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甲状腺機能の概要

執筆者:

Jerome M. Hershman

, MD, MS, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2016年 7月
本ページのリソース

甲状腺は前頸部の輪状軟骨直下に位置し,峡部で連結された2つの葉からなる。甲状腺濾胞細胞は,主に以下の2種類の甲状腺ホルモンを産生する:

  • テトラヨードサイロニン(サイロキシン,T4

  • トリヨードサイロニン(T3

これらのホルモンは,核内受容体に結合し幅広い遺伝子産物の発現を変化させることによって実質的に全身のあらゆる組織の細胞に作用する。甲状腺ホルモンは,胎児や新生児では脳および身体の組織の正常な発育に必要とされ,あらゆる年齢層でタンパク,炭水化物,および脂肪の代謝を調節する。

T3は核内受容体への結合活性が最も高く,T4にはわずかなホルモン活性しか認められない。しかし,T4は長時間保持されT3に変換されるため(大半の組織で),T3の貯蔵庫として働く。3番目の甲状腺ホルモンであるリバースT3(rT3)は代謝活性をもたないが,ある種の疾患ではrT3が上昇する。

さらに,傍濾胞細胞(C細胞)は カルシトニンを分泌する;このホルモンは高カルシウム血症に反応して放出され,血清カルシウム値を低下させる( カルシウム濃度の異常の概要 : カルシウム代謝の調節)。

甲状腺ホルモンの合成と放出

甲状腺ホルモンの合成にはヨードが必要である( 甲状腺ホルモンの合成)。飲食物からヨウ化物として摂取されるヨードは甲状腺で能動的に濃縮され,濾胞細胞内で甲状腺ペルオキシダーゼによって有機ヨードに変換される(有機化)。濾胞細胞はコロイドで満たされた空間を取り巻いており,このコロイドは,マトリックス内にチロシン残基を有する糖タンパクであるサイログロブリンからなる。濾胞細胞の細胞膜に接したチロシン残基は,1カ所(モノヨードチロシン)または2カ所(ジヨードチロシン)でヨード化され,互いに結合して2種の甲状腺ホルモンを形成する(ジヨードチロシン + ジヨードチロシンT4;ジヨードチロシン + モノヨードチロシンT3)。

甲状腺ホルモンの合成

甲状腺ホルモンの合成

濾胞細胞がコロイド小滴としてサイログロブリンを取り込むまで,T3およびT4は濾胞内のサイログロブリンに組み込まれたままである。T3およびT4は甲状腺濾胞細胞内に一旦入ると,サイログロブリンから切断される。続いて遊離T3および遊離T4は血流中に放出され,そこで輸送のために血清タンパクに結合する;主要な血清タンパクにはサイロキシン結合グロブリン(TBG)があり,T3およびT4に対する親和性は高いが容量が少ない。TBGは,正常では結合甲状腺ホルモンの約75%の担体である。その他の結合タンパクとして,T4に対する親和性は高いが容量が小さいサイロキシン結合プレアルブミン(トランスサイレチン),およびT3やT4に対する親和性は低いが容量が大きいアルブミンがある。血清T3全体の約0.3%および血清T4全体の0.03%は遊離型で,結合ホルモンと平衡を保っている。遊離T3および遊離T4のみが末梢組織での作用に利用できる。

T3およびT4の形成および放出に必要な反応は全て甲状腺刺激ホルモン(TSH)の調節を受けており,これは下垂体のTSH産生細胞によって分泌される。TSH分泌は下垂体のネガティブフィードバック機構で調節されている:遊離T4および遊離T3が上昇するとTSHの合成,分泌は抑制され,低下するとTSHの分泌は増加する。TSH分泌は視床下部で合成される 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)からも影響を受ける。TRHの合成や放出を制御する正確な機序は不明であるが,甲状腺ホルモンからのネガティブフィードバックはTRHの合成を阻害する。

循環血液中のT3の大半は,T4が1カ所脱ヨード化されることにより甲状腺外で産生される。循環血液中のT3のうち,甲状腺から直接分泌されるのはわずか5分の1である。

甲状腺機能の臨床検査

TSH値の測定

甲状腺機能障害を明らかにする最良の方法はTSH測定である( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果)。検査結果が正常であれば,甲状腺機能亢進症または甲状腺機能低下症は基本的に除外されるが,例外として,視床下部または下垂体の疾患による中枢性甲状腺機能低下症の患者や,まれに,下垂体が甲状腺ホルモンに対して抵抗性を示す患者もいる。極めて重篤な患者では,血清TSHが偽低値を示すことがある。血清TSH値によって無症候性甲状腺機能亢進症(血清TSH低値)や無症候性甲状腺機能低下症(血清TSH高値)も確定でき,いずれも血清T4,遊離T4,血清T3,および遊離T3が正常範囲内にあるという特徴を示す。

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様々な病態における甲状腺機能検査の結果

病態

血清TSH

血清遊離T4

血清T3

24時間放射性ヨード摂取率

甲状腺機能亢進症

未治療

低*

T3中毒症

正常

正常または高値

甲状腺機能低下症

原発性,未治療

低値または正常

低値または正常

下垂体疾患に続発

低値または正常

低値または正常

低値または正常

甲状腺機能正常

ヨード投与中

正常

正常

正常

外因性甲状腺ホルモン投与中

正常

T4投与中は正常,T3投与中は低値

T3投与中は高値,T4投与中は正常

エストロゲン投与中

正常

正常

正常

甲状腺機能正常症候群(Euthyroid Sick Syndrome)

正常,低値,または高値

正常または低値

正常

*TSH分泌型の下垂体腺腫,または甲状腺ホルモンによる正常な抑制に対して下垂体が抵抗を示す場合などのまれな例を除いて,甲状腺機能亢進症患者のTSHは低値である。

T3= トリヨードサイロニン;T4= サイロキシン;TSH = 甲状腺刺激ホルモン。

T 4 値の測定

血清総T4は,結合型ホルモンと遊離型ホルモンの測定値である。甲状腺ホルモンに結合する血清タンパクの濃度が変化するとそれに伴い総T4も変化するが,生理学的に活性を示す遊離T4の濃度は変化しない。したがって,患者は生理的には正常であるが,血清総T4値の異常を示すことがある。血清中の遊離T4は直接測定可能であり,総T4を解釈する際のピットフォールを回避できる。

遊離T4 indexは,様々な量の甲状腺ホルモン結合血清タンパクが総T4測定時に及ぼす影響を考慮して総T4値を補正し,遊離T4を推定するための計算値である。甲状腺ホルモン結合率,すなわちT3レジン摂取率を用いてタンパク結合率を推定する。遊離T4 indexは簡便に計算でき,遊離T4の直接測定に匹敵する。

T 3 値の測定

血清総T3および遊離T3も測定できる。T3は(T4よりも10倍弱いものの)強固にTBGに結合するため,血清総T3は血清TBGの変化やTBGへの結合に影響を及ぼす薬物に左右される。血清中の遊離T3は,T4と同様,直接測定することも間接的に計算することもでき(遊離T3 index),主に甲状腺中毒症の評価に利用される。

サイロキシン結合グロブリン

TBGは測定可能である。TBGは,妊娠やエストロゲン療法または経口避妊薬の使用により,また感染性肝炎の急性期に増加する。TBGはX連鎖遺伝による異常でも増加する。TBGの減少は,肝臓のタンパク合成を抑制する疾患,タンパク同化ステロイドの使用,およびコルチコステロイドの過剰使用によるものが最も頻度が高い。フェニトイン,アスピリン,およびこれらの誘導体などある種の薬物を大量に投与した場合,T4がTBGの結合部位から分離し,見かけ上は血清総T4が低下する。

甲状腺ペルオキシダーゼへの自己抗体

橋本甲状腺炎患者のほぼ全て,およびバセドウ病患者の大半に甲状腺ペルオキシダーゼに対する自己抗体が存在する(一部の橋本甲状腺炎患者はサイログロブリンに対する自己抗体も有する)。これらの自己抗体は自己免疫疾患のマーカーであるが,おそらく疾患は引き起こさない。しかし,甲状腺濾胞細胞表面のTSH受容体に対する自己抗体はバセドウ病の甲状腺機能亢進症の原因である。T4およびT3に対する自己抗体は自己免疫性甲状腺疾患患者に認められ,T4およびT3の測定値に影響を及ぼすこともあるが,臨床的意義はめったにみられない。

サイログロブリン

サイログロブリンは甲状腺を唯一の供給源とし,健常者の血清中で容易に検出でき,非中毒性および中毒性の甲状腺腫患者では通常上昇する。血清サイログロブリン値は主に,甲状腺分化癌に対して甲状腺の亜全摘または全摘(131Iによる破壊を併用または非併用)を行った患者の評価において用いられる。血清サイログロブリン値が正常か,または上昇している場合,TSH抑制量のレボチロキシンを投与されている患者やレボチロキシン中止後の患者において正常または悪性の甲状腺組織が残存していることを示唆する。しかし,抗サイログロブリン抗体がサイログロブリン値に干渉する。

甲状腺機能障害のスクリーニング

血清TSHの測定によるスクリーニングを,65歳以上の全ての男性と35歳以上の全ての女性に5年毎に実施することが推奨される。スクリーニングは,全ての新生児と妊婦にも推奨される。甲状腺疾患の危険因子がある個人については,より頻回に血清TSHを確認すべきである。甲状腺機能低下症のスクリーニングは,高血圧,高コレステロール血症,および乳癌のスクリーニングと同程度に費用効果が高い。これは単一の検査であり,みられる頻度が高く重篤な2つの疾患(甲状腺機能低下症および甲状腺機能亢進症:いずれも効果的に治療できる)を診断または除外する上で極めて感度および特異度が高い。高齢者では甲状腺機能低下症の発生率が高いため,70歳以上の集団に対する年1回のスクリーニングが妥当である。

核医学検査

その場合には,放射性ヨード摂取率を測定する。微量の放射性ヨードを経口または静脈内投与し,甲状腺に取り込まれた放射性ヨードの総量をスキャナで検出する。放射性ヨード同位元素は123Iが望ましく,患者の被曝量はごくわずかである(131Iよりもはるかに少ない)。甲状腺の123I摂取率はヨード摂取量により大幅に変動するが,過剰のヨードに曝露した患者では摂取率は低い。

この検査は甲状腺機能亢進症の鑑別診断に有効である(バセドウ病では摂取率は上昇,甲状腺炎では低下する― 甲状腺機能亢進症 : 診断)。また,甲状腺機能亢進症の治療に必要な131Iの用量を算出する上でも役立つ場合がある。

放射性同位元素(放射性ヨードまたは過テクネチウム酸ナトリウム[99mTc])投与後に,シンチカメラを使用して同位元素の取り込みを画像化することができる。取り込みが亢進している(ホット)または低下している(コールド)局所領域は,癌が疑われる領域の鑑別に役立つ(甲状腺癌が存在する割合は,ホット結節内では1%未満であるが,コールド結節では10~20%である)。

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