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一過性全健忘

執筆者:

Juebin Huang

, MD, PhD, Memory Impairment and Neurodegenerative Dementia (MIND) Center, University of Mississippi Medical Center

最終査読/改訂年月 2015年 9月

一過性全健忘とは,前向性健忘と(通常は)逆行性健忘が突然始まり,最長で24時間持続する病態である。診断は主として臨床的に行うが,臨床検査とCT,MRI,またはその両方を施行し,中枢の循環動態を評価する。この健忘は典型的には自然寛解するが,再発することもある。特異的な治療法はないが,基礎にある異常を是正する。

一過性全健忘の大半(75%)は50~70歳の患者に発生し,40歳未満での発生はまれである。

病因

一過性全健忘の病因は明らかでない。示唆される作用機序としては,片頭痛,低酸素症および/または虚血,静脈還流異常,てんかん発作などに関連するものや,心理的因子などがある。

最近のデータでは,CA1ニューロンの代謝ストレスに対する脆弱性が主軸にあることが示唆されており,その結果生じた損傷がカスケード反応を惹起し,海馬機能の障害を招く。

非常に特徴的な良性型の一過性全健忘は,過度の飲酒,やや大量のバルビツール酸系薬剤鎮静薬の服用,いくつかの違法薬物の使用,ときに比較的少量のベンゾジアゼピン系薬剤(特にミダゾラムおよびトリアゾラム)の服用に続いて発生することがある。

一過性全健忘の誘因となる出来事には以下のものがある:

  • 急に冷水または熱湯に浸かること

  • 身体的運動

  • 感情的または精神的ストレス

  • 疼痛

  • 医療処置

  • 性交

  • バルサルバ手技

症状と徴候

患者はしばしば誘因事象の後に来院する。

一過性全健忘の古典的な臨床像は,以下の通りである:

  • 突然発症する重度の前向性健忘

ただし,より軽度の逆行性健忘が主症状となる場合もある。エピソードの持続時間は通常1~8時間であるが,30分から24時間(まれ)までの幅がある。しばしば時間および場所の見当識障害がみられるが,通常は人に関する見当識は維持されている。多くの患者は不安または興奮状態にあり,起きている事象に関する質問を繰り返すことがある。言語機能,注意,視空間技能,および社会的技能は維持される。障害はエピソードの沈静化につれて徐々に軽快していく。

物質摂取後の良性一過性健忘は,以下の点で他と異なる:

  • 選択的に逆行性である(すなわち,中毒の最中とその前の出来事を覚えていない)

  • 薬物を使用した出来事との明確な関連がある

  • 錯乱を引き起こさない(急性中毒が治まってから)

  • 同じ薬物を同程度の量摂取したときにだけ再発する

診断

  • 主に臨床的な評価

  • 脳画像検査

一過性全健忘の診断は主として臨床的に行う。神経学的診察では,典型的には記憶障害以外の異常は検出されない。脳虚血を除外する必要がある( 虚血性脳卒中 : 診断)。

臨床検査としては,血算,凝固検査,および凝固亢進状態の評価を行うべきである。

通常は脳CT,脳MRI,またはその両方を施行する。脳虚血が疑われる場合は,除外するために高分解能MRIで拡散強調画像を撮影すべきであり,MRIでは,海馬外側部の拡散制限と相関する局所的な高信号病変がみられる可能性がある。発症後最初の24時間では,MRIで海馬病変を検出できる患者はわずか12%に過ぎない。3日後にスライス厚をより小さく(3mm),b値をより高く設定してMRIを施行すれば,検出率は81%に上昇する。病変が3日後に描出されやすくなる理由は不明である。

脳波検査では通常,非特異的な異常しか認められないため,てんかん発作が疑われる場合とエピソードが再発する場合を除いて,脳波検査は不要である。

予後

予後は良好である。症状の持続時間は典型的には24時間未満である。疾患が軽快するにつれて健忘は軽減していくが,発作中の出来事の記憶は失われることがある。

原因がてんかん発作または片頭痛である場合を除いて,通常は再発しない。生涯再発率は約5~25%である。

脳卒中のリスクは増加しない。

治療

  • 可能であれば原因の治療

一過性全健忘に適応となる特異的な治療法はない。ただし,基礎疾患があれば治療すべきである。

要点

  • 一過性全健忘は通常50~70歳の患者に生じる。

  • 原因として脳虚血を除外するため,高分解能MRIで拡散強調画像を撮影する。

  • 失われた記憶は回復しない場合もあるが,記憶機能は24時間以内に回復する傾向があり,再発は通常ない。

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