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放線菌症

執筆者:

Joseph R. Lentino

, MD, PhD, Loyola University Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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放線菌症は,放線菌(Actinomyces israelii)によって引き起こされる限局性または血行性の慢性嫌気性菌感染症である。所見は複数の瘻管を伴う局所膿瘍,結核様肺炎,および軽度の敗血症である。診断は典型的な外観と検査室での同定による。治療は長期間の抗菌薬投与と手術による。

原因菌であるActinomyces属細菌(A. israeliiが最も頻度が高い)は,しばしば歯肉,扁桃,および歯に共生菌として常在している。しかしながら,感染例の多く(大半ではない)が複数菌によるもので,病変からは他の細菌(口腔嫌気性菌,ブドウ球菌,レンサ球菌,Aggregatibacter属[以前の分類ではActinobacillus actinomycetemcomitans],腸内細菌科)が高頻度に培養される。

放線菌症は成人男性で最もよくみられ,いくつかの病型がある:

  • 頸部顔面放線菌症(顎放線菌症):最も頻度の高い侵入門戸は齲歯である。

  • 胸部放線菌症:口腔内分泌物の吸入により肺疾患が生じる。

  • 腹部放線菌症:おそらく憩室もしくは虫垂粘膜の亀裂,または外傷から疾患が生じると考えられる。

  • 子宮放線菌症:この骨盤内に限局する病型は,一部の種類の子宮内避妊器具(IUD)の合併症である。

  • 全身性放線菌症:まれに,おそらくは血行性の播種によって,原発部位から感染が拡大する。

症状と徴候

特徴的病変は,周囲を肉芽組織に取り囲まれた,互いに交通のある複数の小さな膿瘍から成る硬結性の領域である。病変は皮膚につながる瘻孔を形成する傾向があり,そこから「硫黄顆粒(sulfur granules)」(円形または球形,通常は黄色,直径1mm以下)を含む膿性分泌物が排出される。感染は隣接組織に拡大するが,血行性の拡大はごくまれである。

頸部顔面放線菌症は通常,口腔粘膜下または頸部皮下の小さく扁平で硬い腫脹(疼痛を伴う場合もある)として,または下顎の骨膜下腫脹として発症する。その後,一部の領域が軟化していき,特徴的な硫黄顆粒を排出する瘻管および瘻孔となる。頬,舌,咽頭,唾液腺,頭蓋骨,髄膜,および脳が直接の伝播により侵されることがある。

腹部放線菌症では,腸管(通常は盲腸と虫垂)および腹膜が感染する。疼痛,発熱,嘔吐,下痢または便秘,るいそうが特徴的である。単一または複数の腹部腫瘤が形成され,部分的な腸閉塞の徴候を引き起こす。排膿を伴う瘻管および腸瘻が形成されて,外腹壁へ感染が拡大することがある。

限局性骨盤内放線菌症では,IUDを使用する患者において帯下と骨盤痛または下腹部痛がみられる。

胸部放線菌症では,肺病変が結核に類似する。胸痛,発熱,および湿性咳嗽が出現する前に広範な侵襲が起こることがある。胸壁の穿孔と排膿を伴う慢性の瘻孔形成を来すことがある。

全身性放線菌症では,感染が皮膚,椎体,脳,肝臓,腎臓,尿管,女性の骨盤内臓器など複数の領域に血行性に伝播する。これらの部位に関連した多彩な症状(例,背部痛,頭痛,腹痛)がみられる。

診断

  • 鏡検

  • 培養

診断は臨床的に疑い,喀痰(理想的には内視鏡下で採取したもの),膿汁,または生検材料の鏡検および培養によりA. israeliiを同定することによって確定する。しばしば所見に応じて画像検査(例,胸部X線,腹部または胸部CT)を施行する。

膿汁または組織検体中では,起因菌は特徴的な硫黄顆粒として観察されるか,または分岐状および分岐のない波状の細菌線維,膿細胞,ならびに細胞残屑がもつれ合った集塊として観察され,その周囲は放射状,棍棒状を呈する硝子質の屈折性線維の層(組織内ではヘマトキシリン-エオジン染色で染まるが,グラム染色は陽性)に取り囲まれる。

どの部位の病変も悪性腫瘍に類似することがある。肺病変は,結核や癌の病変と鑑別しなければならない。腹部病変の大半は回盲部に発生し,開腹時と腹壁に排膿を伴う瘻孔がみられる場合を除き,診断は困難である。肝臓の穿刺吸引生検は,持続性の瘻孔を残す可能性があるため,避けるべきである。

予後

この疾患は緩徐に進行する。予後は初期診断に直接関連し,頸部顔面放線菌症が最も良好で,胸部,腹部,全身性放線菌症の順に不良となり,中枢神経系が侵される場合は特に予後不良である。

治療

  • 高用量ペニシリン

ほとんどの患者は抗菌薬に反応するが,広範な組織の硬結と比較的脈管に乏しいという病変の性質から,反応は通常緩慢である。したがって,治療は症状と徴候が消失するまで,少なくとも8週間,ときに1年以上継続しなければならない。

高用量のベンジルペニシリン(例,300万~500万単位,静注,6時間毎)が通常効果的である。約2~6週間後には,ペニシリンV 1g,経口,1日4回で代用してもよい。ペニシリンの代わりにテトラサイクリン500mg,経口,6時間毎またはドキシサイクリン100mg,12時間毎を使用してもよい。ミノサイクリン,クリンダマイシン,およびエリスロマイシンによる治療成功例も報告されている。病変部の培養で検出された他の病原体に対処するために,抗菌薬のレジメンを拡張してもよい。

高圧酸素療法の有用性を示唆する症例報告もある。

広範かつ複数回の外科的処置が必要になることがある。ときに,小さな膿瘍は穿刺吸引で対処でき,大きな膿瘍には排膿,瘻孔には外科的切除を行う。

要点

  • 放線菌症では通常,互いに交通のある複数の小さな膿瘍と,膿性分泌物を排出する瘻管が形成される。

  • 典型的には,頸部および顔面,肺,または腹部および骨盤内臓器が侵される。

  • 放線菌(Actinomyces)属細菌は,鏡検下では特徴的な「硫黄顆粒(sulfur granules)」(円形または球形,通常は黄色,直径1mm以下),または分岐状および分岐のない波状の細菌線維がもつ合った集塊として観察される。

  • 膿瘍を排膿するとともに,瘻孔を切除する。

  • 通常は高用量のペニシリンが効果的であるが,長期投与(8週間から1年)が必要である。

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