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進行性多巣性白質脳症 (PML)

執筆者:

John E. Greenlee

, MD, University of Utah Health

最終査読/改訂年月 2019年 1月
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進行性多巣性白質脳症(PML)は,JCウイルスの再活性化によって引き起こされる。この疾患は通常,細胞性免疫に障害がある患者に発生し,特にHIV感染症の患者でよくみられる。PMLは亜急性かつ進行性の中枢神経系の脱髄と多巣性の神経脱落症状を引き起こし,通常は9カ月以内に死に至る。診断はMRIおよび髄液PCR検査による。AIDS患者であれば,HAART(highly active antiretroviral therapy)で進行を遅らせることができ,免疫抑制薬を服用している患者であれば,その使用を中止することで改善する可能性がある。それ以外は支持療法を行う。

病因

進行性多巣性白質脳症はJCウイルスの再活性化によって起こるが,このウイルスは遍在性ヒトパポバウイルスの一種であり,典型的には小児期に感染し,その後は腎臓やときにその他の部位(例,単核球,中枢神経系)に潜伏している。再活性化したウイルスは乏突起膠細胞に向性を示す。

PMLを発症する患者の多くに,以下に起因する細胞性免疫の低下が生じる:

AIDS患者におけるリスクは,HIVウイルス量が多いほど高く,現在では効果の高い抗レトロウイルス薬が広く使用されるようになったことから,PMLの有病率は低下している。

PMLは免疫調節療法(例,ナタリズマブやリツキシマブなどのモノクローナル抗体)の合併症として発生することがますます多くなっている。JCウイルスに対する血清抗体の測定(JC virus index)は,ナタリズマブ使用中の患者におけるPMLのリスク評価に役立つ可能性がある。

症状と徴候

巧緻運動障害が初発症状となることがある。最も頻度が高い所見は不全片麻痺である。失語,構音障害,および半盲もよくみられる。多巣性の皮質損傷により,3分の2の患者で認知障害が発生する。感覚,小脳,および脳幹に障害がみられることがある。

頭痛および痙攣発作はまれであるが,AIDS患者で最も頻度が高い。

徐々に間断なく進行し,通常は発症から1~9カ月で死に至る。

診断

  • MRI

  • JCウイルスDNAを検出するための髄液検査

原因不明かつ進行性の脳機能障害がある患者では進行性多巣性白質脳症を疑う(特に細胞性免疫が抑制されている患者)。

PMLの暫定診断は造影MRIにより行い,T2強調像で単一または複数の白質病変を認める。造影剤により,通常は5~15%の病変で周辺部がかすかに増強される。CTでは,造影されない低吸収病変を認めることがあるが,MRIと比べると有意に感度が劣る。

JCウイルスDNAを検出するためにPCR法により髄液を分析するが,そこでの陽性所見に加えて,それと一致する神経画像所見を認めれば,本症にほぼ特有の検査所見となる。通常,ルーチンの髄液検査は正常である。

血清学的検査は役に立たない。定位生検によって確定診断できる場合があるが,必要になることはまれである。

治療

  • 支持療法

進行性多巣性白質脳症の治療は主に支持療法による。

シドホビル(cidofovir)やその他の抗ウイルス薬などの薬剤の試験的投与では,有益な結果は得られていない。AIDS患者における抗レトロウイルス療法(ART)は,PMLにおける転帰を改善し,1年生存率を10~50%に高めた。しかしながら,積極的な抗レトロウイルス療法を受けている患者は免疫再構築症候群 免疫再構築症候群(IRIS) ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む 免疫再構築症候群(IRIS) (IRIS)を発症することがある。IRISでは,免疫系が回復する過程でJCウイルスに対して強い炎症反応が誘導され,その結果として症状が悪化する。IRIS発症後に施行された画像検査では,病変がより強く増強され,また有意な脳浮腫を認めることがある。コルチコステロイドが役立つことがある。IRISおよびAIDSの重症度によっては,ARTの中止を決定することもある。

免疫抑制薬の中止が臨床的な改善につながる場合もある。ただし,免疫抑制薬の服用を中止した患者もまた,IRISを発症するリスクがある。

ナタリズマブ,その他の免疫調節薬,または免疫抑制薬を服用している患者がPMLを発症した場合は,その薬剤を中止するとともに,血中に残存する薬物を除去するために血漿交換を行うべきである。

要点

  • 通常は細胞性免疫の障害により,遍在性のJCウイルスが再活性化することでPMLが発生する。

  • PMLは一般的に巧緻運動障害,不全片麻痺,失語,構音障害,半盲,および認知障害を引き起こす。

  • 細胞性免疫に障害があり,原因不明かつ進行性の脳機能障害がある患者では,MRIとJCウイルスDNAを検出する髄液検査を行う。

  • 支持療法を行うとともに,適応があれば基礎疾患の治療を行う(例,ナタリズマブ,その他の免疫調節薬,または免疫抑制薬を中止するか,あるいは抗レトロウイルス療法を開始して免疫再構築症候群の発症に細心の注意を払うことによる)。

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