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トキソカラ症

(内臓幼虫移行症または眼幼虫移行症)

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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トキソカラ症は,通常は動物に感染する回虫属(線虫の一属)の幼虫がヒトに感染することで生じる。症状は発熱,食欲不振,肝脾腫,発疹,肺炎,喘息,または視覚障害である。診断は酵素免疫測定法による。治療はアルベンダゾールまたはメベンダゾールによる。重度の症状または眼病変には,コルチコステロイドを追加することがある。

寄生虫感染症へのアプローチも参照のこと。)

病態生理

イヌ回虫(Toxocara canis,T. cati),ネコ回虫(Toxocara cati),およびその他の動物回虫の虫卵は,土壌中で成熟し,それぞれイヌ,ネコ,その他の動物に感染する。ヒトは,感染した動物の便で汚染された土壌中の虫卵を誤って摂取したり,感染した運搬宿主(例,ウサギ)を加熱調理不十分な状態で摂取したりする場合がある。虫卵はヒトの腸管内で孵化する。幼虫は腸壁から体内に侵入し,肝臓,肺,中枢神経系,眼,または他の組織内を移行することがある。組織の損傷は移行幼虫に対する局所性の好酸球性肉芽腫性反応に起因する。

通常,幼虫はヒトの体内では発育を完了しないが,何カ月も生き続けることができる。

症状と徴候

内臓幼虫移行症(VLM)

VLMは,罹患した臓器に応じて,発熱,食欲不振,肝脾腫,発疹,肺炎,および喘息症状を来す。Baylisascaris procyonis,糞線虫(Strongyloides)属,肺吸虫(Paragonimus)属など,その他の蠕虫の幼虫も,組織へ移行して同様の症状や徴候を引き起こすことがある。

VLMは大半が土食症の病歴がある2~5歳の小児または粘土を摂取する成人に発生している。

虫卵の摂取が止めば,症候群は6~18カ月で自然に治癒する。まれに,脳または心臓への侵襲が原因で死亡する。

眼幼虫移行症(OLM)

OLMは,眼トキソカラ症とも呼ばれ,通常は片側性で,全身症候は全くないか,あっても非常に軽度である。OLMの病変はほとんどが幼虫に対する肉芽腫性炎症反応に起因し,ぶどう膜炎および/または脈絡網膜炎に至ることがある。その結果,視力が障害されるか失明する。

OLMは児童に起こり,より頻度は低いが若年成人にも起こる。病変は,網膜芽細胞腫または他の眼内腫瘍と混同されることがある。

診断

  • 酵素免疫測定法および臨床所見

トキソカラ症の診断は臨床,疫学,および血清学的所見に基づいて行う。

診断の確定には,トキソカラ(Toxocara)抗原に対する酵素免疫測定法(EIA)が推奨される。しかしながら,OLM患者では血清抗体価が低値または検出限界未満となる場合がある。同種凝集素が上昇することがあるが,この所見は非特異的である。CTまたはMRIにより,肝臓に散発する複数の境界不鮮明な1.0~1.5cmの卵円形病変,または胸部に境界不明瞭な胸膜下結節を認めることがある。

VLMでは高グロブリン血症,白血球増多,および顕著な好酸球増多がよくみられる。

肝臓または他の感染臓器の生検により好酸球性肉芽腫性反応を認めうるが,組織切片から幼虫を見つけるのは困難で,生検により確定診断できる例は少ない。便検査は有用性がない。

手術による無用な眼球摘出を回避するために,OLMを網膜芽細胞腫から鑑別すべきである。

治療

  • アルベンダゾールまたはメベンダゾール

  • 対症療法

無症状の患者および症状が軽度の患者では,感染症は通常自然に軽快するため,駆虫薬治療は不要である。

中等度から重度の症状を有する患者では,アルベンダゾール400mg,経口,1日2回,5日間またはメベンダゾール100~200mg,経口,1日2回,5日間がしばしば選択されるが,至適な治療期間は不明である。

軽度の症状には抗ヒスタミン薬で十分であると考えられる。重度の症状がある患者には,コルチコステロイド(プレドニゾン20~40mg,経口,1日1回)が適応となる。眼内の炎症を抑えるため,急性OLMに対してもコルチコステロイド(局所,経口ともに)の適応がある。

網膜の幼虫を死滅させるためにレーザー光凝固術が使用されている。

予防

米国では,仔イヌのイヌ回虫(T. canis)感染はよくみられるが,ネコのネコ回虫(T. cati)感染はそれほど一般的ではない。いずれの動物も定期的に駆虫すべきである。動物の便で汚染されている土や砂との接触は,最小限にすべきである。砂場には覆いをすべきである。

要点

  • イヌ回虫(Toxocara canis)の生活環には一般にイヌが関与する;ヒトへの感染は,感染した動物の糞で汚染された土壌中の虫卵を誤って摂取したり,感染した運搬宿主(例,ウサギ)を加熱調理不十分な状態で摂取したりする場合に限られる。

  • トキソカラ症は,ヒトでは主に2つの症候群を引き起こす:内臓幼虫移行症(幼虫が侵入する臓器によって様々な症状がみられる)および眼幼虫移行症(一般に症状は全くないか軽度であるが,視力障害または失明に至ることがある)である。

  • 診断は,臨床的評価およびトキソカラ(Toxocara)抗原に対する酵素免疫測定法に基づく。

  • トキソカラ症の症例のほとんどは自然治癒し,治療を必要としないが,必要であれば,中等度から重度の症状に対してアルベンダゾールまたはメベンダゾール,軽度の症状に対してときに抗ヒスタミン薬,また重度の症状に対してコルチコステロイドを使用する。

  • イヌやネコの駆虫がトキソカラ症の予防に役立つ。

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