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回帰熱

(ダニ熱,recurrent fever,またはfamine fever)

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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回帰熱は,数種のボレリア(Borrelia)(スピロヘータの一種)を原因菌とし,シラミまたはダニによって媒介される反復性の発熱性疾患である。症状は頭痛,筋肉痛,嘔吐を伴う発熱が3~5日間続き,回復したように見える期間を挟んで同様の発熱を繰り返す。診断は臨床的に行い,血液塗抹標本の染色により確定する。治療はテトラサイクリン系薬剤またはエリスロマイシンによる。

スピロヘータ科の細菌は菌体のらせん状形態によって分類される。いずれもルーチンの顕微鏡検査では小さすぎて観察できないが,暗視野顕微鏡下での鏡検により観察可能となる。Treponema属,Leptospira属,およびBorrelia属の3つの属がある。

媒介昆虫は,地域によりヒメダニ(Ornithodoros)属の軟ダニの場合とヒトコロモジラミの場合がある。

シラミ媒介性回帰熱は米国ではまれである;流行地はアフリカ北東部(エチオピア,スーダン,エリトリア,ソマリア)に限られ,近年これらのアフリカ諸国から欧州に来た難民で診断されている。シラミ媒介性回帰熱は大流行を起こす傾向があり,特に戦争の影響を受ける地域や難民キャンプでよくみられる。シラミは発熱期の患者を吸血することにより感染する;ヒトが唯一の病原体保有生物である。シラミが新たな宿主の皮膚上で押し潰されると,ボレリア(Borrelia)が放出され,皮膚の擦過傷または咬傷部から体内に侵入する。無傷のシラミは感染を伝播しない。

ダニ媒介性回帰熱は,アメリカ,アフリカ,アジア,および欧州で流行している。米国では,本疾患の発生は一般に西部諸州に限られており,5月から9月で発生率が最も高い。ダニは病原体保有生物である齧歯類からスピロヘータに感染する。ヒトへの感染は,ダニに咬まれた際にダニの唾液中または排泄物中のスピロヘータが皮膚から速やかに侵入することにより成立する。齧歯類が多数生息する山小屋で就寝する人では,感染の可能性が高くなる。

先天性のボレリア(Borrelia)感染症も報告されている。

治療を行った場合の致命率は一般に5%未満であるが,乳幼児,妊婦,高齢者,栄養不良者,衰弱患者や,シラミ媒介性の発熱性疾患の流行中にはかなり高くなる。

症状と徴候

媒介ダニは夜間に短時間で痛みなく吸血し,長時間付着したままでいることもないので,ほとんどの患者はダニ刺咬を報告しないが,洞窟や素朴な造りの住居で一夜を過ごしたなどと報告することがある。

シラミの寄生がある場合には,通常は明らかに認められる。

潜伏期間は3~11日である(中央値は6日)。

ダニ媒介性回帰熱とシラミ媒介性回帰熱の臨床像は非常に良く似ている。症状は菌血症の程度に比例し,数日後,Borreliaが血中からいなくなると症状も消失する。そして1週間の無熱期の後,菌血症および症状が再発する。再発する毎に,症状は弱まっていく。一回の再発はシラミ媒介性回帰熱の特徴であり,ダニ媒介性回帰熱では最大10回の再発がみられる。

突然の悪寒が発症の特徴であり,続いて高熱,頻脈,重度の頭痛,悪心,嘔吐,筋肉痛,関節痛のほか,しばしばせん妄がみられる。ダニの刺咬部位に痂皮がみられることがある。紅斑性の斑状発疹ないし紫斑状発疹が早期に体幹および四肢に出現することがある。結膜,皮下,または粘膜下に出血を認めることもある。高熱は3~5日間続いた後に突然治まるが,これが本疾患の転換期である。罹病期間は1~54日である(中央値は18日)。数週間にわたる経過の後期には,黄疸,肝腫大,脾腫,心筋炎,および心不全を来すことがある(特にシラミ媒介性感染症の場合)。

