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ナイアシン

(ニコチン酸)

執筆者:

Larry E. Johnson

, MD, PhD, University of Arkansas for Medical Sciences

最終査読/改訂年月 2016年 9月
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ビタミンの概要も参照のこと。)

ナイアシン(ニコチン酸,ニコチン酸アミド)誘導体にはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)が含まれ,これらは酸化還元反応における補酵素である。これらは細胞代謝に不可欠である。

食物中のトリプトファンは代謝されて ナイアシンになるため,トリプトファンが豊富な食品(例,乳製品)によって,食事で不足した ナイアシンを補うことができる( ビタミンの供給源,機能,および作用)。

ナイアシン欠乏症

食事によるナイアシン欠乏症(ペラグラを引き起こす)は,先進国ではまれである。臨床症状には3つのDが含まれる:すなわち,色素沈着を伴う限局性の発疹(皮膚炎 = dermatitis),胃腸炎(下痢 = diarrhea),および認知機能低下(認知症 = dementia)を含む広範囲の神経脱落症状である。診断は通常,臨床的に行い,食事による補給(経口または,必要な場合筋注)が通常奏効する。

病因

原発性 ナイアシン欠乏症は, ナイアシンおよびトリプトファンの両方の摂取が極めて不十分な場合に生じ,通常はトウモロコシ(インディアンコーン)を主食とする地域に起こる。トウモロコシに含まれる結合型 ナイアシンは,トルティーヤを作る場合のように,あらかじめアルカリ処理しなければ消化管で吸収されない。トウモロコシのタンパク質はトリプトファンも乏しい。インドでロイシンを多く含んだ粟を食べる人々にペラグラがよく発生することから,アミノ酸の不均衡が欠乏症の一因であるという仮説が立てられている。タンパクや多くのビタミンB群の欠乏症は,原発性 ナイアシン欠乏症を伴うことが多い。

二次性 ナイアシン欠乏症は,下痢,肝硬変,またはアルコール依存症に起因することがある。ペラグラは,カルチノイド症候群(トリプトファンが5-ヒドロキシトリプトファンおよびセロトニンの生成に利用される)およびハートナップ病(腸管および腎臓によるトリプトファンの吸収に欠陥がある)でも起こることがある。

症状と徴候

ペラグラは,皮膚,粘膜,中枢神経系,および消化管の症状を特徴とする。進行したペラグラでは,対称性で光線過敏性の発疹,口内炎,舌炎,下痢,および精神異常が起こる可能性がある。症状は単独で現れることも組み合わさって現れることもある。

皮膚症状にはいくつかのタイプの病変があり,通常は両側対称性に認められる。病変の分布(圧迫点または日光に曝露した皮膚)が,病変の形状よりも特異的である。病変は手に手袋様の分布で(pellagrous glove),または足と下肢にブーツを履いたような分布で(pellagrous boot)生じることがある。太陽光線により,カザールの首飾り(Casal necklace)および顔面に蝶形の病変が生じる。

粘膜の症状は主に口腔に影響を及ぼすが,腟および尿道にも影響を及ぼすことがある。舌炎および口内炎は,急性欠乏症の特徴である。欠乏症が進行するにつれて,舌および口腔の粘膜が発赤し,次いで口腔の疼痛,流涎の増加,および舌の浮腫が起こる。潰瘍形成がみられることがある(特に舌の下,下口唇の粘膜,および臼歯に向きあう箇所)。

欠乏症の早期にみられる消化管症状には,咽頭および食道の灼熱感や腹部の不快感および膨隆などがある。便秘がよくみられる。後に,悪心,嘔吐,および下痢が起こることがある。下痢は,腸管の充血および潰瘍形成のためしばしば血便となる。

中枢神経系症状には,精神病症状,脳症(意識障害を特徴とする),認知機能低下(認知症)などがある。精神病症状は記憶障害,見当識障害,錯乱,および作話症を特徴とし,興奮,抑うつ,躁病,せん妄,またはパラノイアが主症状であることがある。

診断

  • 臨床的評価

ナイアシン欠乏症の診断は臨床的に行い,皮膚と口の病変,下痢,せん妄,および認知症が同時にみられる場合には,診断が容易であることがある。多くの場合,臨床症状はあまり特異的ではない。中枢神経系の変化は,チアミン欠乏症における変化との鑑別が困難である。 ナイアシンやトリプトファンを欠いた食事歴があれば,診断の確定に役立つことがある。 ナイアシン投与による治療によく反応すれば,通常は診断が確定する。

利用可能であれば,臨床検査が診断の確定に役立つことがある(特に臨床検査によらなければ診断がはっきりしない場合)。N1-メチルニコチン酸アミド(NMN)の尿中排泄量が減少する;0.8mg/日未満(5.8μmol/日未満)の場合は, ナイアシン欠乏症が示唆される。

治療

  • ニコチン酸アミドおよびその他の栄養素

複合的な欠乏がよくみられるため,他のビタミンB群(特にリボフラビンおよびピリドキシン)を含むバランスのとれた食事が必要である。

ナイアシン欠乏症の治療には通常はニコチン酸アミドが用いられるが,これはニコチン酸アミドがニコチン酸(最も一般的な ナイアシンの形態)と異なり,紅潮,そう痒,灼熱感,またはチクチクする感覚を引き起こさないためである。ニコチン酸アミドは,250~500mgを毎日経口投与する。

要点

  • ナイアシン欠乏症はペラグラを引き起こすことがあり,主に発展途上国でみられる。

  • ペラグラは光線過敏症の発疹,粘膜炎,消化管障害,および神経精神医学的障害を引き起こす。

  • 診断は可能であれば臨床的に行う。

  • 欠乏症の治療にはニコチン酸アミドを用い,良好な反応があれば診断を確定できる。

ナイアシン中毒

低比重リポタンパク(LDL)コレステロールおよびトリグリセリドの値を下げ,高比重リポタンパク(HDL)コレステロールの値を上げるために,ときに大量のナイアシン(ニコチン酸)が用いられる。症状としては紅潮のほか,まれに肝毒性がみられる。

即放性および徐放性のナイアシン製剤(ニコチン酸アミドではない)は,脂質レベルに影響を及ぼすことがある。しかし,ナイアシンにより冠動脈疾患および脳卒中のリスクが低下するかどうかは不明である。

中間用量(1000mg/日)の場合,ナイアシンには以下の効果がある:

  • トリグリセリドの値が15~20%低下する。

  • HDLコレステロールの値が15~30%上昇する。

  • LDLコレステロールの値が10%未満低下する。

より高用量のナイアシン(3000mg/日)は,LDLコレステロールを15~20%減少させるが,黄疸,腹部不快感,霧視,高血糖の増悪,および既存の痛風の増悪を引き起こすことがある。肝疾患がある場合,高用量のナイアシンはおそらく摂取すべきではない。

即放性製剤では,紅潮(プロスタグランジンを介する)がより多くみられる。紅潮は,アルコール摂取,有酸素運動,日光曝露,および香辛料の効いた食品の摂取後に,より強くなることがある。食事の後に ナイアシンを服用するか,または ナイアシン服用の30~45分前にアスピリン(325mg,これはより低い用量よりも効果的なことがある)を服用すれば,紅潮を最小限に抑えられる。即放性のナイアシン製剤を低用量(例,50mgを1日3回)から始め,非常にゆっくりと増量することにより,重度の紅潮が起こる可能性を低下させられる。

肝毒性が,一部の徐放性製剤でより多くみられる可能性がある。一部の専門家は, ナイアシンの投与量が安定するまで,6~8週間毎に尿酸,血糖,および血漿アミノトランスフェラーゼの値をチェックすることを推奨している。

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