通常,双極性障害は10代,20代,または30代で発症する(小児および青年における双極性障害 小児および青年における双極性障害 双極性障害は,躁状態,抑うつ状態,正常な気分状態の期間が交互に出現することによって特徴づけられ,さらにそれぞれが1回につき数週間から数カ月間継続する障害である。診断は臨床基準に基づく。治療は気分安定薬(例,リチウム,ある種の抗てんかん薬,抗精神病薬),精神療法,および抗うつ薬の併用である。 双極性障害は,典型的には青年期中期から20代中盤にかけて発症する。多くの小児において,初発症状は1回以上の... さらに読む も参照)。生涯有病率は約4%である。双極I型障害の発生率は男女でほぼ同じである。
双極性障害は以下のように分類される:
双極I型障害:少なくとも1回の明白な(すなわち,通常の社会的および職業的機能を破綻させる)躁病エピソードならびに通常は複数回の抑うつエピソードの存在により定義される
双極II型障害:複数回のうつ病エピソードとともに少なくとも1回の軽躁病エピソードが認められるが,明白な躁病エピソードがみられないと定義される
特定不能の双極性障害:明らかな双極性の特徴を示す障害であるが,他の双極性障害の具体的な診断基準を満たさないもの
気分循環性障害 気分循環性障害 気分循環性障害は,軽躁病の時期および軽微な抑うつの時期(これらは不規則な経過をたどり,双極性障害ほど重度ではない)が数日間持続することにより特徴づけられる;それらの症状期間は2年以上の期間中に半数を超える日数で生じている必要がある。診断は病歴に基づいて臨床的に行う。機能障害を呈する一部の患者には薬物療法が必要となるが,管理は主として心理教育から成る。 一般的に,気分循環性障害は... さらに読む では,長い期間(2年以上),軽躁病エピソードおよび抑うつエピソードの両方を含む状態を患者は呈するが,これらのエピソードは双極性障害の具体的な基準を満たさない。
双極性障害の病因
双極性障害の正確な原因は不明である。発症に遺伝因子が関わっている。セロトニン,ノルアドレナリン,およびドパミンの調節障害に関する知見もある。
心理社会的因子が関与している可能性がある。しばしば,ストレスとなるライフイベントが症状の初回発現およびその後の増悪に関連するが,その因果関係はまだ確立されていない。
双極性障害患者の一部では,特定の薬物が増悪の誘因となる可能性があり,そのような薬剤としては以下のものがある:
交感神経刺激薬(例, コカイン コカイン コカインは,中枢刺激作用と多幸作用がある交感神経刺激薬である。高用量の使用は,パニック,統合失調症様症状,痙攣発作,高体温,高血圧,不整脈,脳卒中,大動脈解離,腸管虚血,および心筋梗塞を引き起こすことがある。中毒の管理は,(激越,高血圧,および痙攣発作に対する)静注ベンゾジアゼピン系薬剤や(高体温に対する)冷却法などの支持療法により行う。離脱症状は,主に抑うつ,集中困難,および傾眠(コカインウォッシュアウト症候群)として現れる。... さらに読む , アンフェタミン類 アンフェタミン アンフェタミンは中枢刺激作用と多幸作用がある交感神経刺激薬であり,その中毒性有害作用には,せん妄,高血圧,痙攣発作,および高体温がある(これらは横紋筋融解症や腎不全を引き起こすことがある)。中毒の管理は,静注ベンゾジアゼピン系薬剤(激越,高血圧,および痙攣発作)や冷却法(高体温)などの支持療法により行う。典型的な離脱症候群は存在しない。 このクラスの元となった薬物であるアンフェタミンは,そのフェニル環上の様々な置換によって修飾された結果... さらに読む )
双極性障害の症状と徴候
双極性障害は急性期症状から始まり,その後は寛解および再発の経過を繰り返す。しばしば完全寛解するが,多くの患者は残遺症状を有し,一部の患者では職業上の能力が大きく損なわれる。再発とは,経過中に躁病,うつ病,軽躁病,またはうつ病と躁病の特徴が混在したより強い症状が独立したエピソードとして生じることを指す。
エピソードは数週間から3~6カ月間続き,抑うつエピソードは典型的には躁病エピソードより持続期間が長い。
1つのエピソードの開始から次のエピソードの開始までの周期の長さは,患者によって様々である。まれにしかエピソードが生じない(おそらく生涯に数回のみ)患者もいれば,急速交代型(通常は1年に4回以上のエピソードと定義される)の患者もいる。各周期で躁病および抑うつを交互に繰り返す患者はごく少数に過ぎず,大半ではどちらか一方がある程度主となる。
