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自らに負わせる作為症

執筆者:

Joel E. Dimsdale

, MD, University of California, San Diego

最終査読/改訂年月 2016年 8月

作為症とは,明らかな外的報酬がない状況において,身体症状または精神症状を捏造するものであり,この行動を起こす動機は病人の役割を装うことにある。症状は急性かつ劇的で,もっともらしく見える場合がある。患者はしばしば治療を求めて医師や病院を次々と受診する。しばしばストレスおよび重度のパーソナリティ障害(ほとんどは境界性パーソナリティ障害)の関与が示唆されるが,原因は不明である。診断は臨床的に行う。明らかに効果的な治療法はない。

自らに負わせる作為症は,かつてはミュンヒハウゼン症候群と呼ばれていた(特に臨床像が劇的かつ重度の場合)。他者が作為症を負わされる場合もある。

このような患者は,最初,ときには長期間にわたり,内科または外科の診療所で治療を担当されることになる。それにもかかわらず,この障害は精神的な問題であって,単に症状を不正に偽るという以上に複雑で,重度の情緒的な問題が関連している。

患者には境界性パーソナリティ障害の顕著な特徴がみられることがあり,通常は知的で機略に富んでいる。疾患を模倣する方法をよく知っており,医療に関する知識も豊富である。作為症患者の虚偽および模倣は意識的かつ意図的ではあるが,その行動に対する明らかな外的報酬(例,経済的利益)が存在しないため,作為症の患者は詐病者とは異なる。自身の苦しみに対する医学的配慮以上に何を得ているかは不明であり,配慮を求める彼らの動機および追求は大部分が無意識的で,不明瞭である。

患者は幼少期に精神的および身体的虐待を経験している場合がある。また,小児期に重度の疾患を経験した場合,または重病の身内がいた場合もある。患者は同一性の問題および不安定な対人関係といった問題を有するようである。病気を装うのは,失敗を病気のせいにしたり,一流の医師や医療センターと関係をもったり,自分が特別な,英雄的な,または医学的知識とセンスをもつ人間であるかのように見せたりすることにより,自尊心を高めたり,維持しようとする方法である可能性がある。

症状と徴候

自らに負わせる作為症の患者は,特定の疾患を示唆する身体症状(例,急性腹症を示唆する腹痛,吐血)を訴えたり,模倣したりすることがある。患者は捏造する疾患に関連する多くの症状および特徴を知っていることが多い(例,心筋梗塞による疼痛が左腕や顎に放散する場合があることや,発汗を伴う場合があること)。

ときに身体所見を模倣したり,自ら誘発したりすることもある(例,指に針を刺して尿検体に血液を混入させる,皮膚の下に細菌を注入して発熱や膿瘍を引き起こす;そのような症例では大腸菌(Escherichia coli)が起因菌であることが多い)。患者の腹壁には試験開腹による瘢痕が縦横に走っていたり,指や四肢が切断されていたりすることもある。

診断

  • 臨床的評価

自らに負わせる作為症の診断は,病歴聴取と診察に加えて,身体疾患を除外するために必要な検査を行うとともに,身体症状の誇張,捏造,模倣,誘発を証明することによる。その行動は,明らかな外的報酬(例,仕事を休める,傷害に対する金銭的補償)がない状況でみられなければならない。

治療

  • 明らかに効果的な治療法はない

自らに負わせる作為症の治療は通常困難であり,明らかに効果的な治療法はない。患者の治療への要求が満たされることによって,当初は症状の緩和がみられることもあるが,症状はエスカレートするのが典型的であり,最終的には医師が進んで行える医療行為の範囲や能力の範囲を越えてしまう。治療の要求を満たすことに正面から対決したり拒否したりすると,しばしば怒りの反応を導く結果となり,通常は医師または病院を替えてしまう(医者遍歴[peregrination]と呼ばれる)。

リスクを伴う侵襲的検査,外科的手技,過剰または不要な薬剤の使用を避けることができるように,本障害を認識して,早期に精神科または心理士へのコンサルテーションを要請することが重要である。

患者に作為症の診断を示すに当たっては,攻撃的,懲罰的,対決的ではない方法を用いるべきである。罪悪感や非難を示唆することを避けるため,医師はこの診断を助けを求める叫びとして説明してもよい。あるいは,病気の発生への自身の関与を患者が認めることを求めずに,精神医学的治療を行うことを推奨する専門医もいる。いずれの場合でも,医師と患者が協力して問題を解決できることを患者に伝えることが役立つ。

他者に負わせる作為症

他者に負わせる作為症は,他者の疾患の臨床像を捏造することであり,典型的には養育者により世話をしている相手に対して行われる。

この障害はかつて,代理人による虚偽性障害や代理ミュンヒハウゼン症候群として知られていた。他者に負わせる作為症では,患者(通常は親などの養育者)が自身(自らに負わせる作為症のように)ではなく,世話をしている相手(通常は子供)に身体的または精神的な症状または徴候を意図的に生み出すか,捏造する。

養育者は病歴を偽り,小児を薬剤または他の物質で傷つけたり,尿検体に血液や細菌汚染物を加えたりして病気を装う。養育者は小児への治療を求め,小児のことを深く心配し,守ろうとしているかのように見える。小児は頻回の入院歴を有するのが典型的で,その理由は通常,様々な非特異的症状であるが,確定的な診断には至らない。被害を蒙る子供は重篤な状態になったり,ときには死亡したりすることもある。

自らに負わせる作為症の場合と同様に,その介護者の行動は明らかな外的報酬(例,小児虐待の徴候を隠す)がない状況でみられなければならない。

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