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肝移植

執筆者:

Martin Hertl

, MD, PhD,

  • Jack Fraser Smith Professor of Surgery, Director of Solid Organ Transplantation, and Chief Surgical Officer
  • Rush University Medical Center
;


Paul S. Russell

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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移植の概要も参照のこと。)

肝移植は,実質臓器の移植の中で2番目に多い。

肝移植の適応としては以下のものがある:

  • 肝硬変(米国では移植全体の70%;そのうち60~70%がC型肝炎によるもの)

  • 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)(約8%)

  • 肝細胞癌(7%)

  • 胆道閉鎖症および代謝性疾患,主に小児(それぞれ約3%)

  • その他の胆汁うっ滞性疾患(例,原発性硬化性胆管炎)および非胆汁うっ滞性疾患(例,自己免疫性肝炎)(約8%)

肝細胞癌患者では,5cm未満の腫瘍が1個または3cm未満の腫瘍が最大3個(ミラノ基準),およびfibrolamellar(線維層状)型の数個の腫瘍に対して移植が適応となる。肝転移がある患者では,原発腫瘍の切除後に肝外腫瘍がみられない神経内分泌腫瘍に対してのみ移植が適応となる。

肝移植の絶対的禁忌としては以下のものがある:

  • 劇症型の肝壊死(fulminant hepatic necrosis)における頭蓋内圧の上昇(> 40mmHg)または脳灌流圧の低下(< 60mmHg)

  • 重度の肺高血圧(平均肺動脈圧 > 50mmHg)

  • 敗血症

  • 肝細胞癌の進行例または遠隔転移

これらの条件はいずれも,移植中または移植後の転帰不良につながる。

肝臓ドナー

提供されるほぼ全ての肝臓がサイズおよびABO型が適合した心拍のある脳死(死体)ドナーから得られる。移植前の組織適合検査およびHLA適合は必ずしも必要ではない。2歳未満の小児ではABO不適合の肝移植が成功している;これより年長の小児および成人では,拒絶反応および胆汁うっ滞を伴う胆管損傷(胆管減少症)により再移植が必要になるリスクが高いため,このような移植は行わない。

年間,約250の移植片が生体ドナーから提供されており,これらのドナーは右葉(成人から成人への移植)または左葉の外側区域(成人から小児への移植)を切除しても生存できる。レシピエントにとっての生体ドナー移植の利点には,主として患者を最適な状態にして移植を予定できるために,待機時間が短いこと,および摘出臓器の冷虚血時間が短いことなどがある。ドナーにとって不利な点には,死亡リスクが1/600~1/700(これに対し,生体ドナー腎移植では1/3300)であること,および合併症(特に胆汁漏)が最多で4分の1に起こることなどがある。臨床医は,ドナーの心理的強制を防ぐために,あらゆる努力をしなければならない。

少数の肝臓が死亡した心停止ドナー(心停止後臓器提供[DCD]ドナーと呼ばれる)から得られるが,そのような症例では,提供前に虚血によって肝臓が損傷しているため,胆管の合併症が最大3分の1のレシピエントで発生する。

移植片の生着不全を促すドナー(死者または生存者)の危険因子としては以下のものがある:

  • 年齢50歳以上

  • 肝脂肪変性

  • 肝酵素,ビリルビン,またはその両方の高値

  • 長期にわたるICU滞在

  • 昇圧薬を必要とする低血圧

  • 高ナトリウム血症

  • おそらく,女性のドナーから男性のレシピエントへの移植

しかし,肝移植では需要と供給の不均衡が最も大きいため(また肝炎誘発性の肝硬変の有病率が上昇しているために不均衡が増大している),50歳以上のドナーからの肝臓,冷虚血時間が比較的長い肝臓,脂肪浸潤のある肝臓,およびウイルス性肝炎に罹患した肝臓(ウイルス性肝炎誘発性肝硬変に罹患しているレシピエントへの移植に対して)の使用が増加しつつある。

供給量を増やす他の技術には以下のものがある:

  • 分割肝移植:死体ドナーからの肝臓を右葉と左葉または右葉と左外側区に分割し(in situまたはex situで実施),2人のレシピエントに移植する。

  • ドミノ移植:ときに死体ドナーからの肝臓を浸潤性疾患(例,アミロイドーシス)のレシピエントに移植し,摘出した罹患肝臓を,それによる有益性が得られるものの移植片機能不全の有害作用が現れるまで長く生存しないと予測される高齢のレシピエントに移植する。