自殺 自殺行動 自殺行動には自殺既遂と自殺企図が含まれる。自殺を想像する,自殺について真剣に考える,または自殺を計画することは,自殺念慮と呼ばれる。 (American Psychiatric Association’s Practice Guideline for the Assessment... さらに読む 企図または自殺既遂がみられる。双極性障害患者における自殺の生涯発生率は,一般集団の15倍以上と推定されている。
躁病
躁病エピソードは,高揚した,開放的な,または易怒的な気分が1週間以上持続するとともに,目標指向的な活動または気力が持続的に増加し,加えて以下の症状が3つ以上認められる場合と定義される:
自尊心の肥大または誇大性
睡眠欲求の減少
普段より多弁
観念奔逸または思考促迫
注意散漫
目標指向的な活動の増加
望ましくない結果を招く可能性が高い活動(例,買いあさり,ばかげた事業への投資)への熱中
躁病の患者は,楽しく,しかしリスクの高い様々な活動(例,ギャンブル,危険なスポーツ,見境のない性行為)を,疲れを知ることなく過度に,かつ衝動的に行うことがあり,それに伴う害の可能性は認識していない。症状が重度であるために,患者本来の役割(職業,学業,家事)を果たせなくなる。無分別な投資,買いあさり,その他を選択することにより,取り返しのつかない結果を招くことがある。
躁病エピソードを呈している患者は快活で,派手または色彩豊かな服装をすることがあり,かつしばしば高圧的な態度をとり,発語は早口で,制止することが困難である。音による連想(意味ではなく,言葉のもつ音が引き金となって新たな思考が生まれる)がみられることもある。気が散りやすく,主題または試みが絶えず次々と変わることがある。しかしながら,自分は最高の精神状態にあると信じている傾向がある。
病識の欠如および活動量の増大のため,しばしば差し出がましい行動に出ることがあり,この2つは危険な組合せとなりうる。対人的な摩擦のため,自分は不公平に扱われている,または迫害されていると感じることがある。その結果として,患者は自身または他者にとって危険な存在となる場合がある。精神活動の加速は,患者には思考促迫として経験され,医師には観念奔逸として観察される。
躁病性精神病(manic psychosis)は, 統合失調症 統合失調症 統合失調症は,精神病(現実との接触の喪失),幻覚(誤った知覚),妄想(誤った確信),まとまりのない発語および行動,感情の平板化(感情の範囲の狭まり),認知障害(推理および問題解決の障害),ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが,遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。通常,症状は青年期または成人期早期に始まる。診断を下すには,6カ月以上持続する症状のエピソードが1回以上は認められなければならな... さらに読む との鑑別が困難となりうる精神病症状を伴う,より極端な臨床像である。患者は極度の誇大性または被害妄想(例,キリストのように迫害を受けている,FBIに追われているなど)を呈することがあり,ときに幻覚を伴う。活動レベルが著しく高まり,患者は走り回りながら金切り声をあげる,ののしる,または歌を歌う場合がある。気分の変動が大きくなり,しばしば易怒性が増加する。本格的なせん妄(せん妄躁病[delirious mania])が生じて,一貫性のある思考および行動が完全に失われることがある。
軽躁病
軽躁病エピソードは,躁病ほど極端ではない状態であり,抑うつ状態ではない平常時と明らかに異なる行動が4日以上持続する明確なエピソード,および躁病に関する上述の追加症状が3つ以上認められる明確なエピソードである。
軽躁病期には,気分が明るくなり,睡眠欲求が減少し,精神運動活動が加速する。患者によっては,軽躁病期には気力の高まり,創造性,自信,および普段以上の社会的機能がみられるため,適応的となる。多くの患者は,その多幸感に満ちた楽しい状態を終わらせたくないと願う。機能がかなり良好な患者もおり,大半の患者では機能が著しく損なわれることはない。しかしながら,一部の患者では,軽躁病が注意散漫,易怒性,および気分変動として現れ,患者も他者もあまり魅力的には感じない。
抑うつ
抑うつエピソードには, うつ病 うつ病(単極性障害) 抑うつ障害群は,機能を妨げるほどの重度または持続的な悲しみと興味または喜びの減退を特徴とする。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。治療は通常,薬物療法,精神療法,またはその両方のほか,ときに電気痙攣療法または高頻度経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部... さらに読む に典型的な特徴が認められ,そのエピソードには,同じ2週間に以下の症状が5つ以上認められ,かつそのうち1つは抑うつ気分または興味もしくは喜びの喪失でなければならない:
ほぼ1日中みられる抑うつ気分
ほぼ1日中みられる,全てまたはほぼ全ての活動における興味または喜びの著明な減退
有意な(5%超)体重増加もしくは体重減少または食欲の減退もしくは亢進
不眠(しばしば睡眠維持障害)または過眠
他者により観察される(自己報告ではない)精神運動焦燥または制止
疲労感または気力減退
無価値感または過剰もしくは不適切な罪悪感
思考力もしくは集中力の減退または決断困難
死もしくは自殺についての反復思考,自殺企図,または自殺を実行するための具体的計画
双極性の抑うつでは,単極性の抑うつと比べて,精神病的特徴がより一般的である。
混合性の特徴
躁病または軽躁病のエピソードは,エピソード中の大半の日に抑うつ症状が3つ以上認められる場合,混合性の特徴を有すると指定される。この病態はしばしば診断が困難であり,次第に持続的に交代する状態に変化することがある;予後は純粋な躁または軽躁状態より不良である。
混合性のエピソード中は自殺リスクが特に高い。
双極性障害の診断
臨床基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)
甲状腺機能亢進症を除外するためにサイロキシン(T4)および甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度測定
臨床所見または血液もしくは尿検査による精神刺激薬乱用の除外
双極性障害の診断は,上述の躁病または軽躁病の症状の同定に加えて,寛解および再発の既往に基づく。症状は,社会的もしくは職業的機能が著しく損なわれるほど,または自己または他者への害を予防するために入院が必要となるほど,重度でなければならない。
抑うつ症状により受診する患者の一部には,過去に軽躁病または躁病を経験している患者がいるが,具体的に質問されなければ,それを報告しない。巧みな質問によって病的徴候(例,過度の浪費,衝動的な性的逸脱,精神刺激薬の乱用)が明らかになることがあるが,そのような情報は近親者から聴取できる可能性の方が高い。Mood Disorder Questionnaireなどの構造化質問票が有用となる場合がある。全ての患者に対して,希死念慮,自殺計画,または自殺行動について,優しく,かつ率直に質問することが必要である。
精神刺激薬乱用または 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は,代謝亢進および血清遊離甲状腺ホルモンの上昇を特徴とする。症状は多数あり,頻脈,疲労,体重減少,神経過敏,振戦などを呈する。診断は臨床的に行い,甲状腺機能検査を用いる。治療は原因により異なる。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能亢進症は,甲状腺放射性ヨード摂取率および血中の甲状腺刺激物質の有無に基づいて分類できる( 様々な病態における甲状腺機能検査の結果の表を参照)。... さらに読む もしくは 褐色細胞腫 褐色細胞腫 褐色細胞腫は,典型的には副腎に局在する,クロム親和性細胞から成るカテコールアミン産生腫瘍である。持続性または発作性の高血圧を引き起こす。診断は,血中または尿中のカテコールアミン産物の測定による。画像検査,特にCTまたはMRIは腫瘍の局在同定に役立つ。治療は,可能であれば腫瘍の切除による。血圧調節のための薬物療法にはα遮断薬が使用され,通常はβ遮断薬と併用される。 ( 副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む などの身体疾患によっても,同様の急性躁症状または軽躁症状が生じることがある。甲状腺機能亢進症の患者では,典型的には他にも身体的な症状・徴候がみられるが,新規患者には甲状腺機能検査(T4およびTSH濃度)が妥当なスクリーニングとなる。褐色細胞腫の患者では著明な高血圧がみられ,そうでなければ検査は適応とならない。その他の疾患が躁病の症状を引き起こすことは多くないが,抑うつ症状はいくつかの疾患で生じることがある(抑うつ症状および躁症状の主な原因 抑うつ症状および躁症状の主な原因
の表を参照)。
原因となる薬物を同定する上では,物質使用(特に アンフェタミン類 アンフェタミン アンフェタミンは中枢刺激作用と多幸作用がある交感神経刺激薬であり,その中毒性有害作用には,せん妄,高血圧,痙攣発作,および高体温がある(これらは横紋筋融解症や腎不全を引き起こすことがある)。中毒の管理は,静注ベンゾジアゼピン系薬剤(激越,高血圧,および痙攣発作)や冷却法(高体温)などの支持療法により行う。典型的な離脱症候群は存在しない。 このクラスの元となった薬物であるアンフェタミンは,そのフェニル環上の様々な置換によって修飾された結果... さらに読む および コカイン コカイン コカインは,中枢刺激作用と多幸作用がある交感神経刺激薬である。高用量の使用は,パニック,統合失調症様症状,痙攣発作,高体温,高血圧,不整脈,脳卒中,大動脈解離,腸管虚血,および心筋梗塞を引き起こすことがある。中毒の管理は,(激越,高血圧,および痙攣発作に対する)静注ベンゾジアゼピン系薬剤や(高体温に対する)冷却法などの支持療法により行う。離脱症状は,主に抑うつ,集中困難,および傾眠(コカインウォッシュアウト症候群)として現れる。... さらに読む )の検討と血中または尿中薬物スクリーニングが役立つことがある。しかしながら,薬物使用が単に双極性障害患者のエピソードを誘発しただけの可能性もあるため,薬物使用に関連しない症状(躁症状または抑うつ症状)の所見を検索することが重要である。
統合失調感情障害 統合失調感情障害 統合失調感情障害は,精神病,他の 統合失調症症状,および有意な 気分症状を特徴とする。本障害は,生涯のうちに抑うつまたは躁病エピソードが少なくとも1回認められることにより,統合失調症と鑑別される。 精神病とは,妄想,幻覚,まとまりのない思考および発語,現実との接触の喪失を示唆する奇異で不適切な行動(緊張病を含む)などの一連の症状を指す。 統合失調感情障害は,精神病症状と気分症状が併存する場合に考慮される。診断するには,全罹病期間の50%... さらに読む 患者の一部が躁症状を呈するが,そのような患者の場合,エピソード間であっても正常な精神状態に戻らないことがある。
双極性障害患者が不安症(例, 社交恐怖症 社交恐怖症 社交恐怖症は,何かを実施する特定の対人場面に曝露することに関する恐怖および不安である。それらの状況は回避されるか,耐えるのに強い不安を伴う。 恐怖症は 不安症の一種で,特定の状況または対象によって恐怖と不安が生じることで,患者はそれらを回避するようになる。その恐怖と不安は,実際の脅威とは(患者が置かれている社会的な状況を考慮しても)釣り合わない。 限局性恐怖症には多くの種類がある。... さらに読む , パニック発作 パニック発作およびパニック症 パニック発作は,身体症状および/または認知面での症状を伴う強い不快感,不安,または恐怖が,突然に,個別に,短時間発現する現象である。パニック症は,パニック発作が繰り返し発生し,典型的にはそれに付随して,将来の発作に対する恐怖,または発作を起こしやすいと考えられる状況を回避しようとする行動の変化が生じる。診断は臨床的に行う。個々のパニック発作は治療を要さないこともある。パニック症は薬物療法,精神療法(例,曝露療法,認知行動療法),またはそ... さらに読む , 強迫症 強迫症 (OCD) 強迫症(OCD)は,反復的かつ持続的で,患者自身の意思に反し,かつ侵入的に生じる思考,衝動,もしくはイメージ(これらを強迫観念と称する),および/または強迫観念が引き起こす不安を軽減ないし避けるために患者が行わざるを得ないと感じる反復的な行動もしくは精神的行為(これらを強迫行為と称する)を特徴とする。診断は病歴に基づく。治療は精神療法(具... さらに読む )を併発している場合もあり,このことが診断を混乱させている可能性がある。
双極性障害の治療
(双極性障害の薬物療法 双極性障害の薬物療法 いずれの薬剤にも重大な有害作用があり,薬物相互作用がよくみられ,全ての患者に効果を示す薬剤はないことから,薬剤の選択が困難となる場合がある。各患者で以前に効果的かつ忍容性良好であった薬剤に基づいて選択すべきである。治療歴がない(または不明の)場合は,患者の病歴(特定の気分安定薬の有害作用に注目する)と症状の重症度に基づいて選択する。 患者の当面の安全と管理が損なわれる重度の躁病性精神病に対しては,通常,緊急の行動コントロールとして鎮静作... さらに読む も参照のこと。)
気分安定薬(例,リチウム,特定の抗てんかん薬),第2世代抗精神病薬,またはその両方
支援および精神療法
通常,双極性障害の治療は以下の3段階に分けられる:
急性期:初期の(ときに重度の)病像を安定化してコントロールすることを目的とする
継続期:十分な寛解を達成することを目的とする
維持期または予防期:患者を寛解状態に維持することを目的とする
軽躁病患者の大半は外来患者として治療が可能であるが,重度の躁病または抑うつには,しばしば入院患者の管理が必要となる。
双極性障害の薬物療法
双極性障害用の薬剤 双極性障害の薬物療法 いずれの薬剤にも重大な有害作用があり,薬物相互作用がよくみられ,全ての患者に効果を示す薬剤はないことから,薬剤の選択が困難となる場合がある。各患者で以前に効果的かつ忍容性良好であった薬剤に基づいて選択すべきである。治療歴がない(または不明の)場合は,患者の病歴(特定の気分安定薬の有害作用に注目する)と症状の重症度に基づいて選択する。 患者の当面の安全と管理が損なわれる重度の躁病性精神病に対しては,通常,緊急の行動コントロールとして鎮静作... さらに読む としては以下のものがある:
気分安定薬:リチウムおよび特定の抗てんかん薬(特にバルプロ酸,カルバマゼピン,およびラモトリギン)
第2世代抗精神病薬 第2世代抗精神病薬 抗精神病薬は,神経伝達物質受容体に対する特異的な親和性と活性に基づいて,従来型抗精神病薬および第2世代抗精神病薬(SGA)に分類される。SGAは,効力の面で若干優れているという点(ただし,最近のエビデンスは薬物クラスとしてのSGA全体の利点には疑問を投げかけている)と,不随意運動や関連する 有害作用の可能性が低いという点で,ある程度優れている可能性がある。最近の研究結果からは,新規の作用をもつ新しい抗精神病薬,すなわち微量アミンおよびム... さらに読む :アリピプラゾール,ルラシドン,オランザピン,クエチアピン,リスペリドン,ジプラシドン,およびカリプラジン
これらの薬剤は,いずれの治療段階でも単剤または併用で使用されるが,用量は様々である。
いずれの薬剤にも重大な有害作用があり,薬物相互作用がよくみられ,全ての患者に効果を示す薬剤はないことから,双極性障害に対する 薬物療法の選択 双極性障害の薬物療法 いずれの薬剤にも重大な有害作用があり,薬物相互作用がよくみられ,全ての患者に効果を示す薬剤はないことから,薬剤の選択が困難となる場合がある。各患者で以前に効果的かつ忍容性良好であった薬剤に基づいて選択すべきである。治療歴がない(または不明の)場合は,患者の病歴(特定の気分安定薬の有害作用に注目する)と症状の重症度に基づいて選択する。 患者の当面の安全と管理が損なわれる重度の躁病性精神病に対しては,通常,緊急の行動コントロールとして鎮静作... さらに読む は困難となる場合がある。各患者で以前に効果的かつ忍容性良好であった薬剤に基づいて選択すべきである。患者が双極性障害の治療薬の投与を以前に受けたことがない(または薬歴が不明の)場合は,患者の病歴(特定の気分安定薬の有害作用に注目する)と症状の重症度に基づいて選択する。
重度の抑うつには,ときに特定の 抗うつ薬 うつ病の薬物治療 うつ病の治療には,いくつかの薬物クラスおよび薬物が使用できる: 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) セロトニン調節薬(5-HT2遮断薬) セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬 ノルアドレナリン-ドパミン再取り込み阻害薬 さらに読む (例,選択的セロトニン再取り込み阻害薬[SSRI])が追加されるが,その有効性については議論のある状況であり,それらは抑うつエピソードに対する単剤療法としては推奨されない。
その他の治療法
電気痙攣療法 電気痙攣療法(ECT) 抑うつ障害群は,機能を妨げるほどの重度または持続的な悲しみと興味または喜びの減退を特徴とする。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。治療は通常,薬物療法,精神療法,またはその両方のほか,ときに電気痙攣療法または高頻度経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部... さらに読む (ECT)は,治療抵抗性のうつ病に対してときに用いられ,躁病に対しても効果的である。
光療法 光療法 抑うつ障害群は,機能を妨げるほどの重度または持続的な悲しみと興味または喜びの減退を特徴とする。正確な原因は不明であるが,おそらくは遺伝,神経伝達物質の変化,神経内分泌機能の変化,および心理社会的因子が関与する。診断は病歴に基づく。治療は通常,薬物療法,精神療法,またはその両方のほか,ときに電気痙攣療法または高頻度経頭蓋磁気刺激療法(rTMS)から成る。 うつ病という用語は,しばしばいくつかの抑うつ障害群のいずれかを指して用いられる。一部... さらに読む は,季節型の双極I型またはII型障害(秋から冬にかけてのうつ病および春から夏にかけての軽躁病)の治療に有用となりうる。おそらくは増強療法として最も有用である。
教育および精神療法
重大なエピソードを予防するためには,家族など患者に親しい人々から支援を得ることが極めて重要である。
患者とそのパートナーに対する集団療法がしばしば推奨され,そこでは双極性障害,その社会的帰結,および治療における気分安定薬の中心的役割について学習する。
個人精神療法は,患者が日常生活の諸問題に対してより適切に対処し,自分を見つめ直す新たな視点を得て適応するのに役立つ。
患者(特に双極II型障害の患者)が気分安定薬の処方を遵守しないことがあるが,これは,この種の薬剤が覚醒度や創造性を低下させると患者が考えがちなためである。医師は,気分安定薬は通常,対人関係,学業,専門職,および芸術的探究においてより一定したパフォーマンスを発揮する機会をもたらすものであるため,創造性の減退は比較的まれであることを説明することができる。
患者が精神刺激薬およびアルコールを避け,睡眠不足を最小限にし,再発の初期徴候を認識するように,カウンセリングを行うべきである。
患者に金銭を浪費する傾向がある場合は,家族内の信頼できる人物に金銭管理を任せるべきである。性的な不節制の傾向がみられる患者には,結婚生活における帰結(例,離婚)および不特定多数との性行為による感染リスク(特にAIDS)について情報を提供すべきである。
支援団体(例,Depression and Bipolar Support Alliance[DBSA])は,患者が共通する経験および感情を共有するための懇談会を開催することにより,患者を支援することができる。
双極性障害の要点
双極性障害は周期性の疾患であり,抑うつの有無を問わず躁病エピソードが生じる病型(双極I型)または軽躁病および抑うつエピソードが生じる病型(双極II型)がある。
双極性障害は職場で仕事をこなす能力および社会的に交流する能力を著しく損ない,かつ自殺リスクが高いが,軽度の躁病(軽躁病)では,気力の高まり,創造性,自信,および普段以上の社会的機能が認められることがあるため,ときに適応的となることもある。
周期の長さおよび頻度は患者により異なる;生涯に数回のみの患者もいれば,年に4回以上のエピソードがみられる患者もいる(急速交代型)。
各周期で躁病およびうつ病が交互に現れる患者はごく少数であり,大半の周期では,一方がある程度優勢である。
診断は臨床基準に基づくが,精神刺激薬使用障害と身体疾患(甲状腺機能亢進症または褐色細胞腫など)を,診察と検査によって除外する必要がある。
治療法は臨床像およびその重症度に依存するが,典型的には気分安定薬(例,リチウム,バルプロ酸,カルバマゼピン,ラモトリギン)および/または第2世代抗精神病薬(例,アリピプラゾール,ルラシドン,オランザピン,クエチアピン,リスペリドン,ジプラシドン,カリプラジン)を使用する。