Msd マニュアル

Please confirm that you are a health care professional

読み込んでいます

アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要

執筆者:

Peter J. Delves

, PhD, University College London, London, UK

最終査読/改訂年月 2016年 6月
ここをクリックすると家庭版へ移動します
本ページのリソース

アレルギー性(アトピー性を含む)およびその他の過敏性疾患は,外来抗原に対する不適切または過剰な免疫応答である。不適切な免疫応答には,内在性の身体成分に対する誤った反応も含まれ,これが自己免疫疾患を招く。

過敏反応の分類

過敏反応は,ゲル-クームス分類によって4種類の型に分けられる。過敏性疾患には複数の型が含まれることが多い。

I型

I型反応(即時型過敏症)はIgE介在性である。組織肥満細胞および血中の好塩基球に結合しているIgEに抗原が結合し,あらかじめ作られたメディエータ(例,ヒスタミン,プロテアーゼ,走化性因子)の放出およびその他のメディエータ(例,プロスタグランジン,ロイコトリエン,血小板活性化因子,サイトカイン)の合成を引き起こす。これらのメディエータは,血管拡張,毛細血管透過性亢進,粘液の過剰分泌,平滑筋痙攣,ならびに好酸球,2型ヘルパーT(TH2)細胞,および他の炎症細胞による組織浸潤を引き起こす。

I型反応は,抗原への曝露後1時間未満で出現する。

I型過敏反応は,全てのアトピー性疾患(例,アレルギー性喘息,鼻炎,結膜炎),および多くのアレルギー疾患(例,アナフィラキシー,一部の症例で血管性浮腫,蕁麻疹,ラテックスおよび一部の食物に対するアレルギー)の基礎にある。アトピーとアレルギーはしばしば混同して使用されるが,以下の点で異なる:

  • アトピーは過剰なIgE介在性免疫応答である;全てのアトピー性疾患はI型過敏性疾患である。

  • アレルギーは,機序にかかわらず,外来抗原に対するあらゆる過剰免疫応答のことである。

それゆえ,全てのアトピー性疾患はアレルギー性とみなされるが,多くのアレルギー疾患(例,過敏性肺炎)はアトピー性ではない。アレルギー疾患はヒトで最もよくみられる疾患である。

アトピー性疾患は,鼻,眼,皮膚,および肺に最もよくみられる。これらの疾患には,結膜炎,外因性アトピー性皮膚炎,免疫介在性の蕁麻疹,免疫介在性の血管性浮腫,急性ラテックスアレルギー,一部のアレルギー性肺疾患(例,アレルギー性喘息,IgE介在性のアレルギー性気管支肺アスペルギルス症),アレルギー性鼻炎,有毒な刺傷に対するアレルギー反応などがある。

II型

II型反応(抗体依存性細胞傷害性過敏症)は,細胞表面抗原または細胞表面に連結した分子に抗体が結合した場合に生じる。抗原抗体複合体が抗体依存性細胞介在性細胞傷害に関わる細胞(例,ナチュラルキラー細胞,好酸球,マクロファージ),補体,またはそれら両方を活性化する。その結果,細胞および組織が損傷する。

II型反応が関与する疾患には,臓器移植片に対する超急性移植片拒絶反応,クームス試験陽性溶血性貧血,橋本甲状腺炎,および抗糸球体基底膜抗体病(例,グッドパスチャー症候群)などがある。

III型

III型反応(免疫複合体病)は,血管または組織に沈着した循環抗原抗体免疫複合体に反応して炎症を引き起こす。これらの複合体が補体系を活性化,または特定の免疫細胞に結合してその細胞を活性化し,炎症メディエータの放出をもたらす。免疫複合体形成に続いて起こる現象は,その免疫複合体を形成する抗原および抗体の相対的割合に一部依存する。初期には,抗原が過剰で抗原抗体複合体は少量であるため,補体は活性化されない。その後,抗原と抗体のつり合いが取れて,免疫複合体が増え,様々な組織(例,糸球体,血管)に沈着しやすくなると,全身反応を引き起こす。誘導された抗体のアイソタイプが変化し,複合体成分の糖鎖付加,大きさ,および電荷が臨床反応に寄与する。

III型の疾患には,血清病,SLE,関節リウマチ,白血球破砕性血管炎,クリオグロブリン血症,急性過敏性肺炎,およびいくつかの型の糸球体腎炎などがある。

III型反応は,抗原への曝露から4~10日後に出現し,抗原への曝露が続くと,慢性になることがある。

IV型

IV型反応(遅延型過敏症)はT細胞介在性である。

特異抗原と接触して感作されたT細胞は,同じ抗原への再曝露によって活性化される;直接的毒性作用により,または好酸球,単球およびマクロファージ,好中球,もしくはナチュラルキラー細胞を活性化するサイトカインの放出を通じて,組織を損傷する。

IV型反応が関与する疾患には,接触皮膚炎(例,ツタウルシ),亜急性および慢性の過敏性肺炎,同種移植片拒絶,結核に対する免疫応答,多種類の薬物過敏症などがある。

ラテックス過敏症

ラテックス過敏症は,ラテックス製品(例,ゴム手袋,デンタルダム,コンドーム,呼吸装置用のチューブ,カテーテル,ふくらますことができるラテックスのカフス付きの浣腸の先端部)に含まれる水溶性タンパクに対する過剰な免疫応答である。

1980年代後半から,普遍的予防策が重要視されてラテックス手袋の日常的使用がもたらされた際に,医療従事者の間で発生率が上昇した。

ラテックスへの反応には以下の2種類がある:

  • 急性(IgE媒介性)

  • 遅延性(細胞媒介性)

即時型反応は蕁麻疹およびアナフィラキシーを引き起こす;遅延型反応は皮膚炎を引き起こす。

医療従事者がラテックス手袋をすると,しばしば皮膚がヒリヒリして痂皮化することがあるが,通常この反応は化学刺激であり,ラテックスアレルギーではない。

ラテックス過敏症の診断は主に病歴に基づく。抗ラテックスIgE抗体を検出する皮膚テストおよびアッセイを利用できる。

治療はラテックスの回避である。医療機関はラテックスを含まない手袋および装備を使えるようにすべきである。

病因

複雑な遺伝因子,環境因子,および部位特異的な因子がアレルギーの出現の一因となる。

遺伝因子が関与する可能性があり,疾患の家族性遺伝,アトピーと特異的HLA遺伝子座との関連性,ならびに高親和性IgE受容体β鎖,IL-4受容体α鎖,IL-4,IL-13,CD14,DPP10(dipeptidyl-peptidase 10),およびADAM33(a disintegrin and metalloprotease domain 33)などいくつかの遺伝子の多型によって示唆される。

環境因子は,2型ヘルパーT(TH2)細胞が指揮する免疫応答を維持するための遺伝的因子と相互作用する。TH2細胞は好酸球を活性化し,IgE産生を促進するため,アレルギー誘発性である。幼児期に細菌およびウイルス感染症ならびに内毒素(例,リポ多糖体)に曝露されると,正常であれば,ナイーブTH2細胞応答を1型ヘルパーT(TH1)細胞応答に転換させることで,TH2細胞が抑制され,ひいてはアレルギー性反応が阻止される。調節性T(CD4陽性CD25陽性Foxp3陽性;Treg)細胞(TH2細胞の応答を抑制できる)およびIL-12を分泌する樹状細胞(TH1細胞の応答を促進する)もおそらく関与する。しかし,先進国における少子・小世帯化,より清潔な屋内環境,および早期の抗菌薬使用などの傾向により,主にTH1細胞の応答を促進する感染因子への小児の曝露が制限される可能性がある;このような傾向により一部のアレルギー疾患の有病率増加が説明できる可能性がある。アレルギーの発生に寄与すると考えられる他の因子には,アレルゲンへの慢性的な曝露および感作,食事,環境汚染物質などがある。

部位特異的な因子には,気管支上皮および皮膚の接着分子,ならびにTH2細胞を標的組織に向かわせる消化管内の分子がある。

アレルゲン

定義によれば,アレルゲンはIgE介在性のI型またはT細胞介在性のIV型免疫応答を誘発する。アレルギー性誘因は,ほとんどの場合が低分子量タンパクである;その多くは空気中の粒子に付着する可能性がある。

急性および慢性のアレルギー反応を最も多く引き起こすアレルゲンには以下のものがある:

  • チリダニの糞

  • 動物のフケ

  • 花粉(樹木,イネ科の植物,雑草)

  • カビ

病態生理

IgEで感作された肥満細胞および好塩基球にアレルゲンが結合すると,これらの細胞内の顆粒からヒスタミンが放出される。肥満細胞は広く分布するが,皮膚,肺,および消化管粘膜に最も集中している;ヒスタミンは炎症を促進し,臨床的アトピーの主要なメディエータである。組織の物理的破壊および様々な物質(例,組織刺激物質,アヘン剤,界面活性剤,補体成分C3aおよびC5a)は,IgEを介さずに,ヒスタミン放出を直接誘発することができる。

ヒスタミンは以下を引き起こす:

  • 局所的な血管拡張(紅斑を引き起こす)

  • 毛細血管透過性の亢進および浮腫(膨疹を形成)

  • ニューロン反射の機序を介する周辺細動脈の血管拡張(フレア—膨疹周囲の発赤を引き起こす)

  • 知覚神経の刺激(そう痒を引き起こす)

  • 気道(気管支収縮)および消化管(消化管運動亢進)の平滑筋収縮

  • 鼻汁,唾液分泌,気管支腺分泌の増加

ヒスタミンは,全身的に放出された場合,強力な細動脈拡張因子であり,末梢における広範な血液貯留および低血圧を引き起こす;脳血管拡張は血管性頭痛の要因となることがある。ヒスタミンにより毛細血管透過性が亢進する;結果として血管腔から血漿および血漿タンパクが喪失して循環性ショックを悪化させることがある。この喪失は,副腎のクロム親和性細胞からの代償性カテコールアミンの急増をもたらす。

症状と徴候

アレルギー疾患に共通する症状としては,以下のものがある:

  • 鼻漏,くしゃみ,および鼻閉(上気道)

  • 喘鳴および呼吸困難(下気道)

  • そう痒(眼,鼻,皮膚)

徴候には,鼻甲介の浮腫,副鼻腔の触診時の痛み,喘鳴,結膜充血および浮腫,蕁麻疹,血管性浮腫,皮膚炎,および皮膚の苔癬化などがある。吸気性喘鳴,呼気性喘鳴,および低血圧は,生命を脅かすアナフィラキシーの徴候である。

診断

  • 臨床的評価

  • ときに血算と血清中IgE濃度(非特異的検査)

  • しばしば皮膚テストおよびアレルゲン特異的血清IgE検査(特異的検査)

  • まれに誘発試験

徹底的な病歴聴取は,検査またはスクリーニングよりも一般的に信頼性が高い。病歴には以下を含めるべきである:

  • 発作の頻度および長さ,ならびに経時的変化についての質問

  • 同定可能であれば誘発因子

  • 季節的または状況的背景(例,花粉の季節中;動物,枯草,もしくは塵に曝露した後;運動時;または特定の場所で発生することが予想される場合)との関係

  • 同様の症状またはアトピー性疾患の家族歴

  • 試みた治療に対する反応

小児の喘息はアトピー性である可能性が高く,30歳以降に発症する喘息はそうではないため,喘息の発症年齢が重要な場合がある。

医療従事者は,ラテックス製品への曝露がアレルギー反応を引き起こしていることに気づかないことがある。

非特異的検査

特定の検査により,症状のアレルギー性起源が示唆されるが,確定はできない。

好酸球数を減少させるコルチコステロイドを服用していない患者であれば,血算を行って好酸球増多症を検出できる場合がある。ただし,アトピーや他の疾患(例,薬剤過敏症,癌,一部の自己免疫疾患,寄生虫感染症)で好酸球が増加する可能性はあるものの,好酸球数が正常でもアレルギーは除外されないため,血算の価値は限定的である。通常,総白血球数は正常である。貧血および血小板増多症は,アレルギー反応に典型的なものではないため,直ちに全身性炎症性疾患を考慮すべきである。

結膜分泌物,鼻汁,または痰で白血球を調べることができる;好酸球の所見があれば,TH 2 細胞を介した炎症の可能性が高いことが示唆される。

血清中IgE濃度は,アトピー性疾患で上昇するが,寄生虫感染症,伝染性単核球症,自己免疫疾患,薬物反応,免疫不全疾患(高IgE症候群およびWiskott-Aldrich症候群),ならびに多発性骨髄腫の一部の型でも上昇することがあるため,診断にはほとんど役に立たない。IgE濃度は,アレルギー性気管支肺アスペルギルス症で治療に対する反応を追跡する上でおそらく最も有用である。

