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膵臓移植

執筆者:

Martin Hertl

, MD, PhD,

  • Jack Fraser Smith Professor of Surgery, Director of Solid Organ Transplantation, and Chief Surgical Officer
  • Rush University Medical Center
;


Paul S. Russell

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 9月
本ページのリソース

移植の概要も参照のこと。)

膵臓移植は,膵β細胞補充の一種で,糖尿病患者を正常血糖値に回復させることができる。

レシピエントでは インスリン注射のリスクが免疫抑制のリスクに変わるため,適格となるのは主に以下の患者に限られる:

  • 1型糖尿病に腎不全を併発し,腎移植の候補である

膵臓移植の90%を超える症例で,腎臓が同時に移植される。

多くの施設で,標準的治療による血糖コントロールの度重なる失敗および無自覚性低血糖の発症も適格基準となっている。

相対的禁忌には,年齢55歳以上や重大な動脈硬化性心血管疾患(過去の心筋梗塞,冠動脈バイパス術,経皮的冠動脈インターベンション,または負荷試験陽性で定義される)などがあり,これらの因子は周術期のリスクを劇的に増大させる。

選択肢としては以下のものがある:

  • 膵腎同時(SPK)移植

  • 腎移植後膵(PAK)移植

  • 膵臓単独の移植

膵腎同時移植の利点は,免疫抑制導入療法への曝露が1回であること,新たに移植された腎臓が高血糖による有害作用から保護される可能性があること,および腎臓で拒絶反応をモニタリングできることである;腎臓は,拒絶反応の検出が困難な膵臓より拒絶反応を検出しやすい。

腎移植後膵移植の利点は,生体ドナーを利用することによってHLA適合性および腎移植のタイミングを最適化できることである。

膵臓単独の移植では,末期腎臓病ではないものの,不安定な血糖コントロールを含む他の重度の糖尿病合併症がある患者に利益が得られる。

膵臓ドナー

ドナーは通常,耐糖能障害またはアルコール乱用の病歴がなく最近死亡した10~55歳の患者である。

膵腎同時移植では,膵臓と腎臓が同一ドナーから得られ,腎臓提供の場合と同じ条件が適用される。

数例(1%未満)の生体ドナーからの部分移植が行われているが,この手技はドナーに著しいリスク(例,脾梗塞,膿瘍,膵炎,膵液漏および膵仮性嚢胞,二次性糖尿病)をもたらすため,広範な利用は限られている。

手技

ドナーに抗凝固薬を投与して,冷保存溶液を腹腔動脈に流す。膵臓をその場で氷冷した生理食塩水スラッシュで冷却し,その後,肝臓(異なるレシピエントへの移植用)およびファーター膨大部を含む十二指腸下行部(第2部)を一塊切除する。さらに腸骨動脈も取り出す。

ドナーの膵臓を腹腔内で下腹部の側方に配置する。

膵腎同時移植では,膵臓をレシピエントの右下腹部に,腎臓を左下腹部に配置する。生来の膵臓は元の場所に残す。ドナーの腸骨動脈をバックテーブル上での再建に用い,膵臓移植片の脾動脈および上腸間膜動脈を再建する。この方法により,レシピエントの血管に通じる一本の動脈が得られる。ドナーの腸骨動脈とレシピエントの腸骨静脈のうちの一本の間,およびドナーの門脈と腸骨静脈の間で最終的な吻合を行う。これにより,内分泌液が全身に流れ出て,高インスリン血症を引き起こす;生理的状態を再現するために,ときにドナーの膵臓の静脈系を門脈支流に吻合するが,この手技はより困難で,有益性は不明である。外分泌液を排出するため,十二指腸を膀胱頂部または空腸に縫い合わせる。

免疫抑制レジメンは多様であるが,典型的には免疫抑制性免疫グロブリン,カルシニューリン阻害薬,プリン合成阻害薬,およびコルチコステロイドなどがあり,12カ月間にわたってゆっくり漸減できる( 移植の拒絶反応を治療するために用いられる免疫抑制薬)。

合併症

拒絶反応

十分な免疫抑制にもかかわらず,急性拒絶反応が40~60%の患者で起こり,内分泌ではなく,主に外分泌成分に影響を及ぼす。

腎移植単独と比べ,膵腎同時移植では拒絶反応のリスクが高く,拒絶反応が遅れて起こる,頻回に再発する,およびコルチコステロイドに抵抗性となるといった傾向がある。症状と徴候は非特異的である( カテゴリー別膵臓移植拒絶反応の症状)。

膵腎同時移植および腎移植後膵移植の後,膵臓の拒絶反応はほとんどの場合腎臓の拒絶反応を伴うため,膵臓の拒絶反応は血清クレアチニンの上昇によって最もよく検出される。膵臓単独移植の後,導尿を行っている患者で尿中アミラーゼ濃度が安定していることは,拒絶反応を除外できることを意味する;濃度が低下すると,何らかの移植片機能不全が示唆されるが,濃度低下は拒絶反応に特異的なものではない。それゆえ,早期の検出は難しい。

診断は,超音波ガイド下での経皮的生検または膀胱鏡下での十二指腸経由の生検により確定される。

治療は抗胸腺細胞グロブリン投与による。

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カテゴリー別膵臓移植拒絶反応の症状

拒絶反応のカテゴリー

臨床像

超急性

膵壊死,発熱,高血糖

促進性

膵炎,高血糖,アミラーゼおよびリパーゼの上昇

急性

促進型拒絶反応でみられるものと同じ

慢性

高血糖,アミラーゼおよびリパーゼの軽度上昇

他の合併症

早期の合併症は10~15%の患者にみられ,創傷の感染および離開,肉眼的血尿,腹腔内の尿漏,逆流性膵炎,再発性尿路感染症,小腸閉塞,腹腔内膿瘍,および移植片血栓症などがある。

晩期の合併症は,膵臓の炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の尿中喪失と関連し,体液量減少およびアニオンギャップ正常の代謝性アシドーシスを引き起こす。高インスリン血症は,グルコース代謝または脂質代謝に悪影響を及ぼすことはないと考えられる。

予後

全体で,1年生存率は以下の通りである:

  • 患者:90%超

  • 移植片:78%

生存率が移植を受けていない患者より高いかどうかは不明である;ただし,この手技の主な有益性は インスリン離脱と多くの糖尿病合併症(例,腎症,神経障害)の安定化または部分的回復である。

移植片の生着率は以下の通りである:

  • 膵腎同時移植:95%

  • 腎移植後膵移植:74%

  • 膵臓単独の移植:76%

腎移植後膵移植および膵臓単独移植では,免疫学的移植片機能損失の割合が高く,おそらくこのような移植膵臓では,拒絶反応の信頼できるモニタリング方法がないためである:対照的に,膵腎同時移植後の拒絶反応は,移植腎に対する拒絶反応に関して確立された指標を用いてモニタリングできる。

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