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エーリキア症およびアナプラズマ症

執筆者:

William A. Petri, Jr

, MD, PhD, University of Virginia School of Medicine

レビュー/改訂 2020年 7月
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エーリキア症およびアナプラズマ症はリケッチア様細菌によって引き起こされる。エーリキア症は主にEhrlichia属細菌によって,アナプラズマ症はAnaplasma phagocytophilumによって引き起こされる。どちらもダニがヒトへの伝播を媒介する。症状は,発疹がはるかに少ないという点を除き,ロッキー山紅斑熱のものと類似する。発症は突然で,発熱,悪寒,頭痛,および倦怠感がみられる。

エーリキア症およびアナプラズマ症は,リケッチア感染症の関連疾患である。

E. chaffeensisはヒト単球エーリキア症を引き起こす。単球エーリキア症症例の大半は,媒介する節足動物(ローンスターダニ)が蔓延する米国の南東部および中南部で同定されている。(Centers for Disease Control and Prevention: Ehrlichiosis–epidemiology and statisticsを参照のこと。)

Anaplasma phagocytophilum(以前はE. phagocytophila)は,ヒト顆粒球アナプラズマ症を引き起こすが,この疾患はその媒介節足動物(マダニ)が固有種である米国北東部,中部大西洋沿岸,中西部の北部,および西海岸で発生する。 ライム病 ライム病 ライム病は,スピロヘータの一種であるBorrelia属細菌によって引き起こされるダニ媒介性感染症である。初期症状に遊走性紅斑があり,数週間から数カ月後には神経,心臓,または関節の異常が続発することがある。病初期では主に臨床所見から診断するが,疾患後期に発生する心臓合併症,神経系合併症,およびリウマチ性合併症の診断には血清学的検査が役立つ可能性がある。治療はドキシサイクリンやセフトリアキソンなどの抗菌薬による。... さらに読む ライム病 バベシア症 バベシア症 バベシア症は,バベシア(Babesia属の原虫)による感染症である。バベシア症は無症状の場合もあれば,発熱および溶血性貧血を伴うマラリア様症状を引き起こす場合もある。無脾患者,高齢患者,およびAIDS患者において最も重症化する。診断は血液塗抹検査,血清学的検査,またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査でのバベシア(Babesia)の同定による。治療(必要な場合)は,アジスロマイシンとアトバコンの併用,またはキ... さらに読む バベシア症 ,および ポワッサンウイルス ポワッサンウイルス アルボウイルス(節足動物媒介ウイルス)という名称は,特定の吸血性節足動物,主に昆虫(ハエおよび蚊)とクモ形網動物(マダニ)を媒介生物としてヒトおよび/または他の脊椎動物に伝播する全てのウイルスに適用される。 チクングニア熱では,急性熱性疾患に続いて,数カ月または数年続く可能性のある比較的慢性の多関節炎が生じる。死に至ることは極めてまれである。 チクングニア熱は,ヤブカ(Aedes属の蚊)により伝播し,アフリカ,インド,パキ... さらに読む は,同じマダニを媒介動物とし,流行地域も一致しているため,ときに複数の微生物に感染したダニに咬まれた患者が同時感染を起こすことがある。無症候性または急性感染ドナーからの輸血後にアナプラズマ症を発症した症例が数例報告されている。(Centers for Disease Control and Prevention: Anaplasmosis–epidemiology and statisticsを参照のこと。)

パール&ピットフォール

  • ライム病とバベシア症は,アナプラズマ症と同じダニに媒介され,流行地域も共通しているため,ダニ(およびそのダニに咬まれた人)が複数の微生物に感染することがある。

