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離人感・現実感消失症

執筆者:

David Spiegel

, MD,

  • Willson Professor
  • Stanford University School of Medicine
  • Associate Chair of Psychiatry & Behavioral Sciences
  • Stanford University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2015年 7月

離人感・現実感消失症は,自身の身体または精神プロセスから遊離(解離)しているという,持続的または反復的な感覚から成る解離症の一種であり,通常は自身の生活を外部から眺める傍観者であるような感覚(離人感),あるいは自分の周囲から遊離しているような感覚(現実感消失)を伴う。本疾患はしばしば重度のストレスにより引き起こされる。診断は,可能性のある他の原因を除外した後,症状に基づいて行う。治療としては,精神療法と合併した抑うつおよび/または不安に対する薬物療法を併用する。

一過性の離人感または現実感消失を,一般人口の約50%が,生涯のうちに少なくとも1回経験する。しかし,離人感・現実感消失症の診断基準を満たす人は約2%のみである。

離人感または現実感消失は,他の多くの精神障害の症状や痙攣性疾患(発作時または発作後)などの身体疾患の症状として生じることもある。離人感または現実感消失が他の精神障害または身体疾患とは独立して発生しており,遷延性または反復性であり,かつ生活機能に支障が出ている場合は,離人感・現実感消失症と呼ばれる。

離人感・現実感消失症は男女に同等の頻度で発生する。発症年齢の平均は16歳である。本疾患は小児期の早期または中期に発症することもあり,25歳以降に発症する症例は5%のみで,40歳以降の発症はまれである。

病因

離人感・現実感消失症の患者は,しばしば小児期に重度のストレス(特に情緒的虐待またはネグレクト)を経験している。その他のストレス因としては,身体的虐待の被害,ドメスティックバイオレンスの目撃,親が重度の身体または精神障害患者であること,家族や親しい友人が不意に亡くなる経験などがある。

誘因となる出来事としては対人的,経済的,職業的ストレス,抑うつ,不安,または違法薬物(特にマリファナ,ケタミン,幻覚剤)の使用などがある。

症状と徴候

離人感・現実感消失症の症状は通常,間欠的にみられ,その強さは増強と減弱を繰り返す。症状の発現期間は,わずか数時間ないし数日の場合もあれば,数週間や数カ月,ときには数年続く場合もある。しかし,症状が数年または数十年にわたって一定の強さで常にみられる患者もいる。

離人感の症状としては以下のものがある:

  • 自身の身体,精神,感情,および/または感覚から離脱しているように感じる

患者は自分の生活を外部から傍観しているように感じる。多くの患者は,非現実的な感覚がする,または自分がロボットであるような感覚や自動制御されているような(行動や発言内容を自分でコントロールできない)感覚がするとも訴える。感情的および身体的に麻痺し,感情が平板化することもあり,自分を「生ける屍」と表現することもある。自分の感情を認識したり,説明したりすることができない患者もいる(失感情症)。自分の記憶から切り離されたように感じ,記憶を明瞭に思い出すことができない。

現実感消失の症状としては以下のものがある:

  • 外界(例,人々,物体,あらゆるもの)から切り離されたように感じ,外界が現実ではないように感じられる

患者は自分が夢や霧の中にいるかのように感じたり,ガラスの壁やベールによって周囲から隔てられているかのように感じたりする。世界が生き生きとした感じがなく,色がなく,または人工的に感じられる。世界についての主観的な歪みがよくみられる。例えば,物がかすんで見えたり,異常に明瞭に見えたりする;物が実際より平坦に見えたり,小さく見えたり,大きく見えたりする。音が実際により大きく聞こえたり,小さく聞こえたりする;時間の経過が遅すぎると感じたり,速すぎると感じたりする。

症状はほぼ常に苦痛をもたらし,重度の場合は非常に耐えがたくなる。不安と抑うつもよくみられる。回復不能な脳障害が起きているのではないか,あるいは気が狂っていっているのではないかと恐れる患者もいる。自分が現実に存在しているのかどうかを思い悩んだり,自分の知覚が現実のものかどうかを判断しようと繰り返し確認する患者もいる。しかしながら,患者は常に,自らの非現実的体験が現実の体験ではなく,ただ自分がそう感じているだけであることを認識している(すなわち,患者の現実検討能力は損なわれていない)。この認識により,離人症はこのような病識が常に欠如する精神病性障害と鑑別される。

診断

  • 臨床基準

離人感・現実感消失症の診断は,Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)の基準に基づいて臨床的に行う:

  • 離人感,現実感消失,またはその両方について持続性または反復性のエピソードが認められる。

  • 自らの非現実的体験が現実の体験ではないことを患者が認識している(すなわち,患者の現実検討能力は損なわれていない)。

  • 症状によって,著しい苦痛が生じているか,社会的または職業的機能が著しく損なわれている。

また,症状を他の障害(例,てんかん発作,継続中の物質乱用,パニック症,うつ病,他の解離症)では十分に説明することができない。

身体的原因を除外するためにMRIおよび脳波検査を施行する(特に症状や進行が典型的ではない場合[例,40歳を過ぎてからの発症])。尿の中毒性物質の検査も適応となる場合がある。

心理学的検査,特別な構造化面接および質問票が有用である。

予後

患者はしばしば無治療で改善する。多くの患者では,特に症状が治療可能または一過性のストレスから生じている場合または症状が遷延していない場合,完全な回復が可能である。離人感および現実感消失が慢性かつ難治性となる患者もいる。

持続性または反復性の離人感または現実感消失症状であっても,患者が絶えず頭を忙しく働かせ,他の考えまたは活動に集中することにより,自己の主観的感覚から気をそらすことができれば,ごくわずかな障害しか引き起こさない場合もある。慢性的な疎外感により,または付随する不安もしくは抑うつ,またはその両方により,日常生活に支障を来す患者もいる。

治療

  • 精神療法

離人感・現実感消失症の治療では,本疾患の発症に関連した全てのストレスと,晩発性の離人感および/または現実感消失の素因となった可能性のある,より早期のストレス(例,小児期の虐待またはネグレクト)に対処することが必要である。

一部の患者には各種の精神療法(例,精神力動的精神療法,認知行動療法)が有効である。

  • 認知療法の技法は,非現実的な状態をめぐる強迫的思考を阻止するのに有用となりうる。

  • 行動療法の技法は,課題に取り組ませることで離人感および現実感消失から患者の気をそらすのに有用となりうる。

  • グラウンディングの技法は,患者が,自己および世界とより強くつながっており,その瞬間により現実的であると感じるよう支援するために,五感を使う(例,大きな音で音楽をかけたり,手に氷のかけらを置くことで)。

  • 精神力動的精神療法は,特定の感情を患者にとって耐えがたいものとし,それにより解離を引き起こしている否定的感情,根底にある葛藤,または体験に患者が対処する助けとなる。

  • 治療期間中は感情および解離をそのときに追跡し,ラベル付けすることが,一部の患者で非常に有効である。

様々な薬剤が使用されているが,明らかな効力が認められたものはない。しかしながら,一部の患者ではSSRI,ラモトリギン,オピオイド拮抗薬,抗不安薬,および刺激薬が有用とみられる。ただし,これらの薬剤による効果には,しばしば離人感および現実感消失に併発する,あるいは離人感および現実感消失によって誘発される他の精神障害(例,不安,抑うつ)を標的とすることが大きく寄与している可能性がある。

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