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巨人症と先端巨大症

執筆者:

Ian M. Chapman

, MBBS, PhD, University of Adelaide, Royal Adelaide Hospital

最終査読/改訂年月 2019年 8月
本ページのリソース

巨人症および先端巨大症は,ほぼ常に下垂体腺腫を原因とする成長ホルモン過剰分泌による症候群(hypersomatotropism)である。骨端線閉鎖以前であれば,結果として巨人症が生じる。閉鎖後であれば結果は先端巨大症となり,独特の顔貌およびその他の特徴をもたらす。診断は臨床的に行い,頭蓋および手のX線撮影,ならびに成長ホルモンの測定を実施する。治療には原因腺腫の切除または破壊がある。

成長ホルモン(GH)は身体の成長を刺激し,代謝を調節する。GHの合成および分泌においては,成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)が主要刺激物質であり,ソマトスタチンが主要抑制物質である。GHはインスリン様成長因子1(IGF-1,ソマトメジン-Cとも呼ばれる)の合成を調節し,IGF-1は主として成長を調節する。IGF-1は多数の組織で産生されるが,肝臓が主な供給源である。GHの代謝作用は2相性である。GHはまずインスリン様作用を発揮して,筋肉や脂肪でのブドウ糖取込みを増加させ,肝臓や筋肉でのアミノ酸取込みとタンパク質合成を促進し,脂肪組織での脂肪分解を抑制する。数時間後には,より顕著な抗インスリン様代謝作用が生じる。この作用にはブドウ糖の取込みおよび利用の抑制があり,その結果血糖値が上昇して脂肪分解が亢進し,血漿中の遊離脂肪酸が増加する。

成長ホルモン(GH)分泌腺腫の多くは変異型Gsタンパク質(アデニル酸シクラーゼの刺激性の調節因子)を含む。変異型Gsタンパク質を含む細胞は,成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)がない状態でもGHを分泌する。また,異所性GHRH産生腫瘍(特に膵臓および肺)についても数例の報告がある。

症状と徴候

下垂体性巨人症

この疾患はまれであり,小児期の骨端線閉鎖以前にGHの過剰分泌が始まると生じる。骨格の成長速度が上昇し最終的に身長が高くなるが,骨の変形はほとんど生じない。しかし,軟部組織の腫大が生じ,末梢神経が肥大する。思春期遅発または低ゴナドトロピン性性腺機能低下症もしばしばみられ,eunuchoid体型となる。

先端巨大症

先端巨大症では,GHの過剰分泌が通常20代から40代の間に始まる。骨端線閉鎖後にGHの過剰分泌が始まると,初期の臨床症状として顔貌粗造と手足の軟部組織の腫大がみられる。外見が変化し,指輪,手袋,靴のサイズが以前よりも大きくなる。疾患の経過を視覚的に追跡する上で患者の写真が重要である。

先端巨大症の臨床像

先端巨大症の成人では,粗い体毛が増加し,皮膚は肥厚してしばしば黒ずむ。皮脂腺および汗腺が肥大し機能が亢進するため,患者はしばしば発汗過多および不快な体臭を訴える。下顎骨の成長過剰により下顎の突出(顎前突症)および歯の不正咬合が生じる。喉頭軟骨の増殖により低くかすれた声になる。舌はしばしば肥大して皺壁が目立つ。長期に及ぶ先端巨大症では肋軟骨の成長により樽状胸となる。GH過剰に反応して関節軟骨の増殖が早い段階で起こり,その関節軟骨が壊死し腐食する可能性がある。関節症状は一般的であり,肢体不自由を招く変形性関節症が生じる可能性がある。

隣接する線維組織および神経内線維組織の増殖により神経が圧迫されるため,末梢神経障害がよくみられる。下垂体腫瘍による頭痛が一般的である。腫瘍がトルコ鞍上まで進展し視交叉を圧迫すると,両耳側半盲が出現することがある。心臓,肝臓,腎臓,脾臓,甲状腺,副甲状腺,および膵臓は正常よりも大きい。患者のおそらく3分の1に心疾患(例,冠動脈疾患,心拡大,ときに心筋症)が生じ,心疾患による死亡リスクが倍増する。高血圧症は患者の最大3分の1に発生する。悪性腫瘍,特に消化器癌のリスクが2~3倍に増加する。GHは尿細管でのリン酸の再吸収を増大させ,結果,軽度の高リン血症が生じる。先端巨大症および巨人症患者では約半数近くに耐糖能障害がみられるが,臨床的に意味のある糖尿病が生じる患者は約10%のみである。

乳汁漏出症が先端巨大症の女性の一部でみられることがあり,通常は高プロラクチン血症と関連している。しかし,GH自体が乳汁分泌を刺激するため,GH過剰のみでも乳汁漏出症が起こりうる。ゴナドトロピン分泌低下が,しばしばGH分泌腫瘍とともに生じる。先端巨大症の男性の約3分の1は勃起障害を,女性のほぼ全員が月経不順または無月経を呈する。

診断

  • CTまたはMRI

  • インスリン様成長因子1(IGF-1)値

  • 通常,GH値

特徴的な臨床所見から診断が可能である。CT,MRI,または頭蓋X線で,皮質の肥厚,前頭洞の拡大,ならびにトルコ鞍の拡大および侵食が示される。手のX線写真は末節骨のカリフラワー様肥大変形および軟部組織の肥厚を示す。

