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オンコセルカ症(河川盲目症)

執筆者:

Richard D. Pearson

, MD, University of Virginia School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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オンコセルカ症は,回旋糸状虫(Onchocerca volvulus)によるフィラリア感染症である。症状は皮下結節,そう痒,皮膚炎,リンパ節腫脹,リンパ管閉塞,ならびに失明を来すことのある眼病変である。診断は,皮膚小片,角膜,もしくは前房でのミクロフィラリアの検出,皮下結節での成虫の同定,またはPCRもしくはDNAプローブの使用による。治療はイベルメクチンによる。

約1800万人が感染しており,約27万人の失明患者と75万人の視覚障害患者がいる。オンコセルカ症は世界的に失明原因の第2位となっている(第1位はトラコーマ)。

オンコセルカ症はアフリカの熱帯地域およびサハラ以南において最もよくみられる。イエメン,メキシコ南部,グアテマラ,エクアドル,コロンビア,ベネズエラ,およびブラジルアマゾンにも小規模の発生地がある。オンコセルカ症による失明はアメリカ大陸ではかなりまれである。

病態生理

オンコセルカ症は,急流の河川において繁殖するブユ(Simulium属)を介して伝播する(これが河川盲目症という別称の由来である)。

感染性の幼虫はブユの刺咬によって皮膚に接種され,12~18カ月で成虫に発育する。雌の成虫は皮下結節内で最高15年にわたり生存する。体長は雌虫で33~50cm,雄虫で19~42mmである。成熟した雌虫はミクロフィラリアを産み,ミクロフィラリアは主に皮膚を移行して眼に侵入する。

症状と徴候

オンコセルカ症は典型的には以下の部位を侵す:

  • 皮膚(結節,皮膚炎)

結節

成虫を含んだ皮下(またはより深部)の結節(オンコセルコーマ)は,視診または触診で検出できることもあるが,それ以外は無症状である。様々な割合の炎症細胞と線維組織で構成される。古い結節は乾酪化または石灰化することがある。

皮膚炎

オンコセルカ皮膚炎は,ミクロフィラリアによって引き起こされる。感染が少量の患者では,激しいそう痒が唯一の症状となることがある。

通常,皮膚病変部には続発性表皮剥離,鱗屑を伴う潰瘍および苔癬化,および軽度から中等度のリンパ節腫脹を伴う特徴のない斑状丘疹状皮疹がみられる。早発性の皺,皮膚萎縮,鼠径部または大腿部のリンパ節腫脹,リンパ管閉塞,斑状の色素減少,ならびに限局性一過性の浮腫および紅斑が生じうる。

オンコセルカ皮膚炎はほとんどの患者で全身性であるが,イエメンおよびスーダンでは,過角化,鱗屑,および色素性変化を伴う限局性で境界明瞭な湿疹皮膚炎(Sowdah)がよくみられる。

眼疾患

眼の病変は軽度の視覚障害から完全な失明まで様々である。前眼部の病変としては以下のものがある:

  • 点状(雪片様)角膜炎(ミクロフィラリアの死体を取り巻く急性炎症性浸潤で,恒久的な損傷を残さずに消失する)

  • 硬化性角膜炎(線維血管性の瘢痕組織が内側に増殖して水晶体亜脱臼および失明を引き起こしうる)

  • 前部ぶどう膜炎または虹彩毛様体炎(瞳孔を変形させうる)

脈絡網膜炎,視神経炎,および視神経萎縮も生じることがある。

診断

  • 皮膚検体の鏡検

  • 眼の角膜および前房の細隙灯顕微鏡検査

  • 皮膚のPCR

皮膚小片におけるミクロフィラリアの証明が従来の診断法であり,通常は複数の検体を採取する( 寄生虫感染症の顕微鏡診断のための検体の採取および取扱い*)。皮膚小片中の寄生虫DNAをPCR法で検出する方法は,標準的な手法より感度が高いが,利用できるのは研究施設に限られている。

