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低血糖

執筆者:

Erika F. Brutsaert

, MD, New York Medical College

医学的にレビューされた 2019年 1月
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外因性のインスリン療法と無関係な低血糖は,血漿血糖値の低下,症候性の交感神経系刺激,および中枢神経系機能障害を特徴とするまれな臨床症候群である。多数の薬剤および疾患が原因となる。診断には,症状発生時または72時間絶食中の血液検査の施行を要する。治療はブドウ糖投与と基礎疾患の治療とを組み合わせて行う。

糖尿病治療に無関係な症候性の低血糖は比較的まれで,その理由の1つとして生体には低血糖を代償するための徹底した拮抗機序が備わっていることがあげられる。急性の低血糖に反応して生じるグルカゴン濃度およびアドレナリン濃度の急上昇が最初の防衛反応であると考えられる。コルチゾールや成長ホルモンの濃度も急速に増加し,遷延する低血糖からの回復に重要となる。通常,これらのホルモンの分泌閾値は,低血糖症状の閾値よりも高い。

病因

生理的低血糖の原因は以下のように分類できる:

  • 反応性のもの(食後),または空腹時のもの

  • インスリンを介するもの,またはインスリンを介さないもの

  • 薬剤性または非薬剤性

臨床状態に基づく分類,すなわち一見健康な患者または病的な患者のいずれに低血糖が生じたかは,実践的で役立つ。こうした分類の下,低血糖の原因をさらに薬剤性のものとそれ以外の原因とに分ける。

非膵島細胞腫瘍性低血糖症(NICTH)は,低血糖のまれな原因で,腫瘍が産生する過剰なインスリン様成長因子2(IGF-2)が低血糖を引き起こす。

偽低血糖(pseudohypoglycemia)は,未処置の試験管に入れた血液検体の分析が遅れ,赤血球,白血球などの細胞(特に白血病または赤血球増多症でみられるように増加している場合)がブドウ糖を消費することで生じる。虚偽性低血糖(factitious hypoglycemia)はスルホニル尿素薬またはインスリンの非治療的投与によって誘発される真性低血糖である。

症状と徴候

低血糖に反応して生じる自律神経活動の急激な高まりは,発汗,悪心,熱感,不安,振戦,動悸の他,おそらく空腹感や錯感覚も引き起こす。脳へのブドウ糖供給不足により,頭痛,霧視または複視,錯乱,発声困難,痙攣発作,および昏睡が生じる。

コントロールされた状況では,自律神経症状は血糖値が約60mg/dL(3.3mmol/L)以下になると発現し,これに対して中枢神経系症状は血漿血糖値が約50mg/dL(2.8mmol/L)以下になると発現する。しかし,低血糖を示唆する症状は低血糖自体よりもはるかに一般的である。血糖値がこれらの閾値にある者の大半は症状を呈さず,低血糖を示唆する症状を呈する者の大半では血糖値は正常範囲内にある。

診断

  • 臨床所見と相関した血糖値

  • ブドウ糖(またはその他の糖)の投与に対する反応

  • ときに,48~72時間絶食

  • ときに,インスリン,Cペプチド,およびプロインスリンの各濃度

原則として,診断には低血糖症状発生時に血漿血糖値が低値(50mg/dL未満[2.8mmol/L未満])であること,および症状がブドウ糖投与に反応することを証明する必要がある。医療従事者が症状発生時に立ち会っていたならば,血液を血糖検査に送るべきである。血糖値が正常範囲内であれば,低血糖は除外され,それ以上の検査は不要である。血糖値が異常に低ければ,同一検体で血清インスリン,Cペプチド,およびプロインスリンを測定することにより,インスリンを介する低血糖とインスリンを介さない低血糖,虚偽性低血糖と生理的低血糖とを識別でき,さらなる検査は不要となる。

しかし実際には,患者が低血糖を示唆する症状を来したときに医療従事者が立ち会っていることはまれである。家庭用血糖測定器は低血糖の定量において信頼性が低く,また長期間の低血糖と正常血糖とを識別する糖化ヘモグロビン(HbA1C)の明らかな閾値は存在しない。したがって,患者の臨床状態および併存疾患を考慮して,低血糖を引き起こしうる基礎疾患が存在する可能性を推定し,それに基づいてより広範な診断検査を行う必要があるかどうかを判断する。

