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ビタミンA

(レチノール)

執筆者:

Larry E. Johnson

, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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ビタミンの概要も参照のこと。)

ビタミンAは,網膜の光受容色素であるロドプシンの生成に必要である( ビタミンの供給源,機能,および作用)。 ビタミンAは,上皮組織の維持を補助している。

正常では,肝臓が体内の ビタミンAの80~90%を貯蔵している。 ビタミンAを利用するために,身体はビタミンAをプレアルブミン(トランスサイレチン)やレチノール結合タンパクと結合させて循環系へ放出する。β‐カロテンおよび他のビタミン前駆物質であるカロテノイド(緑色葉野菜および黄色野菜や濃いまたは鮮やかな色の果物に含まれる)が ビタミンAに変換される。カロテノイドは,野菜を調理するかまたは細かく砕いて,多少の脂肪(例,油)とともに摂取した場合に,よりよく吸収される。

レチノール活性当量(RAE)は,ビタミンA前駆物質であるカロテノイドの ビタミンA活性が既成(preformed) ビタミンAよりも低いために開発されたものであり,1μgレチノール = 3.33IUである。

合成ビタミン誘導体(レチノイド)の利用が皮膚科領域で増えつつある。一部の上皮性悪性腫瘍に対するβ‐カロテン,レチノール,およびレチノイドの防御的な役割の可能性について,研究が行われている。しかし,β‐カロテン補給後に特定の癌のリスクが増大する可能性がある。

ビタミンA欠乏症

ビタミンA欠乏症は,不十分な摂取,脂肪吸収不良,または肝疾患によって起こることがある。欠乏症により免疫および造血が障害され,発疹および典型的な眼への影響(例,眼球乾燥症,夜盲症)が生じる。診断は,典型的な眼所見およびビタミンAレベルが低いことに基づく。治療はビタミンAの経口投与によるが,症状が重度であるか吸収不良が原因である場合は,静注で投与する。

病因

原発性 ビタミンA欠乏症は通常,以下によって起こる:

  • 食事における長期の欠如

これは南アジアや東アジアなど,米(β‐カロテンを欠く)を主食とする地域に特有のものである。原発性欠乏症による眼球乾燥症は,発展途上国の幼児が失明する一般的な原因である。

二次性 ビタミンA欠乏症は以下に起因することがある:

  • ビタミンA前駆物質であるカロテノイドの生物学的利用能低下

  • ビタミンAの吸収,貯蔵,または輸送の阻害

セリアック病,嚢胞性線維症,膵機能不全,十二指腸バイパス,慢性下痢,胆管閉塞,ジアルジア症,および肝硬変で,吸収または貯蔵が妨げられる可能性が高い。 ビタミンA欠乏症は長期間のタンパク質-エネルギー低栄養でよくみられるが,これは食物にビタミンAが不足しているためのみならず, ビタミンAの貯蔵および輸送に障害が生じるためである。

症状と徴候

夜盲症に至ることのある眼の暗順応障害が,ビタミンA欠乏症の初期症状の1つである。眼球乾燥症(ほぼ特有の所見)が眼の角化により起こる。これは結膜および角膜の乾燥(乾燥症)と肥厚を伴う。上皮組織片および外気に曝された眼球結膜上の分泌物からなる表層性の泡状斑(ビトー斑)が出現する。進行した欠乏症では,角膜はもやがかかったようになり,びらんを生じることがあり,角膜の破壊(角膜軟化症)に至る可能性がある。

皮膚の角化ならびに気道,消化管,および尿路の粘膜の角化が起こることがある。皮膚の乾燥,鱗屑,および毛包の肥厚,ならびに気道感染が起こる可能性がある。

一般に免疫が損なわれる。

患者が若いほど, ビタミンA欠乏症の影響はより重度である。小児では,発育遅滞および感染症がよくみられる。重度のビタミンA欠乏症の小児では,死亡率が50%を超える可能性がある。

診断

  • 血清レチノール値,臨床的評価,およびビタミンAに対する反応

眼所見により ビタミンA欠乏症が示唆される。他の疾患(例,亜鉛欠乏症,網膜色素変性,重度の屈折異常,白内障,糖尿病網膜症)で暗順応が障害されることがある。暗順応が障害されている場合,杆状体暗点視野測定(rod scotometry)および網膜電図検査を行って, ビタミンA欠乏症が原因かどうか判定する。

レチノールの血清中濃度を測定する。正常範囲は,28~86μg/dL(1~3μmol/L)である。しかし,肝臓が ビタミンAを多量に貯蔵しているため,濃度は欠乏症が進行した後にのみ減少する。また,急性感染症(レチノール結合タンパクおよびトランスサイレチン[プレアルブミンとも呼ばれる]の濃度を一時的に低下させる)によって濃度が低下することもある。

ビタミンAによる試験的治療が診断の確定に役立つことがある。

予防

食事には濃い緑色の葉野菜,濃いまたは鮮やかな色の果物(例,パパイヤ,オレンジ),ニンジン,および黄色野菜(例,カボチャ,パンプキン)を含めるべきである。ビタミンAを強化した牛乳やシリアル類,レバー,卵黄,および魚の肝油が役立つ。カロテノイドは,多少の食物脂肪とともに摂取するとよりよく吸収される。牛乳アレルギーを乳児に疑う場合,十分なビタミンAを人工栄養で与えるべきである。

発展途上国では,1~5歳の全ての小児に油状のレチノールパルミチン酸エステル200,000IU(60,000RAE)を6カ月毎に経口にて予防的に補給することが推奨される;6カ月未満の乳児には50,000IU(15,000RAE)の単回投与,6~12カ月の乳児には100,000IU(30,000RAE)の単回投与が可能である。

治療

  • レチノールパルミチン酸エステル

食事による ビタミンA欠乏症は,従来より油状のレチノールパルミチン酸エステル60,000RAEを1日1回2日間経口投与し,その後4500IUを1日1回経口投与して治療する。嘔吐または吸収不良がある場合,または眼球乾燥症の可能性がある場合は,6カ月未満の乳児には50,000IU,6~12カ月の乳児には100,000IU,または12カ月を超えた小児および成人には200,000IUを2日間投与し,少なくとも2週以上経過後に3度目の投与を行うべきである。麻疹の合併症のある乳児および小児に対して同じ用量が推奨される。

ビタミンA欠乏症は重度の麻疹の危険因子である;ビタミンAによる治療を行うことで,疾患の期間を短縮でき,症状の重症度および死亡リスクが下がる可能性がある。WHOは,発展途上国における全ての麻疹の患児に,ビタミンAを24時間の間隔を置いて2回投与すること(生後12カ月未満の小児には100,000IU,生後12カ月を超える小児には200,000IU)を推奨している(WHO: Measles Fact Sheetも参照のこと)。

HIV陽性の母親から生まれた乳児には,生後48時間以内に50,000IU(15,000RAE)を投与すべきである。長期にわたる大量の連日投与は,特に乳児に対しては,中毒が生じる可能性があるため避ける必要がある。

妊婦または授乳婦に対しては,胎児または乳児に対する障害の可能性を避けるため,予防的または治療量は,10,000IU(3000RAE)/日を超すべきでない。

要点

  • ビタミンA欠乏症は通常,米(β-カロテンを欠く)を主食とする地域で発生するような食事における欠乏に起因するが, ビタミンAの吸収,貯蔵,または輸送を阻害する疾患の結果生じることもある。

  • 眼所見には,夜間視力の障害(早期),結膜沈着物,角膜軟化症などがある。

  • 重度の欠乏症の小児では,成長が遅延し,感染症のリスクが増大する。

  • 眼所見および血清レチノール値に基づいて診断する。

  • レチノールパルミチン酸エステルにより治療する。

ビタミンA中毒

ビタミンA中毒は急性(通常は小児による誤飲のため)または慢性のことがある。急性,慢性ともに通常,頭痛および頭蓋内圧亢進が起こる。急性中毒により悪心および嘔吐が起こる。慢性中毒により,皮膚,毛髪,および爪の変化;肝機能検査での異常な結果;ならびに先天異常(胎児で)が生じる。診断は通常,臨床的に行う。先天異常がない限り,ほぼ全ての場合,用量の調整によって完全な回復に至る。

小児における急性 ビタミンA中毒は,大量の服用(300,000IU超[100,000RAE超])によって生じる(通常は誤飲)。成人では,急性中毒は北極探検家がホッキョクグマまたはアザラシの肝臓(数百万単位の ビタミンAが含まれている)を摂取した際に起こったことがある。

年長児および成人の慢性 ビタミンA中毒は通常,100,000IU(30,000RAE)/日を超える用量で何カ月も服用し続けた後に生じる。大量ビタミン療法が原因となる可能性があり,同様に,結節性のざ瘡または他の皮膚疾患に対してときに行うビタミンAまたはその活性代謝物の連日大量投与(150,000~350,000IU[50,000~120,000RAE])も原因となる可能性がある。ビタミンAを4500IU(1500RAE)/日を超えて摂取する成人は,骨粗鬆症を発症することがある。水分散性ビタミンAの過量投与(18,000~60,000IU[6000~20,000RAE]/日)を受けた乳児は,数週間以内に中毒を発症することがある。妊娠中の女性がざ瘡治療のためにイソトレチノイン(ビタミンAと関係のある物質)の投与を受けると,子に先天異常が発生することがある。

カロテンは体内で ビタミンAに変換されるが,カロテンの過剰摂取は, ビタミンA中毒ではなく,カロテン血症を引き起こす。カロテン血症は通常は無症状であるが,柑皮症に至ることがあり,皮膚が黄変する。

サプリメントとして摂取する場合,β‐カロテンは癌リスクの増大と関連することが報告されているが,果物や野菜からカロテノイドを摂取する場合にはリスクは増大しないと考えられる。

症状と徴候

ビタミンA中毒の症状は様々であるが,急性または慢性中毒時には通常,頭痛および発疹が発生する。

急性中毒は頭蓋内圧亢進を引き起こす。眠気,易刺激性,腹痛,悪心,および嘔吐がよくみられる。ときに皮膚の剥離が続発する。

慢性中毒の初期症状は,粗造な毛髪,眉毛の脱毛,乾燥して荒れた皮膚,ドライアイ,およびひび割れた唇である。その後,重度の頭痛,偽脳腫瘍,および全身性の筋力低下が生じる。皮質骨増殖症および関節痛が起こることがあり,特に小児によくみられる。骨折が容易に起こることがあり,特に高齢者によく起こる。小児では,中毒により,そう痒,食欲不振,および発育不良が起こることがある。肝腫大および脾腫が起こることがある。

柑皮症では,皮膚(強膜ではなく)が濃黄色になり,特に手掌および足底によくみられる。

診断

  • 臨床的評価

ビタミンA中毒の診断は臨床的に行う。ビタミンの血中濃度は,中毒とはあまり相関しない。しかし,臨床診断の判断が難しい場合は,臨床検査が役立つことがある。ビタミンA中毒では,空腹時血清レチノール値は,正常値(28~86μg/dL[1~3μmol/L」)から100μg/dL(3.49μmol/L)を超える値に上昇し,ときに2000μg/dL(69.8μmol/L)を超える。高カルシウム血症がよくみられる。

ビタミンA中毒と他の疾患との鑑別は困難なことがある。柑皮症は重症の甲状腺機能低下症や神経性やせ症でも起こることがあるが,これはおそらくカロテンがより緩徐にビタミンAに変換されるためである。

予後

ビタミンAの摂取をやめれば,通常は完全に回復する。慢性中毒の症状と徴候は,通常1~4週間で消失する。しかし,ビタミンAを大量に服用した母親の胎児の先天異常は,不可逆性である。

治療

ビタミンAを中止する。

要点

  • ビタミンA中毒は,高用量のビタミンAを摂取することによって,急性に(通常は小児の誤飲)または慢性に(例,大量ビタミン投与療法または皮膚疾患の治療として)引き起こされることがある。

  • 急性中毒により,発疹,腹痛,頭蓋内圧亢進,および嘔吐が起こる。

  • 慢性中毒により,発疹,頭蓋内圧亢進,まばらで荒れた毛髪,乾燥して荒れた皮膚,および関節痛が起こる;骨折のリスクが増大する(特に高齢者で)。

  • 臨床所見に基づいて診断する。

  • ビタミンAを中止すれば,症状(先天異常を除く)は通常1~4週間以内に消失する。

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