神経膠腫には,星細胞腫,乏突起膠腫,髄芽腫,および上衣腫が含まれる。多くの神経膠腫はびまん性かつ不規則性に脳組織に浸潤する。
星細胞腫は最も頻度の高い神経膠腫である。悪性度の低い順に以下のように分類される:
低悪性度星細胞腫または退形成性星細胞腫は,より若年の患者に発生する傾向があり,膠芽腫に進行することもある(二次性膠芽腫)。膠芽腫は染色体構成が不均一な細胞で構成される。通常は中年または高齢者において,de novo腫瘍(原発性膠芽腫)として発生しうる。原発性膠芽腫と二次性膠芽腫には,それぞれ明確に異なる遺伝学的特徴があるが,これは腫瘍の進行に従って変化しうる。星細胞腫の中には乏突起膠腫細胞を含むものもあり,そのような腫瘍(乏突起星細胞腫と呼ばれる)を有する患者は,純粋な星細胞腫の患者と比べて予後良好である。
乏突起膠腫は最も良性の神経膠腫の1つである。主に大脳皮質,特に前頭葉を侵す。乏突起膠腫の中には,1番染色体短腕の欠損(1p欠損),19番染色体長腕の欠損(19q欠損),またはその両方を特徴とするものがある。これらの欠損がみられる場合は,より生存期間が長く,放射線療法および化学療法に対する反応が良好と予測される。退形成性乏突起膠腫は,より悪性度の高い乏突起膠腫の形態であり,その点を考慮して管理する。
髄芽腫および上衣腫は,通常は第4脳室付近に発生する。髄芽腫は主に小児および若年成人に生じる。上衣腫はまれな腫瘍であり,主に小児に発生する。いずれの腫瘍も閉塞性水頭症の素因になる。
症状と徴候は部位によって異なる( 脳腫瘍の一般的な局在症候を参照のこと)。診断はその他の脳腫瘍の場合と同じである。
治療
退形成性星細胞腫および膠芽腫
治療としては,腫瘍量を減らすために手術,放射線療法,および化学療法を行う。できるだけ多くの腫瘍を切除する手術は,安全であり,生存期間を延長し,神経機能を改善する。
手術後には,腫瘍に対する最大線量(6週間かけて60Gy)で放射線療法を施行する;原体照射療法(腫瘍のみを標的とし,正常な脳組織を温存する方法)を用いるのが理想的である。
膠芽腫に対しては,現在,テモゾロミドによる化学療法が放射線療法と併用でルーチンに行われている。用量は75mg/m2/日で(放射線照射が行われない週末も含めて)42日間,次の1カ月間は150mg/m2,経口,1日1回で月5日,さらにその後の数カ月間は200mg/m2,経口,1日1回で月5日とし,全体で計6~12カ月間継続する。テモゾロミドによる治療中は,Pneumocystis jirovecii肺炎を予防するため,トリメトプリム/スルファメトキサゾール800mg/160mgを週3回投与する。
化学療法を受けている患者では,様々な間隔で血算を行う必要がある。
一部の患者では外科的切除中に化学療法用のウエハーのインプラントが適切となる場合もある。
研究段階の治療法(例,定位放射線手術,新規化学療法薬,遺伝子または免疫療法,放射線療法とテモゾロミドの併用)も考慮すべきである。
従来の集学的治療での膠芽腫患者の生存率は,1年後で50%,2年後で25%,5年後で10~15%である。以下の症例は予後が比較的良好である:
標準治療を行った場合の生存期間中央値は,退形成性星細胞腫の患者で約30カ月,膠芽腫の患者で約15カ月である。
低悪性度星細胞腫
乏突起膠腫
髄芽腫
治療は,約35Gyの全脳照射,15Gyの後頭蓋窩ブースト照射,および約35Gyの脊髄照射による。化学療法は補助療法として,また再発例に対して用いられることがある。特定の患者に効果的な薬剤がいくつかあり,具体的には,ニトロソウレア系薬剤,プロカルバジン,ビンクリスチン(単独使用または他剤との併用),メトトレキサートの髄腔内投与,多剤併用化学療法(例,メクロレタミン + ビンクリスチン[Oncovin]+ プロカルバジン + プレドニゾン[MOPP]),シスプラチン,カルボプラチンなどがある。しかしながら,いずれのレジメンも一貫して効果的となるわけではない。
治療した場合の生存率は,5年で50%以上,10年で約40%である。