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播種性血管内凝固症候群(DIC)

(消費性凝固障害;脱線維素症候群)

執筆者:

Joel L. Moake

, MD, Baylor College of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 7月
本ページのリソース

播種性血管内凝固症候群(DIC)は,循環血中のトロンビンおよびフィブリンの異常な過剰生成に関係する。その過程で血小板凝集および凝固因子消費が亢進する。緩徐に(数週間または数カ月かけて)進行するDICでは,主に静脈の血栓性および塞栓性の症状がみられる;急速に(数時間または数日で)進行するDICでは,主に出血が生じる。重度で急速進行性のDICは,血小板減少症,PTTおよびPTの延長,血漿Dダイマー(または血清フィブリン分解産物)濃度の上昇,および血漿フィブリノーゲン濃度の低下を証明することにより診断される。治療としては,原因の是正に加え,血小板,凝固因子(新鮮凍結血漿に含まれる),およびフィブリノーゲン(クリオプレシピテートに含まれる)の補充により大量出血を制御する。緩徐進行性のDICで,静脈血栓塞栓症を認める(またはそのリスクを有する)患者では,治療(または予防)にヘパリンが使用されている。

凝固障害の概要も参照のこと。)

病因

播種性血管内凝固症候群は通常,組織因子が血液に曝露し,凝固カスケードが開始することにより発生する。さらに,DICでは線溶経路が活性化されている(線溶経路の図を参照)。サイトカインおよび微小血管の乱流により内皮細胞が刺激されることで,内皮細胞から組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)が分泌される。tPAおよびプラスミノーゲンの両方がフィブリンポリマーに結合し,プラスミン(tPAのプラスミノーゲン分解により産生される)によってフィブリンがDダイマーおよびその他のフィブリン分解産物に分解される。そのため,DICは血栓症および出血の両方を引き起こす可能性がある。

線溶経路

線溶経路

以下の臨床状況でDICが最も頻繁に生じる

  • 産科合併症(例,常位胎盤早期剥離,生理食塩水で誘発した治療的流産,死亡胎児もしくは妊娠産物の遺残,羊水塞栓症):組織因子活性を有する胎盤組織が母体循環に入るか,母体循環に曝露する。

  • 感染,特にグラム陰性菌によるもの:グラム陰性菌の内毒素は食細胞,内皮細胞,および組織細胞に組織因子活性の発生または曝露をもたらす。

  • 癌,特にムチン分泌性の膵臓の腺癌前立腺の腺癌,および急性前骨髄球性白血病:腫瘍細胞が組織因子を発現または分泌する。

  • 虚血性の組織損傷および組織因子の放出を引き起こす状態に起因するショック

DICの比較的まれな原因としては以下のものがある:

  • 頭部外傷,熱傷,凍傷,または銃創による重度の組織損傷

  • 前立腺手術の合併症で,組織因子活性を有する前立腺物質が(プラスミノーゲンアクチベーターとともに)循環血に入る場合

  • 特定のヘビ毒の酵素が循環血に入り,1つまたはいくつかの凝固因子を活性化し,トロンビンを生成するか,フィブリノーゲンを直接フィブリンに変換する場合

  • 深刻な血管内溶血

  • 血管壁損傷およびうっ血部位を伴う大動脈瘤または海綿状血管腫(カサバッハ-メリット症候群)

典型的に,緩徐進行性の播種性血管内凝固症候群は,主にがん,動脈瘤,または海綿状血管腫から発生する。

病態生理

緩徐進行性のDICでは,主として静脈の血栓塞栓性疾患(例,深部静脈血栓症肺塞栓症)を引き起こすが,ときに心臓弁疣贅がみられることがある;異常出血はまれである。

重度で急速進行性のDICでは,対照的に血小板減少症,血漿凝固因子およびフィブリノーゲンの欠乏,ならびに出血を引き起こす。微小血管血栓症を伴う臓器内出血は,複数の臓器に機能障害や臓器不全を引き起こすことがある。線溶によるフィブリンポリマーの溶解が遅延すると,赤血球の機械的な破砕,破砕赤血球の産生,および軽度の血管内溶血を来すことがある。

症状と徴候

緩徐進行性のDICでは,静脈血栓症の症状および/または肺塞栓症の症状がみられる場合がある。

重度で急速進行性のDICでは,皮膚穿刺部位(例,静注または動脈穿刺)の持続的出血,薬剤注射部位での斑状出血形成,および重篤な消化管出血が生じることがある。

診断

  • 血小板数,PT,PTT,血漿フィブリノーゲン,血漿Dダイマー

原因不明の出血または静脈血栓塞栓症が認められる患者では(特に素因となる疾患が存在する場合),播種性血管内凝固症候群を疑う。DICが疑われる場合は,血小板数,PT,PTT,血漿フィブリノーゲン濃度,および血漿Dダイマー(in vivoのフィブリンポリマーの生成および分解の指標)を検査する。

