インフルエンザワクチンは毎年,世界保健機関および米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の勧告に基づき,最も流行しているウイルス株(通常はインフルエンザA型の2株とインフルエンザB型の1~2株)が含まれるように変更されている。ときに,北半球と南半球で若干異なるワクチンが使用されることもある。
(予防接種の概要も参照のこと。)
インフルエンザワクチンの製剤
インフルエンザウイルスワクチンは基本的に以下の3種類に分類される:
不活化インフルエンザワクチン(IIV)
弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)
組換えインフルエンザワクチン(RIV)
略号の後ろに続く数字は価数(そのワクチンで対象とされているインフルエンザウイルスヘマグルチニン抗原の数)を示している。
2024~2025年シーズン用としては3価ワクチンが推奨されている(1)。3価組換えインフルエンザワクチン(RIV3)と細胞培養由来のワクチン(ccIIV3)には鶏卵タンパク質が含まれていない。ほかに使用可能な不活化および鶏卵ベースのインフルエンザワクチンとして,高用量ワクチン(HD-IIV3)とアジュバント添加ワクチン(aIIV3)がある。
前シーズンには,今シーズンはないB型ウイルス株をカバーした4価ワクチンが推奨されていたが,この株はもはや循環していないとみなされている。
65歳以上の患者には高用量ワクチンが使用できる。(CDC: Different Types of Flu Vaccinesも参照のこと。)
製剤に関する参考文献
1.Grohskopf LA, Ferdinands JM, Blanton LH, Broder KR, Loehr J.Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices - United States, 2024-25 Influenza Season. MMWR Recomm Rep.2024;73(5):1-25.Published 2024 Aug 29.doi:10.15585/mmwr.rr7305a1
インフルエンザワクチンの適応
禁忌のない生後6カ月以上の全ての個人には,年齢に応じたインフルエンザワクチン製剤による年1回のインフルエンザ予防接種が推奨される(1, 2)。
不活化インフルエンザワクチン(IIV3)は,生後6カ月以上の(妊婦を含む)全ての個人に接種することができる。
組換えインフルエンザワクチン(RIV3)は,18~49歳の個人に使用できる。
弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)(経鼻インフルエンザワクチン)は,妊婦を除き,易感染状態にない2~49歳の健常者に接種することができる。LAIV3の安全性は,進行した肺疾患や喘息など,インフルエンザによる合併症発生の素因となる疾患がある集団では確立されていない。
細胞培養不活化インフルエンザワクチン(ccIIV3)は,生後6カ月以上の個人に使用可能である。
高用量不活化インフルエンザワクチン(HD-IIV3)は,65歳以上の個人に使用可能である。
アジュバント添加不活化インフルエンザワクチン(aIIV3)も,65歳以上の個人に使用可能である。
65歳以上の成人は,いずれかの高用量ワクチンの接種を受けるべきである。いずれも入手できない場合は,年齢に応じた他のインフルエンザワクチンを使用すべきである。高用量接種は65歳以上の成人にのみ推奨される。
易感染者(感染防御下でのケアを必要とする患者)の診療に携わる医療従事者は,LAIV3ではなくIIV3またはRIV3の接種を受けるべきである(あるいは,ワクチン接種後は7日間にわたり易感染者との接触を避けるべきである)。
適応に関する参考文献
インフルエンザワクチンの禁忌および注意事項
IIV3の主な禁忌は以下の通りである:
過去のIIV3の接種後またはワクチン成分に対する重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)の既往
IIV3に関する注意事項としては以下のものがある:
発熱の有無を問わず,中等症または重症の急性疾患(軽快するまで接種を延期する)
インフルエンザワクチンの接種後6週間以内に発症したギラン-バレー症候群(GBS)の既往
ccIIV3のみ:他のインフルエンザワクチン(鶏卵ベースのIIV,RIV,またはLAIV)に対する重度のアレルギー反応の既往
LAIV3の禁忌としては以下のものがある:
ワクチン成分または過去のインフルエンザワクチンに対する重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)の既往
易感染状態(例,HIV感染症などの疾患や免疫抑制薬の使用によるもの)
小児および青年では,アスピリンまたはその他のサリチル酸系薬剤の併用
保護環境下での管理を要する重度の易感染性患者と濃厚接触する者,そのような患者のケアを行う者(LAIV接種後7日間接触を回避できる場合を除く)
妊娠
機能的または解剖学的無脾症
48時間以内にインフルエンザに対する抗ウイルス薬を服用した人
髄液漏または人工内耳
2歳未満または50歳以上
