ハンチントン病

(Huntington病;ハンチントン舞踏病;慢性進行性舞踏病;遺伝性舞踏病)

執筆者:Alex Rajput, MD, University of Saskatchewan;
Eric Noyes, MD, University of Saskatchewan
Reviewed ByMichael C. Levin, MD, College of Medicine, University of Saskatchewan
レビュー/改訂 修正済み 2024年 2月
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ハンチントン病は,舞踏運動,精神神経症状,および進行性の認知機能低下を特徴とする常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患であり,通常は中年期に発症する。診断は遺伝子検査による。第1度近親者には,遺伝子検査を行う前に遺伝カウンセリングを勧めるべきである。治療は支持療法による。

運動障害疾患および小脳疾患の概要も参照のこと。)

ハンチントン病は,遺伝性の舞踏運動の最も一般的な原因である。性差なく発生する。世界的な有病率はおよそ10万人当たり4例である(1)。

総論の参考文献

  1. 1.Medina A, Mahjoub Y, Shaver L, Pringsheim T: Prevalence and incidence of Huntington's disease: An updated systematic review and meta-analysis.Mov Disord 37 (12), 2327–2335, 2022..doi: 10.1002/mds.29228 Epub 2022 Sep 26.

ハンチントン病の病態生理

ハンチントン病では,尾状核が萎縮し,線条体の抑制性中間有棘ニューロンが変性して,神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)およびサブスタンスPが減少する。

ハンチントン病は,4番染色体上のhuntingtinHTT)遺伝子の変異に起因し,この遺伝子は,アミノ酸のグルタミンをコードするDNA配列であるCAGのリピート異常をもたらす。その遺伝子産物はハンチンチンと呼ばれる大きなタンパク質で,ポリグルタミン残基の拡大伸長がみられ,それがニューロン内に蓄積され,未知の機序により疾患をもたらす。CAGリピートが多くなるほど,発症年齢はより低くなり,表現型はより重度になる。父親から変異が受け継がれる場合,世代を重ねるにつれてCAGリピート数が増すことがあり,経時的に家系内の表現型が重症化していくことがある(表現促進と呼ばれる)。

ハンチントン病の症状と徴候

ハンチントン病の症状と徴候は潜行性に発生し,表現型の重症度によって異なるが,35~40歳頃に始まる。

運動障害疾患に先行して,または運動障害疾患と同時に,認知症または精神疾患(例,抑うつ,無関心,易刺激性,快感消失,反社会的行動,本格的な双極症または統合失調様症)が生じる。これらの症状は,希死念慮および自殺の素因となり,ハンチントン病患者では一般集団と比べてこれらの頻度がはるかに高い。

異常運動として,舞踏運動,アテトーゼ,ミオクローヌス,偽性チック(pseudo-tic)(tourettismの臨床像の1つ)などがみられるようになる。Tourettismとは,別の神経疾患や薬剤の使用によって生じるトゥレット様症状のことであり,tourettismには舞踏病の患者でみられる反復的な運動および/または発声も含まれる。真のチックとは異なり,ハンチントン病の偽性チックは抑制することができない。

典型的な特徴としては,操り人形のような奇異な歩行,しかめ面,瞬目や頭部の突き出しをせずに眼球を意図的に急速に動かすことができない(眼球運動失行),舌の突き出しや把持といった動作を維持することができない(運動維持困難)などがある。運動失調は見過ごされがちな症状である。

ハンチントン病が進行すると,歩行が不可能になり,嚥下が困難になる;結果として重度の認知症に至る。舞踏運動は典型的には無動-固縮の特徴に置き換わる。多くの患者は最終的には施設入所が必要となる。通常は症状の出現から13~15年で死亡する。

ハンチントン病の患者は,抑うつや不安を呈したり,強迫症を発症したりすることがある。

20歳未満でハンチントン病を発症した場合,若年性ハンチントン病またはWestphal型に分類され,痙攣発作とパーキンソニズムを呈する。

ハンチントン病の診断

  • 臨床的評価を行い,遺伝子検査により確認する。

  • 神経画像検査

ハンチントン病の診断は,典型的な症候と本疾患の家族歴に基づいて行う。CAGリピート数を測定する遺伝子検査により確定する(1)(検査結果の解釈については,ハンチントン病の遺伝子検査の表を参照)。

