(運動障害疾患および小脳疾患の概要も参照のこと。)
ジストニアは以下のように分類できる:
ジストニアを引き起こす中枢神経系疾患としては以下のものがある:
ジストニアを最もよく引き起こす薬剤としては以下のものがある:
アテトーゼまたは舞踏病アテトーゼに見える,障害された運動は,ジストニアが原因である場合がある。
分類
ジストニアは以下に基づき分類される:
病因には以下の種類がある:
臨床的特徴としては以下のものがある:
原発性全身性ジストニア( DYT1 ジストニア)
このまれなジストニアは進行性であり,持続性のしばしば奇妙な姿勢をとることが特徴である。DYT1遺伝子の変異に起因する不完全浸透の常染色体優性遺伝疾患として遺伝する場合が多い;一部の家系員では,遺伝子が最小限しか発現していない。患者の無症状の同胞(保因者)では,不完全型の疾患となる場合がある。
原発性全身性ジストニアの症状は通常小児期に,歩行時の足の内反および底屈として始まる。ジストニアは初期には体幹または下肢のみを侵すが,しばしば全身を侵すように(通常は頭側に向かって)進行する。最も重度の患者では身体がねじれ,グロテスクな,ほぼ固定された姿勢になり,最終的には車椅子生活を余儀なくされる場合がある。成人期に始まる症状は,通常は顔面と腕のみを侵す。
通常,精神機能は保たれる。
ドパ反応性ジストニア
このまれなジストニアは遺伝性である。
通常,ドパ反応性ジストニアの症状は小児期に始まる。典型的には,片側の下肢がまず侵される。結果として,小児はつま先で歩きがちになる。症状は夜に悪化する。歩行は次第により困難になり,腕および下肢が侵される。しかしながら,一部の小児では運動後の筋痙攣といった軽度の症状しかみられない。ときに後年になってから症状が出現し,パーキンソン病の症状に類似する。運動は緩徐で,平衡を保つのが難しいことがあり,静止時に手に振戦が起こる場合がある。
低用量のレボドパを使用すると劇的に症状は軽快する。レボドパが症状を軽減するなら,診断は確実となる。
局所性ジストニア
このジストニアでは身体の一部位が侵される。典型的には,20~30歳以降の成人期に始まる。
初期には,姿勢は間欠的であったり動作特異的である場合がある(よって,ときに攣縮と説明される)。運動は活動時にはより顕著であり静止時には目立たなくなる傾向があるが,この違いは時間経過とともに小さくなり,しばしば侵された身体部位の歪みや重度の障害に帰着する。しかしながら,局所性原発性頸部ジストニア(痙性斜頸)およびパーキンソン病においてレボドパへの反応が減弱し始めるときに起こるジストニア(下肢を侵すことが最も多い[例,足部の内反])を除いて,疼痛はまれである。
職業性ジストニアは,熟練した作業を行うことによって生じる,動作特異的な局所のジストニア性痙攣である(例,書痙,音楽家ジストニア,ゴルファーの精神不安)。
痙攣性発声障害は,喉頭筋の局所性ジストニアにより,緊張した,かすれた,またはしわがれた声を発するものである。
{痙性斜頸は,頸筋の不随意の強直性収縮または間欠的な攣縮として現れる。
分節性ジストニア
診断
治療
}全身性ジストニアには,抗コリン薬(トリヘキシフェニジル2~10mg,経口,1日3回,ベンツトロピン3~15mg,経口,1日1回)が最も頻用されており,用量は目標値まで緩徐に漸増する。筋弛緩薬(通常はバクロフェン),ベンゾジアゼピン系薬剤(例,クロナゼパム),またはその両方を使用することで,付加的な効果が得られることがある。
重症または薬剤に反応しない全身性ジストニアは,定位脳手術である淡蒼球内節(GPi)の脳深部刺激術によって治療される。片側のGPiを凝固する定位脳手術が適応となる症例もある。
局所性もしくは分節性ジストニア,または主に身体の一部位を侵す全身性ジストニアに対する第1選択の治療は以下のものである:
ボツリヌス毒素は化学的除神経により過剰な筋収縮を減弱させるが,ジストニアを起こす脳の異常な回路を変えるわけではない。毒素の注入は眼瞼痙攣および斜頸に対して最も効果的であるが,他の多くの病型の局所性ジストニアに対しても非常に効果的となりうる。用量は非常に幅がある。毒素の効果の持続期間は限られているため,治療は3~4カ月毎に繰り返すべきである。しかしながら,少数の症例では,毒素が繰り返し注入された場合に,毒素タンパクに対する中和抗体が生じ,この治療の効果は減弱するが,生じる全ての抗体が毒素を中和するわけではない。