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抑うつ障害群

執筆者:

William Coryell

, MD, Carver College of Medicine at University of Iowa

最終査読/改訂年月 2016年 8月
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抑うつ障害群は,機能を妨げるほど重度または持続的な悲しみ,および興味または喜びが減退することにより特徴づけられる。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。通常,治療は薬物療法,精神療法,またはその両方,および電気痙攣療法から成る。

うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)において,具体的な症状により分類されている:

その他は,病因により以下のように分類される:

抑うつ障害群はあらゆる年齢で発生するが,典型的には10代半ば,20代,または30代で発症する。プライマリケアでは,30%もの患者が抑うつ症状を訴えるが,うつ病を有しているのは10%未満である。

意気消沈と悲嘆

抑うつという用語は,失望(例,経済的困窮,自然災害,重篤な疾患)または喪失(例,愛する人の死)により生じる気分の落ち込みや落胆した気分を表現するためにしばしば用いられる。しかしながら,そうした気分をより適切に表す用語は意気消沈(demoralization)および悲嘆である。

意気消沈や悲嘆による否定的感情は,抑うつによるものとは異なり,断続的に生じるもので,原因となった出来事に関する思考やその出来事を思い出させる物事に結びついていることが多い。また環境や出来事が改善すれば解消され,合間には陽性感情やユーモアを示す時期がみられる場合もあり,広汎な無価値感や自己嫌悪は伴わない。気分の落ち込みの持続期間は,数週間や数カ月間ではなく,通常は数日であり,自殺念慮や長期に及ぶ機能喪失が生じる可能性ははるかに低い。

しかしながら,意気消沈や悲嘆を引き起こす出来事およびストレス因はうつ病エピソードを誘発することもあり,特に脆弱性を有する人々(例,うつ病の既往または家族歴を有する人)でその傾向が強い。

病因

抑うつ障害群の正確な原因は不明であるが,遺伝因子と環境因子が寄与している。

遺伝は病因全体の約50%を締めている(高齢発症のうつ病ではより低い)。そのため,うつ病患者の第1度近親者にはうつ病がみられることが多く,一卵性双生児間の一致率は高い。また,おそらく遺伝因子は有害な出来事に対する抑うつ反応の発現にも影響を及ぼす。

他の仮説では,コリン,カテコールアミン(ノルアドレナリンまたはドパミン作動性),およびセロトニン(5-ヒドロキシトリプタミン)作動性神経伝達の調節異常など,神経伝達物質の変化に焦点が当てられている。神経内分泌系の調節障害が一因である可能性もあり,特に視床下部-下垂体-副腎,視床下部-下垂体-甲状腺,および成長ホルモンの3つの系が重要視されている。

心理社会的因子も関与するように思われる。うつ病のエピソードには,一般的に重大な生活上のストレス(特に離別および喪失)が先行するが,気分障害の素因をもつ人を除いて,通常,そのような出来事により,持続的で重度のうつ病が生じることはない。

うつ病のエピソードを発現した人は,その後のエピソードが発生するリスクが高い。回復力が低い人や不安傾向を有する人は,抑うつ障害を発症しやすい可能性がある。こうした人では,しばしば生活上の重圧に適応するための社会的技能が発達しない。うつ病は他の精神障害に罹患している人にも発症することがある。

リスクは女性の方が高いが,その理由を説明できる仮説はない。考えられる因子としては以下のものがある:

  • 日常的ストレスへの曝露の多さ,または日常的ストレスに対する反応の強さ

  • モノアミン酸化酵素(気分に重要な影響を及ぼすと考えられている神経伝達物質を分解する酵素)の増加

  • 甲状腺機能障害の発生率の高さ

  • 月経および閉経に伴うホルモン分泌の変化

周産期うつ病では,妊娠中または分娩後4週間以内(産後うつ病)に症状が現れる;ホルモン分泌の変化が関係するとされているが,具体的な原因は不明である。

季節性感情障害では,症状が季節性のパターンを示し,典型的には秋または冬に出現する;この疾患は冬が長いまたは厳しい地域において発生しやすい傾向がある。

抑うつ症状または抑うつ障害は,甲状腺疾患副腎疾患,良性および悪性脳腫瘍脳卒中AIDSパーキンソン病多発性硬化症など,種々の身体疾患に付随して起こることがある( 抑うつ症状および躁症状の原因)。