神経画像検査は尾状核の萎縮および,しばしば前頭優位の皮質萎縮の同定に役に立つ。

表&コラム
表&コラム

診断に関する参考文献

  1. 1.Bean L, Bayrak-Toydemir P: American College of Medical Genetics and Genomics Standards and Guidelines for Clinical Genetics Laboratories, 2014 edition: Technical standards and guidelines for Huntington disease.Genet Med 16 (12):e2, 2014.doi: 10.1038/gim.2014.146 Epub 2014 Oct 30.

ハンチントン病の治療

  • 支持療法

  • 近親者の遺伝カウンセリング

ハンチントン病は進行性であるため,終末期ケアについて早期から話し合うべきである。

ハンチントン病の治療は支持療法および対症療法による。しかしながら,研究者らは疾患の進行を遅らせたり,止めたりする方法を探し続けている。

舞踏運動に対する対症療法の第1選択薬としては,典型的には小胞モノアミントランスポーター2(VMAT-2)阻害薬(テトラベナジン,デューテトラベナジン[deutetrabenazine])を使用する(1)。VMAT-2阻害薬はドパミンを枯渇させ,舞踏運動の軽減を目的に使用される。症状をコントロールするため,患者が耐えられる範囲で段階的に増量する。うつ病の悪化と自殺傾向のリスクが増大するため,うつ病患者ではVMAT-2阻害薬の使用は避けるべきである。VMAT-2阻害薬のその他の有害作用としては,過度の鎮静,アカシジア,パーキンソニズムなどある。VMAT-2阻害薬は費用も高い。デューテトラベナジン(deutetrabenazine)はテトラベナジンより忍容性が良好なようである。

抗精神病薬は,舞踏運動および興奮を部分的に抑えられる可能性があり,うつ病患者に対する初期治療の代替薬である。抗精神病薬としては以下のものがある:

  • クロルプロマジン

  • ハロペリドール

  • リスペリドン

  • オランザピン

  • クロザピン

抗精神病薬の用量は,耐えられない有害作用(例,嗜眠,パーキンソニズム)が生じるか,症状がコントロールされるまで増量する。クロザピンを服用している患者では,無顆粒球症のリスクがあるため,白血球数を頻繁に測定するべきである。

現在研究されている治療法は,N-メチル-d-アスパラギン酸受容体を介したグルタミン酸系神経伝達を抑制し,ミトコンドリアエネルギー産生を強化することを目的としている。脳のGABA作動性の機能を増加させることを目的とした治療は無効に終わっている。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬は,ハンチントン病に関連した抑うつ,不安,または強迫症のある患者の助けになることがあり,また衝動性行動障害患者の症状を軽減する。

第1度近親者にハンチントン病の患者がいる人,特に妊娠可能年齢の女性や挙児を考慮している男性には,遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査を勧めるべきである。ハンチントン病の転帰は非常に深刻であるため,遺伝子検査を行う前に遺伝カウンセリングを勧めるべきである。

治療に関する参考文献

  1. 1.Bachoud-Lévi A-C, Ferreira J, Massart R, et al: International guidelines for the treatment of Huntington's disease.Front Neurol 10:710, 2019.doi: 10.3389/fneur.2019.00710 eCollection 2019.

要点

  • ハンチントン病は,男女に発生する常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患であり,通常は中年期に認知症と舞踏運動を引き起こす;大半の患者がやがて施設入居を余儀なくされる。

  • 症状および家族歴から本症が示唆される場合は,遺伝子検査を行う前に遺伝カウンセリングを行い,神経画像検査を考慮する。

  • 症状の治療を行うとともに,終末期ケアについて可能な限り早期に話し合う。

  • 第1度近親者,特に親になる可能性がある近親者には,陽性判定を受けた場合に備え,自殺のリスクを低減するために,遺伝子検査の前にカウンセリングを勧める。

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