喘息があるか,12カ月以内に呼気性喘鳴または喘息エピソードがみられた2~4歳の小児
LAIV3に関する注意事項としては以下のものがある:
慢性肺,心疾患,腎疾患,肝疾患,血液疾患(例,異常ヘモグロビン症),代謝性疾患(例,真性糖尿病)などの特定の慢性疾患
5歳以上の患者の喘息
発熱の有無を問わず,中等症または重症の急性疾患(軽快するまで接種を延期する)
インフルエンザワクチンの接種後6週間以内に発症したギラン-バレー症候群の既往
特定の抗ウイルス薬を使用している:例えば,アマンタジン,リマンタジン(rimantadine),ザナミビル,オセルタミビル(これらの薬剤は接種の48時間前から中止し,接種後14日間は再開しない)
RIV3の主な禁忌は以下の通りである:
過去のRIV4接種後に発生した重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)の既往
RIV3に関する注意事項としては以下のものがある:
発熱の有無を問わず,中等症または重症の急性疾患(軽快するまで接種を延期する)
インフルエンザワクチンの接種後6週間以内に発症したギラン-バレー症候群の既往
鶏卵アレルギーが疑われる患者に対する注意事項:鶏卵に対する重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)の既往は鶏卵を使用したIIVおよびLAIVの禁忌と表示されているが,ACIPは,鶏卵アレルギーの既往がある個人にも年齢および健康状態に応じて適切な認可済みインフルエンザワクチンを接種できるとの方針を推奨している。蕁麻疹以外の反応(例,血管性浮腫,呼吸窮迫,ふらつき,反復性嘔吐)がみられた患者とアドレナリンを必要とした患者は,細胞培養ワクチンまたは組換えワクチンを使用する場合を除き,重度のアレルギー反応を管理できる医療専門職が監督する医療環境下で接種を受けるべきである(1)。
禁忌および注意事項に関する参考文献
1.Grohskopf LA, Ferdinands JM, Blanton LH, Broder KR, Loehr J.Prevention and Control of Seasonal Influenza with Vaccines: Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices - United States, 2024-25 Influenza Season. MMWR Recomm Rep.2024;73(5):1-25.Published 2024 Aug 29.doi:10.15585/mmwr.rr7305a1
インフルエンザワクチンの用量および用法
インフルエンザワクチンは年1回接種する。
IIV3は次のように接種する:
生後6~35カ月の小児では,0.25mLまたは0.50mLを筋肉内接種(depending on vaccine)
3歳以上では,0.5mLを筋肉内接種
18~64歳では,0.1mLを皮内接種
6カ月から8歳までの小児でインフルエンザワクチンの接種回数が2回未満の場合,またはインフルエンザワクチン接種歴が不明である場合,4週間以上空けて2回の接種を行うべきである。
供給不足の際には,ワクチンを節約するため,より少量で皮内接種することができる。
LAIV3は,左右の鼻孔に0.1mLずつ噴霧する(計0.2mL)。
RIV3,ccIIV3,HD-IIV3,およびaIIV3,は,0.5mLを筋肉内接種する。
インフルエンザワクチンの有害作用
IIV3およびRIV3の有害作用は,通常は注射部位の軽度の疼痛にとどまるが,注射部位の紅斑,疼痛,および腫脹が生じることもある(CDC: Clinical Guidance for Seasonal Influenza Vaccine Safetyも参照)。発熱,筋肉痛,その他の全身作用は比較的まれであるが,ワクチン接種を受けた人がワクチンのためにインフルエンザが発生したと誤解することがある。そのような反応は将来のワクチン接種の禁忌とはならず,予防接種を奨励すべきである。
複数回使用バイアルの製剤には,水銀系防腐剤のチメロサールが含まれている。チメロサールと自閉症の関連を疑った社会的懸念には根拠がないということが証明されているが,チメロサールを含有しない単回使用バイアルの製剤が使用可能になっている。
LAIV3の有害作用は軽度であり,具体的には鼻漏や軽度の喘鳴などがある。
これらのワクチンの有害作用に関する詳細については,処方情報を参照のこと。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP): ACIP Recommendations: Influenza (Flu) Vaccine
ACIP: Changes in the 2025 Child and Adolescent Immunization Schedule
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Influenza (Flu)
European Centre for Disease Prevention and Control (ECDC): Influenza: Recommended vaccinations



