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心臓移植

執筆者:

Martin Hertl

, MD, PhD,

  • Jack Fraser Smith Professor of Surgery, Director of Solid Organ Transplantation, and Chief Surgical Officer
  • Rush University Medical Center
;


Paul S. Russell

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 9月
本ページのリソース

移植の概要も参照のこと。)

心臓移植は,以下の疾患を有する患者のうち,最適な薬物および医療器具を用いているにもかかわらず,死亡のリスクが持続しており,耐えがたい症状のある場合の選択肢の1つである:

  • 末期心不全

  • 冠動脈疾患(CAD)

  • 不整脈

  • 肥大型心筋症

  • 先天性心疾患

以下の患者にも移植が適応となることがある:

  • 心筋梗塞後または移植以外の心臓手術後,一時的な補助人工心臓から離脱できない患者

  • 肺移植を必要とする肺疾患により心臓の続発症を合併した患者

心臓移植の唯一の絶対的禁忌は以下の通りである:

  • 術前の治療に反応しない肺高血圧

相対的禁忌には,臓器(例,肺,腎臓,肝臓)の機能不全および局所または全身性の浸潤性疾患(例,心臓肉腫,アミロイドーシス)などがある。

提供される心臓は全て脳死ドナー由来で,ドナーは通常60歳未満で心肺機能が正常である必要があり,冠動脈疾患または他の心疾患の病歴があってはならない。ドナーとレシピエントはABO式血液型および心臓のサイズが適合しなければならない。移植適格レシピエントの約25%はドナー臓器が得られる前に死亡する。左室補助装置および人工心臓は,移植待機患者の血行動態を暫定的に補助する。しかし,これらの装置には,敗血症,装置の不具合,および血栓塞栓症が生じるリスクがある。

心室補助人工心臓による短期補助(bridge)および長期補助(destination)

近年,植込み型心室補助人工心臓の改良が目覚ましく,以前であれば心臓移植が必要であった患者や移植が禁忌の患者で,一部この装置が使用され始めている。この装置は通常,左室を一時的に(bridge-to-transplantation)または長期的に(destination)補助する目的で使用される。ドライブラインの皮膚貫通部から発生する感染症が懸案事項である。しかしながら,今ではこの装置を移植されて生き延び,数年間元気に過ごしている患者がいる。

手技

ドナーの心臓は低温保存状態に保たれる。4~6時間以内に移植しなければならない。レシピエントをバイパスポンプに繋ぎ,右房後壁を元の位置に残して心臓を摘出する。次にドナーの心臓を正所性(正常な位置に)に移植し,大動脈,肺動脈,および肺静脈を吻合する;単回の吻合で元の位置に残した心房後壁をドナー臓器の心房後壁に繋ぐ。ドナー心臓における細胞代謝を変化させることで,4~6時間を超える移植片の生存が可能になるin vitroポンプシステムの利用が研究段階にある。

免疫抑制レジメンは様々であるが,腎または肝移植に対するもの(例,抗IL-2受容体モノクローナル抗体,カルシニューリン阻害薬,コルチコステロイド— 移植の拒絶反応を治療するために用いられる免疫抑制薬)と同じである。

合併症

拒絶反応

約50~80%の患者で拒絶反応が1回以上(平均2~3回)みられる;ほとんどの患者は無症状であるが,約5%の患者では左室機能障害または心房性不整脈が発生する。急性拒絶反応の発生率は1カ月でピークに達し,その後5カ月間で低下し,1年後までに横ばいになる。

拒絶反応の危険因子としては以下のものがある:

  • 若年齢

  • 女性のレシピエント

  • 女性または黒人のドナー

  • HLA不適合

  • おそらくサイトメガロウイルス(CMV)感染症

移植片の損傷が不可逆的で壊滅的となる可能性があるため,心内膜心筋生検によるサーベイランスを通常年1回行う;検体中の単核球浸潤の程度および分布ならびに心筋細胞損傷の有無を判定する。鑑別診断としては,周術期の虚血,CMV感染症,特発性B細胞浸潤(Quilty病変)などがある。

検出可能な臨床的続発症を伴わない軽度の拒絶反応(グレード1)では,治療の必要がない;中等度もしくは重度の拒絶反応(グレード2~4)または臨床的続発症を伴う軽度の拒絶反応では,必要に応じてステロイドパルス療法(1日500mgまたは1gを数日間)および抗胸腺細胞グロブリンにより治療する( カテゴリー別心臓移植拒絶反応の症状*)。

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カテゴリー別心臓移植拒絶反応の症状*

拒絶反応のカテゴリー

臨床像

超急性

心原性ショック

促進性

心房性不整脈,心原性ショック

急性

心不全,心房性不整脈

慢性

労作中の呼吸困難,ストレス耐性の低下

*心臓移植で拒絶反応を起こした患者のほとんどは無症状である。

心臓同種移植片血管障害

心臓移植の主な合併症は心臓同種移植片血管障害で,これは血管内腔がびまん性に狭くなったり,閉塞したりするアテローム性動脈硬化の一形態である(患者の25%に発生)。この原因はおそらく多因子性であり,ドナーの年齢,冷虚血時間および虚血再還流障害,脂質異常症,免疫抑制薬,慢性拒絶反応,およびウイルス感染症(小児ではアデノウイルス,成人ではCMV)と関連がある。

早期発見のために,心内膜心筋生検時に,血管内超音波検査を併用するかどうかを問わず,負荷試験または冠動脈造影によるサーベイランスを行うことが多い。

治療は積極的な脂質低下およびジルチアゼム投与である。

予後

心臓移植から1年後の生存率は85~90%で,その後の年間死亡率は約4%である。

1年後の死亡率に関する移植前予測因子としては以下のものがある:

  • 術前に換気補助または左室補助人工心臓を必要とする

  • 悪液質

  • 女性のレシピエントまたはドナー

  • 心不全またはCAD以外の診断

移植後の予測因子としては以下のものがある:

  • C反応性タンパクおよびトロポニン高値

ほとんどの場合,1年以内の死亡は急性拒絶反応または感染症に起因する;1年後以降の死亡は心臓同種移植片血管障害またはリンパ増殖性疾患に起因することが最も多い。

心臓移植から1年を超えて生存するレシピエントの身体機能状態は優れている;運動耐容量は依然として正常より劣っているが,日常生活活動には十分で,交感神経の再支配に伴い徐々に高くなる可能性がある。95%を超える患者がNew York Heart Association分類のクラスIの状態まで回復し,70%を超える患者がフルタイムの仕事に復帰する。

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