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組織移植

執筆者:

Martin Hertl

, MD, PhD,

  • Jack Fraser Smith Professor of Surgery, Director of Solid Organ Transplantation, and Chief Surgical Officer
  • Rush University Medical Center
;


Paul S. Russell

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 9月

移植の概要も参照のこと;角膜移植については, 角膜移植を参照のこと。)

複合移植(手,四肢,顔面)

複合移植とは多数の組織を移植するもので,通常は皮膚および軟部組織であるが,ときに筋骨格構造が移植されることもある。これらの移植手技の多くが現在可能となったのは,免疫抑制療法が進歩したおかげである。しかし,この手技は典型的には延命につながらず,非常に高額で資源を多く消費するとともに,感染による合併症を生じたり,死に至る可能性もあるため,倫理的に論議を呼んでいる。

複合移植で最初の成功例は手の移植である。それ以来,おそらく10種類もの異なる組織が約150例の患者で置き換えられており,機能的な成功率は様々である。

手の移植が最初に行われたのは1998年である。それ以来,両手移植および上肢の移植が行われている。手の機能回復は大きく異なる;一部のレシピエントは日常活動が行える十分な機能および感覚を取り戻す。

顔面の移植が最初に行われたのは2005年である。2011年現在で,そのような手術が17例行われている。今のところ,移植片の生着不全は報告されていないが,初の顔面移植のレシピエントは2016年に死亡している。顔面の移植では,外科的手技が極めて難しく,また必要とされる免疫抑制によりレシピエントが日和見感染の少なからぬリスクに曝されるため,四肢の移植の場合よりも倫理的な疑念がさらに突出している。

免疫抑制は,通常導入療法(抗胸腺細胞グロブリン[ATG]またはIL-2受容体阻害薬)と,それに続くコルチコステロイド,抗増殖薬(例,バシリキシマブ),およびカルシニューリン阻害薬による3剤併用免疫抑制維持療法からなる( 移植の拒絶反応を治療するために用いられる免疫抑制薬)。ときに,カルシニューリン阻害薬またはコルチコステロイドを含む外用クリームを用いる。

皮膚移植

皮膚移植には以下の種類がある:

  • 自家移植

  • 同種移植

自家皮膚移植

自家皮膚移植では,患者自身の健康な皮膚を使う。

通常は分層植皮片が使用される;これは,薄い表皮の層と真皮の一部を切除したもので,レシピエントサイトに移植される。分層植皮片は熱傷に使用されるのが一般的であるが,小さな創の治癒を促進するために用いられることもある。ドナーサイトにはかなりの量の真皮が残るため,やがて治癒し,ここから再度皮膚を採取することもできる。

全層植皮片は表皮と真皮から成り,分層植皮片に比べて見た目と機能に優れている。しかしながら,ドナーサイトは治癒しないので,切除部位を縫合閉鎖できるような皮膚が余っている箇所(例,腹壁または胸壁,ときに頭皮)でなければならない。そのため,全層植皮片は一般に,審美的に重要な部位(例,顔面)またはより厚く保護作用のある皮膚を必要とする部位(例,手)に限って使用される。全層植皮片は厚く血管も多いため,分層植皮ほど皮膚片の生着率は高くない。

広範囲の熱傷を覆うため,患者自身の皮膚細胞を培養で増殖させてから熱傷部位に戻すこともある。あるいは,合成下地の上で培養した皮膚細胞または薄い分層植皮片からなる人工皮膚を用いることもある。

同種皮膚移植

皮膚の同種移植では,ドナー(通常は死体)の皮膚を使用する。皮膚の同種移植は,広範囲の熱傷や他の疾患により大量の皮膚を喪失した患者のうち,自家移植できるほど損傷のない皮膚片が残っていない場合に行われる。同種移植片は皮膚を失った広い体表面を覆うために用いられ,これによって体液およびタンパクの喪失を減らして,感染による侵襲を阻止する。

実質臓器の移植と異なり,同種移植片は最終的に拒絶されるが,それにより皮膚を失った体表面に血管に富んだ肉芽が形成され,その上に患者の治癒した部位からの自家移植片が生着しやすくなる。

軟骨移植

軟骨移植は,先天的に鼻または耳の欠陥がある小児および重度の外傷または関節破壊(例,重度の変形性関節症)のある成人に用いられる。軟骨細胞は,拒絶反応への抵抗性が高く,これはおそらく硝子軟骨中のわずかな細胞塊が周辺の軟骨基質によって細胞性の攻撃から守られているためと考えられる。そのため,免疫抑制薬の適応はない。

骨移植

骨移植は,大きい骨の欠損(例,骨腫瘍で広範囲の切除後)の再建に用いられる。生体ドナーの骨細胞はレシピエントで生着しないが,同種移植片からの死んだ基質は,レシピエントの骨芽細胞を刺激して基質に再度定着させ,新しい骨を生じさせることが可能である。この基質は,新しい骨が形成されるまで,欠損を埋めて安定化するための足場の役割を果たす。

死体由来の同種移植片は,骨(移植時には死んでいる)の免疫原性を減らすために凍結することによって,また軟骨細胞のバイアビリティを維持するためにグリセリンに浸漬して保存する。

移植後の免疫抑制療法は行わない。患者は抗HLA抗体を産生するが,早期のフォローアップで軟骨破壊の所見は検出されない。

副腎自家移植

副腎髄質を中枢神経系内部に定位的に移植することによる副腎自家移植は,パーキンソン病患者で症状が軽減されるという報告がある。

副腎組織の同種移植(特に胎児ドナーからのもの)も提唱されている。パーキンソン病患者の被殻中に定位的に移植された胎児の腹側中脳組織は,筋強剛および動作緩慢を減少させるという報告がある。しかし,ヒトの胎児組織を利用する正当性に関する倫理的および政治的議論を勘案すると,胎児神経の移植を十分に評価できる規模の比較試験が行われる可能性は低いであろう。

ブタドナーからの内分泌的に活性のある細胞による異種移植が検討されている。

胎児胸腺移植

死産児からの胎児胸腺移植片は,胸腺無形成症およびそれに起因するリンパ系の発達異常(DiGeorge症候群)がある小児で免疫応答を回復させる可能性がある。

レシピエントは免疫学的に応答できないため,免疫抑制は必要としない;ただし,重度の移植片対宿主病が起こる可能性がある。

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