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多発性内分泌腫瘍症1型(MEN 1)

(多発性内分泌腺腫症I型,Wermer症候群)

執筆者:

Patricia A. Daly

, MD, University of Virginia;


Lewis Landsberg

, MD, Northwestern University Feinberg School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月

多発性内分泌腫瘍症1型(MEN 1)は,副甲状腺の過形成またはときに腺腫,ならびに膵島細胞および/または下垂体の腫瘍を特徴とする遺伝性症候群である。十二指腸ガストリノーマ,前腸のカルチノイド腫瘍,良性副腎腺腫,および脂肪腫も生じる。最も多い臨床的特徴は,副甲状腺機能亢進症および無症候性高カルシウム血症である。遺伝子スクリーニングがキャリアの検出に使用される。診断はホルモン検査および画像検査による。可能なときには腫瘍を外科的に切除する。

MEN 1は,核タンパクメニンをコードする遺伝子の不活性化変異によって引き起こされる;この遺伝子には500を超える変異が同定されている。メニンの正確な機能はわかっていないが,メニンには腫瘍抑制作用があるようである。

MEN 1症例の約40%で,以下の3つの腺全てに腫瘍を認める:

  • 副甲状腺

  • 膵臓

  • 下垂体

以下に概説する腫瘍および複合症状がほぼあらゆる組み合わせで生じうる。MEN 1遺伝子変異およびMEN 1腫瘍のうち1つを有する患者には,後に他のいずれかの腫瘍が発生するリスクがある。発症年齢は4~81歳にわたるが,発生のピークは20代~40代である。男性と女性の罹患率は同等である。

症状と徴候

臨床的特徴はどの腺が侵されるかによって異なる( MENに関連する疾患)。

副甲状腺

副甲状腺機能亢進症は95%以上の患者にみられる。臨床像として無症候性高カルシウム血症が最も多いが,約25%の患者で腎結石症または腎石灰化症の所見が認められる。副甲状腺機能亢進症の散発例とは対照的に,びまん性過形成(非対称性である場合が多い)が典型的にみられる。

膵臓

膵島細胞腫瘍が30~90%の患者に生じる。腫瘍は通常多中心性で,ときにいくつかのホルモンを合成する。多発性腺腫またはびまん性膵島過形成が一般的にみられる;こうした腫瘍は膵臓ではなく小腸に由来する可能性がある。約30%の腫瘍は悪性で,局所転移または遠隔転移を伴う。MEN 1症候群による悪性膵島細胞腫瘍は,散発性の悪性膵島細胞腫瘍に比べてしばしば良好な経過をたどる。

MEN 1で最もよくみられる機能性膵腸腫瘍(enteropancreatic tumor)はガストリノーマであり,これは膵臓または十二指腸に由来する可能性がある。最大80%のMEN 1患者に,ガストリン刺激による胃酸分泌増加に起因する多発性の消化性潰瘍または無症候性のガストリン値上昇がみられる。

インスリノーマは2番目に多い機能性の膵腫瘍であり,空腹時低血糖を引き起こすことがある。腫瘍はしばしば小さく,多発性である。発症年齢は多くの場合,40歳未満である。

非機能性膵腸腫瘍はMEN 1患者の約3分の1にみられる。膵島細胞腫瘍(非機能性腫瘍を含む)の大半が膵ポリペプチドを分泌する。臨床的意義は不明であるが,膵ポリペプチドはスクリーニングに有用な可能性がある。非機能性腫瘍のサイズは転移および死亡のリスクと相関する。

頻度は低くなるが,MEN 1ではその他の機能性膵腸腫瘍が生じることもある。非β細胞腫瘍では,重度の分泌性下痢が生じて体液および電解質の喪失を来すことがある。この複合症状は,水様下痢低カリウム血症無胃酸症候群(WDHA,または膵性コレラ)と呼ばれ,血管作用性腸管ポリペプチドに起因するとされているが,他の腸管ホルモンまたは分泌促進物質(プロスタグランジンを含む)が関与している可能性もある。 グルカゴン ソマトスタチン,クロモグラニン,または カルシトニンの過剰分泌,ACTHまたはコルチコトロピン放出ホルモンの異所性分泌(クッシング症候群を引き起こす),ならびに成長ホルモン放出ホルモンの過剰分泌(先端巨大症を引き起こす)が,ときに非β細胞腫瘍で生じる。

下垂体

下垂体腫瘍はMEN 1患者の15~42%に生じる。25~90%はプロラクチノーマである。下垂体腫瘍の約25%は成長ホルモン,または成長ホルモンとプロラクチンを分泌する。プロラクチン過剰は女性患者で乳汁漏出症を引き起こす場合があり,成長ホルモン過剰は散発性先端巨大症と臨床的に区別不能な先端巨大症を引き起こす。約3%の腫瘍はACTHを分泌してクッシング病を引き起こす。残りの大半は非機能性である。

局所での腫瘍増大は視覚障害,頭痛,および下垂体機能低下を引き起こす場合がある。

MEN 1の患者における下垂体腫瘍は,散発性の下垂体腫瘍に比べて大きく,侵襲性が強く,若年で発生することがあるが,最近の長期コホート研究によると,MEN 1に伴う下垂体腫瘍は散発性のものと似ており,より進行が緩徐であることがわかった(1)。