特異的検査

皮膚テストは,抗原の濃度を標準化して皮膚に直接塗布するもので,詳細な病歴および身体診察によっても持続する症状または重度の症状の原因および誘因を特定できない場合に適応となる。皮膚テストは,アレルギー性喘息または食物アレルギーよりもアレルギー性鼻炎および結膜炎の診断で陽性適中率が高い;食物アレルギーでは陰性適中率が高い。

最も多く用いられる抗原は,花粉(樹木,イネ科の植物,雑草),カビ,チリダニの糞,動物のフケおよび血清,昆虫毒,食品,ならびにβ-ラクタム系抗菌薬である。テストに含める抗原は,患者の病歴および地理的な有病率に基づいて選択する。

皮膚テストでは以下の2つの方法を用いることができる:

  • 経皮的(プリック)テスト

  • 皮内テスト

プリックテストでは最も頻度が高いアレルギーを検出できる。皮内テストは,より感度が高いが特異度は低い;プリックテストの結果が陰性または曖昧な場合に,アレルゲンに対する感受性を評価するために用いることがある。

プリックテストでは,皮膚の上に抗原抽出物を1滴たらし,抽出液を塗り広げて,20°の角度で保持した27Gの注射針の尖端または市販のプリック用器具で抽出液を塗り広げて,ひっかくか穿刺する。

皮内テストでは,1~2mmの小水疱を形成するのに十分な抽出液(典型的には0.02mL)を0.5または1mLの注射器および27Gのショートベベル針で皮内に注射する。

プリックテストおよび皮内テストでは,陰性対照として希釈液のみ,陽性対照としてヒスタミン(プリックテストで10mg/mL,皮内試験で1:1000に希釈した溶液0.01mL)を加えるべきである。テスト抗原に対する全身反応が最近(1年未満)認められたことのある患者では,標準試薬の100倍希釈溶液からテストを開始し,次に10倍希釈,それから標準濃度を用いる。膨疹および発赤反応が起こり,15~20分経過後に膨疹の直径が陰性対照よりも3~5mm大きければ,テスト結果を陽性とみなす。皮膚描記症(皮膚の摩擦または擦過によって誘発される膨疹および発赤反応)では偽陽性となる。アレルゲン抽出液が不適切に保管されていた場合または使用期限を過ぎている場合にも偽陽性が生じる。特定の薬物が結果を妨げることがあるため,テスト前の数日から1週間は休薬すべきである。これらの薬物には,OTC薬および処方薬の抗ヒスタミン薬,三環系抗うつ薬,およびモノアミン酸化酵素阻害薬などがある。β遮断薬を服用している患者は,重度反応の危険因子を有する可能性がより高いため,テストを避けるべきであると提案している医師もいる。このような危険因子では,心肺予備力が不十分なことが予測される傾向があり,冠動脈疾患,不整脈,および高齢などが含まれる。さらに,β遮断薬は,アドレナリンなどのβ作動薬に対する反応を阻害することによって,重度反応の治療を妨げることもある。

アレルゲン特異的血清IgE検査は,酵素標識抗IgE抗体を用いて既知のアレルゲンに対する血清IgEの結合を検出するものである。皮膚テストが無効または危険と考えられる場合—例えば,テスト結果を妨害する薬物をテスト前に一時的に休薬できない場合,または湿疹もしくは乾癬などの皮膚疾患により皮膚テストの実施が困難と考えられる場合に実施する。アレルゲン特異的血清IgE検査では,アレルゲンを合成物質の表面に固定する。患者血清および酵素で標識した抗IgE抗体を反応させた後,酵素に対する基質を加える;基質は比色測定用の蛍光を惹起または化学発光し,それにより結合を検出できる。アレルゲン特異的IgE試験は,125I標識抗IgE 抗体を用いる放射性アレルゲン吸着試験(RAST)の代わりに用いられるようになってきた。アレルゲン特異的血清IgE検査は放射性ではないが,ときには依然としてRASTと呼ばれることがある。

誘発試験は,アレルゲンに対する粘膜の直接的な曝露を必要とし,アレルギー反応を立証しなければならない患者(例,職業または障害に関する請求のため)およびときに食物アレルギーの診断に適応となる。例えば,運動誘発喘息を診断するために運動するよう指示する場合または寒冷蕁麻疹を診断するために皮膚に角氷を4分間置く場合がある。

