ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 ヒトパピローマウイルス(HPV)は疣贅を形成させる。皮膚に疣贅を形成させる型もあれば,性器に隆起した疣贅や扁平な疣贅(性器の皮膚または粘膜の病変)を形成させる型もある。特定の型のHPV感染はがんの発生につながることがある。外部疣贅の診断は,臨床的な外観に基づく。複数の治療法があるが,数週間から数カ月にわたって繰り返し行わない限り,非常に効果的な治療はほとんどない。性器疣贅は尖圭コンジローマとも呼ばれ,免疫能が正常な患者では無治療で消失す... さらに読む は最もよくみられる性感染症である。HPVはその型に応じて,皮膚疣贅, 尖圭コンジローマ ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症 ヒトパピローマウイルス(HPV)は疣贅を形成させる。皮膚に疣贅を形成させる型もあれば,性器に隆起した疣贅や扁平な疣贅(性器の皮膚または粘膜の病変)を形成させる型もある。特定の型のHPV感染はがんの発生につながることがある。外部疣贅の診断は,臨床的な外観に基づく。複数の治療法があるが,数週間から数カ月にわたって繰り返し行わない限り,非常に効果的な治療はほとんどない。性器疣贅は尖圭コンジローマとも呼ばれ,免疫能が正常な患者では無治療で消失す... さらに読む ,または特定のがんを引き起こす可能性がある。尖圭コンジローマやがんを引き起こすHPV株の多くに対して予防効果のあるワクチンが使用可能になっている。ただし,ワクチンに含まれていない型のHPVによって引き起こされる 子宮頸癌 子宮頸癌 子宮頸癌は,多くは扁平上皮癌であり,ヒトパピローマウイルス感染により引き起こされる;頻度は低いが腺癌であることもある。子宮頸部腫瘍は無症状である;早期子宮頸癌の最初の症状は通常,不正性器出血,しばしば性交後の性器出血である。診断は,頸部パパニコロウ検査および生検による。進行期診断は臨床所見のほか,利用可能であれば画像検査および病理検査の結果も踏まえて行う。治療は通常,早期疾患に対しては外科的切除,局所進行例には放射線療法に加え化学療法が... さらに読む もあるため,HPVワクチンを接種したからといって,パパニコロウ(Pap)検査によるスクリーニングを継続しなくてよいわけではない。
詳細については,Human Papillomavirus (HPV) Advisory Committee on Immunization Practices Vaccine RecommendationsおよびCenters for Disease Control and Prevention (CDC): Human Papillomavirus (HPV) Vaccination Informationを参照のこと。2022年版の成人向け予防接種スケジュールに加えられた変更の要約が,ここから入手可能である。
(予防接種の概要 予防接種の概要 免疫は以下の形で付与することができる: 抗原を用いる能動免疫(例,ワクチン,トキソイド) 抗体を用いる受動免疫(例,免疫グロブリン,抗毒素) トキソイドは,無害でありながらも抗体産生を刺激できるように修飾が加えられた細菌毒素である。 ワクチンは,病原性を示さないように作製された完全な細菌またはウイルス(生または不活化ワクチン)あるいは細菌... さらに読む も参照のこと。)
HPVワクチンの製剤
以下の3つのワクチンにHPVに対する予防効果が認められている:
6型および11型(尖圭コンジローマの90%以上の原因),16型および18型(子宮頸癌の約70%および肛門癌の約90%の原因),ならびに31型,33型,45型,52型,および58型(全体で子宮頸癌の10~20%の原因[ 1 製剤に関する参考文献 ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症は最もよくみられる性感染症である。HPVはその型に応じて,皮膚疣贅, 尖圭コンジローマ,または特定のがんを引き起こす可能性がある。尖圭コンジローマやがんを引き起こすHPV株の多くに対して予防効果のあるワクチンが使用可能になっている。ただし,ワクチンに含まれていない型のHPVによって引き起こされる 子宮頸癌もあるため,HPVワクチンを接種したからといって,パパニコロウ(Pap)検査によるスクリーニング... さらに読む ])HPVの感染を予防する9価ワクチン
6型,11型,16型,および18型の感染を予防する4価ワクチン(HPV4)
16型および18型の感染を予防する2価ワクチン(HPV2)
米国では現在9価ワクチンのみが使用可能である。
HPVワクチンは,組換えDNA技術を利用してHPVの主要カプシドタンパク質(L1)から調製される。L1タンパク質は,自然に会合して,感染性も発がん性もないウイルス様粒子(VLP)を形成する。
製剤に関する参考文献
1.National Cancer Institute: Human papillomavirus (HPV) vaccines.2019.
HPVワクチンの適応
HPVワクチンは,ルーチンの小児予防接種の1つである( Professional.see table 7~18歳を対象とする推奨予防接種スケジュール 7~18歳を対象とする推奨予防接種スケジュール )。米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)が承認していた9価ワクチンの適応が最近になって拡大され,HPVに関連する特定の悪性腫瘍および疾患の予防として27~45歳の成人が対象に含められた。Advisory Committee on Immunization Practicesによる最新の勧告は以下の通りである:
26歳以下の男女:HPVワクチンは11歳または12歳(9歳から開始可能)での接種が望ましいが,ワクチン接種を受けたことがない,または所定の接種回数を完了していない26歳までの患者に推奨される。
27~45歳の成人:接種すべきかどうかについて医師と患者が話し合い,共同で意思決定を行うべきである。
あるいは(米国外で検討する場合)以下を使用することができる:
女性に対してHPV4またはHPV2
男性(男性と性交する男性を含む)に対してHPV4
HPVワクチンの禁忌および注意事項
HPVワクチンの禁忌としては以下のものがある:
妊娠
HPVワクチンは妊婦には推奨されないが,接種前の妊娠検査は不要である。一連の接種を開始した後に妊娠が診断された場合は,特に介入は不要であるが,残りの接種は妊娠が終わるまで延期すべきである。
HPVワクチンの主な注意事項は以下の通りである:
発熱の有無にかかわらず,中等度または重度の急性疾患が認められる(その疾患が軽快するまで接種を延期する)
HPVワクチンの用量および用法
HPVワクチンの用量は0.5mLの筋肉内接種であり,HPVワクチンの初回接種年齢に応じて,計3回または計2回のスケジュールで接種する。
初回接種が9~14歳:0および6~12カ月時点で計2回。最短接種間隔は5カ月である。2回目を早く接種しすぎた(5カ月未満)場合は,無効となった接種の12週間後以降かつ初回接種の5カ月後以降に再度接種すべきである。
初回接種が15歳以降:0,1~2,および6カ月時点で計3回。最短接種間隔は初回と2回目の間が4週間,2回目と3回目の間が12週間,初回と3回目の間が5カ月である。2回目または3回目の接種が早すぎた場合は,再度接種すべきである。
27~45歳の一部の成人:話し合いによる共同での臨床的意思決定に基づき,この年齢層の成人には,上述のように計2回または計3回の接種を行ってもよい。
HIV感染症などの易感染状態にある個人:易感染者には,初回接種年齢にかかわらず,上述のように計3回の接種を行う。
HPVワクチンの有害作用
重篤な有害作用は報告されていない。
軽度の副反応として,注射部位の疼痛,発赤,腫脹,および圧痛などがある。
より詳細な情報
以下の英語の資料が有用かもしれない。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): Human Papillomavirus (HPV) ACIP Vaccine Recommendations
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Human Papillomavirus (HPV) Vaccination Information for Clinicians