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遺伝性ヘモクロマトーシス

(原発性ヘモクロマトーシス)

執筆者:

James Peter Adam Hamilton

, MD, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月
本ページのリソース

遺伝性ヘモクロマトーシスは,過剰な鉄(Fe)蓄積を特徴とする遺伝性疾患で,組織障害を引き起こす。所見としては,全身症状,肝疾患,心筋症,糖尿病,勃起障害,および関節障害がみられることがある。診断は,血清フェリチン,鉄,およびトランスフェリン飽和度の高値により行い,遺伝子検査により確定する。連続的な瀉血による治療が一般的である。

鉄過剰症の概要も参照のこと。)

病因

遺伝性ヘモクロマトーシスには,変異した遺伝子に応じて,以下に示す1~4型の4種の病型がある。

  • Type 1:HFE遺伝子の突然変異

  • Type 2(若年性ヘモクロマトーシス):HJVおよびHAMP遺伝子の突然変異

  • Type 3:TFR2遺伝子の突然変異

  • Type 4(フェロポルチン病):SLC40A1遺伝子の突然変異

他に肝臓の鉄過剰を引き起こしうるはるかにまれな遺伝性疾患があるが,その臨床象は,一般に他の臓器の機能不全による症状および徴候が主体である(例,低トランスフェリン血症または無トランスフェリン血症では貧血,無セルロプラスミン血症では神経障害)。

これらの病型は,発症年齢の点で著しく異なるが,鉄過剰症による臨床的結果は,全て同じである(1)。

Type 1の遺伝性ヘモクロマトーシス

Type 1は古典的な遺伝性ヘモクロマトーシスで,HFE関連ヘモクロマトーシスとも呼ばれる。80%を超える症例がC282Yホモ接合体またはC282Y/H63D複合ヘテロ接合体変異に起因している。この病型は常染色体劣性遺伝疾患で,北欧系の人ではホモ接合体の頻度が1:200,ヘテロ接合体の頻度が1:8である。黒人では低頻度で,アジア系の人にはほとんどみられない。臨床的なヘモクロマトーシス患者のうち,83%がホモ接合体である。ただし,理由は不明であるが,表現型を伴う(臨床的な)疾患は,遺伝子異常の頻度から予想されるものよりはるかに少ない(すなわち,ホモ接合体でも障害がみられない患者が多い)。

Type 2の遺伝性ヘモクロマトーシス

Type 2の遺伝性ヘモクロマトーシス(若年性ヘモクロマトーシス)は,まれな常染色体劣性遺伝疾患で,転写タンパクヘモジュベリンに影響を及ぼすHJV遺伝子の偏位およびヘプシジンを直接コードしているHAMP遺伝子の変異により発症する。青年期にみられることが多い。

Type 3の遺伝性ヘモクロマトーシス

トランスフェリン受容体2(TFR2)は,トランスフェリン飽和度をコントロールしていると考えられているタンパクで,この突然変異により常染色体劣性遺伝疾患のまれなヘモクロマトーシスが引き起こされる。

Type 4の遺伝性ヘモクロマトーシス

Type 4の遺伝性ヘモクロマトーシス(フェロポルチン病)は,主として南欧系の人にみられる。SLC40A1遺伝子における常染色体優性の突然変異に起因し,フェロポルチンのヘプシジン結合能に影響を与える。

トランスフェリン欠乏症およびセルロプラスミン欠乏症

トランスフェリン欠乏症(低トランスフェリン血症または無トランスフェリン血症)では,吸収された鉄が門脈系に移行して,トランスフェリンに結合せずに肝臓に沈着する。トランスフェリン欠乏のために,その後に赤血球産生部位へ移動する鉄が減少する。

セルロプラスミン欠乏症(無セルロプラスミン血症)では,フェロキシダーゼ不足によりFe2+ からFe3+への変換が妨げられる;トランスフェリンへの結合には,このような変換が必要である。トランスフェリン結合障害により,細胞内貯蔵鉄から血漿輸送への移動が妨げられるため,組織内に鉄が蓄積する。

病因論に関する参考文献

  • 1.Pietrangelo A: Hereditary hemochromatosis: Pathogenesis, diagnosis, and treatment. Gastroenterology 139:393–408, 2010.

病態生理

正常な全身の貯蔵鉄量は,女性で約2.5g,男性で3.5gである。ヘモクロマトーシスでは,鉄蓄積が過剰になるまで(例,10~20gを上回るまで)症状の出現が遅れる場合があるため,遺伝性異常であったとしても,中年期を過ぎるまで認識されない可能性がある。女性では,月経(加えて,ときに妊娠および出産)による鉄喪失が鉄蓄積を相殺する傾向にあるため,閉経前に臨床症状がみられることはまれである。

HFE関連およびHFE非関連ヘモクロマトーシスにおける鉄過剰の機序は,いずれも消化管からの鉄吸収を増加させるため,組織内での鉄の慢性的な沈着をもたらす。ヘプシジンは,肝臓由来のペプチドで,鉄吸収のコントロール機序で不可欠な因子である。貯蔵鉄量が多くなると,正常であればヘプシジンの産生が増加するが,健常者ではヘプシジンが(鉄吸収に関与している)フェロポルチンを阻害することで,鉄の過剰な吸収および貯蔵が防止されている。Type 1~4のヘモクロマトーシスは,同じ基礎病態(例,ヘプシジンの合成不足または活性低下)および鍵となる臨床的特徴を共有している。

一般に組織傷害は,組織における鉄沈着が触媒となり産生される反応性遊離ヒドロキシラジカルにより引き起こされると考えられている。他の機序により特定の臓器が影響を受ける場合もある(例,メラニンとともに鉄蓄積が増加すると,皮膚への色素沈着がみられることがある)。肝臓で,鉄に関連する脂質過酸化によって肝細胞アポトーシスが誘発され,それによりクッパー細胞の活性化および炎症性サイトカインの放出が促される。炎症性サイトカインは肝星細胞を活性化してコラーゲンを産生させ,肝線維化の病的な蓄積が生じる。

症状と徴候

鉄過剰による臨床的結果は,鉄過剰の病因および病態生理と無関係に同じである。

従来は,著しい臓器障害が生じるまで症状は現れないと,専門家も考えていた。しかし,臓器障害は緩徐で軽微であり,疲労および非特異的な全身性の症状と徴候が早期に現れることが多い。例えば,肝機能障害が,疲労,右上腹部痛,肝腫大を伴って潜行性に現れることがある。通常は鉄過剰症および肝炎の臨床検査値異常が症状に先行する。

Type 1の遺伝性(HFE)ヘモクロマトーシスでみられる症状は,鉄沈着が最も多い臓器に関連する( 遺伝性ヘモクロマトーシスで一般的な症状)。男性では,性腺への鉄沈着に起因する性腺機能低下症および勃起障害が初期症状となる場合がある。他によくみられる初期症状として,耐糖能障害または糖尿病がある。甲状腺機能低下症を呈する患者もいる。

合併症としては肝疾患が最も頻度が高く,肝硬変に進行する場合もあり,肝硬変患者の20~30%が肝細胞癌を発症する。肝疾患が最も一般的な死亡原因である。

次に一般的な致死性合併症は,心不全を伴う心筋症である。色素沈着(青銅色糖尿病[bronze diabetes])および晩発性皮膚ポルフィリン症が一般的であり,症候性関節障害も同様に一般的である。

Type 2の症状および徴候には,進行性の肝腫大および低ゴナドトロピン性性腺機能低下症などがある。

Type 3の症状および徴候は,type 1の遺伝性(HFE)ヘモクロマトーシスとほぼ同じである。

Type 4は,トランスフェリン飽和度が低値または正常値で,血清フェリチンが増加するに伴い,10歳までに発現する;患者が20~30歳代になるとトランスフェリン飽和度が進行性に上昇する。臨床症状は,type 1よりも軽度で,中等度の肝疾患および軽度の貧血を伴う。

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遺伝性ヘモクロマトーシスで一般的な症状

症状

有病率(概数)

全身症状(例,筋力低下,嗜眠)

75%

肝機能検査異常

75%

皮膚への色素沈着

70%

糖尿病

50%

関節障害

45%

勃起障害

45%(男性)

心筋症

15%

診断

  • 血清フェリチン,空腹時血清鉄,およびトランスフェリン飽和度

  • 遺伝子検査

  • ときに肝生検

症状および徴候は,非特異的,軽微,および発現が緩徐である場合があるため,遺伝性ヘモクロマトーシスを疑う指標は高くすべきである。典型的な症状がみられ,特にそれらの症状が複合しており,ルーチン評価後も依然として原因不明であれば,原発性ヘモクロマトーシスを疑うべきである。ヘモクロマトーシス,肝硬変,または肝細胞癌の家族歴が,より特異的な手がかりである。慢性肝疾患患者には,全例で鉄過剰症の評価を行うべきである。

血清フェリチンの測定は,最も簡単で最も直接的な初回検査である。遺伝性ヘモクロマトーシスでは,高値(女性では200ng/mLを超える値,男性では250ng/mLを超える値)が通常みられるが,炎症性肝疾患(例,慢性ウイルス性肝炎,非アルコール性脂肪肝炎アルコール性肝疾患),癌,特定の全身性炎症性疾患(例,関節リウマチ血球貪食性リンパ組織球症),および肥満といった他の異常により上昇することもある。フェリチン値が異常であれば,さらに検査を実施する;検査には,空腹時血清鉄(通常は300mg/dLを超える値)および鉄結合能(トランスフェリン飽和度で,通常は50%を超える値)を含める。トランスフェリン飽和度が45%未満であれば,鉄過剰症の陰性適中率は97%である。

