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Clostridium difficile 関連下痢症

(偽膜性大腸炎)

執筆者:

Joseph R. Lentino

, MD, PhD, Loyola University Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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消化管内のClostridium difficileが産生する毒素により,偽膜性大腸炎が引き起こされるが,典型的には抗菌薬の使用後に発生する。症状は下痢(ときに血性)であり,まれに進行して敗血症および急性腹症を来す。診断は便中のC. difficile毒素の同定による。治療はメトロニダゾールまたはバンコマイシンの服用による。

C. difficileは抗菌薬関連大腸炎の最も一般的な原因菌であり,典型的には院内感染であるが,市中感染症例が増加している。C. difficile関連下痢症は,入院患者の最大8%に発生し,院内感染による下痢症例の20~30%の原因となっている。

C. difficile関連下痢症の危険因子としては以下のものがある:

  • 極めて若年または極めて高齢

  • 重度の基礎疾患

  • 長期の入院

  • 介護施設での居住

C. difficileは新生児の15~70%,健康成人の3~8%,および入院成人のおそらく20%(長期療養施設の入居者ではより高率)で無症候性に保菌されており,環境中(例,土壌,水,家庭内のペット)にも広く認められる。この疾患は,腸内常在菌の異常繁殖から生じる場合と,外部からの感染に続発する場合とがある。医療従事者がしばしば伝播を媒介する。

最近では,強毒株BI/NAP1/027型(North American pulsed-field type 1 [NAP1]/ribotype 027)が院内アウトブレイクで注目を集めるようになった。この菌株は,他と比べて毒素の産生量がかなり多く,引き起こす疾患はより重度であり,再発率も高く,また感染力が強く,抗菌薬治療に対する反応性は低い。

病態生理

抗菌薬投与による消化管内細菌叢の変化が主な素因である。ほとんどの抗菌薬で関与が報告されているが,セファロスポリン系(特に第3世代),ペニシリン系(特にアンピシリンおよびアモキシシリン),クリンダマイシン,およびフルオロキノロン系が最もリスクの高い薬剤である。C. difficile大腸炎は,特定の抗腫瘍薬の使用後にも発生することがある。

この菌は細胞毒素とエンテロトキシンの両方を分泌する。主に結腸が侵されるが,侵された結腸からは液体が分泌されて特徴的な偽膜(容易に除去できる不連続な黄白色の隆起物)が形成される。重度症例では偽膜が融合することがある。

中毒性巨大結腸症は,まれにしか発生しないが,腸運動抑制薬の使用後には可能性がいくらか高まるようである。敗血症および急性腹症と同様に,限局性の組織内播種が極めてまれに起こる。C. difficile関連下痢症に続いて反応性関節炎を発症した症例が報告されている。

症状と徴候

症状は典型例では抗菌薬開始5~10日後に始まるが,初日から発症する場合もあれば,最長で2カ月経過してから発症した例もある。下痢は軽度で半固形のこともあれば,頻回で水様のこともある。痙攣または疼痛はよくみられるが,悪心および嘔吐はまれである。腹部に軽度の圧痛を認めることがある。

著明な大腸炎または中毒性巨大結腸症を来した患者では,疼痛がより強く,頻脈ならびに腹部の膨隆および圧痛を伴ってより重症に見える。腸穿孔を起こした患者では腹膜刺激徴候がみられる。

診断

  • 便の毒素検査

  • ときにS状結腸鏡検査

抗菌薬使用開始後2カ月以内,または入院後72時間以内に下痢を発症した患者では,全例で本疾患を疑うべきである。便(拭い液ではなく,便検体)のC. difficile毒素検査により診断を確定する。毒素遺伝子tcdBを対象とする新しいリアルタイムPCR検査は現行の検査より優れている可能性がある。通常は1回の検体のみで十分であるが,強い疑いにもかかわらず,最初の検体が陰性の場合は,再度検体を提出すべきである。しばしば便中に白血球が認めらるが,特異的ではない。

イレウスを起こしている場合と毒素検査で診断がつかない場合は,偽膜の存在を確認できるS状結腸鏡検査を施行すべきである。劇症大腸炎,穿孔,または巨大結腸症が疑われる場合には,通常は腹部X線,CT,またはその両方を施行する。

治療

  • メトロニダゾールの経口もしくは静脈内投与またはバンコマイシンの経口投与

選択すべき治療は以下のものである:

  • メトロニダゾール500mg,経口,8時間毎,10日間

あるいは,重症例(白血球数 > 15,000またはクレアチニン値 > ベースラインの1.5倍)にはバンコマイシンを125~500mg,経口,6時間毎,10日間で投与してもよい。経口薬に耐えられない患者にはメトロニダゾールを500mg,静脈内,8時間毎で使用することができ,非常に重症の患者にはバンコマイシンの経口薬と併用してもよい。例外的な症例では,バンコマイシンを注腸で投与することもあり,その用量は経口投与の場合と同様である。比較的新しい薬剤であるフィダキソマイシン(200mg,経口,12時間毎)が別の代替治療である。一部の患者には,バシトラシン(500mg,経口,6時間毎,10日間),コレスチラミン樹脂,またはSaccharomyces boulardii酵母の投与が必要となる。ニタゾキサニド500mg,経口,12時間毎,10日間はバンコマイシン125mgの服用と同等のようであるが,米国ではあまり使用されていない。

少数の患者には治癒を得るために結腸全摘術が必要になる。

再発例の治療

15~20%の患者では再発するが,再発は典型的には治療中止から数週間以内にみられる。再発は再感染(同一または別の菌株によるもの)が原因であることが多いが,最初の感染から生き残った芽胞が関与する症例もあると考えられる。再発時には初回治療時より高用量でバンコマイシン(250~500mg,経口,6時間毎)を投与する。

頻回に重度の再発を繰り返す患者にドナー便を注入(便移植)することで解消の可能性が高くなるが,その機序はおそらく正常な便細菌叢の復旧と考えられる。便は約200~300mL使用し,ドナーには腸内および全身性病原菌について検査を実施する。便は経鼻十二指腸管,大腸内視鏡,または浣腸器を用いて注入することができるが,至適な方法はまだ特定されていない。

感染拡大の予防

患者間および医療従事者間でのC. difficileの拡大を防止するために,感染制御の対策が不可欠である。

要点

  • 抗菌薬が投与されると,腸管内で毒素産生性のClostridium difficileが過剰増殖することで,重症かつ難治性の偽膜性大腸炎が引き起こされることがある。

  • セファロスポリン系(特に第3世代),ペニシリン系,クリンダマイシン,およびフルオロキノロン系が最もリスクの高い薬剤である。

  • 便のC. difficile毒素検査により診断する。

  • 重症例はメトロニダゾールおよびときにバンコマイシンまたはフィダキソマイシンの服用で治療をする。

  • 再発がよくみられるが,再発時はより高用量のバンコマイシン(250~500mg,経口,6時間毎)で再治療を行い,治療抵抗性で重症の再発例には便移植を考慮する。

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