2つのA型肝炎ワクチンは,どちらも A型肝炎 A型肝炎 A型肝炎は,糞口感染で伝播するRNAウイルスにより引き起こされる疾患であり,年長の小児と成人では,食欲不振,倦怠感,黄疸などウイルス性肝炎の典型的な症状を引き起こす。幼児では無症状の場合がある。先進国では劇症肝炎や死亡はまれである。慢性肝炎は起こらない。診断は抗体検査による。治療は支持療法である。予防接種と過去の感染が防御的に働く。 ( 肝炎の原因および 急性ウイルス性肝炎の概要も参照のこと。)... さらに読む に対する長期の防御効果をもたらす。
詳細については,Hepatitis A Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Hepatitis A Vaccinationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。
(予防接種の概要 予防接種の概要 免疫は以下の形で付与することができる: 抗原を用いる能動免疫(例,ワクチン,トキソイド) 抗体を用いる受動免疫(例,免疫グロブリン,抗毒素) トキソイドは,無害でありながらも抗体産生を刺激できるように修飾が加えられた細菌毒素である。 ワクチンは,病原性を示さないように作製された完全な細菌またはウイルス(生または不活化ワクチン)あるいは細菌... さらに読む も参照のこと。)
A型肝炎ワクチンの製剤
A型肝炎(HepA)ワクチンは,ホルマリンで不活化した細胞培養由来のA型肝炎ウイルスから調製される。2種類のA型肝炎ワクチン(HavrixおよびVaqta)が存在し,それぞれに小児用製剤と成人用製剤がある。
A型肝炎ワクチンとB型肝炎ワクチンを混合したワクチンも利用できる。
A型肝炎ワクチンの適応
HepAワクチンは,ルーチンの小児予防接種の1つである( Professional.see table 0~6歳を対象とする推奨予防接種スケジュール 0~6歳を対象とする推奨予防接種スケジュール )。
HepAワクチンは,以下のいずれかに該当する場合にも適応となる:
ワクチン未接種者がA型肝炎予防を望んでいる
流行地域への旅行または就労
職業曝露(例,研究施設でA型肝炎ウイルス[HAV]に感染した霊長類またはHAV自体を取り扱う業務に従事する)
男性間での性行為
メタンフェタミンなどの違法薬物の使用(注射またはそれ以外)
ホームレス状態
1歳以上の全ての個人におけるHIV感染症
慢性肝疾患(例,B型肝炎,C型肝炎,肝硬変,脂肪性肝疾患,アルコール性肝疾患,または自己免疫性肝炎を有するか,アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]値またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ[AST]値が正常上限の2倍を超える患者)
流行地域から養子として米国に迎えられた小児と入国後60日以内に密接な対人接触(例,家族または定期のベビーシッターとしての接種)が予想される
最近A型肝炎ウイルスに曝露した40歳以下の健康な成人,およびA型肝炎免疫グロブリンがない場合の40歳以上の成人
妊娠中にHAV感染のリスクがあると同定された妊婦(例,国際旅行者,違法薬物を使用している妊婦[注射またはそれ以外],職業曝露のリスクがある妊婦,国際養子との密接な対人接触が予想される妊婦,ホームレスの妊婦),およびHAV感染症が重症化するリスクがある妊婦(例,慢性肝疾患またはHIV感染症の妊婦)
A型肝炎のアウトブレイク時には,A型肝炎ウイルスの感染リスクがある1歳以上の個人にワクチンを接種すべきである。
HepAとHepBの混合ワクチンは,18歳以上でA型肝炎またはB型肝炎ワクチンいずれかの適応があり,かつ以前にこれらの成分を含有するワクチンの接種を受けたことがない個人に使用することができる。
A型肝炎ワクチンの禁忌および注意事項
HepAワクチンの主な禁忌は以下の通りである:
HepAワクチンの主な注意事項は以下の通りである:
発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の疾患が認められる(その疾患が消失するまで接種を延期する)
A型肝炎ワクチンの用量および用法
HepAワクチンの用量は18歳以下では0.5mLの筋肉内接種,成人(19歳以上)では1mLの筋肉内接種である。
小児には,典型的には計2回の接種を行い,1回目は生後12~23カ月に,2回目は1回目の6~18カ月後に接種する。
メーカーに応じて,成人には,0および6~12カ月時点(Havrix)または0および6~18カ月(Vaqta)時点で計2回の接種を行う。
あるいは,成人にはHepA・HepB混合ワクチンを計3回のスケジュール(0カ月,1カ月,6カ月)で接種することもできる。1回目と2回目の接種の間は4週間以上の間隔を空けるべきであり,2回目と3回目の間は5カ月以上の間隔を空けるべきである。もしくは,4回の加速接種スケジュール(0日目,7日目,21日目,30日目)も選択可能であり,その場合は1回目の12カ月後に追加接種を行う。
流行地域の小児を養子に迎える計画を立てた際には,濃厚接触者となる個人は速やかに(理想的には小児が到着する2週間前までに)HepAワクチンの2回接種の1回目を受けるべきである。
A型肝炎ワクチンの有害作用
重篤な有害作用は報告されていない。
軽度の副反応として,注射部位に疼痛,紅斑,腫脹,ときに硬結などがみられる。
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Hepatitis A ACIP Vaccine Recommendations
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Hepatitis A Vaccination: Information for Healthcare Providers