眼試験は皮膚テストをしのぐ利点がなく,めったに用いられない。

鼻腔および気管支誘発試験は主に研究手段であるが,皮膚テストにおける陽性反応の臨床的意義が不明確な場合または利用可能な抗原抽出物がない場合(例,職業性喘息で)に気管支誘発試験がときに用いられる。

治療

  • 救急治療

  • アレルギー誘因の除去または回避

  • H1受容体拮抗薬

  • 肥満細胞安定化薬

  • 抗炎症性コルチコステロイドおよびロイコトリエン阻害薬

  • 免疫療法(脱感作)

救急治療

重度のアレルギー反応(例,アナフィラキシー)には,迅速な救急治療が必要である。

気道が侵されている場合(例,血管性浮腫による),気道の確保を最優先する。治療にはアドレナリン投与および/または気管挿管などがある。

重度のアレルギーを有する患者には,アドレナリン充填済みの自己注射器および経口抗ヒスタミン薬を常に携行し,重度のアレルギー反応が起こった場合には,これらの薬剤を直ちに使用して,救急外来へ行くよう忠告しておくべきである。救急外来では,患者を注意深くモニタリングし,必要に応じて治療を繰り返したり調節したりできる。

環境管理

アレルギー誘因の除去または回避は,一次予防戦略であると同時に,アレルギーに対する一次治療でもある。

H 1 受容体拮抗薬

抗ヒスタミン薬は受容体を遮断する;ヒスタミン産生または代謝には影響しない。

H1受容体拮抗薬がアレルギー疾患に対する治療の中心である。H2受容体拮抗薬は主に胃酸分泌抑制に用いられ,アレルギー反応に対する有用性は限られている;特定のアトピー性疾患,特に慢性蕁麻疹に対する補助療法として適応となる場合がある。

経口H1受容体拮抗薬経口H 1 受容体拮抗薬)により,様々なアトピー性疾患やアレルギー疾患(例,季節的な花粉症,アレルギー性鼻炎,結膜炎,蕁麻疹,その他の皮膚疾患,不適合輸血に対する軽度の反応)の症状が緩和するが,アレルギー性気管支収縮と全身性の血管拡張にはあまり効果がない。作用発現までの時間は通常15~30分で,最大の効果は1時間で得られる;作用持続時間は通常3~6時間である。

経口H1受容体拮抗薬および交感神経刺激薬(例,プソイドエフェドリン)を含有する製品は,成人および12歳以上の小児用にOTC薬として広く入手可能である。これらの製品は,抗ヒスタミン薬および鼻閉改善薬の両方が必要なときに特に有用である;しかし,ときに禁忌となる(例,患者がMAOIを服用中の場合)。

経口H1受容体拮抗薬には以下の2種類がある:

  • 鎮静性

  • 非鎮静性(鎮静作用の弱いものと考える方がよい)

鎮静性抗ヒスタミン薬は処方箋がなくても広く入手可能である。これらはいずれもかなりの鎮静作用および抗コリン作用を有する;高齢者,ならびに緑内障,前立腺肥大症,便秘,起立性低血圧,せん妄,および認知症の患者に特有の問題をもたらす。

鎮静作用が治療に役立つ可能性がある場合(例,夜間のアレルギーの緩和,成人における不眠症もしくは若年患者における悪心の短期的治療)を除き,非鎮静性(非抗コリン性)抗ヒスタミン薬が望ましい。上気道感染症における鼻漏の軽減のために鎮静性抗ヒスタミン薬を使用することが抗コリン作用により一部正当化される場合もある。

抗ヒスタミン溶液には,以下の投与方法がある:

  • 経鼻(鼻炎治療薬のアゼラスチンまたはオロパタジン)

  • 点眼(結膜炎治療薬のアゼラスチン,エメダスチン,ケトチフェン,レボカバスチン,オロパタジン,ペミロラスト)

局所ジフェンヒドラミンは入手可能であるが,使用すべきではない;その効力は証明されておらず,薬物感作(すなわちアレルギー)が発生する場合があり,経口H1受容体拮抗薬を同時に服用している幼児では抗コリン作用薬の毒性が出現することがある。

icon

経口H 1 受容体拮抗薬

薬物

成人の常用量

小児の常用量

利用可能な製剤

鎮静作用のあるもの*

brompheniramine

4mg,4~6時間毎

または8mg,8~12時間毎

2歳未満:禁忌

2~6歳:0.125mg/kg,6時間毎(最大用量6~8mg/日)

