窃視症はパラフィリアの一種であるが,窃視症的な興味をもつ人の大半はパラフィリア障害の臨床診断基準を満たさず,その基準では,本人の行動,空想,または強い衝動によって臨床的に重大な苦痛または機能障害が生じているか,他者が害を被っている(窃視症では,同意のない相手に対する衝動の行動化を含む)ことが要件とされている。また,この状態が6カ月以上認められることも条件の1つである。
性的状況下にある他者を見たいという欲求はよくみられるもので,それ自体は異常ではない。窃視症は通常,青年期または成人期早期に始まる。青年期の窃視症は一般に比較的大目にみられることが多く,ティーンエイジャーの逮捕者は少ない。窃視症が病的になると,窃視症者は窃視の機会を探すことにかなりの時間を費やすようになり,しばしば自身の生活における重要な責任を放棄する。通常,オルガスムは窃視中または窃視後の自慰によって達成される。窃視症者は観察対象者との性的接触を求めない。
多くの文化では,窃視症者が性行為を見ることのできる合法的な機会が豊富に存在する。しかしながら,窃視行動は法律に触れる結果となりうる性行動のうち最も一般的なものである。
男性の最大12%と女性の4%が窃視障害の臨床診断基準を満たす可能性があるが,その大半は医学的な評価や治療を求めない。
治療
治療は通常,患者が法律に違反して性犯罪者となった段階で,精神療法,支援団体,およびSSRIにより開始される。
この種の薬剤が無効な場合や障害が重度の場合は,テストステロン濃度を低下させ,それにより性欲を低下させる薬剤を考慮すべきである。そのような薬剤は抗アンドロゲン薬と呼ばれるが,最も頻用されるものは実際にはテストステロンの作用を阻害しない。具体的な薬剤としては,ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト(例,リュープロレリン)と酢酸メドロキシプロゲステロンデポ剤があり,どちらも下垂体での黄体形成ホルモン(LH)および卵胞刺激ホルモン(FSH)の産生を減少させ,それによりテストステロンの産生を減少させる。十分なインフォームド・コンセントと肝機能および血清 テストステロン濃度の適切なモニタリングが必要である。