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ブルセラ症

(波状熱,マルタ熱,地中海熱,またはジブラルタル熱)

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University;


Maria T. Perez

, MD, Wellington Regional Medical Center, West Palm Beach

最終査読/改訂年月 2016年 5月

ブルセラ症はBrucella属細菌により引き起こされる。症状は急性熱性疾患として始まり,局所的な徴候はほとんどまたは全くみられず,進行して慢性化すると発熱,脱力,発汗,および漠然とした疼きや痛みの再発を繰り返すようになる。診断は培養(通常は血液培養)による。至適な治療には通常は2剤の抗菌薬(ドキシサイクリンまたはトリメトプリム/スルファメトキサゾールとゲンタマイシン,ストレプトマイシン,またはリファンピシン)が必要である。

ヒトブルセラ症の原因菌は,B. abortus(ウシ由来),B. melitensis(ヒツジおよびヤギ由来),およびB. suis(ブタ由来)である。B. canis(イヌ由来)も散発性に感染を起こしている。一般に,B. melitensisおよびB. suisは他のBrucella属細菌よりも病原性が高い。

最も頻度の高い感染源は家畜および生の乳製品である。シカ,バイソン,ウマ,ヘラジカ,カリブー,ノウサギ,ニワトリ,およびデザートラットも感染することがあり,これらの動物からヒトへの感染も起こりうる。

ブルセラ症は以下を介して感染が生じる:

  • 感染動物の分泌物および排泄物との直接接触

  • 生きた微生物が含まれる加熱調理不十分な肉,生乳,または乳製品の摂取

  • エアロゾル化された感染性物質の吸入

  • まれに人から人への伝播

農村地域で最も有病率が高いが,ブルセラ症は精肉処理従事者,獣医師,猟師,農業従事者,家畜生産者,および微生物検査技師の職業病である。ブルセラ症は米国,欧州,カナダではまれであるが,中東,地中海地方,メキシコ,および中米では一定数の症例が発生している。

エアロゾルへの曝露を介してごく少量の菌(おそらく10~100個程度)でも感染を起こすため,Brucella属細菌はバイオテロの手段となりうる。

合併症のない急性ブルセラ症患者は,無治療でも通常2~3週間で回復する。一部は進行して亜急性,間欠性,または慢性の病態を呈する。

合併症

ブルセラ症の合併症はまれであるが,亜急性細菌性心内膜炎,髄膜炎,脳炎,神経炎,精巣炎,胆嚢炎,肝膿瘍,骨髄炎(特に仙腸骨または脊椎骨)などがある。

症状と徴候

ブルセラ症の潜伏期間は5日から数カ月と幅が広いが,平均は2週間である。発症は突然のことがあり,悪寒および発熱,重度の頭痛,関節痛,腰痛,倦怠感や,ときに下痢を呈する。あるいは,潜行性に発症することもあり,前駆症状として軽度の倦怠感,筋肉痛,頭痛,後頸部痛が出現した後,夕刻の体温上昇がみられる。進行すると体温は40~41℃まで上昇し,多量の発汗とともに徐々に低下していき,朝には正常ないしほぼ正常まで解熱する。

典型的には,間欠熱が1~5週間続いた後,症状が大幅に軽減ないし消失する2~14日間の寛解期となる。一部の患者では,発熱は一過性のことがある。他の患者では,発熱期が再度または何度も繰り返し再発し(波状熱),数カ月または数年間にわたり寛解してから不明熱として再度顕在化することがある。

最初の発熱期の後には,食欲不振,体重減少,腹痛,関節痛,頭痛,背部痛,脱力,易刺激性,不眠症,抑うつ,ならびに精神不安定が生じることがある。通常は便秘が著明となる。脾腫が生じ,軽度または中等度のリンパ節腫大をみることもある。最大50%の患者で肝腫大がみられる。

