脳感染症は以下の形態で発生する:
脳炎に発展し,ときに脳の特定の領域を侵す,びまん性の感染症
髄膜感染症 髄膜炎の概要 髄膜炎は髄膜および,くも膜下腔の炎症である。感染症,その他の疾患,または薬剤への反応によって起こりうる。重症度および急性度は様々である。典型的な所見には,頭痛,発熱,項部硬直などがある。診断は髄液検査による。治療は適応に応じて抗菌薬を投与する他に,補助的手段などがある。 ( 脳感染症に関する序論および... さらに読む または傍髄膜感染症(parameningeal infection)に続発する脳の炎症
脳炎の原因で最も頻度が高いのはウイルスであり,具体的には 単純ヘルペスウイルス 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 単純ヘルペスウイルス(ヒトヘルペスウイルス1型および2型)は一般的に,皮膚,口腔,口唇,眼,および性器を侵す反復性感染症を引き起こす。頻度の高い重症感染症としては,脳炎,髄膜炎,新生児ヘルペスなどがあり,易感染性患者では播種性感染症もある。皮膚粘膜感染症では,紅斑上に集簇する有痛性の小水疱が生じる。診断は臨床的に行う;培養,PCR検査,直... さらに読む , 帯状疱疹ウイルス 帯状疱疹 帯状疱疹は,水痘帯状疱疹ウイルスが後根神経節で潜伏状態から再活性化される際に生じる感染症である。症状は通常,侵された皮膚分節に沿った疼痛から始まり,その後小水疱が2~3日以内に生じ,通常はこれが診断の決め手となる。治療は,皮膚病変発現後72時間以内に抗ウイルス薬を投与することによる。... さらに読む
, サイトメガロウイルス サイトメガロウイルス(CMV)感染症 サイトメガロウイルス(CMV)は,重症度に大きな幅のある感染症を引き起こす。伝染性単核球症に類似するが重度の咽頭炎を欠いた症候群がよくみられる。HIV感染患者とまれに臓器移植レシピエントやその他の易感染性患者において,網膜炎など重度の局所疾患が生じうる。新生児および易感染性患者では,重度の全身性疾患が発生することがある。臨床検査による診断... さらに読む ,またはウエストナイルウイルスなどがある。 HIV感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症は,2つの類似したレトロウイルス(HIV-1およびHIV-2)のいずれかにより生じ,これらのウイルスはCD4陽性リンパ球を破壊し,細胞性免疫を障害することで,特定の感染症および悪性腫瘍のリスクを高める。初回感染時には,非特異的な熱性疾患を引き起こすことがある。その後に症候(免疫不全に関連するもの)が現れ... さらに読む
と プリオン病 プリオン病の概要 プリオン病は,進行性で治療不能の致死的な脳変性疾患である。 主要な病型としては以下のものがある: クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD),原型(通常は孤発性) 変異型CJD(vCJD;プリオンに汚染された牛肉を摂取することで感染する) Variably protease-sensitive... さらに読む でも,脳がびまん性に侵されることがある。
JCウイルスによる 進行性多巣性白質脳症 進行性多巣性白質脳症 (PML) 進行性多巣性白質脳症(PML)は,JCウイルスの再活性化によって引き起こされる。この疾患は通常,細胞性免疫に障害がある患者に発生し,特にHIV感染症の患者でよくみられる。PMLは亜急性かつ進行性の中枢神経系の脱髄と多巣性の神経脱落症状を引き起こし,通常は9カ月以内に死に至る。診断はMRIおよび髄液PCR検査による。AIDS患者であれば,H... さらに読む や麻疹ウイルスによる 亜急性硬化性全脳炎 亜急性硬化性全脳炎(SSPE) 亜急性硬化性全脳炎は,麻疹の発病後数カ月から通常は数年経過した後に発症する,通常は死に至る進行性の脳疾患である。知的退行,ミオクローヌス,および痙攣発作を引き起こす。診断では脳波検査,CTまたはMRI,髄液検査,および麻疹の血清学的検査を行う。治療は支持療法による。 ヒトに感染するウイルスの大半は成人と小児の両方に感染するが,それらについ... さらに読む など,ウイルス感染症も脳を侵すが,それらは長い潜伏期間と長期の経過を特徴とする。
一部の非感染性疾患が脳炎に類似することもある。自己免疫疾患の抗NMDA(N-メチル-d-アスパラギン酸)受容体脳炎がその一例であり,この疾患ではニューロンの膜タンパク質に対して自己免疫反応が起きる。
びまん性の急性散在性脳脊髄炎(感染後症候群の一種)の症候として多巣性の脳障害がみられる場合もある。