6~11歳:2~4mg,6~8時間毎(最大用量12~16mg/日)

12歳以上:成人用量

4,8,および12mg錠

2mg/5mLエリキシル

8および12mg錠(徐放性)

クロルフェニラミン

2~4mg,4~6時間毎

2歳未満:禁忌

2~6歳:推奨されない

6~11歳:2mgを4~6時間毎(最大用量12mg/日)

12歳以上:成人用量

2mgチュアブル錠

4,8,および12mg錠

2mg/5mLシロップ

8および12mg錠またはカプセル(徐放性)

クレマスチン

1.34mg(クレマスチンとして1.0mg),1日2回~2.68mg,1日3回

1歳未満:禁忌

1~3歳:0.33~0.67mg,12時間毎

3~5歳:0.67mg,12時間毎

6~11歳:0.67~1.34mg,12時間毎

12歳以上:成人用量

1.34および2.68mg錠

0.67mg/5mLシロップ

シプロヘプタジン

4mg,1日3回または1日4回(最大用量0.5mg/kg/日)

2歳未満:禁忌

2~6歳:2mg,1日2回~1日3回(最大用量12mg/日)

7~14歳:4mg,1日2回~1日3回(最大用量16mg/日)

4mg錠

2mg/5mLシロップ

dexchlorpheniramine

2mg,4~6時間毎

2歳未満:禁忌

2~5歳:0.5mg,4~6時間毎(最大用量3mg/日)

6~11歳:1mg,4~6時間毎(最大用量6mg/日)

12歳以上:成人用量

2mg錠

2mg/5mLシロップ

4および6mg錠(徐放性)

ジフェンヒドラミン

25~50mg,4~6時間毎

2歳未満:禁忌

2~11歳:1.25mg/kg,6時間毎(最大用量300mg/日)

12歳以上:成人用量

25および50mgカプセルまたは錠

12.5mg/mLシロップ

12.5mg/5mLエリキシル

ヒドロキシジン

25~50mg,1日3回または1日4回

2歳未満:推奨されない

2~11歳:0.7mg/kg,1日3回

12歳以上:成人用量

25,50,および100mgカプセル

10,25,50,および100mg錠

10mg/5mLシロップ

25mg/5mL経口懸濁液

プロメタジン

12.5~25mg,1日2回

2歳未満:禁忌

2歳以上:6.25~12.5mg,1日2回または1日3回

12.5,25,および50mg錠

6.25mg/5mLおよび25mg/5mLシロップ

非鎮静性

acrivastine/プソイドエフェドリン

8/60mg,1日2回または1日3回

12歳未満:推奨されない

12歳以上:成人用量

acrivastine 8mg + プソイドエフェドリン60mg

セチリジン

5~10mg,1日1回

生後6~11カ月:2.5mg,1日1回

生後12~23カ月:2.5mg,1日2回

2~5歳:5mg,1日1回

6歳以上:成人用量

5および10mg錠

1mg/mLシロップ

デスロラタジン

5mg,1日1回

生後6~11カ月:1mg/日

1~5歳:1.25mg/日

6~11歳:2.5mg,1日1回

12歳以上:成人用量

5mg錠

0.5mg/mLシロップ

フェキソフェナジン

60mg,1日2回または180mg,1日1回

生後6~23カ月:15mg,1日2回

2~11歳:30mg,1日2回

12歳以上:成人用量

30,60,および180mg錠

6mg/mL経口懸濁液

レボセチリジン

5mg,1日1回

6歳未満:禁忌

6~11歳:2.5mg,1日1回

12歳以上:成人用量

5mg錠

0.5mg/mL経口懸濁液

ロラタジン

10mg,1日1回

2~5歳:5mg,1日1回

6歳以上:成人用量

10mg錠

1mg/mLシロップ

ミゾラスチン

10mg,1日1回

12歳未満:推奨されない

12歳以上:成人用量

10mg錠

*鎮静性抗ヒスタミン薬は全て強い抗コリン作用を有する。一般に,高齢者,または緑内障,前立腺肥大症,便秘,せん妄,認知症,もしくは起立性低血圧の患者には用いるべきでない。これらの薬剤は,口腔乾燥,霧視,尿閉,便秘,および起立性低血圧を引き起こすことが多い。