その他の症状としては,眼炎,虹彩毛様体炎,喘息の増悪,多形紅斑など生じうる。神経系の合併症(例,髄膜炎,髄膜脳炎,神経根炎)が発生することがある;これらの症状はダニ媒介性回帰熱により多くみられる。自然流産が起こりうる。

通常,最初の発熱の終息から1回目の再発までの数日から1週間以上の期間は無症状で経過する。再発にはボレリアの周期的な増殖が関連しており,発熱やしばしば関節痛のほか,それまでにみられた全ての症状および徴候が突然再発する。再発中は黄疸がより多くみられる。症状は以前と同様にみられなくなるが,1~2週間の間隔を置いて同様の再発が2~10回繰り返される。再発は次第に軽度となっていき,免疫が獲得されて最終的には回復に至る。

診断

  • 暗視野顕微鏡下鏡検

回帰熱の診断は繰り返す発熱により示唆され,発熱期血液中でのスピロヘータの検出により確定する。スピロヘータは,暗視野顕微鏡下の鏡検またはライトもしくはギムザ染色した濃厚および薄層血液塗抹標本上で観察できる。(血液または組織検査用のアクリジンオレンジ染色は,ライトまたはギムザ染色よりも高感度である)。血清学的検査は信頼できない。軽度の多形核白血球増多が起こりうる。梅毒およびライム病の血清学的検査で偽陽性となることがある。

鑑別診断としては,ライム関節炎,マラリア,デング熱,黄熱,レプトスピラ症,発疹チフス,インフルエンザ,enteric feverなどがある。

治療

  • テトラサイクリン,ドキシサイクリン,またはエリスロマイシン

ダニ媒介性の回帰熱には,テトラサイクリンまたはエリスロマイシンを500mg,経口,6時間毎で5~10日間投与する。シラミ媒介性回帰熱には,どちらかの薬剤500mgの経口単回投与が効果的である。ドキシサイクリン100mg,経口,12時間毎,5~10日間も効果的である。8歳未満の小児には,エリスロマイシンエストレートを10mg/kg,経口,1日3回で投与する。

嘔吐や重症疾患のために経口投与が困難な場合と中枢神経系が侵されている場合は,成人にはセフトリアキソン注射剤を2g/日,10~14日間で,また8歳以上の小児にはドキシサイクリンを1~2mg/kg,静注,12~24時間毎で投与してもよい。8歳未満の小児にはベンジルペニシリンを25,000単位/kg,静注,6時間毎で投与する。

治療は発熱期の早期に開始すべきである。治療開始2時間以内にヤーリッシュ-ヘルクスハイマー反応が発生することがある。ドキシサイクリンまたはエリスロマイシン初回投与の2時間前と2時間後にアセトアミノフェン650mgを経口投与することにより,ヤーリッシュ-ヘルクスハイマー反応の重症度を軽減することができる。

脱水および電解質平衡異常は輸液により是正すべきである。重度の頭痛には,アセトアミノフェンをオキシコドンまたはヒドロコドンと併用してもよい。悪心および嘔吐は,プロクロルペラジン5~10mg,経口または筋注,1日1回~1日4回で治療すべきである。心不全が起きた場合は,特異的な治療法の適応となる。

要点

  • 回帰熱は数種のBorrelia属細菌によって引き起こされ,シラミまたはダニによって伝播する。

  • 発症は突然で,悪寒,高熱,重度の頭痛,悪心,嘔吐,筋肉痛,関節痛のほか,しばしばせん妄や体幹および四肢の発疹がみられる;続いて黄疸,肝腫大,脾腫,心筋炎,心不全が生じることがあり,特にシラミ媒介性感染症でよくみられる。

  • 未治療の患者では,1~2週間の間隔を挟んで2~10回にわたり再発がみられるが,発熱やしばしば関節痛のほか,それまでにみられた全ての症状および徴候が突然再発する(ただし,程度はより軽くなることがある)。

  • 暗視野顕微鏡下の鏡検またはライトもしくはギムザ染色した濃厚および薄層血液塗抹標本により診断する;血清学的検査は信頼できない。

  • 治療はテトラサイクリン,ドキシサイクリン,またはエリスロマイシンによる。

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