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クッシング症候群

(Cushing症候群)

執筆者:

Ashley B. Grossman

, MD, University of Oxford; Fellow, Green-Templeton College

最終査読/改訂年月 2016年 5月
本ページのリソース

クッシング症候群は,血中のコルチゾールまたは関連するコルチコステロイドの慢性高値によって引き起こされる一群の臨床的な異常である。クッシング病は下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)過剰産生に起因するクッシング症候群であり,通常は下垂体腺腫に続発する。典型的な症状および徴候には,満月様顔貌および中心性肥満,紫斑ができやすい,ならびにやせた四肢などがある。診断はコルチコステロイド使用歴または血清コルチゾールの上昇の確認による。治療は原因に応じて異なる。

副腎機能の概要も参照のこと。)

病因

副腎皮質の機能亢進は,ACTH依存性の場合とACTH非依存性の場合とがある。

ACTH依存性の機能亢進は以下が原因で起こりうる:

  • 下垂体からのACTHの過剰分泌(クッシング病)

  • 肺小細胞癌またはカルチノイド腫瘍などの下垂体以外の腫瘍からのACTH分泌(異所性ACTH症候群)

  • 外因性ACTHの投与

ACTH非依存性の機能亢進は通常,コルチコステロイドの治療的投与,副腎腺腫や副腎癌などに起因する。まれな原因には,原発性色素性結節性副腎異形成(通常は青年にみられる)および大結節性過形成(高齢患者にみられる)などがある。

クッシング症候群という用語は原因を問わず コルチゾールの過剰がもたらした臨床像を表すのに対し,クッシング病は下垂体ACTHの過剰による副腎皮質の機能亢進を指す。クッシング病患者では通常,小さな下垂体腺腫がみられる。

症状と徴候

クッシング症候群の臨床像としては以下のものがある:

  • 多血症様の外観を呈する満月様顔貌

  • 鎖骨上部および頸部背側への著明な脂肪沈着(野牛肩)を伴う中心性肥満

  • 通常は極めて細い四肢遠位部と指趾

筋萎縮および筋力低下が認められる。皮膚は薄く萎縮し,傷は治りにくく紫斑ができやすい。腹部に紫紅色の皮膚線条が現れることがある。高血圧,腎結石,骨粗鬆症,耐糖能障害,感染に対する抵抗力の低下,および精神症状がよくみられる。小児では直線的成長の停止が特徴的である。

女性では通常,月経不順が生じる。副腎腫瘍を有する女性では,アンドロゲンの産生が亢進するため,多毛症,側頭部の脱毛,およびその他の男性化徴候が出現する。

診断

  • 尿中遊離コルチゾール(UFC)値

  • デキサメタゾン抑制試験

  • 午前0時の血清または唾液のコルチゾール値

  • 血清ACTH値;検出可能な場合,誘発試験

診断は通常,特徴的な症状および徴候に基づいて疑われる。診断確定(および原因の同定)には一般にホルモン検査や画像検査が必要である。

尿中遊離コルチゾールの測定

一部の医療機関では,尿中への排泄をみる最良の測定法であるUFC測定から検査を始める(正常範囲20~100μg/24時間[55.2~276nmol/24時間])。UFCは上昇し,ほぼ全てのクッシング症候群患者で120μg/24時間(331nmol/24時間)を上回る。しかし,UFCの上昇が100~150μg/24時間(276~414nmol/24時間)に収まる多くの患者では,肥満,抑うつ,多嚢胞性卵巣はみられるが,クッシング症候群は認めない。

クッシング症候群が疑われUFCが著しく上昇している(正常上限の4倍を上回る)患者は,ほぼ確実にクッシング症候群に罹患している。2~3回の採尿結果が正常範囲内であれば,診断は通常除外される。測定値のわずかな上昇は,一般にさらなる調査を必要とし,正常値でも臨床上の疑いが強い場合にも同じことが言える。

ベースラインとなる朝(例,午前9時)の血清コルチゾールも測定すべきである。

デキサメタゾン抑制試験

検査の代替のアプローチとしてデキサメタゾン抑制試験を用いるが,この試験では,デキサメタゾン1mg,1.5mg,または2mgを午後11~12時に経口投与し,翌朝8~9時に血清コルチゾールを測定する。大半の健常者ではこの薬物により朝の血清コルチゾールが1.8mcg/dL L以下(50nmol/L以下)に抑制されるが,クッシング症候群の患者では,ほぼ常にこれよりも高値となる。これより特異度が高いが同等の感度を示す検査として,デキサメタゾン0.5mgを6時間毎に2日間経口投与する方法がある(低用量)。一般に,低用量デキサメタゾンに対してコルチゾールの抑制が生じないことが明らかであれば診断が確定する。

深夜のコルチゾール測定

UFCの測定とデキサメタゾン抑制試験の結果で確定診断に至らない場合は,患者を入院させて午前0時に血清コルチゾール測定を行うことで,結論が出る可能性が高くなる。あるいは,コルチゾール測定用の唾液検体を採取して家庭の冷蔵庫に保管することもある。コルチゾールは,正常では早朝(午前6~8時)には5~25μg/dL(138~690nmol/L)あり,徐々に低下して午前0時には1.8μg/dL未満(50nmol/L未満)になる。クッシング症候群患者は,朝のコルチゾール値がときに正常範囲内であるものの,日中のコルチゾール産生減少が正常に起こらず,その結果午前0時の血清コルチゾール値が正常範囲を上回り,24時間の総コルチゾール産生が増加する場合がある。

コルチコステロイド結合グロブリンが先天的に増加している患者または エストロゲン療法中の患者では,血清コルチゾール値は見かけ上高値を示すが,日内変動は正常である。

血清ACTH測定

クッシング症候群の原因を特定するためACTH値の測定を行う。基礎値および特に副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)に対する反応値の両方が検出不能であれば,原発性の副腎異常が原因として示唆される。高値は,下垂体が原因であることを示唆する。ACTHが検出可能であれば,クッシング病と,それよりもまれな異所性ACTH症候群との鑑別に誘発試験が役立つ。高用量デキサメタゾン(2mg,6時間毎に48時間経口投与)に反応して,大半のクッシング病患者では午前9時の血清コルチゾール値が50%よりも低下するが,異所性ACTH症候群患者ではそれはまれである。逆に,ヒトまたはヒツジCRH(100μg静注または1μg/kg静注)に反応して,大半のクッシング病患者ではACTHが50%,コルチゾールが20%を超えて上昇するが,異所性ACTH症候群患者ではこれは極めてまれである({blank} クッシング症候群の診断検査)。

より正確であるものの侵襲性がより高い局在決定の代替アプローチとして,両側の錐体静脈(下垂体を灌流する)にカテーテルを挿入し,100μgまたは1μg/kgのCRH(ヒトまたはヒツジ)ボーラス投与5分後にこれらの静脈でACTHを測定する方法がある。ACTHの中枢/末梢比が3を超える場合は異所性ACTH症候群が実質的に除外されるが,3を下回る場合はその原因を検索する必要性が示唆される。

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クッシング症候群の診断検査

診断

血清コルチゾール,午前9時

唾液または血清コルチゾール,午前0時

尿中遊離コルチゾール

デキサメタゾン(低用量または一晩)

デキサメタゾン(高用量)

副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン

ACTH値

正常

N

N

N*

S

S

N

N

クッシング病

Nまたは

NS

S

Nまたは

Nまたは

異所性ACTH

Nまたは

NS

NS

平坦

↑↑

副腎腫瘍

Nまたは

NS

NS

平坦

*クッシング症候群以外の疾患で上昇することがある。

平坦 = ACTHおよびコルチゾールに有意な上昇を認めない;N = 正常範囲内;NS = 非抑制;S = 抑制;↑↑= 大幅に上昇;= 上昇;= 低下。

画像検査

ACTH値および誘発試験で下垂体性の病因が示唆された場合は,下垂体画像検査を行う;ガドリニウム造影MRIが最も正確であるが,一部の微小腺腫はCTでも描出される。検査結果から下垂体以外の原因が示唆される場合は,画像検査として肺,膵臓,副腎の高分解能CTや,放射性標識オクトレオチドによるシンチグラフィーまたはPETのほか,ときにフルオロデオキシグルコース(FDG)によるPETなどを施行する。

クッシング病の小児では下垂体腫瘍は極めて小さく,通常MRIでは検出できない。錐体静脈洞からの採血はこのような状況で特に有用である。胎児の放射線被曝を避けるために,妊婦にはCTよりもMRIが望ましい。

治療

  • 高タンパク食とカリウム投与(またはスピロノラクトンなどのカリウム保持作用のある薬剤)

  • 副腎機能を阻害する薬剤(メチラポン,ミトタン,ケトコナゾールなど)

  • 手術または放射線療法による下垂体,副腎,または異所性ACTH産生腫瘍の除去

  • ときにソマトスタチンアナログ,ドパミン作動薬,またはミフェプリストン

まず,高タンパク食の摂取と適切なカリウム投与によって,患者の全身状態を維持するべきである。重度の臨床症状がみられる場合は,メチラポン250mg~1g,経口,1日3回またはケトコナゾール400mg,経口,1日1回(最大400mg,1日3回まで増量)によりコルチコステロイド分泌を阻害する方法が妥当となりうる。ケトコナゾールは作用発現までに時間がかかる可能性があり,ときに肝毒性をもたらす。

過剰なACTHを産生する下垂体腫瘍は,外科的に切除するか放射線療法で破壊する。画像で腫瘍が示されないが下垂体が原因である可能性が高い場合には,特に高齢患者に対し,下垂体の完全切除を試みることがある。若年患者では通常,下垂体に対する高エネルギー放射線治療として45Gyを照射する。しかし,小児では,放射線照射により成長ホルモンの分泌が減少し,ときに早発思春期の原因となる。特殊な施設では,約100Gyを照射する重粒子線照射がしばしば奏効しており,単一の集束ビームを用いた単回照射として行われる放射線療法(放射線手術)も同様の成果を収めている。放射線療法に対する反応が得られるまでには,ときに数年を要するが,小児での反応は比較的速やかである。

複数の研究から,持続性または再発性疾患の軽症例には,ソマトスタチンアナログであるパシレオチドが有益である可能性が示唆されている。しかし,高血糖が重大な有害作用である。ドパミン作動薬であるカベルゴリンがときに有用である場合もある。あるいは,ミフェプリストンでコルチコステロイド受容体を阻害することもできる。ミフェプリストンは血清コルチゾールを増加させるが,コルチコステロイドの作用を阻害するため,低カリウム血症を引き起こす可能性がある。

両側副腎摘出術の適応は,下垂体の精査加療(おそらく腺腫摘出を伴う)に加えて放射線照射にも反応しない下垂体性副腎皮質機能亢進症の患者と,手術が不成功に終わり放射線療法の禁忌がある患者に限られる。副腎摘出術を行った場合,コルチコステロイドの補充が生涯必要となる。

副腎皮質腫瘍は外科的に切除する。副腎皮質の非腫瘍部分が萎縮し抑制されるため,患者には術中および術後にコルチゾールを投与しなければならない。良性腺腫は腹腔鏡下に摘出できる。多結節性副腎過形成では,両側副腎摘出術が必要になる場合がある。副腎の全摘がなされたと考えられた後でも,少数の患者では機能の再生が起こる。

異所性ACTH症候群は,ACTHを産生している下垂体外の腫瘍を切除することにより治療する。しかし,一部の例では腫瘍が播種し切除不能である。メチラポン500mg,経口,1日3回(総量6g/日まで)やミトタン0.5g,経口,1日1回(最大3~4g/日まで増量)などの副腎機能を阻害する薬剤により,通常は重度の代謝障害(例,低カリウム血症)をコントロールできる。ミトタン使用時には,高用量のヒドロコルチゾンまたはデキサメタゾン投与が必要となることがある。コルチゾール産生の測定は信頼性が低い可能性があり,重度の高コレステロール血症が生じることもある。ケトコナゾール(400~1200mg,経口,1日1回)もコルチコステロイド合成を阻害するが,肝毒性を引き起こすことがあり,アジソン病様の症状を引き起こす可能性もある。ミフェプリストンも異所性ACTH症候群の治療に有用となることがある。

ときにACTH分泌腫瘍が長時間作用型ソマトスタチンアナログに反応するが,軽度胃炎,胆石,胆管炎,および吸収不良が発生する可能性があるため,2年を超える投与では綿密なフォローアップを必要とする。

ネルソン症候群

ネルソン症候群は,両側副腎摘出術の施行後に下垂体が腫大を続ける場合に発生し,ACTHおよびその前駆体の分泌が著明に増加することで,重度の色素沈着が生じる。これは副腎摘出術を行った患者の50%以下にみられる。下垂体への放射線療法が施行されれば,リスクはおそらく低下する。

放射線治療により下垂体の持続的な成長が止まることがあるが,多くの患者は下垂体切除術も必要とする。下垂体切除術の適応は下垂体腫瘍の場合と同様である:腫瘍が周囲構造を圧迫し視野欠損,視床下部圧迫,その他の合併症をもたらすほど腫大した場合に適応となる。

下垂体切除後,ルーチンの放射線照射がしばしば施行される(過去にルーチン照射を行っておらず,特に腫瘍が明らかに存在する場合)。明らかな病変が存在しない場合は,放射線療法を延期する場合がある。標準的な外照射療法がすでに実施されている場合で,病変が視神経および視交叉から十分離れていれば,放射線手術,すなわち集束ビームによる放射線療法を単回照射で行う場合がある。

要点

  • 診断は通常,夜間の血清または唾液コルチゾール値,または24時間の尿中遊離コルチゾールの上昇の確認,および デキサメタゾン抑制試験による。

  • ACTH値により,下垂体性の原因を下垂体以外の原因と鑑別する。

  • その後,画像検査を施行して原因腫瘍を同定する。

  • 腫瘍は通常,手術または放射線療法により治療する。

  • 根治的治療を行う前に,コルチゾール分泌を抑制するため,メチラポンまたはケトコナゾールを投与する場合がある。

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