制御された環境で72時間の絶食を施行することが診断のスタンダードである。ただし,低血糖性の疾患のある患者ほとんど全てにおいて,低血糖を検出するためには48時間の絶食で十分であり,72時間の絶食はおそらく不要である。患者はカフェインを含まないノンカロリー飲料のみを摂取し,ベースライン時,症状出現時,および4~6時間毎(血漿血糖値が60mg/dL[3.3mmol/L]未満に低下した場合は1~2時間毎)に血糖値を測定する。血清インスリン,Cペプチド,プロインスリンを低血糖時に測定することで,内因性低血糖を外因性(虚偽性)低血糖と鑑別すべきである。症状が出現せず血糖値が正常範囲内であれば,絶食を72時間で中止し,血糖値が45mg/dL(2.5mmol/L)以下に低下した場合や低血糖症状が出現した場合には,より早い時点で中止する。

絶食終了時の測定項目には,β-ヒドロキシ酪酸(インスリノーマでは低値),血清スルホニル尿素(薬剤性低血糖を検出する),およびグルカゴン静注後血糖値(インスリノーマに特徴的な血漿血糖値の上昇を検出する)を含める。このプロトコルによって低血糖を検出する際の感度,特異度,適中率は報告されていない。

モニタリング下での絶食中の病的な低血糖を明確に定義する,確実な血糖値の下限値は存在しない。健常な女性では,男性と比べて空腹時血糖値が低下する傾向があり,症状を伴わず血糖値が30mg/dL(1.7mmol/L)にまで低下する場合もある。症候性低血糖が48~72時間以内に生じなければ,激しい運動を約30分間行うとよい。低血糖がそれでも生じなければ,インスリノーマは基本的に除外され,追加の検査は一般に適応とならない。

治療

  • 砂糖の経口投与またはブドウ糖の静脈内投与

  • ときに,グルカゴンの非経口(parenteral)投与

低血糖の緊急治療はブドウ糖供給である。飲食できる患者は,症状出現時にジュースやショ糖水,ブドウ糖液を飲んだり,砂糖菓子や他の食物を摂取したり,ブドウ糖錠剤を服用したりしてもよい。乳幼児には10%ブドウ糖液2~5mL/kgを経静脈的にボーラス投与する場合がある。飲食不能な成人および児童には,グルカゴン0.5mg(20kg未満)もしくは1mg(20kg以上)を皮下注または筋注するか,50%ブドウ糖液50~100mLを静注ボーラス投与し,ときに続いて症状緩和に十分な量の5~10%ブドウ糖液を持続静注することがある。グルカゴンの効力は肝臓のグリコーゲン貯蔵量に依存し,長期間絶食していた患者や長期間低血糖状態にあった患者ではグルカゴンは血漿血糖値にほとんど影響を及ぼさない。

低血糖を引き起こす基礎疾患も治療しなければならない。膵島細胞腫瘍および非膵島細胞腫瘍はまず局在を明らかにし,続いて核出または膵部分切除によって取り除く;約6%は10年以内に再発する。手術待機中,患者が手術を拒否しているとき,または手術の適応がないときには,症状のコントロールにジアゾキシドおよびオクトレオチドが使用されることもある。

膵島細胞腫瘍の検索が行われたが腫瘍が同定されなかったときには,膵島細胞肥大が除外診断となることが最も多い。

低血糖を引き起こす薬剤は,アルコールを含めて中止しなければならない。

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要点

  • 低血糖は,血漿血糖値の低下(50mg/dL未満[2.8mmol/L未満])かつブドウ糖投与により回復する低血糖症状が同時に認められる状態である。

  • 大半の低血糖は,糖尿病治療に使用される薬剤により引き起こされる(不正な使用を含む);インスリン分泌腫瘍はまれな原因である。

  • 病因が不明の場合は,48~72時間絶食を施行し,定期的に,また症状が生じた時点で血漿血糖値を測定する。

  • 内因性低血糖を外因性(虚偽性)低血糖と鑑別するため,低血糖があるときに,血清インスリン,Cペプチド,およびプロインスリンを測定する。

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