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造血幹細胞移植

執筆者:

Martin Hertl

, MD, PhD,

  • Rush University Medical Center
;


Paul S. Russell

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 9月

移植の概要も参照のこと。)

造血幹細胞(HSC)移植は,造血器悪性腫瘍(白血病,リンパ腫,骨髄腫)および他の血液疾患(例,原発性免疫不全症,再生不良性貧血,骨髄異形成)で治癒をもたらす可能性がある手技で,急速に発展しつつある。HSC移植は,ときに化学療法に反応する固形腫瘍(例,一部の胚細胞腫瘍)に用いられることもある。

HSC移植は,以下の機序によって寛解に導く:

  • 骨髄破壊的前処置によって骨髄を再建する

  • 良性の血液疾患では,異常な骨髄を正常な骨髄で置き換える

HSC移植は自家移植の場合も同種移植の場合もある。幹細胞は以下の部位から採取できる:

  • 骨髄

  • 末梢血

  • 臍帯血

末梢血は,幹細胞採取がより容易で,好中球数および血小板数の回復がより速いため,特に自家HSC移植では,骨髄に代わり主な幹細胞源となっている。成人に用いるには臍帯血中の幹細胞の数は少なすぎるため,臍帯血によるHSC移植は主に小児に限定されている。将来的にはiPS細胞(induced pluripotent stem cellー成人から採取された特定の細胞をプログラムし直され,幹細胞のような振舞いをするようになったもの)から幹細胞を作れるようになる可能性がある。

自家HSC移植に禁忌はない。

同種HSC移植の禁忌は相対的禁忌であり,年齢50歳以上,HSC移植の既往,および重大な併存症などがある。

同種HSC移植は主に組織適合ドナーの不足により制限される。HLA一致同胞ドナーが理想的で,次にHLA適合同胞ドナーである。このような同胞ドナーが得られる患者は4分の1に過ぎないため,非適合血縁または適合非血縁ドナー(国際的な登録制度を通じて特定)に頼ることが多い。しかし,長期的な無病生存率は,HLA一致同胞ドナーからの移植より低い可能性がある。

臍帯血HSC移植の手技はまだ確立されつつある段階であるが,HLA適合はおそらく重要ではない。

手技

骨髄幹細胞の採取では,骨髄700~1500mL(最高15mL/kg)をドナーの後腸骨陵部から吸引する;その際,局所または全身麻酔を用いる。

末梢血幹細胞の採取では,ドナーに遺伝子組換え増殖因子(顆粒球コロニー刺激因子または顆粒球マクロファージ刺激因子)を投与して,幹細胞の増殖および動員を促す;4~6日後に標準のアフェレーシスを行う。FACS(fluorescence-activated cell sorting)を用い,幹細胞を他の細胞と識別して分取する。

その後,大口径の中心静脈カテーテルを介し,幹細胞を1~2時間かけて注入する。

前処置レジメン

悪性腫瘍に対する同種造血幹細胞移植では,先にレシピエントに対して前処置レジメン(例,最大量の全身照射とともにシクロホスファミド60mg/kg/日を1日1回2日間静注,または全身照射は行わずシクロホスファミドに加えてブスルファン1mg/kgを1日4回4日間経口投与などの骨髄破壊的レジメン)を施行して寛解導入を行うとともに,移植細胞が生着するように免疫系を抑制する。

悪性腫瘍が適応でなくとも,同種HSC移植の前に同様の前処置を行って,拒絶反応および再発の発生率を減らす。

そのような前処置レジメンは,悪性腫瘍に対する自家HSC移植の前には使用しない;代わりに腫瘍に特異的な薬剤を使用する。

骨髄非破壊的前処置レジメン(例,シクロホスファミド,胸腺照射,抗胸腺細胞グロブリン[ATG],および/またはシクロスポリン)では,罹病および死亡のリスクが低下する可能性があり,高齢患者,併存症がある患者,および移植片対腫瘍効果が期待される患者(例,多発性骨髄腫患者)に有用な可能性がある。

移植後

移植後のレシピエントには,移植後の白血球減少症の期間を短縮するためのコロニー刺激因子の投与および抗感染症薬の予防投与を行うとともに,同種HSC移植後には,最長6カ月間にわたり免疫抑制薬(典型的にはメトトレキサートおよびシクロスポリン)を予防的に投与してレシピエントのHLA分子に対するドナーT細胞応答(移植片対宿主病)を予防する。発熱が発生しない限り,広域抗菌薬の使用は通常控える。