主要な標的細胞の相違(エーリキア症における単球とアナプラズマ症における顆粒球)は,臨床像ではわずかな差しかもたらさない。

エーリキア症およびアナプラズマ症の症状と徴候

エーリキア症とアナプラズマ症の臨床的特徴は類似している。感染後も無症状で経過する例もあるが,ほとんどの感染例では,発熱,悪寒,筋肉痛,脱力,悪心,嘔吐,咳嗽,頭痛,倦怠感などの非特異的症状を伴うインフルエンザ様疾患が,通常はダニ咬傷のおよそ12日後から突然発症する。

アナプラズマ症では発疹はまれである。E. chaffeensisに感染した患者の一部では,体幹や四肢に斑状丘疹状または点状出血性の皮疹が出現する。

エーリキア症およびアナプラズマ症では,播種性血管内凝固症候群,多臓器不全,痙攣発作,および昏睡を来すことがある。

免疫抑制薬(例,コルチコステロイド,がん化学療法,臓器移植後の長期免疫抑制療法),HIV感染症,または脾臓摘出が原因で免疫が低下した患者では,いずれの感染症もより重症化して死亡率が高くなるようである。

エーリキア症およびアナプラズマ症の診断

  • 血液検体のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査

エーリキア症およびアナプラズマ症の診断用に血清学的検査が利用できるが,血液検体のPCR検査では,感度と特異度がともに高いことに加え,抗体価を連続的に比較する必要がある血清学的検査と比べて,より迅速な診断が可能である。単球中(エーリキア症)または好中球中(アナプラズマ症)に細胞内封入体が検出されることがあるが,細胞内封入体が検出される頻度はアナプラズマ症の方が高い。

血液および肝機能検査では,白血球減少,血小板減少,アミノトランスフェラーゼ高値などの血液学的異常や肝機能異常が検出されることがある。

エーリキア症およびアナプラズマ症の治療

  • ドキシサイクリン

エーリキア症およびアナプラズマ症の治療は,検査結果の報告を受ける前に開始するのが最善である。早期に治療を開始すれば,一般に確実かつ良好な反応が得られる。治療が遅れると,ウイルスおよび真菌の重複感染や死亡(2~5%)など,重篤な合併症を来すことがある。

初期治療としては,成人ではドキシサイクリン200mgを経口で単回投与した後,状態が改善して解熱した状態が24~48時間持続するまで(ただし最低でも7日以上),100mgの1日2回投与を継続する。クロラムフェニコールは効果的ではない。

一部の患者では,十分な治療を行っても,頭痛,脱力,および倦怠感が何週間も持続する。

エーリキア症およびアナプラズマ症の予防

エーリキア症またはアナプラズマ症の予防に利用可能なワクチンはない。ダニ刺咬の予防策を講じることが可能である。(Centers for Disease Control and Prevention: Preventing tick bitesも参照のこと。)

シカダニおよびイヌダニの大きさの比較

シカダニ

ダニを皮膚に到達させない対策:

  • 遊歩道や小道から外れない

  • ズボンの裾をブーツまたは靴下の中に入れる

  • 長袖のシャツを着用する

  • ジエチルトルアミド(DEET)を含有する防虫剤を皮膚に塗布する

毒性反応が報告されているため,非常に年少の小児に対するDEETの使用には注意が必要である。衣服へのペルメトリンの散布はダニを効果的に死滅させる。流行地域では,ダニが付着していないか頻繁に調べることが必須である(特に有毛部と小児)。

吸血して膨張したダニは注意深く除去すべきであり,病原体の伝播につながる恐れがあるため,指でつぶしてはならない。ダニの体部をつまんだり,強い力をかけたりしてはならない。小さなピンセットで頭部を徐々に引っ張れば,ダニを除去することができる。ダニが付着していた部位はアルコールで清拭する。ワセリン,火を付けたマッチ,その他の刺激物はダニを除去する方法としては無効であり,使用してはならない。

ダニを根絶できる実用的な方法はないが,流行地域では小動物の個体数を制御することでダニの個体数を低減できる可能性がある。

エーリキア症およびアナプラズマ症の要点

エーリキア症およびアナプラズマ症についてのより詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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