(ビタミンの概要も参照のこと。)
ビタミンCは,コラーゲン,カルニチン,ホルモン,およびアミノ酸の合成で役割を果たしている。創傷治癒に必須であり,熱傷からの回復を促進する。ビタミンCはまた抗酸化物質でもあり,免疫機能を支え,鉄の吸収を促進する( ビタミンの供給源,機能,および作用)。
ビタミンC欠乏症
(壊血病)
重度のビタミンC欠乏症の結果,出血症状および類骨や歯の象牙質の形成異常を特徴とする疾患である壊血病が生じる。
病因
病態生理
症状と徴候
成人では,ビタミンC欠乏状態が数週間から数カ月続いた後にビタミンC欠乏症の症状が出現する。倦怠感,筋力低下,易刺激性,体重減少,および漠然とした筋肉痛や関節痛が,初期に出現することがある。
壊血病の症状(結合組織異常に関連する)は,欠乏が数カ月続いた後に出現する。毛包性の過角化,螺旋状毛髪,毛包周囲の出血が出現することがある。歯肉が腫れ,紫色になり,海綿状になって,脆弱になる;重度の欠乏症では簡単に出血する。最終的には,歯が動揺し脱臼する。二次感染が生じることがある。創傷が治癒しにくく簡単に裂け,自然出血が起こることがある(特に下肢の皮膚の斑状出血または眼球結膜出血として)。
他の症状や徴候には,大腿の神経鞘内への出血による大腿神経障害(深部静脈血栓症に類似することがある),下肢の浮腫,疼痛を伴う関節内の出血または液貯留などがある。
乳児では,症状は易刺激性,動作中の疼痛,食欲不振,成長の遅れなどである。乳児および小児では,骨成長が障害され,出血および貧血が生じることがある。
診断
ビタミンC欠乏症の診断は通常,皮膚または歯肉の徴候があり,ビタミンC欠乏症のリスクがある患者で臨床的に行う。臨床検査による確定が可能な場合がある。血算を行う(しばしば貧血を認める)。出血時間,凝固時間,およびプロトロンビン時間は正常である。
骨格のX線が小児の壊血病の診断に役立つことがある(しかし成人では役に立たない)。変化は長管骨骨端(特に膝関節)で最も明白である。初期の変化は萎縮に類似する。骨梁の減少により,すりガラス陰影が生じる。皮質は菲薄化する。石灰化した不規則な軟骨の線(Fraenkelの白線[white line of Fraenkel])が,骨幹端に認められる。白線に近傍かつ平行の希薄化帯または線状骨折が,わずかに三角形状の欠損として外側縁に認められることがあるが,これが特異的である。骨端が圧迫されていることがある。骨膜下出血が治癒することで,骨膜がもち上がり,石灰化することがある。
臨床検査診断(血中アスコルビン酸濃度の測定が必要)がときに学術研究センターで行われる。0.6mg/dL(34μmol/L)未満は境界域とみなされ,0.2mg/dL(11μmol/L)未満はビタミンC欠乏症を示す。遠心分離した血液の白血球血小板層におけるアスコルビン酸濃度の測定は,広く利用することはできず,標準化もされていない。
成人では,壊血病を関節炎,出血性疾患,歯肉炎,タンパク質-エネルギー低栄養と鑑別する必要がある。周辺の充血または出血を伴う毛包角化症は,本疾患にほぼ特有の所見である。歯肉の出血,結膜出血,ほとんどの点状出血,および斑状出血は,非特異的である。