小児では,投与回数を増やすべきではない。

肥満細胞安定化薬

これらの薬剤は肥満細胞からのメディエータ放出を遮断する。

肥満細胞安定化薬は,他の薬剤(例,抗ヒスタミン薬,外用コルチコステロイド)が無効の場合,または忍容性が良好でない場合に用いられる。

以下の投与方法がある:

  • 経口(クロモグリク酸)

  • 経鼻(例,アゼラスチン,クロモグリク酸)

  • 点眼(例,アゼラスチン,クロモグリク酸,lodoxamide,ケトチフェン,ネドクロミル,オロパタジン,ペミロラスト)

点眼薬および経鼻薬のいくつかは二作用性の肥満細胞安定化薬/抗ヒスタミン薬である(上記参照のこと)。

抗炎症薬

コルチコステロイドは経鼻( 経鼻吸入コルチコステロイドおよび 経鼻吸入肥満細胞安定化薬)または経口投与が可能である。

経口コルチコステロイドは,以下に適応がある:

  • 重度であるが自然治癒性で,かつ外用コルチコステロイドでは容易に治療できないアレルギー疾患(例,喘息の急性増悪,広範囲に及ぶ重度の接触皮膚炎)

  • 他の治療に抵抗性の疾患

コルチコステロイド点眼薬は,感染症のリスクがあるため,眼科医が関与する場合にのみ用いる。

NSAIDは典型的には有用ではないが,例外はアレルギー性結膜炎に対して結膜充血およびそう痒を緩和するために使用される外用薬である。

icon

経鼻吸入コルチコステロイド

薬物

1回噴霧当たりの投与量

初回量(1外鼻孔当たりの噴霧)

ベクロメタゾン

42μg

6~11歳:1回噴霧を1日2回

12歳以上:1回噴霧を1日2回~1日4回

ブデソニド

32μg

6歳以上:1回噴霧を1日1回

フルニソリド

29μg

6~14歳:1回噴霧を1日3回または2回噴霧を1日2回

成人:2回噴霧を1日2回

フルチカゾン

50μg

4~11歳:1回噴霧を1日1回

12歳以上:2回噴霧を1日1回

モメタゾン

50μg

2~11歳:1回噴霧を1日1回

12歳以上:2回噴霧を1日1回

トリアムシノロン

55μg

6~11歳:1回噴霧を1日1回

12歳以上:2回噴霧を1日1回

icon

経鼻吸入肥満細胞安定化薬

薬物

1回噴霧当たりの投与量

初回量(1外鼻孔当たりの噴霧)

アゼラスチン

137μg

5~11歳:1回噴霧を1日2回

12歳以上:1~2回噴霧を1日2回

クロモグリク酸

5.2mg

6歳以上:1回噴霧を1日3回または1日4回

オロパタジン

665μg

6~11歳:1回噴霧を1日2回

12歳以上:2回噴霧を1日2回

他の薬物

ロイコトリエン修飾薬(leukotriene modifier)は,以下の治療に適応がある。

  • 軽症持続型喘息

  • 季節性アレルギー性鼻炎

抗IgE抗体(オマリズマブ)は以下に適応がある:

  • 標準治療に抵抗性の中等度持続型または重度の喘息

  • 抗ヒスタミン療法に抵抗性の慢性特発性蕁麻疹

免疫療法

アレルゲンを注射により徐々に増量して投与したり(減感作または脱感作),高用量を舌下に投与したりして曝露させることで寛容が誘導される可能性があるため,アレルゲンへの曝露を回避できない場合および薬物治療が不十分な場合に適応となる。

機序は明らかではないが,以下の物質の誘導が関与している可能性がある:

  • IgG抗体(アレルゲンに対してIgEと競合するか,または肥満細胞のIgE受容体にIgEが結合するのを阻止する)