このような技術革新にもかかわらず,多くの患者が移植を待ちながら死亡する。一部の施設では,肝臓補助装置(培養肝細胞懸濁液または不死化肝細胞癌細胞株の体外灌流)を用いて,肝臓が入手可能になるまで,または急性機能不全が消失するまで患者の生存を維持する。

臓器の割り当て

入手できた臓器の分配のために,全国的な待機リストに登録した患者について,クレアチニン,ビリルビン,およびINRの測定値(成人に対するModel for End-Stage Liver Disease[MELD]を用いる)から,または年齢ならびに血清アルブミン,ビリルビン,INR,および発育不全の測定値(小児に対するPediatric End-Stage Liver Disease[PELD]モデルを用いる)から算出した予後スコアを付与する。MELDおよびPELDは,肝移植待機中に患者が肝疾患により死亡する確率を計算するために用いられる数式である。死亡の可能性がより高い患者に適合ドナーからの臓器の高い優先権が与えられる。肝細胞癌患者には,腫瘍の大きさおよび待機時間に基づく死亡リスクを反映したスコアを付与する。

手技

死体ドナーの肝臓は,試験開腹により移植を不可能にすると考えられる腹腔内疾患がないことを確認後に摘出する。生体ドナーでは葉切除または区域切除を行う。

摘出した肝臓は冷保存溶液で灌流し,移植前18時間まで冷保存溶液に保存する;保存が長引くにつれ移植片機能不全および虚血型胆管損傷の発生率が高まる。

レシピエントの肝切除は,門脈圧亢進症および凝固障害のある患者で行われることが多いため,手技のうち最も問題の多い部分である。まれな症例で術中の失血は全体で100単位を超えることがあるが,セルセーバー装置および返血装置を用いることで,必要な同種血輸血量は平均で5~10単位に減少する。肝切除術後,ドナー移植片の上部大静脈をレシピエントの大静脈に端側吻合法(ピギーバック法)で吻合する。その後,ドナーおよびレシピエントの門脈,肝動脈,および胆管を吻合する。この術式では,門脈血を全身の静脈血回路に通すためのバイパスポンプを必要としない。肝臓の異所性配置(正常な位置ではない)により補助的な肝臓が得られ,技術的困難のいくつかが避けられるが,転帰は期待外れとなっており,この術式はまだ探索的段階である。

免疫抑制レジメンは多様である( 移植の拒絶反応を治療するために用いられる免疫抑制薬)。多くの場合,カルシニューリン阻害薬(シクロスポリンまたはタクロリムス),ミコフェノール酸モフェチル,およびコルチコステロイドとともに抗IL-2受容体モノクローナル抗体を移植当日に投与する。自己免疫性肝炎患者を除き,コルチコステロイドは数週間以内に漸減でき,3~4カ月後に中止することが多い。他の実質臓器移植と比べて,肝移植では免疫抑制薬が最低用量でよい。

合併症

拒絶反応

理由は不明であるが,肝臓同種移植片は他の臓器の同種移植片と比べてそれほど激しく拒絶されることはない;超急性拒絶反応の発生頻度は,HLAまたはABO抗原に前感作された患者で予測されるものより低く,免疫抑制薬を比較的急速に漸減でき最終的に中止できることが多い。ほとんどの急性拒絶反応の発症が軽度で自然治癒性であり,最初の3~6カ月で起こり,移植片の生着に影響しない。

拒絶反応の危険因子としては以下のものがある:

  • レシピエントが若年

  • ドナーが高齢

  • HLAの不適合率が大きい

  • 冷虚血時間が長い

  • 自己免疫疾患

栄養状態が悪い(例,アルコール依存症)ことは,保護因子となるようである。

拒絶反応の症状と徴候は,拒絶反応の種類により異なる( カテゴリー別肝移植拒絶反応の症状)。急性拒絶反応の症状は約50%の患者にみられる;慢性拒絶反応の症状がみられる患者は2%未満である。

