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肥満細胞症

執筆者:

Peter J. Delves

, PhD, University College London, London, UK

最終査読/改訂年月 2016年 6月
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肥満細胞症は,皮膚または他の組織および器官の肥満細胞浸潤である。症状は主にメディエータ放出に起因し,そう痒,紅潮,胃酸過剰分泌による消化不良などを含む。診断は皮膚もしくは骨髄の生検,またはその両方による。治療は抗ヒスタミン薬の投与,および基礎疾患の制御による。

肥満細胞症は,肥満細胞の増殖,および皮膚,他の器官,またはその両方への浸潤を特徴とする疾患群である。病理は主に,ヒスタミン,ヘパリン,ロイコトリエン,および様々な炎症性サイトカインなど,肥満細胞メディエータの放出に起因する。ヒスタミンは胃症状を含む多くの症状を引き起こすが,さらに他のメディエータも関与する。著しい臓器浸潤は,臓器機能不全を引き起こすことがある。メディエータ放出は,物理的接触,運動,飲酒,NSAID,オピオイド,虫刺傷,または食品によって誘発されることがある。

多くの患者の病因には,肥満細胞上に発現している幹細胞因子受容体c-kitをコードする遺伝子の活性化突然変異(D816V)が含まれる。その結果が受容体の自己リン酸化で,無制御な肥満細胞の増殖を引き起こす。

分類

肥満細胞症には,皮膚性または全身性がある。

皮膚肥満細胞症

この病型は典型的には小児に生じる。ほとんどの患者に色素性蕁麻疹がみられ,これは,局所性またはびまん性に分布するサーモンピンクまたは褐色の斑状丘疹状皮疹で,肥満細胞の小さな集まりが多数発生することに起因する。これより頻度は低いが,限局性病変を伴わない皮膚浸潤であるびまん性皮膚肥満細胞症および孤発性の大きな(1~5cm)肥満細胞の集まりである肥満細胞腫もみられる。

全身性肥満細胞症

この病型は成人で最もよくみられ,多巣性の骨髄病変を特徴とする;しばしば他の器官に及び,最も多いのが皮膚,リンパ節,肝臓,脾臓,または消化管である。

全身性肥満細胞症は以下のように分類される:

  • 臓器機能不全を伴わず予後良好なindolent型の肥満細胞症

  • 他の血液疾患(例,骨髄増殖性疾患,骨髄異形成症候群,リンパ腫)を伴う肥満細胞症

  • 臓器の機能障害を特徴とするaggressive型の肥満細胞症

  • 骨髄中の肥満細胞が20%を超え,皮膚病変がみられず,多臓器不全を伴う予後不良の肥満細胞白血病

症状と徴候

皮膚病変は,そう痒を伴うことが多い。温度変化,衣類もしくは他の素材との接触,または一部の薬剤(NSAIDを含む)の使用によりそう痒が悪化することがあり,熱い飲み物,香辛料の効いた食品,もしくはアルコールを摂取した場合,または運動した場合も同様な可能性がある。皮膚病変をなでたり擦ったりすると,病変の周囲に蕁麻疹および紅斑を引き起こすことがある(ダリエ徴候);この反応は,正常な皮膚を侵す皮膚描記症とは異なる。

全身症状はどの型でも起こる可能性がある。最もよくみられるのは紅潮である;最も劇的なものは失神およびショックを伴うアナフィラキシー様反応およびアナフィラキシー反応である。その他の症状としては,消化性潰瘍に起因する心窩部痛,悪心,嘔吐,慢性の下痢,関節痛,骨痛,精神神経的変化(例,易怒性,抑うつ,気分変動)などがある。肝臓浸潤および脾臓浸潤は,結果として生じる腹水を伴う門脈圧亢進症を引き起こすことがある。

診断

  • 臨床的評価

  • 皮膚病変の生検およびときに骨髄生検

肥満細胞症の診断は臨床像によって示唆される。診断は皮膚病変の生検およびときに骨髄生検によって確定する。多巣性で密な肥満細胞の浸潤がみられる。

同様の症状を引き起こす疾患(例,アナフィラキシー,褐色細胞腫,カルチノイド症候群,ゾリンジャー-エリソン症候群)を除外するために,以下のような検査が行われることがある:

  • 潰瘍症状のある患者では,ゾリンジャー-エリソン症候群を除外するため,血清ガストリンを測定する

  • 紅潮のある患者では,カルチノイド症候群を除外するため,尿中5-ヒドロキシインドール酢酸(5-HIAA)を測定する

  • 褐色細胞腫を除外するため,血漿遊離メタネフリンまたは尿中メタネフリンを測定する

パール&ピットフォール

  • 肥満細胞症に似た症状を引き起こす疾患(例,アナフィラキシー,褐色細胞腫,カルチノイド症候群,ゾリンジャー-エリソン症候群)を除外する。

診断が不明確であれば,血漿中および尿中の肥満細胞のメディエータおよびそれらの代謝物(例,尿中のNメチルヒスタミン,Nメチルイミダゾール酢酸)を測定してもよい;濃度の上昇は肥満細胞症の診断を裏付ける。トリプターゼ(肥満細胞脱顆粒のマーカー)の濃度は全身性肥満細胞症で上昇するが,皮膚肥満細胞症では典型的には正常である。診断確定が必要な症例では,骨シンチグラフィー,消化管の精査,および c-kit遺伝子のD816Vの変異の同定も有用である。

治療

  • 皮膚肥満細胞症に対しては,H1受容体拮抗薬および場合によりソラレンと紫外線または外用コルチコステロイド

  • 全身性肥満細胞症に対しては,H1およびH2受容体拮抗薬およびときにクロモグリク酸

  • aggressive型に対しては,インターフェロンα-2b,コルチコステロイド,まはた脾臓摘出

皮膚肥満細胞症

H1受容体拮抗薬は,様々な症状に効果的である。皮膚型に罹患している小児の場合,ほとんどが自然に消失するため,追加治療は必要ない。皮膚型に罹患している成人では,ソラレンと紫外線,または外用コルチコステロイドの1日1回もしくは1日2回塗布による治療を行うことがある。肥満細胞腫は通常自然に退縮し治療の必要はない。

皮膚型は,小児ではめったに全身性疾患に進行しないが,成人では進行することがある。

全身性肥満細胞症

全ての患者に対してH1およびH2受容体拮抗薬による治療を行うべきであり,さらにアドレナリン充填済みの自己注射器を携行させるべきである。アスピリンにより紅潮が制御されるが,ロイコトリエン産生が亢進することがあるため,肥満細胞関連症状の一因となる;小児ではライ症候群のリスクがあるため,投与すべきではない。

クロモグリク酸200mgの1日4回経口投与(2~12歳の小児には100mgを1日4回;40mg/kg/日を超えないこと)は,肥満細胞脱顆粒を防止することにより有用な可能性がある。ケトチフェン2~4mgの1日2回経口投与は,一貫して効果があるわけではない。組織肥満細胞の数を減らすことができる治療法はない。

aggressive型の患者では,インターフェロンα-2bの400万単位週1回から最大300万単位1日1回までの皮下投与により,骨病変の退縮が誘導される。コルチコステロイド(例,プレドニゾン40~60mgを2~3週間にわたって1日1回経口投与)が必要になることがある。脾臓摘出により生存期間が延長することがある。

細胞傷害性薬剤(例,ダウノマイシン,エトポシド,6-メルカプトプリン)が肥満細胞白血病の治療に適応となることがあるが,効力は証明されていない。イマチニブ(チロシンキナーゼ受容体阻害薬)は一部の患者で有用な可能性があるが,c-kit遺伝子のD816V に変異がある患者では無効である。このような患者を対象にmidostaurin(第2世代のチロシンキナーゼ受容体阻害薬)が研究段階にある。

要点

  • 皮膚肥満細胞症患者は,通常小児で,典型的にはびまん性のサーモンピンクまたは褐色でしばしばそう痒性の斑状丘疹状皮疹がみられる。

  • 全身性肥満細胞症では,通常成人に多巣性の骨髄病変を生じるが,他の臓器が侵されることが多い。

  • 全ての病型で全身症状(最もよくみられるのは,紅潮であるが,ときにアナフィラキシー様反応)を起こす可能性がある。

  • 皮膚肥満細胞症に対しては,H1受容体拮抗薬を用いて症状を緩和し,成人ではソラレンと紫外線または外用コルチコステロイドによる治療を考慮する。

  • 全身性肥満細胞症に対しては,H1およびH2受容体拮抗薬ならびにときにクロモグリク酸を用い,aggressive型の肥満細胞症に対しては,インターフェロンα-2b,全身性コルチコステロイド,または脾臓摘出を考慮する。

  • 肥満細胞症の全ての患者についてアドレナリン充填済みの自己注射器を携行していることを確認する。

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