  • インターフェロン-γ,IL-12,およびTH1細胞によって産生されるサイトカイン

  • 制御性T細胞

十分な効果を得るには,当初,週1回または2回注射する。用量は,最初の感受性に応じて,典型的には0.1~1.0生物学的活性単位(BAU)で開始し,最大耐量(中等度の有害作用を引き起こし始める用量)が確定するまで,注射のたびに最大2倍の増量を毎週または隔週で行う;注射後にアナフィラキシーを起こすことがあるため,用量漸増中は投与後約30分間にわたり患者を観察すべきである続いて,1年を通して2~4週毎に最大耐量を注射すべきである;季節性アレルギーの場合でさえ通年治療の方が季節前または季節中治療より成績良好である。

用いるアレルゲンは,典型的には花粉,チリダニの糞,カビ,および針をもつ昆虫の毒など,回避できないものとする。昆虫毒は重量で標準化されている;典型的な開始量は0.01μgであり,通常の維持量は100~200μgである。本来,動物性フケの脱感作の対象は曝露を回避できない患者(例,獣医師,研究員)に限られるが,この治療法が有用であるとするエビデンスはほとんどない。食物アレルゲンの脱感作は研究段階である。ペニシリンおよび他の特定の薬物,ならびにヒト以外(異種)の血清については脱感作が可能である。

有害作用は,ときに不注意によるあまりにも高用量の筋肉内または静脈内注射に起因する過量投与に関連することが最も多く,軽度の咳嗽またはくしゃみから全身性蕁麻疹,重度の喘息,アナフィラキシーショック,およびまれに死亡まで様々である。有害作用は以下によって防ぐことが可能である:

  • 投与量を少しずつ増量する

  • 前回の注射に対して局所反応が大きければ(直径2.5cm以上),同量を繰り返すか減量する

  • 新しい抽出物を用いる場合は用量を減らす

花粉の季節には花粉抽出物の用量を減らすことが推奨される。アナフィラキシーの迅速な治療に対してアドレナリン,酸素,および蘇生器具が速やかに使用できるようにしておくべきである。

舌下免疫療法は,アレルギー性鼻炎に使用できる。

妊娠中および授乳中のアレルギー治療

アレルギーのある妊婦では,アレルゲンの回避が症状をコントロールする上で最善の方法である。症状が重度であれば,抗ヒスタミン薬の鼻腔スプレーが推奨される。抗ヒスタミン薬の鼻腔スプレーでは効果が不十分な場合にのみ経口抗ヒスタミン薬を使用すべきである。

授乳中は,抗ヒスタミン薬はできれば避けるべきである。抗ヒスタミン薬が必要な場合,経口薬より鼻腔スプレーが望ましい。症状のコントロールに経口抗ヒスタミン薬が欠かせない場合,授乳後すぐに服用すべきである。

予防

アレルギーの誘因を排除または回避すべきである。対策としては以下のものがある:

  • 合成繊維の枕および不透過性のマットレスカバーの使用

  • シーツ,枕カバー,および毛布を熱湯で頻繁に洗浄

  • 布張りの家具,ぬいぐるみ,および絨毯の除去

  • ゴキブリ駆除による曝露解消

  • 地下室および他の通気が悪く湿気の多い部屋における除湿機の使用

  • 加熱蒸気による住居の処理

  • HEPA(high-efficiency particulate air)フィルター付き掃除機の使用

  • 誘因となる食品の回避

  • ペットを特定の部屋または屋外に限定

  • 屋内の頻回の清掃

非アレルギー性の補助的な誘因(例,タバコの煙,強い香り,刺激性のガス,空気汚染,低温,高湿度)も可能であれば回避または管理すべきである。

要点

  • アトピー性反応(ダニの糞,動物のフケ,花粉,またはカビによって引き起こされることが多い)は,IgE介在性のアレルギー反応で,ヒスタミンの放出を誘発する。

  • 病歴は検査よりも信頼性が高いため,徹底的に病歴を聴取し,病歴には発作の頻度および持続,症状と季節または状況の関係,家族歴,可能性のある誘因,および治療の試みへの反応などを含める。

  • 病歴および診察から原因が同定されない場合,皮膚テストまたはアレルゲン特異的血清IgE検査がアレルゲンの同定に役立つことがある。

  • アレルゲンの除去または回避が治療および予防の鍵であり,症状を軽減するためにH1受容体拮抗薬,外用コルチコステロイド,および/または肥満細胞安定化薬を使用する。

  • アレルゲンを回避できず,他の治療が無効であれば,免疫療法が必要になることがある。

ここをクリックすると家庭版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP