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ビタミンD

執筆者:

Larry E. Johnson

, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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ビタミンの概要も参照のこと。)

ビタミンDには主に以下の2つの種類がある:

  • D2 エルゴカルシフェロール

  • D3(コレカルシフェロール):自然に生じる種類であり,低用量の補給に用いる

ビタミンD3は直射日光への曝露(紫外線B波の照射)によって皮膚で合成され,食事では主に魚の肝油や海水魚から得られる( ビタミンの供給源,機能,および作用)。一部の先進国では,牛乳やその他の食品がビタミンDで強化されている。ヒトの母乳はビタミンDの含有量が少なく,平均で強化した牛乳の10%しか含まれていない。

ビタミンD濃度は加齢とともに減少する可能性がある(皮膚での合成が低下するため)。サンスクリーン剤の使用や黒ずんだ皮膚色素沈着も皮膚でのビタミンDの合成を低下させる。

ビタミンDは,ホルモンとして働くいくつかの活性化代謝物をもつプロホルモンである。ビタミンDは,肝臓によって25(OH)Dに代謝され,その後腎臓により1,25(OH)2D(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール, カルシトリオール,または活性型ビタミンDホルモン)に変換される。血液中での主な形態である25(OH)Dにはある程度代謝活性があるが,1,25(OH)2Dの代謝活性が最も高い。1,25(OH)2Dへの変換は,それ自体の濃度,副甲状腺ホルモン(PTH),ならびにカルシウムおよびリンの血清中濃度によって調節されている。

ビタミンDは多くの器官系に影響を与えるが( ビタミンDおよびその代謝物の作用),主に腸管からのカルシウムおよびリンの吸収を高め,正常な骨形成および石灰化を促進する。

ビタミンDとその類縁物質は,乾癬,副甲状腺機能低下症,および腎性骨異栄養症の治療に用いられることがある。白血病ならびに乳癌,前立腺癌,および結腸癌の予防におけるビタミンDの有用性は証明されておらず,高齢者における転倒予防効果(1,2,3)も証明されていない。

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ビタミンDおよびその代謝物の作用

臓器

作用

適正なカルシウムおよびリンの濃度を維持することによって骨形成を促進

免疫系

免疫原性および抗腫瘍作用を刺激

自己免疫疾患のリスクを低下

腸管

カルシウムおよびリンの輸送(吸収)を亢進

腎臓

尿細管によるカルシウム再吸収を亢進

副甲状腺

副甲状腺ホルモン分泌を阻害

膵臓

インスリン 産生を促進

参考文献

ビタミンD欠乏症および依存症

日光への曝露が不十分であると,ビタミンD欠乏症が起こりやすくなる。欠乏症により,骨石灰化が障害され,小児ではくる病,成人では骨軟化症が引き起こされ,また骨粗鬆症の一因となる可能性がある。診断では,血清25(OH)D(D2およびD3)の測定を行う。治療としては通常,ビタミンDを経口投与し,必要に応じてカルシウムおよびリンを補給する。しばしば予防が可能である。まれに,遺伝性疾患によりビタミンDの代謝障害(依存症)が起こる。

ビタミンD欠乏症は世界的によくみられる。ビタミンD欠乏症はくる病と骨軟化症の一般的な原因であるが,これらの疾患は他の病態(慢性腎臓病,様々な尿細管疾患,家族性の低リン酸血症性[ビタミンD抵抗性]くる病,慢性代謝性アシドーシス,副甲状腺機能亢進症,副甲状腺機能低下症,不十分な食事性カルシウム,および骨基質の石灰化を障害する疾患または薬物など)によっても生じることがある。

ビタミンD欠乏症は低カルシウム血症を引き起こし,これにより副甲状腺ホルモン(PTH)の産生が促進され,副甲状腺機能亢進症が起こる。副甲状腺機能亢進症により,カルシウムについて吸収,骨からの動員,および腎臓での保持が高まるが,リンの排泄が増加する。その結果,カルシウムの血清中濃度は正常のことがあっても,低リン血症のため,骨の石灰化が障害される。

病因

ビタミンD欠乏症は以下の結果として起こることがある:

  • 不十分な日光への曝露

  • 不十分なビタミンDの摂取

  • ビタミンDの吸収低下

  • ビタミンDの代謝異常

  • ビタミンDの作用に対する抵抗性

不十分な曝露または摂取

通常,不十分な直射日光への曝露またはサンスクリーン剤の使用,および不十分なビタミンD摂取が同時に起こることで,臨床的な欠乏症に至る。罹患する可能性が高い人として以下が挙げられる:

  • 高齢者(低栄養となることが多く,十分な日光に曝露していない)

  • 特定の集団(例,家に閉じこもっている,または全身と顔面を衣服で覆っている女性および小児)

ビタミンDの貯蔵が不十分な状態が高齢者によくみられ,特に家に閉じこもりがちである,施設に入所している,または入院しているもしくは股関節を骨折したことがある場合によくみられる。

推奨される直射日光への曝露は,5~15分(紅斑が生じない量)の腕および下肢への,または顔面,腕,および手への,少なくとも週に3回の曝露である。しかし,皮膚癌のリスクが高まるため,多くの皮膚科医は日光への曝露を増やすことを推奨しない。

吸収低下

吸収不良により,身体に食事性ビタミンDが供給されなくなる可能性がある;ごく少量の25(OH)Dのみが腸肝再循環される。

代謝異常

ビタミンD欠乏症は,25(OH)Dまたは1,25(OH)2Dの産生異常により起こることがある。慢性腎臓病患者は,腎臓の1,25(OH)2D産生が減少し,リン濃度が上昇するため,一般的にくる病または骨軟化症を発症する。肝機能障害も活性型ビタミンD代謝物の産生を妨害することがある。

I型の遺伝性のビタミンD依存性くる病は,腎臓における25(OH)D から1,25(OH)2Dへの変換が欠損しているまたは障害されていることを特徴とする,常染色体劣性遺伝疾患である。X連鎖家族性低リン血症では,腎臓のビタミンD合成が低下する。

多くの抗てんかん薬,およびグルココルチコイドの使用は,ビタミンD補給の必要性を増大させる。

ビタミンDの作用に対する抵抗性

II型の遺伝性のビタミンD依存性くる病にはいくつかの型があり,これは1,25(OH)2D受容体の遺伝子変異による。この受容体は,腸管,腎臓,骨,および他の細胞の代謝に影響を及ぼす。この疾患では,1,25(OH)2Dは豊富にあるが,受容体が機能的ではないため無効となる。

症状と徴候

ビタミンD欠乏症により,どの年齢層でも,筋肉痛,筋力低下,および骨痛が起こる可能性がある。

妊婦のビタミンD欠乏症により,胎児に欠乏症が起こる。ときに,母親が骨軟化症を発症するほど重度の欠乏症では,新生児に骨幹端の病変を伴うくる病が発生する。

幼若乳児では,くる病により頭蓋骨全体が軟化(頭蓋癆)する。触診すると,後頭および頭頂骨後方がピンポン玉のように感じられる。

月齢の高いくる病の乳児では,座ったり,這ったりするのが遅れ,泉門閉鎖も遅れる;頭蓋骨の隆起,肋軟骨の肥厚がみられる。肋軟骨の肥厚は,側方の胸壁に沿ってビーズ状の隆起(くる病じゅず)のように見えることがある。

1~4歳の小児では,橈骨,尺骨,脛骨,および腓骨の下端における骨端軟骨が拡大し,脊柱後側弯症が発生して,歩行が遅れる。

より年長の小児と青年では,歩行時に疼痛が生じ,極端な例ではO脚やX脚などの変形がみられる。骨盤骨が平らになることがあり,青年期の女児では産道が狭小化する。

テタニーは低カルシウム血症によって起こり,乳児または成人のビタミンD欠乏症に付随することがある。テタニーにより,口唇,舌,および手指の錯感覚,手足および顔面の攣縮が起こることがあり,極めて重度の場合は,痙攣発作が起こる。母親の欠乏症により,新生児にテタニーが発生する可能性がある。

骨軟化症は骨折の素因となる。高齢者では,ごく軽微な外傷によって股関節骨折が起こることがある。

診断

  • 25(OH)D(D2およびD3)濃度

以下のいずれかに基づきビタミンD欠乏症を疑う場合がある:

  • 不十分な日光への曝露または不十分な食事による摂取の既往

  • くる病,骨軟化症,または新生児テタニーの症状および徴候

  • X線上の特徴的な骨変化

ビタミンD欠乏症を骨の脱灰の他の原因と鑑別するためには,橈骨および尺骨のX線に加えて,カルシウム,リン,アルカリホスファターゼ,PTH,および25(OH)Dの血清中濃度が必要である。

頭蓋癆のある乳児では,病歴および身体所見に応じて,ビタミンDの状態の評価と梅毒に対する血清学的検査を考慮してもよいが,ほとんどの頭蓋癆は自然治癒する。軟骨異栄養症は,大きな頭部,短い四肢,太い骨,ならびにカルシウム,リン,およびアルカリホスファターゼの血清中濃度が正常であることを特徴とするため,くる病は軟骨発育不全症と鑑別できる。

乳児のくる病によるテタニーは,他の原因による痙攣発作と臨床的に鑑別できないことがある。血液検査および病歴がそれらの鑑別に役立つことがある。

X線

X線上でみられる骨変化が臨床徴候に先行する。くる病では,橈骨と尺骨の下端で変化が最も顕著である。骨幹端では,その明瞭でくっきりとした輪郭が消失する;コップ状の形状になり,斑状またはふさ状の希薄化がみられる。後に,橈骨端および尺骨端が石灰化しなくなり,X線透過性になるため,橈骨端および尺骨端と中手骨との距離が増したように見える。他の部位の骨基質もまたX線透過性を増す。骨幹が弱くなるため,軟骨と骨幹の結合部で骨が弯曲する結果,特徴的な変形が生じる。治癒が始まると,石灰化の細い白線が骨端に現れ,石灰化が進むにつれて濃く,太くなる。後に,骨膜下レベルで骨基質が石灰化してX線不透過性になる。

成人では,骨の脱灰がX線上でみられることがある(特に脊椎,骨盤,および下肢);さらに線維の層もみられ,不完全なリボン状の脱灰領域(偽骨折,偽骨折線,Milkman症候群)が骨皮質に現れる。

臨床検査

血清中の25(OH)D濃度は身体のビタミンD貯蔵量を反映し,他のビタミンD代謝物の濃度よりもビタミンD欠乏症の症状および徴候との相関が強いため,ビタミンD欠乏症の診断には,以下の値の測定が一般的に最適と考えられている:

  • 25(OH)D(D2およびD3)濃度

骨が最も健全であるためには,25(OH)Dの目標値は20~24ng/mL(約50~60nmol/L)超である;さらに高い値が他の便益を有するかどうかは依然不明であり,カルシウムの吸収が高ければ冠動脈疾患のリスクが増大する可能性がある。

診断が明確でない場合は,血清1,25(OH)2D濃度および尿中カルシウム濃度を測定することがある。重度の欠乏症では,血清1,25(OH)2D濃度は異常に低く,通常検出できない。尿中カルシウム濃度は,アシドーシスと関連している場合を除き,欠乏症のあらゆる型で低い。

ビタミンD欠乏症では,血清カルシウム濃度は低値となるか,または二次性副甲状腺機能亢進症のために正常である場合がある。血清リン濃度は通常低下し,血清アルカリホスファターゼ値は通常上昇する。血清PTHは正常であるかまたは上昇している。

I型の遺伝性のビタミンD依存性くる病では,血清中の25(OH)D濃度は正常,1,25(OH)2Dおよびカルシウムの血清中濃度は低く,血清リン濃度は正常または低値である。

治療

  • カルシウムおよびリン欠乏の是正

  • ビタミンD補給

カルシウム欠乏(頻度が高い)とリン欠乏を是正すべきである。

カルシウムとリンの摂取が十分であれば,骨軟化症の成人患者と合併症のないくる病の小児患者は,ビタミンD3 40μg(1600IU)の1日1回経口投与で治癒が望める。血清中の25(OH)Dおよび1,25(OH)2D濃度は,1~2日以内に上昇し始める。約10日以内に,カルシウムおよびリンの血清中濃度が上昇し,血清アルカリホスファターゼ値が低下する。3週目には,X線で骨組織への十分なカルシウムおよびリンの沈着が確認できる。約1カ月後には,通常,用量を通常維持レベルの15μg(600IU)1日1回まで徐々に減らすことができる。

テタニーがある場合,ビタミンDの補給は,1週間を限度としてカルシウム塩の静脈内投与とともに行うべきである( 低カルシウム血症 : 治療)。

一部の高齢患者では,20ng/mLを超える(>50nmol/L)25(OH)D濃度を維持するために1日当たり25~50μg超(1000~2000IU以上)のビタミンD3が必要である;この用量は,70歳未満(600IU)または70歳以上(800IU)の1日当たりの推奨量(RDA)よりも高い。ビタミンDの現在の上限量は,4000IU/日である。より高用量のビタミンD2(例,毎週または毎月25,000~50,000IU)がときに処方される;ビタミンD3がビタミンD2よりも活性が高いため,現在は好まれる。

ビタミンD代謝物の産生障害によるくる病および骨軟化症はビタミンD抵抗性であるため,不十分なビタミンD摂取に起因するくる病に対して通常効果的な用量には反応しない。治療は特異的な異常によって異なるため,内分泌学的評価が必要である。25(OH)D産生が障害されている場合,ビタミンD350μg(2000IU)を1日1回投与すると,血清中濃度が上昇し,臨床的改善がみられるようになる。腎疾患患者では,1,25(OH)2D(カルシトリオール)の補給が必要となることが多い。

I型の遺伝性のビタミンD依存性くる病は,1,25(OH)2Dの1~2μg1日1回経口投与に反応する。II型の遺伝性のビタミンD依存性くる病の一部の患者は,非常に高用量(例,10~24μg/日)の1,25(OH)2Dに反応する;カルシウムの長期間の注入が必要となる患者もいる。

予防

食事に関するカウンセリングが,構成員にビタミンD欠乏のリスクがあるコミュニティにおいて特に重要である。イースト菌の入っていないチャパティ小麦粉をビタミンDで強化する(125μg/kg)ことが,英国におけるインド系移民に効果的である。ビタミンD状態のための日光への曝露の便益を,皮膚損傷および皮膚癌リスクの増加の懸念と比較考量する必要がある。

母乳栄養の全ての乳児には,出生時から月齢6カ月までビタミンD10μg(400IU)を1日1回補給すべきである;月齢6カ月になれば,より多様な食事を摂取できる。RDAより高い用量の便益は証明されていない。

要点

  • ビタミンD欠乏症はよくみられる病態であり,日光曝露および食事による摂取の不足(通常は両方),慢性腎臓病,またはこれら両方の結果である。

  • ビタミンD欠乏症により,筋肉痛,筋力低下,骨痛,および骨軟化症が起こることがある。

  • 日光への曝露がほとんどなく食事による摂取が少ない患者,典型的な症状および徴候(例,くる病,筋肉痛,骨痛)のある患者,またはX線上で骨の脱灰がみられる患者では,ビタミンD欠乏症を疑う。

  • 診断を確定するため,25(OH)D(D2およびD3)濃度を測定する。

  • ビタミンD欠乏症を治療するには,カルシウムおよびリンの欠乏を是正し,ビタミンDを補給する。

ビタミンD中毒

通常,ビタミンD中毒は過剰量の服用に起因する。ビタミンD中毒では,骨吸収および腸管でのカルシウムの吸収が亢進し,高カルシウム血症が生じる。著しい高カルシウム血症により,一般的に症状が生じる。診断は一般的に,上昇した血中25(OH)D濃度に基づく。治療は,ビタミンDの服用中止,食事からのカルシウム摂取の制限,血管内容量不足を回復させることから成り,中毒が重度である場合,コルチコステロイドまたはビスホスホネート系薬剤を投与する。

1,25(OH)2D(最も活性の高いビタミンD代謝物)の合成は厳密に制御されているため,ビタミンD中毒は通常,過剰量(処方またはビタミン大量投与による)を服用した場合にのみ起こる。ビタミンD1000μg(40,000IU)/日の投与は,乳児で1~4カ月以内に中毒を引き起こす。成人では,数カ月にわたって1250μg(50,000IU)/日を服用すると,中毒が生じる可能性がある。副甲状腺機能低下症の積極治療が度を越した場合,ビタミンD中毒が医原性に起こることがある。

症状と徴候

ビタミンD中毒の主な症状は高カルシウム血症の結果として起こる。食欲不振,悪心,および嘔吐が起こることがあり,次いで多尿,多飲,脱力,神経過敏,そう痒,および最終的に腎不全に陥ることが多い。タンパク尿,尿円柱,高窒素血症,異所性石灰化(特に腎臓)が出現することがある。

診断

  • 高カルシウム血症に加えて危険因子または血清25(OH)D濃度の上昇

過剰なビタミンD摂取歴が,ビタミンD中毒を他の高カルシウム血症の原因と鑑別する唯一の手がかりとなることがある。12~16mg/dL(3~4mmol/L)への血清カルシウム濃度の上昇は,中毒症状が生じる場合の一定した所見である。血清25(OH)D濃度は,通常150ng/mL(375nmol/L)を超えて上昇する。1,25(OH)2Dの濃度(診断を確定するために測定する必要はない)は正常であることがある。

ビタミンD,特に強力な1,25(OH)2Dの大量投与を受けている全ての患者で,血清カルシウム値を頻回に(初めは毎週,後に毎月)測定すべきである。

治療

  • 静注による水分補給に加えてコルチコステロイドまたはビスホスホネート系薬剤

ビタミンDの摂取を中止した後,水分補給(生理食塩水の静注による)およびコルチコステロイドまたはビスホスホネート系薬剤(骨吸収を阻害する)を,血中カルシウム値を下げるために用いる。

腎障害または異所性石灰化は,もしあれば,不可逆性である可能性がある。

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