細菌は酸素に対する要求性と耐性によって以下のように分類することができる:
偏性嫌気性菌は,酸化還元電位が低い部位(例,血流の途絶えた壊死組織)で増殖する。このような細菌にとって,酸素は毒である。偏性嫌気性菌は,酸素に対する耐性によって以下のように分類される:
感染症をよく引き起こす偏性嫌気性菌は,大気中の酸素に対して最低でも8 時間,しばしば72時間まで耐えることができる。
偏性嫌気性菌は,粘膜(特に口腔,下部消化管,腟)の常在菌叢を構成する主要な要素であるが,それらの嫌気性菌は正常な粘膜障壁に破綻が生じると疾患を引き起こす。
グラム陰性嫌気性菌とそれらが引き起こす感染症としては,以下のものが挙げられる:
グラム陽性嫌気性菌とそれらが引き起こす感染症としては,以下のものが挙げられる:
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Actinomyces属:頭部,頸部,腹部,および骨盤内感染症ならびに誤嚥性肺炎(放線菌症)
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Clostridium属:C. perfringensによる腹腔内感染症(例,クロストリジウム壊死性腸炎),軟部組織感染症,およびガス壊疽;C. perfringens A型による食中毒;ボツリヌス菌(C. botulinum)によるボツリヌス症および乳児ボツリヌス症;破傷風菌(C. tetani)による破傷風;ならびにC.difficile関連下痢症(偽膜性大腸炎)
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Peptostreptococcus属:口腔,呼吸器,および腹腔内感染症
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Propionibacterium:属:異物感染症(例,髄液シャント,人工関節,心臓用器具)
嫌気性菌感染症は典型的には化膿性で,膿瘍形成と組織壊死を引き起こすほか,ときに敗血症性血栓性静脈炎,気腫,またはその両方の原因となることもある。多くの嫌気性菌は,組織を破壊する酵素や,既知のもので最も強力な麻痺性毒素を産生する。
通常,感染部位には複数の種の嫌気性菌が存在し,しばしば好気性菌も混在する(嫌気性菌混合感染症)。
嫌気性菌感染症の診断上の手がかりとしては以下のものがある: