病気不安症(かつては心気症[hypochondriasis]と呼ばれていたが,この用語は蔑視的な含意があることから現在では使用されていない)は,大抵の場合,成人期早期に発症し,男女間で同等に生じるようである。
患者の恐怖は,病的でない身体症状または正常な身体機能(例,腹鳴,腹部膨満および痙攣様の不快感,心拍の自覚,発汗)の誤解に由来することがある。
症状と徴候
病気不安症の患者は,自分は病気である,あるいは病気になろうとしているかもしれないという考えにとらわれているため,そうした病気不安によって社会的および職業的機能が損なわれたり,著しい苦痛が引き起こされたりする。患者は身体症状を有することもあれば,そうでないこともあるが,症状がある場合,患者の懸念は症状自体よりも,その症状がもちうる意味に対する心配の方が大きい。
自ら観察を繰り返す患者もいる(例,鏡で喉を見る,皮膚に病変がないか確認する)。患者は新たに生じた体性感覚に対し,すぐさま不安を覚える。頻繁に医療機関を受診する患者もいれば(医療を求める病型),医療を求めることがまれな患者もいる(医療を避ける病型)。
経過はしばしば慢性で,変動がみられる場合もあれば,一定している場合もある。回復する患者もいる。
診断
病気不安症の診断は,以下を含むDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)の基準に基づいて臨床的に行う:
顕著な身体症状が認められ,かつ主要な懸念の対象が症状自体である患者は,身体症状症と診断される。