その他の症候

カルチノイド腫瘍,特に発生学的に前腸(胸腺,肺,胃)由来のものが5~15%のMEN 1患者にみられる。胸腺カルチノイドは男性患者により多い。副腎腺腫は10~20%の患者にみられ,両側性のことがある。MEN 1患者ではときに甲状腺の腺腫様過形成がみられる。その結果ホルモン分泌が変化することはまれで,この異常の意義は不明である。多発性の皮下および内臓脂肪腫,血管線維腫,髄膜腫,上衣腫,ならびにコラゲノーマが生じることもある。

症状に関する参考文献

診断

  • 遺伝子検査

  • 3徴に含まれる他の腫瘍の臨床的評価

  • カルシウム,副甲状腺ホルモン(PTH),ガストリン,およびプロラクチンの血清中濃度

  • CT,MRI,または超音波検査による腫瘍の局在決定

副甲状腺,膵臓,または下垂体の腫瘍を呈する患者,特に内分泌障害の家族歴を有する患者では,MEN 1症候群を検討すべきである。30歳以前に副甲状腺機能亢進症と診断された患者では,スクリーニングも検討すべきである(1)。リスクのある患者には,MEN 1遺伝子DNAの直接塩基配列決定法による遺伝子検査と以下を含むMEN 1のその他の腫瘍の臨床スクリーニングを行うべきである:

これらのスクリーニング検査でMEN 1に関連する内分泌異常が示唆される場合,臨床検査または画像検査を追加すべきである。

膵臓または十二指腸のガストリン分泌性非β細胞腫瘍の診断は,血漿ガストリン基礎濃度の上昇,カルシウム注入に対する過剰なガストリン反応,およびセクレチン注入後の奇異性ガストリン濃度上昇による。 インスリン分泌性の膵 β細胞腫瘍は,血漿 インスリン濃度の上昇を伴う空腹時低血糖によって診断する。膵ポリペプチドもしくはガストリンの基礎濃度の上昇,または標準食に対するこれらのホルモンの過剰反応は,膵病変の初発徴候である可能性がある。

超音波検査またはCTは腫瘍の局在決定に役立つことがある。これらの腫瘍はしばしば小さく局在の決定が困難であるため,他の画像検査(例,ヘリカル[スパイラル]CT,血管造影,超音波内視鏡検査,術中超音波)が必要になる場合もある。

先端巨大症の診断は,ブドウ糖投与で抑制されない成長ホルモン濃度高値,および血清 インスリン様成長因子1(ソマトメジンC)濃度高値によって診断される。

スクリーニング

発端者が同定されたならば,第1度近親者には遺伝子スクリーニングを行うべきである。MEN 1患者の家族に対し,症状がない段階で早期スクリーニングを行うことで罹患率または死亡率が減少するとは証明されていないものの,最近の大規模なコホート研究では,患者本人の診断と患者の家族の診断との間に臨床的に許容しがたいタイムラグがあることが報告されている(2)。

膵臓および下垂体の画像検査を3~5年毎に施行して遺伝子キャリアをモニタリングする医師もいるが,こうしたスクリーニングが転帰を改善することは証明されていない。

診断に関する参考文献

治療

  • 可能な場合,外科的切除

  • ホルモン過剰に対し,薬物による管理

副甲状腺機能亢進症の治療は主に手術であり,副甲状腺亜全摘術を行う;しかしながら,副甲状腺機能亢進症はしばしば再発する。オクトレオチドおよびシナカルセトは,術後の高カルシウム血症の再発または持続をコントロールするのに役立つ場合がある。

プロラクチノーマは通常 ドパミン作動薬により管理し,その他の下垂体腫瘍は手術により治療する。

膵島細胞腫瘍は,しばしば病変が小さく発見が難しい上,多発性であることが一般的で,手術により治癒しない場合が多いため,管理がより困難である。

ガストリン分泌性非β細胞腫瘍の治療は複雑である。可能であれば腫瘍を局在決定して切除するが,手術によりその後の転移病変の発生率が低下するかどうかは不明である。局在決定が不可能であれば,プロトンポンプ阻害薬の投与により症候性の消化性潰瘍の長期コントロールが得られることが多い。

インスリノーマのある患者に単独の腫瘍が発見できなければ,尾側膵亜全摘と触知可能な膵頭部腫瘍の核出術が推奨される。ジアゾキシドまたはソマトスタチンアナログ(オクトレオチド,ランレオチド)は,低血糖の治療に役立つ場合がある。ストレプトゾシンおよびその他の細胞傷害性薬剤は,腫瘍量を減らすことにより症状を軽減する場合がある。

ソマトスタチンアナログは,その他ガストリン以外の分泌性膵腫瘍からのホルモン分泌を抑制する可能性があり,忍容性が良好である。転移性膵腫瘍に対する緩和治療には,肝臓の腫瘍減量手術および肝動脈化学塞栓療法などがある。ストレプトゾシン,ドキソルビシン,およびその他の細胞傷害性薬剤は,腫瘍量を減らすことにより症状を軽減する場合がある。

要点

  • 副甲状腺,膵臓,または下垂体に腫瘍のある患者ではMEN 1を考慮する。

  • 主な臨床像はホルモン過剰によるもの,特に副甲状腺機能亢進症による高カルシウム血症である。

  • 患者には,MEN 1遺伝子の遺伝子検査および本症候群のその他の腫瘍の臨床的評価を行うべきである。

  • 可能であれば腫瘍は切除するが,病変はしばしば多発性かつ/または発見が難しい。

  • ホルモン過剰はときに薬剤により管理可能である。

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