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トリコモナス症

執筆者:

Sheldon R. Morris

, MD, MPH, University of California San Diego

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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トリコモナス症は,腟トリコモナス(Trichomonas vaginalis)による腟または男性性器の感染症である。無症候性のこともあれば,尿道炎,腟炎,もしくはときに膀胱炎,精巣上体炎,または前立腺炎を引き起こすこともある。診断は,直接鏡検,試験紙検査,もしくは腟分泌物の核酸増幅検査,または尿もしくは尿道培養による。患者およびセックスパートナーは,メトロニダゾールまたはチニダゾールにより治療する。

腟トリコモナス(T. vaginalis)は,性感染症を引き起こす鞭毛をもつ原虫であり,男性より女性(妊娠可能年齢の女性の約20%)により頻繁に感染する。感染症は男女ともに無症状のことがあるが,男性では無症状であるのが標準である。男性では,この病原体は症状を引き起こすことなく長期にわたり泌尿生殖器に持続感染することがあり,意図せずにセックスパートナーを感染させる可能性がある。一部の地域で,トリコモナス症は男性における非梅毒性,非クラミジア性尿道炎の最大5%を占める。

淋菌感染症および他の性感染症(STD)との同時感染がよくみられる。

症状と徴候

女性では,症状は無症状のものから,黄緑色かつ泡状の大量の帯下を生じ,外陰および会陰の疼痛,性交痛,ならびに排尿困難を伴うものまである。無症候性感染は,外陰および会陰に炎症が起きて浮腫が陰唇に発生するにつれ,いつでも症候性となりうる。腟壁および子宮頸部の表面に「苺状」の赤い斑点が現れることがある。尿道炎やときに膀胱炎も起こりうる。

男性は通常は無症候性である;しかしながら,ときに尿道炎により分泌物がみられることがあり,一過性,泡状,もしくは膿性であり,通常早朝に排尿困難および頻尿を生じることもある。尿道炎はしばしばより軽度で,ごくわずかの尿道の刺激感を引き起こし,ときに外尿道口,包皮下部,またはその両方が湿潤する。精巣上体炎および前立腺炎はまれな合併症である。

診断

  • 腟分泌物の鏡検,試験紙検査,または核酸増幅検査(NAAT)

  • 男性から採取した尿または尿道スワブの培養

腟炎の女性患者および尿道炎の男性患者と,それぞれのセックスパートナーでは,トリコモナス症を疑う。淋菌,クラミジア,マイコプラズマ,およびウレアプラズマ感染症など,他の感染症に対する評価および治療を行った後も症状が持続する場合には,診断の疑いが強まる。

女性では,診断は臨床基準およびポイントオブケア(POC)検査に基づいて行う。以下のPOC検査のいずれかを行う:

  • 腟分泌物の直接鏡検

  • 免疫クロマトグラフィーフローディップスティック検査

  • NAAT

鏡検は最も簡便な方法で,これによりトリコモナス症と細菌性腟症を同時に検査することができる。これら2つの感染症は類似の症状を引き起こしたり,併存したりすることがあるため,両者に対する検査を行うべきである。腟分泌物は後腟円蓋から採取する。pH値が測定される。分泌物はその後2枚のスライドガラスに塗布する;1枚目のスライドガラスでは10%水酸化カリウム(KOH法)により,2枚目では0.9% NaCl(saline wet mount)により希釈する。臭気テストでは,KOH法を用いて,トリコモナス腟炎または細菌性腟症で産生されるアミンから生じる魚臭を検査する。運動するトリコモナス原虫を検出するため,生理食塩水を滴下したらできるだけ早急に顕微鏡を用いて調べる(トリコモナス原虫はスライドガラス作製後数分以内に運動を停止する可能性があり,そうなると確認はより困難になる)。(トリコモナス原虫は,洋梨型でしばしば運動性のある鞭毛をもち,大きさは平均で7~10μm[白血球とほぼ同じ]であるが,ときに25μmに達することもある。)トリコモナスが認められれば,多数の好中球も認められる。トリコモナス症はまた,パパニコロウ(Pap)検査の際にこの微生物が確認されて診断されることも多い。

他の検査方法として,一部の検査室にある免疫クロマトグラフィーフローディップスティック検査またはNAATが行われる場合がある。女性では,これらの検査は鏡検または培養よりも感度が高い。またNAATは,他の病原体または他のSTD(クラミジアまたは淋菌感染症など)を同時に検出できるように設定することができる。

尿または尿道スワブの培養は,男性において腟トリコモナス(T. vaginalis)を検出するための唯一妥当性が確認されている検査法である。男性では,尿の鏡検は感度が低く,NAATおよび尿試験紙検査は厳密には妥当性が確認されていないが,疫学調査によるとNAATには尿検体よりも尿道スワブ検体の方が適切である可能性が示唆されている。

全てのSTDの診断と同様,トリコモナス症患者には検査を行い,淋菌感染症またはクラミジア感染症などの他の一般的なSTDを除外するべきである。

治療

  • 経口メトロニダゾールまたはチニダゾール

  • セックスパートナーの治療

セックスパートナーが同時に治療されれば,メトロニダゾールまたはチニダゾール2g,経口,単回投与により女性の最大95%が治癒する。男性における単回投与レジメンの有効性は明らかでないため,治療としては典型的にはメトロニダゾールまたはチニダゾールが500mg,経口,1日2回で5~7日間投与される。

女性患者において感染症が持続し,セックスパートナーによる再感染が除外された場合は,女性患者に対してまずメトロニダゾールもしくはチニダゾール2g,経口,単回投与またはメトロニダゾール500mg,1日2回,7日間による再治療を行う。初回の再治療レジメンが不成功に終わった場合は,メトロニダゾールまたはチニダゾール2g,1日1回,5日間が効果的となりうる。

メトロニダゾールは白血球減少,アルコールに対するジスルフィラム様反応,またはカンジダとの重複感染を引き起こすことがある。妊娠第1トリメスターは相対的禁忌とされているが,第1トリメスター以降は胎児に対する危険はないかもしれない。チニダゾールは,妊娠中における安全性が確定されていないため,使用されない。

セックスパートナーを受診させて,チニダゾール2g,単回投与または,メトロニダゾール500mg,1日2回,5日間によるトリコモナス症の治療を行うべきであり,他のSTDのスクリーニングを受けるべきである。セックスパートナーによるフォローアップのアドヒアランスが不良となる可能性が高い場合は,トリコモナス症が確認されている患者のセックスパートナーの診断が確定せずとも,パートナーの治療を開始することができる。

要点

  • トリコモナス症は,無症候性のこともあれば(特に男性の場合),腟炎またはときに尿道炎を引き起こすこともある。

  • 女性では,腟分泌物の鏡検,試験紙検査,またはNAATにより診断する。

  • 症状のある男性では,尿培養または尿道スワブのほか,NAATにより診断する。

  • 患者とそのセックスパートナーを,経口メトロニダゾールまたはチニダゾールで治療する。

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