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頭蓋頸椎移行部異常

執筆者:

Michael Rubin

, MDCM,

  • Weill Cornell Medical College
  • New York Presbyterian Hospital-Cornell Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 8月
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頭蓋頸椎移行部異常(craniocervical junction abnormality)は,後頭骨,大後頭孔,または第1および第2頸椎の先天性または後天性の異常により,下部脳幹と頸髄のためのスペースが狭小化する病態である。こうした異常は,頸部痛,脊髄空洞症,小脳,下位脳神経,および脊髄の障害,ならびに椎骨脳底動脈虚血の原因となることがある。診断はMRIまたはCTによる。治療では,しばしば整復の後,手術または外固定装具により頭頸部を安定化する。

神経組織は柔軟であるため,圧迫の影響を受けやすい。頭蓋頸椎移行部異常は,頸髄または脳幹圧迫の原因ないし寄与因子となる可能性があり,具体的な異常とその臨床的な帰結としては以下ものが挙げられる:

  • 環椎(C1)と後頭骨の癒合:歯突起後方の大後頭孔の前後径が19mm未満の場合は,脊髄が圧迫される

  • 頭蓋底陥入症(後頭顆の上方隆起):短頸となることに加え,小脳,脳幹,下位脳神経,および脊髄を障害しうる圧迫が生じる

  • 環軸関節亜脱臼または脱臼(軸椎に対して環椎が前方に偏位する):急性または慢性の脊髄圧迫が生じる

  • Klippel-Feil奇形(頸椎の癒合):頸部の変形および可動制限が生じるが,神経学的異常は通常みられない

  • 扁平頭蓋底(斜台と前頭蓋窩面の交差角度が135°を超える頭蓋底の平坦化),頭蓋骨の側面像で観察される:通常は無症状であるか,小脳または脊髄の障害がみられる

病因

頭蓋頸椎移行部異常は先天性のこともあれば,後天性のこともある。

先天性

先天性の異常は,特定の構造的異常のこともあれば,骨格の成長および発達に影響する全身性疾患であることもある。多くの患者で複数の異常がみられる。

構造的異常としては以下のものがある:

  • 歯突起骨(歯突起の全体または一部を置換する異常骨)

  • 環椎癒合(環椎と後頭骨の先天的な癒合)

  • 先天性Klippel-Feil奇形(例,ターナーまたはヌーナン症候群),しばしば環椎後頭骨の異常を伴う

  • 環椎低形成

  • キアリ奇形(小脳扁桃または虫部が頸部脊柱管内に下垂するほか,ときに扁平頭蓋底を合併する)

骨格の成長および発達に影響を及ぼし,頭蓋頸椎移行部を侵す全身性疾患としては,以下のものがある:

  • 軟骨無形成症(骨端での骨増殖の障害であり,骨の短縮,奇形を生じる)では,ときに大後頭孔の狭小化または環椎との癒合が引き起こされ,それにより脊髄または脳幹が圧迫されることがある。

  • ダウン症候群モルキオ症候群(ムコ多糖症IV型),または骨形成不全症 は,環軸関節亜脱臼または脱臼の原因となりうる。

後天性

後天性の原因には,外傷や疾患などがある。

  • 外傷では骨,靱帯,またはその両方が損傷することがあり,通常は自動車または自転車事故,転倒のほか,特に飛び込みにより生じる;損傷によっては直接死につながることがある。

  • 頸椎の関節リウマチ(疾患としては最も頻度の高い原因である)および パジェット病は,環軸関節脱臼もしくは亜脱臼,頭蓋底陥入症,または扁平頭蓋底の原因となりうる。

  • 骨に転移した腫瘍は,環軸関節脱臼または亜脱臼の原因となりうる。

  • 緩徐進行性の頭蓋頸椎移行部腫瘍(例, 髄膜腫脊索腫)は,脳幹または脊髄に影響を及ぼす可能性がある。

症状と徴候

症状と徴候は軽度の頸部外傷後,または自然に現れ,進行は様々である。臨床像は圧迫の程度と障害を受けた構造物によって異なる。最も頻度の高い症候は以下のものである:

  • 頸部痛,しばしば頭痛を伴う

  • 脊髄圧迫の症状と徴候

頸部痛は,しばしば腕に広がり,頭痛を伴うこともある(一般的には頭蓋頂に放散する後頭部頭痛);これはC2神経根および大後頭神経の圧迫,ならびに局所の筋骨格系機能障害に起因する。頸部痛および頭痛は,通常は頭部を動かすと増悪し,咳嗽または前屈によって誘発できる。キアリ奇形の患者が水頭症を有する場合には,立位(座位)をとると水頭症が増悪し,頭痛が生じることがある。

脊髄圧迫では頸髄上部が侵される。障害には,運動神経の経路の圧迫による上肢,下肢,またはその両方の痙性不全麻痺などがある。関節位置覚および振動覚(後索機能)がよく障害される。頸部屈曲に伴い,背部を下方に(しばしば下肢まで)放散する電撃痛(Lhermitte徴候)が生じることがある。まれに,温痛覚(脊髄視床路の機能)が手袋靴下型に障害される。