生着は,典型的にはHSC移植後10~20日でみられ(末梢血幹細胞ではより早い),好中球数が500 × 106/Lを超えることで定義される。

合併症

幹細胞移植の合併症は早期(移植後100日未満)に発生することも晩期に発生することもある。同種HSC移植後は,感染症のリスクが高まる。

早期の合併症

主な早期の合併症としては以下のものがある:

  • 生着不全

  • 急性移植片対宿主病(GVHD)

生着不全および拒絶反応がみられる患者は5%未満で,持続的な汎血球減少症または不可逆的な血算の減少として現れる。治療は数週間にわたるコルチコステロイド投与である。

急性GVHDは,同種HSC移植のレシピエントに発生する(HLA適合同胞からの移植レシピエントで40%,非血縁ドナーからの移植レシピエントで80%)。発熱,発疹,高ビリルビン血症を伴う肝炎,嘔吐,下痢,腹痛(イレウスに進行することがある),および体重減少を引き起こす。

急性GVHDの危険因子としては以下のものがある:

  • HLAおよび性不適合

  • 非近親者のドナー

  • レシピエント,ドナー,またはその両方が高齢

  • ドナーの前感作

  • 不十分なGVHD予防

急性GVHDの診断は病歴,身体診察,および肝機能検査の結果から明らかである。治療はメチルプレドニゾロン2mg/kgの1日1回静注で,5日以内に反応がみられなければ,10mg/kgに増量する。

晩期の合併症

主な晩期の合併症としては以下のものがある:

  • 慢性GVHD

  • 疾患の再発

慢性GVHDは単独で起こることも,急性GVHDから進展することも,また急性GVHDの消失後に起こることもある。典型的にはHSC移植後4~7カ月(範囲は2カ月から2年)で起こる。慢性GVHDは,同種HSC移植のレシピエントに発生する(HLA適合同胞からの移植レシピエントで約35~50%,非血縁ドナーからの移植レシピエントで60~70%)。

慢性GVHDは主に皮膚(例,苔癬様発疹,強皮症)および粘膜(例,乾燥性角結膜炎,歯周炎,口腔生殖器の苔癬様反応)にみられるが,消化管および肝臓に発生することもある。免疫不全が主な特徴である;肺移植後と似た閉塞性細気管支炎が発生することもある。最終的に,GVHDを発症した患者の20~40%が死に至る。

皮膚および粘膜にみられるGVHDには治療は必要ないことがある;より広範囲の病変に対する治療は急性GVHDに対するものと同じである。モノクローナル抗体または機械的分離法を用いて同種ドナー移植片からT細胞を除去することで,GVHDの発生率および重症度が低下するが,幹細胞の増殖および生着を促進し,疾患の再発率を低下させる可能性のある移植片対腫瘍効果もなくなる。自家HSC移植では,移植片対腫瘍効果がなく,また循環血中の腫瘍細胞も移植される可能性があるため,再発率がより高い。自家移植に先立ってex vivoで腫瘍細胞を除去する方法が研究段階にある。

慢性GVHDがみられない患者では,HSC移植から6カ月後に全ての免疫抑制療法が中止可能である;そのため,このような患者における晩期の合併症はまれである。

予後

HSC移植後の予後は適応および手技によって異なる。

全体として,疾患の再発は以下の割合で起こる:

  • 自家HSC移植のレシピエントで40%~75%

  • 同種HSC移植のレシピエントで10%~40%

成功(骨髄に悪性腫瘍がみられない)率は以下の通りである:

  • 再発リンパ腫患者で化学療法感受性の場合,30~40%

  • 寛解期の急性白血病患者で20~50%

多発性骨髄腫では,化学療法単独と比べると,HSC移植により患者の生存期間が延長する。より進行した症例または化学療法に反応する固形癌(例,胚細胞腫瘍)の患者については,成功率が低い。GVHDを認める患者では再発率が低いが,移植片対宿主病(GVHD)が重度であれば,全死亡率が高い。

強力な前処置レジメン,効果的なGVHD予防,シクロスポリンを基本としたレジメン,および支持療法の改良(例,必要に応じた抗菌薬の投与,ヘルペスウイルスおよびサイトメガロウイルスの予防)によりHSC移植後の長期無病生存期間が延長している。

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