ミクロフィラリアは,細隙灯顕微鏡検査の際に角膜および前房にも見えることがある。

抗体検出の利用価値は限定的である;フィラリアと他の蠕虫の間にはかなりの抗原交差反応性が認められている上,血清学的検査が陽性であっても過去の感染と現在の感染を鑑別することはできない。

触知可能な結節(または超音波検査もしくはMRIによって検出される深部結節)を切除して,成虫の検査を行うことができるが,この手技が必要になるのはまれである。

治療

  • イベルメクチン

イベルメクチン150μg/kgの単回経口投与を6~12カ月毎に繰り返す。イベルメクチンにより,皮膚および眼のミクロフィラリア数は低下し,ミクロフィラリアの産出が何カ月にもわたり抑制される。イベルメクチンは雌の成虫は死滅させないが,累積投与により雌の生殖能力を低下させる。至適治療期間は不明である。理論的には雌虫の寿命(10~14年)にわたって毎年治療を継続することも考えられるが,そう痒が消失し,皮膚生検または眼科診察によりミクロフィラリアがいないことが証明されれば,治療はしばしば数年後に中止される。

イベルメクチンの有害作用は性質的にはジエチルカルバマジン(DEC)の有害作用に類似するが,はるかに低頻度で重症度も低い。DECは重度の過敏性(Mazzotti)反応を引き起こし,皮膚および眼の損傷の悪化ならびに心血管虚脱を来す恐れがあるため,オンコセルカ症には使用されていない。

ロア糸状虫(Loa loa)に同時感染している患者にイベルメクチンを投与すると,重度の反応が起こる可能性があるため,回旋糸状虫に加えてロア糸状虫(別の糸状虫の種類)の流行地でもある中央アフリカに行ったことのある患者では,イベルメクチンを投与する前にこの寄生虫の同時感染がないか評価すべきである。

パール&ピットフォール

  • オンコセルカ症をイベルメクチンで治療する前に,中央アフリカでロア糸状虫(Loa loa)に曝露した患者では,この寄生虫による同時感染を除外する。

ドキシサイクリンにより,回旋糸状虫(O. volvulus)が生存および胚形成に必要とする内部共生菌であるWolbachiaを殺菌できる。ドキシサイクリンは60%超の雌の成虫を殺虫し,生き残った雌の成虫に対しても不妊化するかその妊孕性を弱める作用がある。より新しいレジメンとして,イベルメクチン150μg/kgの単回投与に続いて,その1週間以内にドキシサイクリン100mg,経口,1日1回または1日2回の投与を開始し,これを6週間継続するものなどがある;その後は,イベルメクチンを上述の通り年単位で継続する。

到達可能なオンコセルコーマの外科的除去により皮膚のミクロフィラリア数を軽減できるが,イベルメクチン療法に取って代わられている。

予防

回旋糸状虫(O. volvulus)感染症に対する予防効果が証明された薬剤はない。しかしながら,年1回または年2回のイベルメクチン投与は疾患を効果的にコントロールし,伝播を抑制する可能性がある。

ブユ(Simulium)の蔓延している地域を避ける,皮膚を保護する衣服を着用する,場合によっては防虫剤をふんだんに使用することにより,ブユによる刺咬を最小限に抑えられる。

要点

  • オンコセルカ症は,皮膚病変および発疹のほか,より重要なこととして眼疾患を引き起こし,視覚障害やときに失明につながるフィラリア感染症である。

  • 眼の細隙灯顕微鏡検査および皮膚切片の鏡検により診断する;利用可能であれば,PCR検査が役立つ場合もある。

  • イベルメクチンによる治療を行い,ミクロフィラリアを死滅させ,雌虫の生殖能力を低下させる;イベルメクチンで成虫が死滅することはない。

  • 回旋糸状虫に加えてロア糸状(Loa loa)虫の流行地でもある中央アフリカに行ったことのある患者では,イベルメクチンを投与する前にこの寄生虫の同時感染がないか評価すべきである。

  • 雌の成虫の死滅および/または不妊化のため,ドキシサイクリン6週間コースの追加を考慮する。

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