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パーソナリティ障害の概要

執筆者:

Lois Choi-Kain

, MD, Harvard Medical School

最終査読/改訂年月 2016年 1月
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解離性同一症。)

一般に,パーソナリティ障害は知覚,反応,および対人関係における広汎で永続的なパターンによって,著しい苦痛または機能障害が生じている場合とされる。パーソナリティ障害により臨床像は著しく異なるが,いずれも遺伝因子と環境因子の組合せによって引き起こされると考えられている。多くは加齢とともに徐々に軽症化するが,特定の特性は,障害の診断を促した急性症状が軽減した後も一定程度持続することがある。診断は臨床的に行う。治療は心理社会療法および,ときに薬物療法による。

パーソナリティ特性とは,長期にわたって比較的一定している思考,知覚,反応,および対人関係のパターンのことである。

パーソナリティ障害は,これらの特性が極めて顕著で,柔軟性に欠け,不適応的なものになるために,仕事および/または対人関係の機能が障害される場合である。そうした社会的不適応は,パーソナリティ障害患者とその周囲の人に著しい苦痛を引き起こす可能性がある。パーソナリティ障害患者では(カウンセリングを求める他の多くの患者と異なり),通常,自身の思考や感情に伴う不快感ではなく,自身の社会的に不適応な行動の結果として生じる苦痛が受診理由である。このため医師は,まず患者のパーソナリティ特性が問題の根底にあることを患者が理解できるよう支援する必要がある。

通常,パーソナリティ障害は青年期後期または成人期早期に明らかとなり始め,その特性および症状の持続期間には大きな幅がみられ,多くは時間の経過とともに消失する。

Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)は,パーソナリティ障害のタイプについて10種類を挙げている。加齢とともに軽減または消失する傾向があるタイプ(例,反社会性,境界性)もあれば,そうなる可能性の低いタイプ(例,強迫性,統合失調型)もある。

一般人口の約10%,また病院および診療所の精神障害患者の最大半数がパーソナリティ障害を有している。全体として,性別,社会経済的階層,および人種の点で明確な相違は認められない。ただし,反社会性パーソナリティ障害では,6:1の比で男性が女性より多い。境界性パーソナリティ障害では,3:1の比で女性が男性より多い(ただし,これは単に臨床現場での値であり,一般人口での値ではない)。

大半のパーソナリティ障害では,遺伝率は約50%であり,この値は他の多くの主要な精神障害と同等以上である。この遺伝率の高さは,パーソナリティ障害が主に悪環境により形成される性格上の欠陥であるとする一般的な推定に相反するものである。

パーソナリティ障害,特に境界性および強迫性パーソナリティ障害に関連する直接的医療費および生産性低下による間接的費用は,うつ病または全般不安症に関連する同様の費用よりも著しく多い。

パーソナリティ障害のタイプ

DSM-5は10種類のパーソナリティ障害を,類似する特徴に基づいて3群(A,B,およびC)に分類している。しかしながら,このような群の臨床的有用性は確立されていない。

A群は奇妙で風変わりな様子を特徴とする。この群にはそれぞれの際立った特徴をもつ以下のパーソナリティ障害が含まれる:

B群は演技的,感情的,または移り気な様子を特徴とする。この群にはそれぞれの際立った特徴をもつ以下のパーソナリティ障害が含まれる:

  • 反社会性:社会的無責任,他者の軽視,欺瞞,自分の利益を得るための他者の操作

  • 境界性:孤独に対する耐性の低さおよび感情の調節不全

  • 演技性:人の注意を惹きたい欲求

  • 自己愛性:基礎にある脆弱な自尊心および明白な誇大性の調節不全

C群は不安や恐れを抱いている様子を特徴とする。この群にはそれぞれの際立った特徴をもつ以下のパーソナリティ障害が含まれる:

  • 回避性:拒絶に敏感なことによる対人接触の回避

  • 依存性:服従および世話をしてもらう必要性

  • 強迫性:完全主義,柔軟性のなさ,頑固さ

症状と徴候

DSM-5によれば,パーソナリティ障害は主に以下に関する問題である:

  • 自己同一性

  • 対人関係

自己同一性の問題は,不安定な自己像(例,自分を親切だと思う状態と非情だと思う状態の間を揺れ動く)として現れることもあれば,価値観,目標,および外見の一貫性のなさ(例,教会では信心深い人が他の場所では世俗的で不敬となる)として現れることもある。

対人関係の問題は,典型的には親密な関係を構築もしくは維持できないこと,および/または他者の感情に対して鈍感であること(例,共感ができない)として現れる。

パーソナリティ障害患者は,しばしば(医師を含めた)周囲の人に対する態度に一貫性がなく,困惑させ,フラストレーションを与える。自己と他者の間の境界を理解することに困難が生じる場合がある。自尊心が不適切に高いまたは低い場合がある。育児のスタイルが,一貫しない,冷淡,感情過多,虐待的,または無責任なことがあり,そのことが配偶者または子供の身体的および精神的問題につながる可能性がある。

パーソナリティ障害患者は自分に問題があることを認識していない場合がある。

診断

  • 臨床診断基準(DSM-5)

医師がパーソナリティ障害を疑う場合,具体的診断基準を用いて認知的,感情的,対人的,および行動的傾向の評価を行う。専門医や学術研究に携わる医師には,より高度かつ経験的に厳密な診断ツールが利用可能である。

パーソナリティ障害の診断を下すには以下が必要である:

  • 認知(自己,他者,および出来事を認識,解釈する方法),衝動性,対人機能,および衝動制御のうち2つ以上の点において,柔軟性を欠く持続的なパターンの不適応的な特性が広汎にみられる

  • 不適応的パターンから生じた著しい苦痛または機能障害がみられる

  • そのパターンが安定しており,若年時からみられる(青年期または成人期早期)

また,症状について他に考えられる原因(例,他の精神障害,物質使用,頭部外傷)を除外する必要がある。

18歳未満の患者でパーソナリティ障害の診断を下すには,そのパターンが1年以上みられる必要があるが,反社会性パーソナリティ障害は例外であり,18歳未満の患者で診断することはできない。

パーソナリティ障害患者の多くは自分の障害に対する病識を欠いているため,医師は以前に患者の治療を行った医師,他の医療従事者,家族,友人,または患者と接触したことのある他の人から病歴を得なければならない場合がある。

治療

  • 精神療法

パーソナリティ障害の治療のゴールドスタンダードは精神療法である。患者が治療を求めており,変わりたいという動機がある場合は,これらの障害の多くについて個人精神療法および集団精神療法がいずれも有効である。

典型的な場合,パーソナリティ障害は薬物に対する反応をあまり示さないが,具体的な症状(例,抑うつ,不安)を標的として有効な薬物がある。

パーソナリティ障害と併存していることの多い障害(例,気分障害,不安症,物質乱用障害,身体症状症,摂食障害)のために治療が困難となり,寛解までの期間が長期化し,再発リスクが高まり,有効であるはずの治療に対する反応が減弱することがある。各パーソナリティ障害の治療推奨については, パーソナリティ障害の治療を参照のこと。

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パーソナリティ障害の治療

診断

精神療法

薬物

妄想性

支持的精神療法

認知行動療法

抗うつ薬

非定型抗精神病薬

シゾイド

支持的精神療法

社会生活技能訓練

統合失調型

支持的精神療法

社会生活技能訓練

不安の管理のための認知行動療法

抗精神病薬

反社会性*

認知行動療法

随伴性マネジメント

抗うつ薬(SSRI)

気分安定薬(リチウム,バルプロ酸)

境界性

全般的な精神医学的管理および他の構造化された臨床管理アプローチ

支持的精神療法

弁証法的行動療法

メンタライゼーションに基づく治療

転移焦点化精神療法

スキーマ療法

感情予測と問題解決のためのシステムズトレーニング(Systems Training for Emotional Predictability and Problem Solving:STEPPS)

気分症状,衝動性,および不安に対する気分安定薬(ラモトリギン,トピラマート)

一過性精神病症状および怒りの問題に対する非定型抗精神病薬

抗うつ薬(有害ではないが有効性は限定的)

