間による治療が効果的な場合があるが,データは限られている(1, 2)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Pacios E, Arias-Diaz J, Zuloaga J, Gonzalez-Armengol J, Villarroel P, Balibrea JL.Albendazole for the treatment of anisakiasis ileus. Clin Infect Dis.2005;41(12):1825-1826.doi:10.1086/498309

  2. 2.Moore DA, Girdwood RW, Chiodini PL.Treatment of anisakiasis with albendazoleLancet.2002;360(9326):54.doi:10.1016/s0140-6736(02)09333-9

アニサキス症の予防

生または加熱調理不十分な魚介類(例,寿司)中のアニサキスの幼虫を死滅させるには,適切な冷凍処理が必要である。

魚介類中のアニサキス(Anisakis)の幼虫は以下により死滅する:

  • 63℃以上(145° F以上)の温度で調理

  • −20℃(−4° F)以下の温度で7日間冷凍

  • −35℃(−31°F)以下の温度で固体になるまで冷凍し,この温度で15時間以上,または−20℃(−4°F)で24時間保存

酢漬け,塩漬け,および燻製では,アニサキスの幼虫を確実に死滅させることはできない。

要点

  • ヒトへのアニサキス(Anisakis)の感染は中間宿主(魚またはイカ)を生または加熱調理不十分な状態で摂取することで生じる;そのため,アニサキス症は魚介類を生食する習慣がある地域でよくみられる。

  • 胃アニサキス症の典型的な症状としては,幼虫の摂取後数時間以内に起こる腹痛,悪心,嘔吐などがあるほか,小腸に炎症性の腫瘤が形成されて,クローン病や虫垂炎に似た症状が生じることもある。

  • アニサキス症は典型的には数週間で自然に消失するが,まれに数カ月間持続する。

  • アニサキス症を診断するには,上部消化管内視鏡検査を行って,幼虫を観察するか,生検組織を病理組織学的に検査する。

  • 幼虫の内視鏡的摘出は根治可能である。

  • 適切な冷凍処理によって,寿司の摂取によるアニサキス症は予防できる。

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