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カテゴリー別肝移植拒絶反応の症状

拒絶反応のカテゴリー

臨床像

超急性

発熱,肝機能検査結果(AST,ビリルビン)の異常上昇,凝固障害

促進性

発熱,凝固障害,肝機能検査結果(AST,ビリルビン)の異常上昇,腹水

急性

食欲不振,疼痛,発熱,黄疸,明色(粘土色)便,暗色尿,肝機能検査結果(AST,ビリルビン)の上昇

慢性

黄疸,胆管消失症候群(ビリルビン,アルカリホスファターゼ,およびGGTの高値を伴う),肝機能検査結果(AST,ビリルビン)のわずかな上昇,腹水

GGT = γ-グルタミルトランスペプチダーゼ。

急性拒絶反応の鑑別診断には,ウイルス性肝炎(例,サイトメガロウイルスまたはエプスタイン-バーウイルス感染症;再発性のB型肝炎,C型肝炎,またはその両方),カルシニューリン阻害薬の毒性,および胆汁うっ滞などがある。診断が臨床的に不明確であれば,拒絶反応は経皮針生検で診断できる。

拒絶反応が疑われる場合は,静注コルチコステロイドにより治療する;コルチコステロイドが無効(10~20%においてみられる)な場合は,抗胸腺細胞グロブリンが選択肢である。拒絶反応が免疫抑制薬に抵抗性であれば,再移植を試みる。

移植後の肝炎の再発

免疫抑制は,移植前にウイルス性肝炎誘発性の肝硬変に罹患していた患者において,ウイルス性肝炎再発の一因となる。C型肝炎はほぼ全例で再発する;通常,ウイルス血症および感染症は臨床的に無症状であるが,活動性の肝炎および肝硬変を引き起こすことがある。

臨床的に明らかな再発の危険因子は,以下に関連する:

  • レシピエント:例,高齢,HLAのタイプ,肝細胞癌

  • ドナー:例,高齢,脂肪浸潤,長い虚血時間,生体ドナー

  • ウイルス:ウイルス量高値,遺伝子型1B,インターフェロンに反応しない

  • 移植後のイベント:免疫抑制薬の用量,コルチコステロイドによる急性拒絶反応の治療,サイトメガロウイルス感染症

標準的なC型肝炎の治療の効果はわずかに過ぎないが,より新しい抗ウイルス薬(例,テラプレビル)では再発性のC型肝炎の患者で転帰が改善することが期待される。B型肝炎は全ての患者で再発するが,抗ウイルス薬による治療が成功している;D型肝炎との同時感染は,再発に対して保護因子となると考えられる。

その他の合併症

肝移植の早期の合併症(2カ月以内)としては以下のものがある:

  • 1~5%にみられる原発性機能不全

  • 15~20%にみられる胆汁の機能障害(例,虚血性吻合部狭窄,胆汁漏,胆管閉塞,Tチューブ部位周辺での漏出)

  • 5%未満にみられる門脈血栓症

  • 3~5%(特に体格の小さな小児または分割移植片のレシピエント)にみられる肝動脈血栓症

  • 肝動脈の真菌性動脈瘤または仮性動脈瘤,および肝動脈破裂

典型的には,早期の合併症の症状と徴候には,発熱,低血圧,および肝機能検査結果の異常などがある。

最も頻度が高い晩期の合併症は以下のものである:

  • 胆汁うっ滞および胆管炎の症状を引き起こす肝臓内または吻合部の胆管狭窄

DCD移植片を用いた肝移植の後には狭窄が特に多くみられ,4分の1から3分の1のレシピエントにみられる。狭窄は,内視鏡的または経皮経肝胆道造影を用いた拡張,ステント留置,またはその両方により,ときに治療ができるが,最終的に再移植が必要となることが多い。

予後

肝移植から1年後の生存率は以下の通りである:

  • 生体ドナーからの移植片:90%(患者)および82%(移植片)

  • 死体ドナーからの移植片:86%(患者)および82%(移植片)

全生存率は以下の通りである:

  • 3年で:79%(患者)および72%(移植片)

  • 5年で:73%(患者)および65%(移植片)

生存期間は,慢性肝不全の方が急性肝不全より良好である。1年以降の死亡は通常,移植後合併症より,むしろ疾患(例,悪性腫瘍,肝炎)の再発に起因する。

再発性のC型肝炎により15~30%の患者が5年後までに肝硬変を発症する。自己免疫性の要素のある肝疾患(例,原発性胆汁性肝硬変,原発性硬化性胆管炎,自己免疫性肝炎)は5年後までに20~30%で再発する。

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