性的サディズム障害

執筆者:George R. Brown, MD, East Tennessee State University
レビュー/改訂 2019年 7月
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    性的サディズムは,性的興奮やオルガスムを刺激する目的で相手に身体的または心理的な苦痛(例,屈辱,恐怖)を与えるものである。性的サディズム障害は,性的サディズムのうち,著しい苦痛または機能障害を引き起こしているか,同意のない相手に対して行動化するものである。

    パラフィリア障害群の概要も参照のこと。)

    性的サディズム障害の患者は,その強い衝動を行動化するか,性的サディズムのテーマについて心身を消耗させる空想や苦痛となる空想を抱く。また,この状態が6カ月以上認められることも条件の1つである。

    性的サディズムはパラフィリアの一種であるが,軽度のサディズム的性行動は合意した成人同士の間でよくみられる性行為であり,通常は範囲が限定的であり,無害であり,パラフィリア障害の臨床診断基準を満たすことはなく,その基準では,本人の行動,空想,または強い衝動によって臨床的に重大な苦痛または機能障害が生じているか,他者が害を被っていることが要件とされている。ただし,人によっては,その行動が危害の生じる水準までエスカレートする。サディズムがいつ病的になるかは程度の問題である。

    大半の性的サディストは持続的な空想を抱いており,その中において同意下または非同意下でパートナーに苦痛を与えることで性的興奮を得ている。パートナーが同意していない場合には,性的サディズムは犯罪行為となり,サディストが逮捕されるまで続く可能性が高い。しかしながら,性的サディズムは,被害者に対するセックスと力が複雑に混在する行為であるレイプと同義ではない。性的サディズムは,レイプ犯で診断される割合は10%未満であるが,性的な動機による殺人犯では37~75%に認められる。

    性的サディズムは,反社会性パーソナリティ障害が併存する場合に特に危険となる。これらの障害が合併すると,あらゆる形態の精神医学的治療に対して著しい抵抗性を示す。

    性的サディズム障害の診断は,以下のDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition(DSM-5)の特異的な臨床基準に基づいて行う:

    • 患者が相手の身体的または心理的な苦痛により反復的に強い興奮を覚えており,その興奮が空想,強い衝動,または行動で表現されている。

    • 患者が同意のない相手に対して衝動を行動に移した,もしくはそのような空想または強い衝動が著しい苦痛を引き起こしているか,仕事,社会的状況,またはその他の重要領域において機能障害を引き起こしている。

    • この状態が6カ月以上認められる。

    性的サディズム障害は,他者の痛みまたは苦痛により引き起こされる性的興奮に関連する空想または衝動をもっていることを否定している患者でも,本人が同意のない相手に対して痛みまたは苦痛を与える性的エピソードを複数報告している場合に診断することができる。

    性的サディズム障害に対する治療は通常は無効に終わる。

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