がんとは,細胞が無秩序に増殖するものである。著明な特徴は以下の通りである:
細胞分化の欠如
隣接組織への局所浸潤
転移:血流またはリンパ系(多い)を介した遠隔部位への進展
免疫系 免疫系の概要 免疫系は,自己と非自己を見分けて,有害な可能性がある非自己の分子や細胞を身体から排除する。免疫系には,宿主の組織に由来する異常な細胞を認識して破壊する能力もある。免疫系によって認識される可能性がある全ての分子が抗原とみなされる。 皮膚,角膜,ならびに呼吸器,消化管,および泌尿生殖器の粘膜は,生体防御の最前線である物理的バリアを形成する。こ... さらに読む は,早期がんまたは前がん状態の細胞を排除するプロセスにおいて役割を果たしている可能性がある。この概念は免疫監視と呼ばれる。先天性または後天性免疫不全症の患者では,がんのリスク,特にウイルス感染症,腎癌,および黒色腫に関連するがんのリスクが高い。
大半のがんには治癒の可能性があり,特に早期発見された場合は治癒率が高く,進行期で発見されたものでも,しばしば長期寛解の達成が可能である。マンモグラフィーによるスクリーニングで発見された乳癌や前立腺特異抗原(PSA)検査によるスクリーニングで発見された前立腺癌など,早期で発見されたがんが患者の存命中に進行するか否かという点について議論がある。しかしながら,多くのがんでは,早期発見により治癒の可能性が高まる。
進行がん症例の多くがそうであるように,治癒が期待できない場合でも, 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線療法は,多くのがんで治癒を得られる可能性があり( がん治療の概要も参照),特に局所に限局しているがんや照射野内に完全に収まるがんでは,その可能性が高くなる。放射線療法を手術と(頭頸部がん,喉頭癌,または子宮体がん),または化学療法および手術と(肉腫,乳癌,食道癌,肺癌,または直腸癌)併用することで,治癒率が向上するとともに,より限局... さらに読む , 薬物療法 がんに対する全身療法 がんに対する全身療法としては,化学療法(例,従来の化学療法や細胞傷害性薬剤による化学療法),ホルモン療法薬,分子標的療法,免疫療法などがある( がん治療の概要も参照)。承認されたがん治療の数は急速に増加している。National Cancer Instituteは,がん治療に用いられる最新の薬剤リストを管理している。このリストでは,各薬剤... さらに読む ,および/または 手術 がんに対する手術 手術は,最も古くからある効果的ながん治療である。単独で用いることも,他の方法と組み合わせることもできる( がん治療の概要も参照)。がんの大きさ,種類,および部位によって,手術の可能性や転帰が規定される場合がある。遠隔転移があると,典型的には手術が不可能になる。 がん患者で手術のリスクを高める因子としては以下のものがある:... さらに読む を用いた周到な治療により,生活の質が改善され,延命につながる可能性がある。ただし,これ以外の患者,特に高齢者および併存疾患のある患者では,このような治療に対する耐容性が不良で, 緩和療法 緩和ケアおよびホスピス 臨死患者には,他の患者とは異なるニーズがある可能性がある。このニーズを満たすために,まずどの患者が臨死状態にあるかを同定する必要がある。死に至る前に,患者は3種類の一般的な機能低下の軌跡の1つをたどる傾向がある: 限定的な期間で機能低下が着実に進行(例,進行性のがんに典型的) 着実に進行しないこともある重度の機能障害が,長期かつ不確定な期... さらに読む が適切となる場合もある。