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アシネトバクター( Acinetobacter )感染症

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2016年 9月
本ページのリソース

Acinetobacter属細菌は,あらゆる器官系で化膿性感染症を引き起こす可能性があり,入院患者ではしばしば日和見感染菌となる。

ナイセリア科細菌に関する序論も参照のこと。)

Acinetobacter属は,ナイセリア科に属するグラム陰性好気性桿菌である。これらの菌は遍在性で,乾燥した表面でも最長1カ月にわたり生存することができ,また一般的に医療従事者の皮膚に保菌されているため,患者への定着や医療器具の汚染を起こしやすくなっている。Acinetobacter属には多くの菌種があり,いずれもヒト疾患を引き起こすが,A. baumannii(AB)による感染症が全体の約80%を占める。

Acinetobacter 属細菌による疾患

Acinetobacter属細菌による疾患で最も頻度の高い臨床像は以下の通りである:

  • 呼吸器感染症

AB感染症は典型的には重症(critically ill)の入院患者で発生する。熱帯地域では市中感染がより多くみられる。AB感染症に関連する概算死亡率は19~54%である。

最も頻度の高い感染部位は呼吸器系である。

Acinetobacter属細菌は気管切開部に容易に定着するほか,健康な小児では市中感染による細気管支炎および気管気管支炎を,易感染状態の成人では気管気管支炎を引き起こすことがある。院内感染によるアシネトバクター(Acinetobacter)肺炎は,しばしば多葉性で合併症を伴う。二次性菌血症および敗血症性ショックは予後不良因子である。

Acinetobacter属細菌は,肺,尿路,皮膚,軟部組織を含めたあらゆる器官系で化膿性感染症(例,膿瘍)を引き起こす可能性があり,菌血症を呈することもある。

まれに,これらの菌が髄膜炎(主に脳神経外科手術後),静脈カテーテル留置患者における蜂窩織炎または静脈炎,眼感染症,自然弁または人工弁の心内膜炎,骨髄炎,化膿性関節炎,膵および肝膿瘍を引き起こすこともある。

挿管患者から採取した気道分泌物や開放創から採取した検体など,臨床検体からの分離菌については,定着菌である場合も多いため,分離の意義を判断するのは困難である。

危険因子

Acinetobacter感染の危険因子は感染の種類(院内感染,市中感染,多剤耐性菌感染— アシネトバクター( Acinetobacter )感染症の危険因子)によって異なる。

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アシネトバクター( Acinetobacter )感染症の危険因子

感染症の種類

危険因子

院内感染

Acinetobacter属細菌の便への定着

ICUでの滞在

器具の留置

入院期間

機械的人工換気

静脈栄養

感染の既往

手術

広域抗菌薬による治療

創傷

市中感染

アルコール依存症

喫煙

慢性肺疾患

糖尿病

熱帯の発展途上国での居住

多剤耐性

菌が定着または感染している患者への曝露

侵襲的処置

機械的人工換気,特に長期に及ぶ場合

長期入院(特にICU)

血液製剤の投与

広域抗菌薬(例,第3世代セファロスポリン系,カルバペネム系,フルオロキノロン系)の使用

薬剤耐性

最近になって多剤耐性(MDR)ABが出現しており,特にICUの免疫抑制患者,重篤な基礎疾患のある患者,および侵襲的処置の後に広域抗菌薬による治療を受けた患者でよくみられる。ICUでの感染拡大の原因としては,医療従事者への菌の定着,共用器具の汚染,および静脈栄養液の汚染が特定されている。

治療

  • 重篤例に対する典型的な経験的多剤併用療法

異物(例,静脈カテーテル,縫合糸)に関連した限局性の蜂窩織炎または静脈炎を起こした患者では,異物を除去して局所的な処置を施すだけで通常は十分である。気管挿管後の気管気管支炎は,肺洗浄のみで解消できることがある。より広範な感染が生じた患者には,抗菌薬投与や必要に応じてデブリドマンによる治療を行うべきである。

ABは以前から多くの抗菌薬に対して内因性の耐性を有していた。MDR-ABとは,3クラス以上の抗菌薬に対して耐性を示す菌株と定義されるが,全てのクラスに耐性を示す分離株もある。感受性試験の結果が得られるまでに使用できる最初の選択肢としては,カルバペネム系薬剤(例,メロペネム,イミペネム,ドリペネム),コリスチン,またはフルオロキノロン系薬剤とアミノグリコシド系薬剤,リファンピシン,またはその両方との併用などがある。スルバクタム(β-ラクタマーゼ阻害薬)は,多くのMDR-AB株に対して内因性の殺菌活性を示す。グリシルサイクリン系抗菌薬のチゲサイクリンも効果的であるが,境界域の活性しか得られなかった例や治療中に耐性が発現した例が報告されている。ミノサイクリンはin vitroの活性を有する。

軽度から中等度の感染症では,単剤療法で反応が得られることがある。外傷性の創傷感染症はミノサイクリンで治療できる。重篤な感染症は併用療法(典型的には,イミペネム,またはアンピシリン/スルバクタム + アミノグリコシド系薬剤)で治療する。

感染拡大を防止するため,医療従事者は接触感染予防策(手洗い,バリア法)および人工呼吸器の適切な保守,ならびにMDR-ABが定着または感染した患者の洗浄を行うべきである。

要点

  • A. baumannii(AB)による感染症は全体の約80%を占め,重症(critically ill)の入院患者で発生しやすい傾向がある。

  • 最も頻度の高い感染部位は呼吸器系であるが,Acinetobacter属細菌は,あらゆる器官系で化膿性感染症も引き起こす可能性がある。

  • 多剤耐性ABが問題となっており,その治療には感受性試験の結果に基づいて選択した複数の薬剤を使用する。

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