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心的外傷後ストレス障害(PTSD)

執筆者:

John H. Greist

, MD, University of Wisconsin School of Medicine and Public Health

最終査読/改訂年月 2014年 5月
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心的外傷後ストレス障害(PTSD)は,圧倒的な外傷的出来事の侵入的な想起が反復して生じる病態であり,その想起は1カ月を超えて継続し,出来事から6カ月以内に始まる。本疾患の病態生理は完全には解明されていない。症状としては,外傷的出来事に関連する刺激の回避,悪夢,フラッシュバックなどもある。診断は病歴に基づく。治療は曝露療法および薬物療法から成る。

恐ろしい出来事が起こると,多くの人はその影響を長く受けるが,人によっては,その影響があまりに長く持続し,重度であるために,衰弱して疾患に陥る。一般的にPTSDを誘発する可能性の高い出来事は,恐怖感,無力感,または戦慄の感情を引き起こす出来事である。これらの出来事は直接的に経験される場合(例,重篤な損傷もしくは死の脅威として)または,間接的に経験される場合(例,他者が重篤な外傷を負う,殺害される,もしくは死の脅威を受けている状況を目撃する;近親者もしくは友人に生じた出来事を知る)がある。戦闘,性的暴行,および自然災害,または人災はPTSDのよくみられる原因である。

生涯有病率は9%近くに達し,12カ月間の有病率は約4%である。

症状と徴候

大抵の場合,患者は誘因となっている出来事を意思に反して頻繁に思い出す。その出来事を悪夢に見ることも多い。はるかにまれにではあるが,一過性に覚醒時の解離状態がみられることがあり,まるで今起こっているかのようにその出来事を再体験し(フラッシュバック),ときに患者はまるで自分が現場にいるかのように反応する(例,花火のような大きな音が戦闘時のフラッシュバックを引き起こし,続いて避難場所を探す,または地面に伏せて身を守るなどの行動をとる)。

患者は心的外傷に関連する刺激を避け,しばしば感情的な麻痺がみられ,日々の活動に無関心になる。

ときに症状は急性ストレス障害( 急性ストレス障害(ASD))の続きとして現れ,心的外傷から6カ月後までに個別に現れる場合もある。ときに症状の全面的な発現が遅れ,外傷的出来事から何カ月ないし何年も経過して初めて症状が揃う。

慢性PTSDの患者では,うつ病,他の不安症,および物質乱用がよくみられる。

心的外傷に特異的な不安に加えて,その出来事が起こった際の自身の行動に対する罪悪感や,他の人が死亡した中で自分が生き残ったことへの罪悪感を経験する場合がある。

診断

  • 臨床基準

診断はDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)の基準に基づいて臨床的に行う。

診断基準を満たすには,患者が外傷的出来事に直接的または間接的に曝露したことがあり,かつ以下の各カテゴリーの症状が1カ月以上認められる必要がある。

侵入症状(以下のうちの1つ以上):

  • 反復的,不随意的,侵入的で心を乱す記憶がある

  • 外傷的出来事に関する心を乱す夢(例,悪夢)を繰り返し見る

  • 外傷的出来事が再び起こっているかのように行動したり,感じたりする(フラッシュバックの体験から現在の周囲環境に対する認識の完全な喪失まで)

  • 外傷的出来事を思い出す際(例,その記念日,出来事発生時に聞いたものに似た音により)に強い心理的または生理学的苦痛を感じる

回避症状(以下のうちの1つ以上):

  • 外傷的出来事に関連する思考,感情,または記憶を回避する

  • 外傷的出来事の記憶を引き起こす活動,場所,会話,または人を回避する

認知および気分に対する悪影響(以下のうちの2つ以上):

  • 外傷的出来事の重要な側面の記憶障害(解離性健忘)

  • 自身,他者,または世界に関する持続的かつ過剰な否定的確信または予想

  • 自身または他者を責めることにつながる,心的外傷の原因または結果に関する持続的な歪んだ思考

  • 持続的な陰性感情の状態(例,恐怖,戦慄,罪悪感,恥辱)

  • 重要な活動における関心または参加の著明な減退

  • 他者からの孤立感または疎遠感

  • 陽性感情(例,幸福感,満足感,愛情)を経験できない状態の持続

覚醒度および反応性の変容(以下のうちの2つ以上):

  • 睡眠障害

  • 易怒性または怒りの爆発

  • 無謀または自己破壊的な行動

  • 集中困難

  • 強い驚愕反応

  • 過度の警戒心

さらに,症状が著しい苦痛を引き起こしているか,または社会的もしくは職業的機能を著しく障害しており,かつ物質または他の身体疾患の生理学的作用が原因ではないことが必要である。

治療

  • 曝露療法または他の精神療法(支持的精神療法など)

  • SSRIまたは他の薬物療法

無治療の場合,慢性PTSDは,消失しないまでも,重症度は軽減されることが多いが,一部の患者では重度の障害が持続する。

最も用いられている精神療法である曝露療法( 限局性恐怖症 : 曝露療法)は,心的外傷を想起させるという理由で患者が回避している状況への曝露を行う。空想の中で外傷的な体験そのものに繰り返し曝露すると,最初は不快感が若干強まるものの,通常は次第に苦痛が軽減される。

EMDR(eye movement desensitization and reprocessing)法は曝露療法の一種である。この療法では,患者に,心的外傷に曝露されている状態を想像しながら,治療者が動かす指を追うように指示する。

特定の儀式行動(清潔であると感じたいがために,性的暴行を受けた後に過剰に身体を洗うなど)をやめさせることも有用である。

薬物療法,特にSSRI( うつ病の薬物治療 : 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI))による治療が効果的である。プラゾシンは悪夢を減らすことに有用とみられている。ときに気分安定薬および非定型抗精神病薬が処方されることがあるが,これらの使用に対する裏付けはわずかである。

不安がしばしば強くなるため,支持的精神療法が重要な役割を果たす。治療者は,患者の精神的苦痛および外傷的出来事の現実を認識して理解し,率直な共感と同情を示す必要がある。また,治療者は,患者を促して脱感作曝露法を通じて記憶と対峙させ,不安をコントロールする方法を学習させる必要もある。生存者の罪悪感に対しては,患者が自身の自己批判的で,懲罰的な態度を理解して修正することを支援する精神療法が有用となりうる。

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