コルチコステロイド,一部のβ遮断薬,インターフェロン,およびレセルピンなどの特定の薬剤も抑うつ障害を引き起こす可能性がある。一部のレクリエーショナルドラッグ(例,アルコールアンフェタミン類)の乱用も,うつ病を引き起こしたり,うつ病を合併することがある。薬物の毒性作用または中断により,一時的な抑うつ症状が引き起こされることもある。

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抑うつ症状および躁症状の原因

疾患の種類

抑うつ

躁病

結合組織疾患

SLE

SLE

内分泌疾患

甲状腺機能亢進症

感染性疾患

進行麻痺(実質型神経梅毒

ウイルス性肝炎

ウイルス性肺炎

AIDS

進行麻痺

インフルエンザ

セントルイス脳炎

腫瘍性疾患

播種性癌腫症

神経疾患

複雑部分発作(側頭葉)

脳卒中(左側前頭葉)

複雑部分発作(側頭葉)

間脳腫瘍

頭部外傷

多発性硬化症

脳卒中

栄養性疾患

その他*

薬剤性疾患

アムホテリシンB

抗コリンエステラーゼ作用のある駆虫薬

バルビツール酸系薬剤

β遮断薬(プロプラノロールなど一部)

シメチジン

コルチコステロイド

サイクロセリン

エストロゲン療法

インドメタシン

インターフェロン

水銀

メチルドパ

メトクロプラミド

経口避妊薬

フェノチアジン系薬剤

レセルピン

タリウム

ビンブラスチン

ビンクリスチン

アンフェタミン類

特定の抗うつ薬

ブロモクリプチン

コカイン

コルチコステロイド

レボドパ

メチルフェニデート

交感神経刺激薬

精神障害

早期の認知症疾患

*うつ病はこれらの疾患においてよく生じるが,因果関係は確立されていない。

症状と徴候

うつ病は抑うつ気分だけでなく,認知,精神運動,および他の種類の機能障害(例,集中力低下,疲労感,性欲の喪失,以前は楽しめた活動のほぼ全てでの興味または喜びの喪失,睡眠障害)を引き起こす。抑うつ障害患者では,しばしば自殺念慮がみられ,かつ自殺企図に至ることがある。他の精神症状または精神障害(例,不安やパニック発作)が併存することが多く,ときに診断および治療が複雑になる。

あらゆる種類のうつ病の患者は,睡眠障害または不安症状を自己治療しようとして,アルコールまたは他のレクリエーショナルドラッグを乱用する可能性がより高いが,うつ病がアルコール依存症および薬物乱用の原因となる頻度は,かつて考えられていたほど高くはない。また,患者はヘビースモーカーになったり,自分の健康を顧みなくなる可能性もより高く,他の疾患(例,COPD)が発生または進行するリスクを高めている。

うつ病は防御的な免疫応答を低下させることがある。おそらくうつ病ではサイトカイン類および血液凝固促進因子が増加し,心拍変動が低下する(いずれも心血管疾患の潜在的危険因子である)ので,うつ病が心血管疾患,心筋梗塞,および脳卒中のリスクを高める。

うつ病(単極性障害)

患者は惨めである,涙ぐんでいる,眉間にしわを寄せている,口の端をへの字に曲げている,ぐったりともたれた姿勢をとっている,視線をほとんど合わせない,表情がない,体の動きがほとんどない,かつ話し方が変わった(例,弱々しい声,プロソディーの欠如,単音節の言葉の使用)ように見える。外見からパーキンソン病と混同されることもある。一部の患者では,涙が枯れるほど抑うつ気分が深く,彼らは通常の情動を経験することができず,世界が色あせて活気がなくなってしまったように感じると訴える。

栄養状態が重度に障害され,直ちに治療が必要になる場合もある。

一部のうつ病患者は,身の回りの衛生状態,または自分の子供,愛する人,もしくはペットさえも無視する。

診断するには,以下のうち5つ以上が同じ2週間の期間中ほぼ毎日認められ,かつそのうちの1つが抑うつ気分または興味もしくは喜びの喪失でなければならない:

  • ほぼ1日中みられる抑うつ気分

  • ほぼ1日中みられる,全てまたはほぼ全ての活動における興味または喜びの著明な減退

  • 有意な(5%超)体重増加もしくは体重減少または食欲の減退もしくは亢進

  • 不眠(しばしば睡眠維持障害)または過眠

  • 他者により観察される(自己報告ではない)精神運動焦燥または制止

  • 疲労感または気力減退

  • 無価値感または過剰もしくは不適切な罪悪感

  • 思考力もしくは集中力の減退または決断困難

  • 死もしくは自殺についての反復思考,自殺企図,または自殺を実行するための具体的計画

持続性抑うつ障害

抑うつ症状が寛解することなく,2年以上持続する場合は,持続性抑うつ障害(PDD)に分類されるが,これはかつて慢性大うつ病性障害および気分変調性障害と呼ばれていた疾患を統合するカテゴリーである。

典型的には,症状が青年期から潜行性に始まり,年単位または十年単位で持続することがある。症状の数は,うつ病エピソードの閾値近傍で上下変動することが多い。

患者は,常に陰うつで,悲観的で,ユーモアを欠き,受動的で,無気力で,内向的で,自分および他人を過度に批判し,不平不満が多い場合がある。またPDD患者は,基礎疾患として不安症,物質使用障害,またはパーソナリティ障害(すなわち,境界性パーソナリティ障害)を有している可能性がより高い。

診断するには,ほぼ1日中持続する抑うつ気分が半数以上の日にわたってみられる期間が少なくとも2年以上続いていて,かつ以下のうち2つ以上が認められなければならない:

  • 食欲減退または過食

  • 不眠または過眠

  • 気力減退または疲労感

  • 自尊心の低下

  • 集中力低下または決断困難

  • 絶望感

月経前不快気分障害

月経前不快気分障害は,月経周期に明らかに関連した気分および不安症状が生じる病態で,月経前期に発症して,月経終了後は無症状である。過去1年間にわたって,ほとんどの月経周期で症状が認められる必要がある。

臨床像は月経前症候群と類似するが,より重症であり,臨床的に意味のある苦痛,社会的もしくは職業的機能の著明な障害を引き起こす。本疾患は初経後のいつでも発症する可能性がある;閉経が近づくにつれ悪化することがあるが,閉経後は終息する。閉経前女性における任意の12カ月有病率は2~6%と推定されている。

診断するには,患者が月経前の1週間に5つ以上の症状を呈する必要がある。症状は月経開始後数日以内に寛解し始め,かつ月経終了後の1週間で軽微になるか消失しなければならない。以下の症状が1つ以上含まれていなければならない:

  • 著明な気分変動(例,突然悲しくなったり,涙が出たりする)

  • 著明な易怒性もしくは怒り,または対人関係の摩擦の増加

  • 著明な抑うつ気分,絶望感,または自虐的思考

  • 著明な不安,緊張感,または感情の高ぶり

さらに,以下の症状が1つ以上認められなければならない:

  • 普段の活動における興味の減退

  • 集中困難

  • 気力減退または疲労感

  • 著明な食欲の変化,過食,または特定の食物への渇望

  • 過眠または不眠

  • 圧倒される感覚または制御不能な感覚

  • 乳房の圧痛または腫脹,関節痛,筋肉痛,腹部膨満感,体重増加などの身体症状

その他の抑うつ障害

抑うつ障害群の他の診断基準を完全には満たさないが,臨床的に意味のある苦痛または機能障害を引き起こす抑うつ障害の特徴を有する症状群は,その他の抑うつ障害(他の特定される抑うつ障害または特定不能の抑うつ障害)として分類される。

その中には,別の気分障害の診断基準を満たしたことがない人において2週間を超えない期間にわたり気分不快が反復してみられ,かつ他の抑うつ症状が4つ以上みられる場合(例,反復性短期抑うつ)と,抑うつの持続期間はこれより長いが,別の抑うつ障害の診断を下すには症状数が足りないものが含まれる。

特定用語

うつ病および持続性抑うつ障害は,抑うつエピソード中にみられる追加的な臨床像を記述する1つ以上の特定用語を含むことがある:

  • 不安性の苦痛:緊張感および異常に落ち着かないという感覚を覚え;何か恐ろしいことが起こるかもしれないと心配もしくは危惧したり,または自分をコントロールできなくなるかもしれないと感じるために,集中することが困難である。

  • 混合性の特徴:患者は,3つ以上の躁症状または軽躁症状(例,気分の高揚,誇大性,普段より多弁,観念奔逸,睡眠減少)を有する。

  • メランコリアの特徴:患者は,ほぼ全ての活動における喜びを喪失している,または通常なら快感となる刺激に反応しない。彼らは落胆ならびに絶望したり,過剰ないしは不適切な罪悪感を抱いたり,または早朝覚醒,著明な精神運動制止または精神運動焦燥,および有意な食欲不振もしくは体重減少を呈する。

  • 非定型の特徴:患者の気分は,よい出来事(例,子供の訪問)に反応して一時的に明るくなる。また,以下のうち2つ以上も認められる:批判または拒絶を感じた際の過剰な反応,鉛様の麻痺(体が重い感じまたは体に重りを付けられた感じ,通常は四肢),体重増加または食欲亢進,および過眠。

  • 精神病性の特徴:妄想および/または幻覚がみられる。妄想の内容は,許されない過ちもしくは罪を犯した,不治の病もしくは恥ずべき病に侵されている,または迫害されているなどが多い。幻覚は聴覚性(例,自分を咎めたり非難したりする声が聞こえる)または視覚性である。患者が声のみを報告する場合は,その声が真の幻覚であるかどうかを注意深く検討すべきである。

  • 緊張病:重度の精神運動制止,目的のない過剰な活動,および/または引きこもりがみられ,患者によっては,しかめ面や言葉(反響言語)または行動(反響動作)の模倣もみられる。

  • 周産期発症:発症は妊娠中または分娩後4週間以内である。精神病性の特徴を認める場合があり,子殺しは,乳児を殺せという命令幻聴または乳児が何かに憑りつかれているという妄想などの精神病エピソードが関連している場合が多い。

  • 季節型:エピソードは1年のうちの特定の時期に生じ,秋または冬が最も多い。

診断

  • 臨床診断基準(DSM-5)

  • うつ病を引き起こす可能性のある身体疾患を除外するための血算,および電解質,TSH,ビタミンB12,ならびに葉酸の濃度測定

抑うつ障害群の診断は,症状および徴候の同定と上述の臨床基準に基づいて行う。抑うつ障害群を通常の気分変動と鑑別する上で有用な点として,著しい苦痛または社会的,職業的機能,もしくは他の重要な機能領域の障害が存在している必要がある。

スクリーニング用にいくつかの簡易質問票が利用できる。それらは一部の抑うつ症状を明らかにするのに有用であるが,単独で診断に用いることはできない。具体的な多肢選択回答式の質問は,うつ病診断のためのDSM-5基準で要求されている症状の有無を決定するのに有用である。

重症度は,苦痛および機能障害(身体的,社会的,職業的)の程度ならびに症状の持続期間によって決定される。医師は患者に,自傷他害行為の思考および計画,過去の自殺の恐れおよび/または自殺企図,ならびに他の危険因子について,優しくかつ率直に尋ねるべきである。精神病および緊張病の存在は,重度のうつ病であることを示唆する。メランコリアの特徴は,重度または中等度のうつ病であることを示唆する。身体疾患,物質乱用障害,および不安症が併存すれば,重症度が増す場合がある。

鑑別診断

抑うつ障害群と意気消沈および悲嘆との鑑別が必要である。他の精神障害(例,不安症)がうつ病に類似したり,うつ病の診断を困難にすることがある。ときに複数の疾患が併存することもある。うつ病(単極性障害)と双極性障害の鑑別が必要である。

高齢患者では,うつ病の認知障害(かつては仮性認知症と呼ばれた)として現れることがあり,これは精神運動性制止および集中力低下といった認知症と類似の症状および徴候の多くを引き起こす。一方で,早期の認知症が抑うつ状態を引き起こすこともある。一般に,診断が不確かな場合は,抑うつ障害の治療を試みるべきである。

気分変調症などの慢性抑うつ障害は,物質乱用障害と鑑別することが困難な場合があるが,それは特に,これらの疾患が併存する可能性があり,かつ互いに発生原因となることがあるためである。

抑うつ症状の原因として,身体疾患も除外する必要がある。甲状腺機能低下症は,しばしばうつ病の症状を引き起こし,特に高齢者ではよくみられる。さらに,パーキンソン病はうつ病に類似した症状を呈することがある(例,気力の喪失,無表情,寡動)。この疾患を除外するためには,徹底的な神経学的診察が必要である。

検査

抑うつ障害に特有の臨床検査所見はない。まれに,大脳辺縁系-間脳機能障害に対する検査が適応または有用となる。一方で,うつ病を引き起こす身体疾患を除外するための臨床検査が必要である。検査には,血算,TSH濃度,ならびにルーチンの電解質,ビタミンB12,および葉酸の濃度がある。ときに違法薬物の使用に関する検査が適切となる。

治療

  • 支援

  • 精神療法

  • 薬剤

特に症状が軽度または短期間の場合,症状は自然に寛解することがある。軽症のうつ病には,全般的支援と精神療法による治療が行われることがある。中等症から重症のうつ病には,薬物療法,精神療法,またはその両方に加え,ときに電気痙攣療法による治療が行われる。一部の患者では複数の薬剤を併用する必要がある。薬剤投与開始後1~4週間経過するまで,改善が明らかとならない場合がある。

特に複数回のエピソードを経験している患者の場合,うつ病が再発する可能性が高いため,重症例ではしばしば長期にわたる維持薬物療法が必要となる。

大半のうつ病患者は外来で治療される。重大な希死念慮がみられる患者で,特に家族の支援が得られない場合,入院が必要であり,精神病症状や身体的な衰弱がみられる患者も同様である。

物質乱用障害の患者では,抑うつ症状は物質使用の中止後数カ月以内に消失する場合が多い。物質乱用が続いている間は,抗うつ薬治療が効果的となる可能性ははるかに低くなる。

原因として身体疾患または薬物毒性が考えられる場合は,まずその基礎疾患に対する治療を行う。しかしながら,診断が疑わしい場合,または症状により生活に支障を来している,もしくは症状に希死念慮か絶望感がみられる場合,抗うつ薬または気分安定薬による試験的治療が有用な場合がある。

初期の支援

明らかな改善がみられるまでは,支援および教育を行い,進捗状況をモニタリングするため,医師が週1回または2週に1回患者を診察することが必要となることがある。電話連絡が外来診療を補完する場合もある。

患者とその家族は,精神障害に罹患しているという考えに心配や当惑を覚えている場合がある。医師としては,うつ病は生物学的障害により起こる重篤な医学的疾患であること,および特別な治療が必要であること,ならびに治療した場合の予後は良好であることを説明することにより,支援が可能である。患者と家族には,うつ病は性格上の欠陥(例,怠惰,弱さ)を反映したものではないことを再確認すべきである。回復までの道のりが一進一退することが多いことを患者に告げることで,患者が絶望感を視野に入れて見直すこと,およびアドヒアランスを改善することに役立つ。

単純な活動(例,散歩,定期的な運動)および社会的相互交流を徐々に増やすよう患者を励ます一方で,活動を避けたいという患者の欲求を認めてバランスをとることも必要である。患者に自分を責めないよう助言できるとともに,暗い考えはうつ病の一部であり,いずれは消失すると説明することができる。

精神療法

多数の比較試験により,精神療法(特に認知行動療法および対人関係療法)は,うつ病患者における急性症状を治療することおよび再発の可能性を低減すること両方に効果的であることが示されている。軽度のうつ病患者は,より重症度の高い患者より転帰が良好となる傾向があるが,改善の度合いは,より重症の患者の方が大きい。

薬物療法

うつ病の治療には,いくつかの薬物クラスおよび薬物が使用できる:

薬剤の選択では,特定の抗うつ薬に対する過去の反応を参考にすることがある。それ以外の場合は,SSRIが最初の第1選択薬とされる場合が多い。異なるSSRIは典型例に対して同等に効果的であるが,特定の患者では薬剤の特定の性質により適否が異なる(抗うつ薬 )。

電気痙攣療法(ECT)

以下の状態で,薬剤が無効である場合,しばしばECTによる治療が行われる:

  • 自殺の危険がある重度のうつ病

  • 焦燥または精神運動制止を伴ううつ病

  • 妄想性うつ病

  • 妊娠中のうつ病

食事を摂れなくなった患者については,死を回避するためにECTが必要となることがある。ECTは精神病性のうつ病に特に効果的である。

通常,6~10回のECTで劇的な反応が得られ,救命につながる場合もある。ECT後は再発がよくみられ,ECTの中止後にはしばしば薬物療法が継続される。

光療法

光療法は,季節性のうつ病に対する効果が最もよく知られているが,季節性以外のうつ病に対しても同様に効果的とみられる。

この治療は,自宅で2,500~10,000ルクスを30~60cmの距離から1日30~60分間(光源があまり強くない場合はさらに長く)照射する。

遅く寝て遅く起きる患者では,光療法は午前中に行い,ときに午後3時から午後7時までの間に5~10分の曝露を追加することで最も効果的となる。早く寝て早く起きる患者では,光療法は午後3時から午後7時までに行うことで最も効果的となる。

他の治療法

ときに精神刺激薬(例,デキストロアンフェタミン,メチルフェニデート)が,多くの場合抗うつ薬との併用で使用されることがあるが,これらは対照をおいた臨床試験で検討されたわけではない。

薬用ハーブを使用する患者もいる。データは一貫していないが,セントジョーンズワートは軽度のうつ病に効果的である可能性がある。セントジョーンズワートは他の抗うつ薬および薬物と併用すると相互作用を示すことがある。増強または単剤療法として使用されるω-3脂肪酸サプリメントに関するプラセボ対照研究の一部では,エイコサペンタエン酸1~2g,1日1回の投与に有用な抗うつ効果のあることが示唆されている。

迷走神経刺激療法は,植え込み型パルス発生装置を介して迷走神経を間欠的に刺激するものである。他の治療に反応しないうつ病に有用となりうるが,通常は効果が現れるまでに3~6カ月を要する。

うつ病の急性期治療での反復経頭蓋磁気刺激法(rTMS)の利用については,複数の対照試験によってかなりの裏付けが得られている。低頻度rTMSは右側背外側前頭前野(DLPC)に,高頻度rTMSは左側DLPCに適用することができる。最も頻度の高い有害作用は頭痛および頭皮の不快感であり,ともに低頻度rTMSより高頻度rTMSにおいてより多くみられる。

膝下部帯状回または前腹側内包/腹側線条体を標的とする脳深部刺激法が,対照を置いていない症例集積研究で有望な結果を示している(1)。対照をおいた試験が進行中である。

治療に関する参考文献

  • 1.Bergfeld IO, Mantione M, Hoogendoorn MLC, et al: Deep brain stimulation of the ventral anterior limb of the internal capsule for treatment-resistant depression: A randomized clinical trial. JAMA Psychiatry 1:73(5):456–64, 2016. doi: 10.1001/jamapsychiatry.2016.0152.

要点

  • うつ病は,抑うつ気分および/または以前楽しめた活動における興味もしくは喜びのほぼ完全な喪失が関与する一般的な疾患であり,身体症状(例,体重変化,睡眠障害)および認知症状(例,集中困難)もよくみられる。

  • うつ病は職場で機能を果たす能力および社会と交流する能力を著しく損なうことがあり,自殺リスクが著しい。

  • ときに身体疾患(例,甲状腺または副腎疾患,良性または悪性脳腫瘍,脳卒中,AIDS,パーキンソン病,多発性硬化症)または特定の薬物(例,コルチコステロイド,一部のβ遮断薬,インターフェロン,一部のレクリエーショナルドラッグ)の使用により,抑うつ症状が引き起こされる場合がある。

  • 診断は臨床基準に基づいて行い,臨床的評価および選択された検査(例,血算;電解質,TSH,ビタミンB12,および葉酸濃度)により身体疾患を除外する必要がある。

  • 治療は精神療法および通常は薬剤により,通常は最初にSSRIを試し,それらが無効であれば,セロトニンおよび/またはノルアドレナリンに作用する他の薬剤を試してもよい。

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