頸部の見かけ,可動域,またはその両方に影響を与えうる異常がある(例,扁平頭蓋底,頭蓋底陥入症,Klippel-Feil奇形)。短頸,翼状頸(胸鎖乳突筋辺りから肩にかけてのひだ状の皮膚),または頸部の位置異常(例,Klippel-Feil奇形の斜頸)を認めることがある。可動域は制限されることがある。

脳の圧迫(例,扁平頭蓋底,頭蓋底陥入症,または頭頸部腫瘍によるもの)は,脳幹,脳神経,および小脳の障害につながることがある。脳幹および脳神経の障害には,睡眠時無呼吸,核間性眼筋麻痺(側方注視時の同側の眼球内転障害に加え,外転している対側眼の水平眼振),下向性眼振(急速相成分が下向き),嗄声,構音障害,嚥下困難などがある。小脳障害では通常,協調運動が障害される。

椎骨脳底動脈虚血は,頭位の変換によって誘発できる。症状としては,間欠性の失神,転倒発作,回転性めまい,錯乱または意識変容,脱力,視覚障害などがある。

脊髄空洞症(脊髄の中心部に空洞がある状態)は,キアリ奇形の患者でよくみられる。脊髄空洞症は,髄節性の弛緩性筋力低下および萎縮を生じることがあり,上肢遠位部に最初に現れる,または上肢遠位部で最も重度である;頸部および上肢近位部にケープ状に分布する温痛覚消失がみられることがあるが,軽い触覚は保持される。

診断

  • 脳および上部脊髄のMRIまたはCT

頸部または後頭部に疼痛があり,下部脳幹,上位頸髄,または小脳に由来する可能性がある神経脱落症状が認められる場合は,頭頸部病変が疑われる。下位頸椎障害の鑑別は,通常は臨床所見(脊髄機能障害のレベル)と神経画像検査によって行われる。

神経画像検査

頭頸部異常が疑われる場合は,上部脊髄および脳(特に後頭蓋窩および頭蓋頸椎移行部)のMRIまたはCTを施行する。急性または突然進行する障害は緊急事態であり,直ちに画像検査を行う必要がある。MRIの矢状断像は,障害に関連する神経病変(例,後脳,小脳,脊髄,および血管の異常;脊髄空洞症)および軟部組織病変の描出に優れている。CTはMRIよりも骨組織の正確な描出に優れ,緊急時にも比較的容易に利用できる。

MRIおよびCTが施行できない場合は,単純X線(頸椎が描出される頭蓋骨の側面像,前後像,および頸椎の斜位像)を利用する。

MRIが施行できないか,結果が不確定であって,CTでも結論が得られない場合は,CT脊髄造影(放射線不透過性物質を髄腔内注射後にCT撮影)を施行する。MRIまたはCTで血管異常が示唆された場合は,MRアンギオグラフィーまたは椎骨動脈造影を施行する。

治療

  • 整復および固定

  • ときに外科的減圧,固定,またはその両方

神経構造物が圧迫されている場合は,治療として整復(牽引または頭位変換により頭蓋頸椎移行部の配置を正し,神経圧迫を緩和)を行う。整復後は頭頸部を固定する。急性または突然進行する脊髄圧迫には,緊急の整復が必要である。

ほとんどの患者で,整復はハローリングを使用して最大約4kgの重量で骨格牽引を行う。牽引による整復には5~6日必要である。整復が得られたら,ハローベストの装着により頸部を8~12週間固定する;その後,安定性を確認するためにX線撮影を施行する。

整復によって神経圧迫が軽減されない場合は,前方または後方到達法による外科的減圧が必要である。減圧後も不安定性が持続する場合は,後方固定術(安定化)が必要となる。一部の異常(例,関節リウマチ)では,外部固定のみで治療が成功することはまれであり,成功しなければ,後方固定術または前方減圧術と安定化が必要となる。

器具による固定にはいくつかの方法があり(例,プレート,スクリューロッド),骨の癒合と永続的な安定性が得られるまでの一時的な安定化に利用できる。一般に,不安定な領域は全て癒合させなければならない。

骨疾患

転移性骨腫瘍の患者では,放射線療法と硬性の頸椎カラーがしばしば有用となる。パジェット病患者には,カルシトニン,ミスラマイシン,およびビスホスホネート系薬剤が有用となりうる。

要点

  • 頭蓋頸椎移行部異常(craniocervical junction abnormality)は,後頭骨,大後頭孔,または第1および第2頸椎の先天性または後天性の異常により,下部脳幹と頸髄のためのスペースが狭小化する病態である。

  • 頸部または後頭部に疼痛があり,下部脳幹,上位頸髄,または小脳に由来する可能性のある神経障害が認められる場合は,頭蓋頸椎移行部異常を疑う。

  • 頭蓋頸椎移行部異常は,脳および上部脊髄のMRIまたはCTにより診断する。

  • 圧迫されている神経構造の圧迫を減少させ,固定する。

  • 大半の患者は牽引固定または手術により治療する。

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