Type 2では,フェリチン値が1000ng/mLを超え,トランスフェリン飽和度が90%を上回る。

トランスフェリンまたはセルロプラスミンの欠乏症では,血清トランスフェリン(すなわち,鉄結合能)およびセルロプラスミン値が非常に低いかまたは検出できない。

遺伝子検査は,HFE遺伝子変異により引き起こされる遺伝性ヘモクロマトーシスを診断できる。HFE遺伝子のC282Yホモ接合性変異を有する患者の約70%ではフェリチン値が高いが,そうした患者の内,臓器機能障害の所見を有するのは約10%のみである。HFE遺伝子のヘテロ接合性変異(すなわちC282Y/H63D)を有する患者では,臨床的に重要な鉄過剰症はさらに頻度が低い。特に若年患者において,フェリチンおよび鉄の血液検査により鉄過剰が明らかになり,遺伝子検査でHFE遺伝子変異が陰性であるような極めてまれな症例では,type 2~4のヘモクロマトーシスが疑われる。これらの診断の確認には進展がみられている。

肝硬変とホモ接合性C282Y変異を有する患者のうち最大80%で,1000ng/mLを超えるフェリチン値,ASTおよびALT上昇がみられ,血小板数が200 x 103/μLを下回る。肝硬変が存在すると予後に影響を与えるため,フェリチン値が1000ng/mLを超える場合,肝生検が実施されることが多く,組織の鉄含有量が測定される(利用可能な場合)。鉄過剰症の血清学的所見を認めるが遺伝学的評価では陰性である患者にも肝生検が推奨される。MRIおよび造影剤を用いないMRエラストグラフィー(MRE)は,肝臓の鉄含有量および肝線維化を推定する非侵襲的代替法で,一層精度が高まってきている。

遺伝性ヘモクロマトーシス患者の第1度近親者では,血清フェリチン値の測定ならびにHFE遺伝子のC282YおよびH63D変異の遺伝子検査によるスクリーニングが必要である。

治療

  • 瀉血

臨床症状,血清フェリチン高値(特に1000ng/mLを超える場合),またはトランスフェリン飽和度増加がみられる患者が治療適応となる。無症状の患者では,定期的な(例,年1回)臨床的評価のみが必要で,血清鉄,フェリチン,トランスフェリン飽和度,および肝酵素を測定する。

瀉血は,過剰な鉄を排出する最も簡単で最も効果的な治療法である。瀉血により線維症から肝硬変への進行が遅くなり,ときには肝硬変へ進行しても回復を示すことさえあるため,生存期間が延長するが,肝細胞癌の予防にはならない。約500mLの血液(約250mgの鉄)を毎週1回または隔週で抜き取る処置を行い,血清フェリチン値が50~100ng/mLに達するまで継続する。毎週または隔週の瀉血が何カ月にもわたり必要になる場合がある(例,毎週250mgの鉄を排出した場合,10gの鉄を除去するには40週間が必要となる)。鉄の量が正常値に回復した場合は,フェリチン値を50~100ng/mLに維持するように瀉血を間欠的に実施してもよい。

適応があれば,糖尿病心筋症勃起障害,およびその他の二次的症状に対する治療を行う。鉄過剰症による進行した線維化または肝硬変がある患者には,6カ月毎に肝臓の超音波検査で肝細胞癌のスクリーニングを行うべきである。

バランスのとれた食事を守るよう患者を指導すべきである;鉄分を多く含む食物(例,赤身の肉,レバー)の摂取を制限する必要はない。アルコールは鉄吸収を促進する可能性があるため,適量であれば摂取してもよいが,飲酒量が多いと肝硬変のリスクが高くなる。ビタミンCのサプリメントは避けるべきである。

Type 4の患者では,高頻度の瀉血に対する耐容性は不良である;ヘモグロビン値およびトランスフェリン飽和度の継続的なモニタリングが必要である。

トランスフェリン欠乏症およびセルロプラスミン欠乏症に対しては経験に基づいた治療を行う;例,典型的に貧血の患者が多いことから,鉄キレート薬の方が瀉血よりも忍容性が良好な可能性がある。

要点

  • 遺伝性ヘモクロマトーシスには4つの病型があり,全てに身体が鉄吸収を抑制する能力を損なう突然変異がみられ,鉄貯蔵が過剰になる。

  • 鉄過剰による影響は,どの病型でも同様であり,肝疾患(肝硬変の原因となる),皮膚色素沈着症,糖尿病,関節障害,勃起障害のほか,ときに心不全がみられる。

  • 血清フェリチン値の測定により診断する;高値であれば,血清鉄およびトランスフェリン飽和度の高値を明らかにすることならびに遺伝子検査により確定する。

  • 診断が確定した場合は,肝硬変の有無を確認するために肝生検を施行し,予後を判定する;第1度近親者の遺伝子検査およびスクリーニングを考慮する。

  • 瀉血およびアルコール摂取の節制により治療する。

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