先端巨大症が疑われる患者では,血清IGF-1を測定すべきである;IGF-1は典型的には顕著に上昇し(3~10倍),IGF-1はGHとは異なり変動しないため,GH過剰分泌の最も簡単な判定方法である。IGF-1値は治療に対する反応のモニタリングにも使用できる。

ラジオイムノアッセイで血漿GHを測定すると,典型的には高値となる。採血は患者の朝食前(基礎分泌状態)に行うべきであり,健常者のGH基礎値は5ng/mL未満(5μg/L未満)である。一過性のGH上昇は正常であり,病的過剰分泌と鑑別しなければならない。ブドウ糖負荷後のGH抑制の程度の測定が依然標準とされているため,血漿GH高値を示す患者ではこの検査を行うべきである;しかしながら,結果は分析方法に依存し,正常な抑制のカットオフ値については議論がある。健常者では,75gブドウ糖経口負荷から90分以内にGH分泌が2ng/mL未満([2μg/L未満],カットオフ値を1ng/mL未満[1μg/L未満]とすることもしばしばある)に抑制される。大半の先端巨大症患者はかなりの高値を示す。血漿GH基礎値は治療に対する反応をモニタリングする上でも重要である。

頭部のCTまたはMRIを施行し,腫瘍を検索すべきである。腫瘍が認められない場合,下垂体GHの過剰分泌はGHRHを異所性に過剰産生する中枢神経系以外の腫瘍が原因である可能性がある。血漿GHRH高値を証明することで診断を確定できる。異所性産生部位を検索する際には,肺および膵臓を最初に評価する。

診断時には,糖尿病,心疾患,消化器癌を含めた合併症に対するスクリーニングを実施すべきである。糖尿病の検査として,空腹時血漿血糖値,糖化ヘモグロビン(HbA1C)の測定,または経口ブドウ糖負荷試験が実施されることがある。心疾患を検出するため,心電図検査,およびできれば心エコー検査を施行する。結腸癌を検出するため,大腸内視鏡検査を施行する。フォローアップスクリーニングは,初期検査の結果および患者の治療への反応によって異なる。

治療

  • 手術または放射線療法

  • ときに,GHの分泌または活性を抑制する薬物療法

アブレーション治療

手術や放射線照射によるアブレーション治療が一般に適応となる。経蝶形骨洞切除術が好まれているが,施設により選択は異なる。下垂体に約5000cGyを照射する高エネルギー放射線による定位放射線治療が施行されるが,GH値は数年間正常範囲まで低下しないことがある。加速陽子線(重粒子照射)を用いた治療ではより高線量(10,000cGy相当)の放射線を下垂体に照射できるが,このような治療法は脳神経および視床下部を損傷するリスクが高く,利用できる施設は限られる。

放射線照射の数年後に下垂体機能低下症の発生がよくみられる。放射線損傷は蓄積するため,従来のγ線照射の後に陽子線療法を用いるべきではない。下垂体腫瘍がトルコ鞍外に進行性に拡大している患者および腫瘍全体が切除できない患者では,手術と放射線療法の両方を併用するアプローチが適応となり,そのような例はしばしば認められる。

ブドウ糖負荷後に測定したGH値,およびIGF-1値が正常範囲内になれば,腫瘍の外科的切除により治癒がみられてきた傾向がある。一方または両方の値が異常であれば,通常さらなる治療が必要である。GH過剰の管理が不十分であれば,高血圧や心不全が生じ,死亡率が2倍になる。しかし,GH値が5ng/mL未満(5μg/L未満)であれば死亡率は上昇しない。

薬物療法

一般に,手術および放射線療法の禁忌がある場合,これらの治療法で治癒を期待できない場合,または放射線療法が奏効するまで待機している場合には,薬物療法の適応となる。このような場合には,ソマトスタチンアナログであるオクトレオチドを0.05~0.15mg,8~12時間毎に皮下投与する;これにより,GH分泌は効果的に抑制される。長時間作用型ソマトスタチンアナログ,例えばマンニトールで放出を修飾したオクトレオチド(オクトレオチドLAR)10~30mgを4~6週間毎に筋注,およびランレオチド30mgを10~14日毎に筋注などは,より簡便に使用できる。メシル酸ブロモクリプチン(1.25~5mg,1日2回経口投与)が少数の患者でGH値を効果的に低下させることがあるが,ソマトスタチンアナログと比べると効果が弱い。

GH受容体拮抗薬のペグビソマントは,先端巨大症の患者においてGHの作用を減弱およびIGF-1値を低下させ,下垂体腫瘍の見かけ上の増大も生じないことが示されている。この薬物は,ソマトスタチンアナログに部分的または完全な不応性を示す患者の治療に役立つ可能性がある。

要点

  • 巨人症および先端巨大症は通常,過剰量の成長ホルモン(GH)を分泌する下垂体腺腫により引き起こされる;まれに,下垂体腫瘍以外の腫瘍が成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)を分泌することにより引き起こされる。

  • 巨人症は,小児期の骨端線閉鎖以前にGHの過剰分泌が始まると生じる。

  • 先端巨大症には,成人期に始まるGHの過剰分泌が関与している;骨および軟部組織に様々な異常が生じる。

  • インスリン様成長因子1およびGH値を測定して診断する;下垂体腫瘍を検出するため,中枢神経系の画像検査を施行する。

  • 下垂体腫瘍は手術または放射線療法により除去する。

  • 腫瘍を除去できない場合は,オクトレオチドまたはランレオチドを投与してGHの分泌を抑制する。

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