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妄想性パーソナリティ障害(PPD)

執筆者:

Lois Choi-Kain

, MD, Harvard Medical School

医学的にレビューされた 2018年 5月
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妄想性パーソナリティ障害は,他者の動機を悪意のあるものと解釈する,他者に対する根拠のない不信および疑念の広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は認知行動療法による。

妄想性パーソナリティ障害患者は他者を信用せず,何の根拠もない,または不十分な根拠しかない場合でも,他者が自分に害をなそうとしている,または自分を欺こうとしていると考える。

米国の一般集団の2.3~4.4%が妄想性パーソナリティ障害を有していると推定されている。男性の方が多いと考えられている。

家族内で有病率が高いことを示す若干のエビデンスがある。一部のエビデンスから,この障害と小児期の情緒的および/または身体的虐待や犯罪被害との関連性が示唆されている。

併存症がよくみられる。妄想性パーソナリティ障害が単独の診断であることはまれである。よくみられる併存症として,思考障害(例, 統合失調症 統合失調症 統合失調症は,精神病(現実との接触の喪失),幻覚(誤った知覚),妄想(誤った確信),まとまりのない発語および行動,感情の平板化(感情の範囲の狭まり),認知障害(推理および問題解決の障害),ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが,遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。通常,症状は青年期または成人期早期に始まる。診断を下すには,6カ月以上持続する症状のエピソードが1回以上は認められなければならな... さらに読む ), 不安症 不安症の概要 恐怖や不安は誰もが日常的に経験するものである。恐怖とは,直ちに認識可能な外部からの脅威(例,侵入者,凍結した路面でスピンする車)に対する情動的,身体的,および行動的な反応である。不安とは,神経過敏や心配事による苦痛で不快な感情状態であり,その原因はあまり明確ではない。脅威が生じる厳密な時期と不安との間に強い結びつきはなく,不安は脅威の前に... さらに読む (例,社交恐怖症[社交不安症]), 心的外傷後ストレス障害 心的外傷後ストレス障害(PTSD) 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は,圧倒的な外傷的出来事の侵入的な想起が反復して生じる病態であり,その想起は1カ月以上続き,出来事から6カ月以内に始まる。本疾患の病態生理は完全には解明されていない。症状としては,外傷的出来事に関連する刺激の回避,悪夢,フラッシュバックなどもある。診断は病歴に基づく。治療は曝露療法および薬物療法から成る。 ( 心的外傷およびストレス因関連障害群の概要も参照のこと。)... さらに読む アルコール使用障害 アルコール中毒および離脱 アルコール(エタノール)は中枢抑制薬である。短時間で大量に飲酒すると,呼吸抑制と昏睡を来たし,死に至ることがある。長期にわたる大量の飲酒は,肝臓や他の多くの臓器を損傷する。アルコール離脱症状は振戦から,重度の離脱(振戦せん妄)でみられる痙攣発作,幻覚,および生命を脅かす自律神経不安定状態に至るまで,連続的な病態として現れる。診断は臨床的に行う。 ( アルコール使用障害とリハビリテーションも参照のこと。)... さらに読む ,他のパーソナリティ障害(例, 境界性 境界性パーソナリティ障害(BPD) 境界性パーソナリティ障害は,対人関係の不安定性および過敏性,自己像の不安定性,極度の気分変動,ならびに衝動性の広汎なパターンを特徴とする。診断は臨床基準による。治療は精神療法および薬剤による。 ( パーソナリティ障害の概要も参照のこと。) 境界性パーソナリティ障害患者は孤独に対する耐え難さを有する;見捨てられることを避けるために死に物狂いの努力を払い,他者が救助または面倒をみてくれるよう仕向ける形で自殺のそぶりをみせるなどの危機を生み出... さらに読む )などがある。

症状と徴候

妄想性パーソナリティ障害患者は,他者が自分を利用する,裏切る,または害する計画を立てていると疑う。患者は,いかなるときでも,理由もなく自分が攻撃されるかもしれないと感じている。証拠がほとんどないか全くない場合でも,自分の疑念および考えを主張し続ける。

しばしば,このような患者は他者が自分を大きく,取り返しのつかないほど傷つけたと考えている。患者は潜在的な侮辱,軽蔑,脅し,および不忠がないか非常に警戒しており,発言および行動に隠れた意味がないか探る。自分の疑念を裏付ける証拠を探して他者を詳細に吟味する。例えば,手伝いの申し出を,自分が1人で仕事をすることができないことを暗示していると誤解することがある。なんらかの形で侮辱された,または傷つけられたと考える場合,患者は自分を傷つけた相手を許さない。傷つけられたと感じて反応し,反撃したり,怒ったりする傾向がある。他者を信用しないため,自律性をもち,主導権を握っていなければならないと感じる。