ブルセラ症は5%未満の患者で死に至り,通常は心内膜炎か重度の中枢神経系合併症が死因となる。

診断

  • 血液培養

  • 急性期および回復期血清での血清学的検査

血液培養を行うべきであるが,十分な増殖には8日間以上を要し,特殊培地を使用する継代培養には最長3~4週間を要するため,検査室にブルセラ症の疑いがあることを連絡すべきである。

急性期血清と回復期血清の採取間隔は3週間とするべきである。4倍以上の抗体価上昇または急性期抗体価の160以上の高値で診断可能であり,特に曝露歴がある場合や特徴的な臨床所見を認める場合は確定的である。急性期には,白血球数が正常または低値となり,相対的または絶対的リンパ球増多を呈する。

治療

  • ドキシサイクリンに加えて,リファンピシン,アミノグリコシド系薬剤(ストレプトマイシンまたはゲンタマイシン),シプロフロキサシンのいずれか

急性期患者では活動を制限すべきであり,発熱期の間は床上安静が推奨される。重度の筋骨格痛(特に脊椎に及ぶもの)には鎮痛薬が必要となりうる。Brucella属細菌による心内膜炎には,抗菌薬療法に加えて,しばしば手術が必要となる。

単剤療法では再発率が高いため,抗菌薬を投与する場合は多剤併用療法が望ましい。ドキシサイクリン100mg,経口,1日2回,6週間に加えて,ストレプトマイシン1g,筋注,12~24時間毎(またはゲンタマイシン3mg/kg,静注,1日1回),14日間を併用することで,再発率を低下させることができる。合併症のない症例には,アミノグリコシド系薬剤の代わりにリファンピシン600~900mg,経口,1日2回,6週間を使用することができる。アミノグリコシド系薬剤の代わりにシプロフロキサシン500mg,経口,1日2回,14~42日間の使用に加え,リファンピシンまたはドキシサイクリンを併用するレジメンも同様に効果的であることが示されている。8歳未満の小児には,トリメトプリム/スルファメトキサゾール(TMP/SMX)とリファンピシン経口剤,4~6週間が使用されている。

抗菌薬治療を行っても約5~15%の患者が再発するため,全例に対して臨床的評価と血清抗体価の反復測定によるフォローアップを1年間行うべきである。

予防

牛乳に対する低温殺菌処理がブルセラ症の予防に有用である。無殺菌牛乳を原料とする製造後3カ月未満のチーズは汚染されている可能性がある。

動物またはその死体を扱う感染リスクの高い職種の個人は,ゴーグルやゴム手袋を着用して,皮膚の傷を曝露から保護するべきである。米国といくつかの国々では,動物における感染を検出し,感染動物を排除し,血清反応陰性と判定された若齢のウシおよびブタに予防接種を実施するためのプログラムが必須とされている。

ヒト用のワクチンはなく,動物用ワクチン(弱毒生ワクチン)をヒトに使用すると感染を引き起こす可能性がある。ヒトでの感染後の免疫持続は短く,およそ2年間である。

高リスク患者(例,感染防御措置を講じずに感染動物または検査室検体に曝露した患者,動物ワクチンを接種された患者)には,曝露後予防としての抗菌薬投与が推奨される。レジメンとしては,ドキシサイクリン100mg,経口,1日2回とリファンピシン600mg,経口,1日1回,3週間の併用などがあるが,リファンピシン耐性であるB. abortusのワクチン株(RB51)に曝露した患者にはリファンピシンは使用しない。

要点

  • ブルセラ症の感染は,感染動物の分泌物および排泄物に直接接触することによって起こる。

  • 感染後は典型的には発熱および全身症状がみられるが,まれに特定の臓器(例,脳,髄膜,心臓,肝臓,骨)が侵される。

  • 無治療でも大部分の患者が2~3週間で回復するが,一部の患者は亜急性,間欠性,または慢性の病態を呈する。

  • 血液培養および急性期と回復期血清での血清学的検査により診断する。

  • 大半の患者は2剤の抗菌薬(典型的にはドキシサイクリンとリファンピシン,アミノグリコシド系薬剤,またはシプロフロキサシンのいずれかとの併用)で治療し,最長1年間にわたり再発のモニタリングを行う。

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