ベンゾジアゼピン系薬剤および刺激薬を避ける

演技性

精神力動的精神療法

自己愛性

精神力動的精神療法

メンタライゼーションに基づく治療

転移焦点化精神療法

回避性

精神力動的精神療法

支持的精神療法

認知行動療法

抗うつ薬(MAOI,SSRI)

抗不安薬

依存性

精神力動的精神療法

認知行動療法

抗うつ薬(MAOI,SSRI)

強迫性

精神力動的精神療法

認知行動療法

抗うつ薬(SSRI)

*反社会性パーソナリティ障害が治療可能であるかどうかについては議論がある。

治療の一般原則

一般的に,パーソナリティ障害の治療では以下を目的とする:

  • 主観的な苦痛を軽減する

  • 自身の問題が自己に内在するものであることを患者が理解できるようにする

  • 著しく不適応な行動および社会的に望ましくない行動を減少させる

  • 問題のあるパーソナリティ特性を修正する

主観的な苦痛(例,不安,抑うつ)を軽減することが最初の目標となる。それらの症状は,しばしば心理社会的支援の強化に反応し,その際には患者を非常にストレスの多い状況または人間関係から抜け出させることが多い。薬物療法もストレス軽減に有用となる場合がある。ストレスを軽減することで,基礎にあるパーソナリティ障害の治療が容易になる。

自身の問題が自己に内在するものであることを患者が理解できるようにする取り組みは早期に行うべきである。患者は,仕事または対人関係における自身の問題が,自身の世界との関わり方(例,任務や権威に対するもの,親密な対人関係におけるもの)の問題により引き起こされていることを理解する必要がある。このような理解を得るためには,医師側にかなりの時間,忍耐,および献身が必要となる。また医師には,患者が感情的に敏感な領域および通常の対処方法に関する基本的な理解が必要である。家族および友人は,患者や医師が気づかないであろう問題を確認するのに役立つことがある。

不適応行動や望ましくない行動(例,無謀,社会的孤立,主張の欠如,怒りの爆発)には,仕事面および対人関係の持続的な障害を最小限に抑えるため,迅速に対処すべきである。行動の変化は,以下のパーソナリティ障害の患者にとって最も重要である:

  • 境界性

  • 反社会性

  • 回避性

典型的には,行動は集団療法および行動変容療法により数カ月以内に改善される;しばしば行動に対する制限を設定して励行する必要がある。ときに患者はデイホスピタルまたは居住施設で治療を受ける。自助グループまたは家族療法も,社会的に望ましくない行動を変容する一助となりうる。家族および友人の存在は,患者の問題となる行動または思考を強化または抑制するように働く可能性があるため,そうした関与は助けになり,コーチングによって治療における協力者とすることが可能である。

問題のあるパーソナリティ特性(例,依存性,不信感,傲慢,操作的態度)を修正するには,長い期間(通常1年以上)を要する。そのような変化をもたらすための要は次のものである:

  • 個人精神療法

治療中に,患者の生活で対人関係上の問題が生じた場合,医師はそれを確認するように努める。続いて,そのような問題がどのように自身のパーソナリティ特性と関連しているかを患者が理解するのを支援し,より適切な新しい交流の方法を身につけるための技能訓練を提供する。典型的には,患者が不適応行動および誤った信念を変容させることを支援するため,医師は患者が望ましくない行動およびその結果に気づくまで,それらについて繰り返し指摘しなければならない。医師は,思いやりをもって振る舞うべきであるが,親切さおよび思慮深い助言それ自体がパーソナリティ障害を変化させるわけではないことを認識しておくべきである。

要点

  • パーソナリティ障害では,著しい苦痛を引き起こしたり,仕事面および/または対人関係の機能を障害したりするほど顕著で柔軟性がなく不適応なパーソナリティ特性が認められる。

  • 治療は,自らの問題が外的に引き起こされるのではなく,自己の内部にあるということを患者が理解して初めて効果的となる。

  • 心理社会療法が主な治療法である。

  • 薬剤は選択された症例の特定の症状をコントロールすることにのみ有用である(例,著明な不安,怒りの爆発,および抑うつをコントロールする)。

  • パーソナリティ障害は,しばしば変化に対して抵抗を示すが,多くは時間の経過とともに徐々に軽症化していく。

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