緩徐進行性のDIC

緩徐進行性のDICでは以下が認められる:

  • 軽度の血小板減少症

  • PT(検査結果は一般にINRで報告される)およびPTTの正常値または軽微な延長

  • フィブリノーゲン濃度は正常か中程度の減少

  • 血漿Dダイマー値の増加

様々な疾患により急性期反応物質としてのフィブリノーゲンの産生亢進が刺激されるため,2回連続の測定でフィブリノーゲン濃度が低下していることがDICの診断に役立つことがある。緩徐進行性のDICでは,おそらく血漿中に活性化した凝固因子が存在するために,実際には初期のPTT値が正常値よりも短くなることがある。

急速進行性のDIC

急速進行性のDICは以下を引き起こす:

  • より重度な血小板減少症

  • PTおよびPTTのさらなる延長

  • 血漿中フィブリノーゲン値の急激な減少

  • 血漿中Dダイマーの高値

凝固検査で類似の異常を引き起こす可能性のある広範な肝壊死から重度で急性のDICを鑑別しなければならない場合は,ときに第VIII因子の値が参考になることがある。第VIII因子は肝臓の内皮細胞で産生され,肝細胞の破壊時に放出されるため,肝壊死では第VIII因子の濃度が上昇する;トロンビンにより活性型第VIII因子をタンパク質分解する活性化プロテインCの産生が誘導されるため,DICでは第VIII因子が減少する。

治療

  • 原因の治療

  • 場合によって補充療法(例,血小板,クリオプレシピテート,新鮮凍結血漿)

  • ときにヘパリン

原因の即時是正が優先される(例,グラム陰性菌敗血症が疑われる場合の広域抗菌薬療法,常位胎盤早期剥離における子宮内容除去術)。治療が奏効すれば,播種性血管内凝固症候群はすぐに回復するはずである。

重度の出血

出血が重度の場合もしくは重要な部位(例,脳,消化管)に生じている場合,または緊急に手術が必要な場合は,補助的な補充療法が適応となる。補充療法は以下から成る:

  • 血小板減少症を改善するために濃厚血小板(血小板数が急速に減少しているか10,000~20,000/μL未満の場合)

  • フィブリノーゲンの値が急速に減少しているか100mg/dL未満の場合に,クリオプレシピテートによるフィブリノーゲン(および第VIII因子)の補充

  • その他の凝固因子および生来の抗凝固因子(アンチトロンビン,プロテインC,S,およびZ)の濃度を上げるために新鮮凍結血漿

重度で急速進行性のDICにおけるアンチトロンビンの濃縮製剤投与の有効性については未解決である。低血圧が存在する場合はDICの進行を止めるために補液が不可欠である。

緩徐進行性のDIC

静脈血栓症または肺塞栓症を伴う緩徐進行性の播種性血管内凝固症候群に対する治療には,ヘパリンが有用である。出血を伴うか,出血リスクのある急速進行性のDICでは通常,ヘパリンが適応とはならない。例外は,胎児遺残がある女性で,進行性のDICのために血小板,フィブリノーゲン,および凝固因子の減少が進行している場合である。この後者の患者では,DICをコントロールし,フィブリノーゲンおよび血小板の値を増加させ,凝固因子の過度の消費を減らすため,数日間ヘパリンを投与する。その後,ヘパリンを中止し,子宮内容を除去する。

要点

  • 播種性血管内凝固症候群(DIC)では,血液が組織因子に曝露すると,通常は凝固が活性化する。凝固に伴って,線溶経路も活性化する。

  • DICは通常,急速に進行し,出血および微小血管閉塞を引き起こして臓器不全に至る。

  • DICはときに緩徐に進行することがあり,出血ではなく血栓塞栓現象を引き起こす。

  • 重度で急速進行性のDICでは,重度の血小板減少症,PTおよびPTTの延長,急速に減少する血漿フィブリノーゲン濃度,および高濃度の血漿Dダイマーを示す。

  • 原因の即時是正が優先される;重度の出血では,血小板,クリオプレシピテート(フィブリノーゲンを含む),および新鮮凍結血漿(他の凝固因子を含む)による補充療法が必要になることもある。

  • 緩徐進行性のDICでは,ヘパリンが有用であるが,急性発症のDICで有用になることはまれである(死亡胎児遺残を認める女性を除く)。

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