このような患者は,他者に秘密を打ち明けたり,他者と親密な関係を築いたりすることをためらうが,それは情報が自分に不利な形で使われるのではないかと懸念するためである。患者は友人の誠実さおよび配偶者またはパートナーの貞節を疑う。極端に嫉妬深い場合があり,自分の嫉妬を正当化するために,配偶者またはパートナーの活動および動機について絶えず問いただすことがある。

このため,妄想性パーソナリティ障害患者は付き合うのが困難な場合がある。他者が患者に対し否定的に反応すると,その反応を自分の本来の疑念を裏付けるものととらえる。

診断

  • 診断基準(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition[DSM-5])

妄想性パーソナリティ障害の診断を下すには,患者に以下が認められる必要がある:

  • 他者に対する持続的な不信および疑い深さ

この不信および疑念は以下のうちの4つ以上が認められることにより示される:

  • 他者が自分を利用している,傷つけている,または裏切っているという根拠のない疑念

  • 友人および同僚の信頼性について根拠のない疑いにとらわれている

  • 情報が自分に不利に使われるのではないかと考え,他者に秘密を打ち明けたがらない

  • 悪意のない言葉または出来事に誹謗,敵意,または脅迫的意味が隠されていると誤解する

  • 侮辱,中傷,または軽蔑に対して恨みを抱く

  • 自分の性格または評判が非難されたと考えやすく,性急に怒りをもって反応したり,反撃したりする

  • 自分の配偶者またはパートナーが不貞を働いているという根拠のない疑念を繰り返し抱く

また,症状は成人期早期までに始まっている必要がある。

鑑別診断

妄想性パーソナリティ障害は,他者に関するパラノイアが全般的であること(例,対照的に,境界性パーソナリティ障害ではパラノイアはより一過性である)および以下に示す各障害の中核的特徴により,他のパーソナリティ障害と鑑別できる:

妄想性パーソナリティ障害は, 妄想性障害 妄想性障害 妄想性障害は,1カ月以上持続する誤った強い信念(妄想)の存在と,他の精神病症状を認めないことを特徴とする。 妄想性障害は,他のいかなる 精神病症状(例,幻覚,まとまりのない発語または行動,陰性症状)も伴うことなく,妄想だけが存在するという点で,統合失調症と鑑別される。妄想は以下の場合がある: 奇異ではないもの:後をつけられている,毒を盛られた,病気をうつされた,距離を置いて愛されている,配偶者や恋人に裏切られたなど,実際に起こりうる状況... さらに読む (被害型), 統合失調症 統合失調症 統合失調症は,精神病(現実との接触の喪失),幻覚(誤った知覚),妄想(誤った確信),まとまりのない発語および行動,感情の平板化(感情の範囲の狭まり),認知障害(推理および問題解決の障害),ならびに職業的および社会的機能障害を特徴とする。原因は不明であるが,遺伝的および環境的要因を示唆する強固なエビデンスがある。通常,症状は青年期または成人期早期に始まる。診断を下すには,6カ月以上持続する症状のエピソードが1回以上は認められなければならな... さらに読む ,および精神病的特徴をもつ 気分障害 気分障害の概要 気分障害は,長期間にわたる過度の悲しみ,過度の喜び,またはその両方から成る情動の障害である。気分障害は小児や青年にも発生することがある( 小児および青年における抑うつ障害を参照)。 気分障害は以下のように分類される: 抑うつ障害群 双極性障害 不安症および関連症群は,気分障害には分類されないが,気分に影響を及ぼす。 さらに読む との鑑別が可能であるが,それはこれらの障害では精神病症状のエピソード(例,妄想,幻覚)が顕著だからである。

治療

  • 認知行動療法

妄想性パーソナリティ障害に有効であることが証明された治療法はない。

患者の疑念および不信の程度が全体的に高いことから信頼関係(rapport[ラポール])の確立が困難となる。患者の疑念についてなんらかの妥当性を認めることで,患者と医師の協力関係が促進されることがある。この協力関係により,患者は認知行動療法に参加したり,特定の症状の治療のために処方される薬剤(例,抗うつ薬,非定型抗精神病薬)を進んで服用したりできるようになることがある。 非定型(第2世代)抗精神病薬 第2世代抗精神病薬 抗精神病薬は,神経伝達物質受容体に対する特異的な親和性と活性に基づいて,従来型抗精神病薬および第2世代抗精神病薬(SGA)に分類される。SGAは,効力の面で若干優れているという点(ただし,最近のエビデンスは薬物クラスとしてのSGAの利点に疑問を投げかけている)と,不随意運動や関連する 有害作用の可能性が低いという点で,ある程度優れている可能性がある。現在,SGAは米国で処方される抗精神病薬の約95%を占めている。しかしながら,... さらに読む は不安を緩和するのに役立つ場合がある。

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